漢「麻夜!!」
その声が深い森の中で木霊し、正義はその拳を止めた。
そこに居たのは、真っ白な翼を背に生やした[神崎 漢 ]。
少女のような衣服を着ており、顔立ちからも誤解されやすいが、れっきとした少年である。
そこに居たのは、真っ白な翼を背に生やした[
少女のような衣服を着ており、顔立ちからも誤解されやすいが、れっきとした少年である。
麻夜「っぬぅ、今度は何者だ!?」
正義「漢くん…!」
漢「麻夜……遅くなってごめん……迎えに来たよ」
正義「漢くん…!」
漢「麻夜……遅くなってごめん……迎えに来たよ」
そして何より、正義達の従兄弟であり……[神崎 麻夜 ]の兄である。
漢はその翼を消滅させ、ゆっくりと森に降り立った。
そして、今にも泣き出しそうな表情で、【太陽の歴石】……いや、麻夜を見据えた。
漢はその翼を消滅させ、ゆっくりと森に降り立った。
そして、今にも泣き出しそうな表情で、【太陽の歴石】……いや、麻夜を見据えた。
正義「(漢くんの声なら、麻夜ちゃんに届くかもしれない。届くはずだ!)」
正義は兄妹の絆をもとに、そう確信した。
対称的に、【太陽の暦石】は暫し考えた後、小さく鼻で哂った。
対称的に、【太陽の暦石】は暫し考えた後、小さく鼻で哂った。
麻夜「……あぁ、この娘 の家族か?
残念だがもうこれは我のものだ、貴様の声など疾うに届いておらん。
もはやこれは我の傀儡が如きものとなって―――――」
残念だがもうこれは我のものだ、貴様の声など疾うに届いておらん。
もはやこれは我の傀儡が如きものとなって―――――」
漢「黙ってて!!」
か細くも、力強い声が響く。
その気魄のせいか、【太陽の暦石】も一瞬だけ、たじろいだ様に見えた。
その気魄のせいか、【太陽の暦石】も一瞬だけ、たじろいだ様に見えた。
漢「…貴方に話してるんじゃない……僕は、麻夜と話がしたいんだ!」
希望に満ちた、真っ直ぐな瞳。
漢は諦めていない。正義の確信はより強くなった。
漢は、漢の声は、麻夜を目覚めさせてくれるに違いない。
漢は諦めていない。正義の確信はより強くなった。
漢は、漢の声は、麻夜を目覚めさせてくれるに違いない。
麻夜「……そうか……そうか………やっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…
下らん!! これから我が、直々に、貴様等を滅ぼしてやろうと言うのだぞ!?
言いたい事があるのなら、後 で言えば良かろう!!」
下らん!! これから我が、直々に、貴様等を滅ぼしてやろうと言うのだぞ!?
言いたい事があるのなら、
それが気に入らなかったか、【太陽の歴石】は右掌から業火を噴き出し、漢を狙う。
正義はとっさに、白雲から土砂降りを起こして沈下させた。
正義はとっさに、白雲から土砂降りを起こして沈下させた。
麻夜「っち、邪魔をするな!」
正義「どっちが!!」
正義「どっちが!!」
風を纏う拳と大剣が、甲高い音を散らして交わる。
楓「あの子はいったい……?」
奈海「神崎漢くん。正義くんの従兄弟で、麻夜ちゃんのお兄さんよ。」
勇弥「(男だったのか……。)」
コイン「たしか、【漢字の成り立ち】と契約しているんだっけ。」
奈海「神崎漢くん。正義くんの従兄弟で、麻夜ちゃんのお兄さんよ。」
勇弥「(男だったのか……。)」
コイン「たしか、【漢字の成り立ち】と契約しているんだっけ。」
遠巻きに見ていた4人は、状況についていけず、分析を始めていた。
勇弥「……おそらく、だが。あいつこそが勝利のカギだろうな。」
楓「黄昏は、明らかにあの子を庇っている。そして攻撃も、ほとんどしていない。」
楓「黄昏は、明らかにあの子を庇っている。そして攻撃も、ほとんどしていない。」
勇弥と楓は、薄々察していた。このまま攻撃しても、勝てない事に。
【太陽の歴石】を倒すこと自体は、おそらく可能だと考えていた。
しかし、本当の勝利は『麻夜を救う事』。そのためにできる事は、自分達にはなかった。
【太陽の歴石】を倒すこと自体は、おそらく可能だと考えていた。
しかし、本当の勝利は『麻夜を救う事』。そのためにできる事は、自分達にはなかった。
コイン「信じよう。麻夜ちゃんの意思が、あいつに勝つ事を。」
奈海「お願い……!」
奈海「お願い……!」
コインと奈海は、ただ祈り続けた。けれど無力とは思わなかった。
祈る事で、望む事で、未来は変わる。そんな奇跡を目の当たりにしたのだから。
祈る事で、望む事で、未来は変わる。そんな奇跡を目の当たりにしたのだから。
漢「麻夜、聞こえる? 僕だよ、漢だよ!」
漢の声が聞こえると、正義は少し姿勢を低く構えた。
【太陽の歴石】に、麻夜に、漢の姿が見えるように。
【太陽の歴石】に、麻夜に、漢の姿が見えるように。
漢「今日は、麻夜の誕生日だったんだ……覚えてた?」
しかし、【太陽の歴石】に邪魔はさせなかった。
麻夜の視線を意識しつつも、【太陽の歴石】の攻撃は全て受け止めた。
麻夜の視線を意識しつつも、【太陽の歴石】の攻撃は全て受け止めた。
漢「麻夜が裂兄ぃと出かけてる間に、バースデーケーキ、作って待ってたんだよ?」
漢はじっと見つめながら、麻夜に語り続ける。
麻夜「無駄だと言うのが分からんか!? 己の滅びの時を、静かに待っておれ!」
【太陽の歴石】は痺れを切らし、またも漢に業火を飛ばす。
しかし白雲より大王が現れ、マントで業火を受け止めた。
しかし白雲より大王が現れ、マントで業火を受け止めた。
正義「無駄なんかじゃない! 漢くんの声は絶対に、麻夜ちゃんにも届く!!」
続けて正義が【太陽の歴石】を食い止める。
だが、大王はアシストしつつも、まだ足りないと踏んでいた。
だが、大王はアシストしつつも、まだ足りないと踏んでいた。
大王「(正義、気づいているのだろう? 歴石との契約が、簡単に切れるものだと思うか?)」
正義「……。」
大王「(仮に意識を取り戻せても、それだけで解決はしない。)」
正義「……。」
大王「(仮に意識を取り戻せても、それだけで解決はしない。)」
大王はより先を見ていた。意識を取り戻した麻夜に、【太陽の歴石】が何をするのかを。
それでも漢は、麻夜に語り続ける。
それでも漢は、麻夜に語り続ける。
漢「僕は……弱くて、泣き虫で、友達も全然出来なくて……
今日もすぐに麻夜を助けに行けなくて……頼りないお兄ちゃんだけど……」
今日もすぐに麻夜を助けに行けなくて……頼りないお兄ちゃんだけど……」
正義も同じく先を見ていた。【太陽の歴石】を破滅させるには、同じ破滅の力が必要だと。
なおも漢は、麻夜に語り続ける。
なおも漢は、麻夜に語り続ける。
漢「でも、麻夜は僕と違って、強かったから……麻夜がいつも励ましてくれたから……
麻夜がいつも傍にいてくれたから、今日まで楽しくやってこれたんだよ」
麻夜がいつも傍にいてくれたから、今日まで楽しくやってこれたんだよ」
大王も、正義も勘づいていた。あとひとつ、ピースが欠けている事に。
けれども漢は、麻夜を信じ続けた。
けれども漢は、麻夜を信じ続けた。
漢「麻夜がいないと………ほんとに、ダメなお兄ちゃんだよね………
麻夜がいないと、生きていけないよ………」
麻夜がいないと、生きていけないよ………」
――――――――――――――――――――すな
その時、正義は微かに声を聞いた。
同時に【太陽の歴石】が頭を抱え、正義の攻撃を受けて仰け反る。
同時に【太陽の歴石】が頭を抱え、正義の攻撃を受けて仰け反る。
正義「(い、今の声は……。)」
漢「帰って来てよ、麻夜……麻夜は、そんなのに負けちゃうような弱い子じゃ、無いよね?
麻夜はとっても、強い子だから………帰って来てくれるよね……?」
漢「帰って来てよ、麻夜……麻夜は、そんなのに負けちゃうような弱い子じゃ、無いよね?
麻夜はとっても、強い子だから………帰って来てくれるよね……?」
正義は、誰かがこの戦闘に介入している事に気づいた。
漢が気づいているかは分からないが、まだ……自分達には、仲間がいる。
漢が気づいているかは分からないが、まだ……自分達には、仲間がいる。
正義「(大王! 今から準備しよう!)」
大王「(良いのか正義? 時間こそかかるが、準備するだけでも力を消費する……)」
正義「(構わない! きっとチャンスは、今しかないから!)」
大王「(良いのか正義? 時間こそかかるが、準備するだけでも力を消費する……)」
正義「(構わない! きっとチャンスは、今しかないから!)」
大王はゆっくりと頷くと、その場から姿を消す。
正義は、上空よりもはるか上を意識し、雲を展開する。
それは、先ほどから作っていた白雲ではなく、宇宙を彷彿とさせる禍々しい雲だった。
正義は、上空よりもはるか上を意識し、雲を展開する。
それは、先ほどから作っていた白雲ではなく、宇宙を彷彿とさせる禍々しい雲だった。
麻夜「ぐっ………ま、た………強く…………!?」
漢「お願いだよ、麻夜………そんな奴に負けないで………
皆でケーキ食べようよ………麻夜ぁ!!!」
漢「お願いだよ、麻夜………そんな奴に負けないで………
皆でケーキ食べようよ………麻夜ぁ!!!」
【太陽の歴石】は、いよいよ頭を抱え込んで苦しみ出した。
正義はただ、宙を覆う雲を展開し続ける。
正義はただ、宙を覆う雲を展開し続ける。
―――― 我 の 部 下 に 手 を 出 す な ! ――――
正義「(【首塚】!? この戦いに、力を貸してくれたんだ……!)」
麻夜「あ、の…………祟り神風情、がぁ…………!!!」
麻夜「あ、の…………祟り神風情、がぁ…………!!!」
???「まさかこの期に及んで将門に感謝する事になろうとはな」
声がしたのは【太陽の暦石】の真後ろ、少し離れた処だった。
黒一色の服を、右目から流れる紅に僅かに染めた少年。
黒一色の服を、右目から流れる紅に僅かに染めた少年。
漢「あ……!!」
麻夜「貴様……生きて………!?」
麻夜「貴様……生きて………!?」
裂邪「お前の、所為で…大切な約束を守れなかったじゃねぇか!!」
闇から現れたのは、黄昏 裂邪。その声、立ち振る舞いからは、怒りが滲み出ているのが目に見えて分かった。
正義がその姿を見て驚いていると、一瞬目が合った。
正義がその姿を見て驚いていると、一瞬目が合った。
―――この場は任せろ―――
なんとなく、正義はそう言われた気がした。
その瞬間、正義はその場から姿を消す。
その瞬間、正義はその場から姿を消す。
~~~成層圏~~~
地球と宇宙の狭間で、その雲は展開されていた。
その雲の中から、黄昏正義が舞い降りる。
その雲の中から、黄昏正義が舞い降りる。
正義「(ずいぶん、高いところまで来ちゃったな……)」
大王「(今になって引き返すか?)」
正義「(冗談。それよりごめんね。そんな姿にして……)」
大王「(今になって引き返すか?)」
正義「(冗談。それよりごめんね。そんな姿にして……)」
そう考えながら、正義は雲を見つめる。
これこそが【恐怖の大王】の真の姿だ。
正義がよく知る『大王』とは、【恐怖の大王】が世界征服を行うための仮の姿。
そして、【アンゴルモアの大王】となった今、この【恐怖の大王】の力は正義のための力である。
正義がよく知る『大王』とは、【恐怖の大王】が世界征服を行うための仮の姿。
そして、【アンゴルモアの大王】となった今、この【恐怖の大王】の力は正義のための力である。
世界を滅亡させる力……しかし、【アンゴルモアの大王】は違う。
破壊者を、守護者に変える。その願いで、コントロールして見せる。
今、『正義の心』が試される―――
破壊者を、守護者に変える。その願いで、コントロールして見せる。
今、『正義の心』が試される―――
正義「行くよ! 大王!」
―――雲から降りてきたのは、巨大な隕石だった。
隕石はゆっくりと降下し、正義にぶつかる。
その瞬間、隕石は淡く輝き、正義の身体に吸収されていく。
――――――X.terminate Angolmois
その身体は紅く燃え盛り、まさに隕石そのものとなった。
そのまま飛び蹴りをするような体勢で、地上へと降下していく。
そのまま飛び蹴りをするような体勢で、地上へと降下していく。
その時、正義は『声』を聞いた。明らかに力を失った、【太陽の歴石】の声だ。
正義「お兄ちゃんが、やってくれたんだ……」
あの時の視線は、きっとそういう意味だったのだろう。
確信した未来が、今、確定した現実となった。
兄はやるべき事を果たした。ならば。
確信した未来が、今、確定した現実となった。
兄はやるべき事を果たした。ならば。
正義「ボクは、ボクにできる事を……!」
~~~地上~~~
楓「あれは、隕石!?」
コイン「違うよ! あれは……」
勇弥「正義ィ!」
奈海「正義くん!」
コイン「違うよ! あれは……」
勇弥「正義ィ!」
奈海「正義くん!」
地上が見えてくると、麻夜を支える漢、正義を見守る仲間達、そして……バラバラになった【太陽の歴石】が居た。
裂邪「やれぇぇぇぇぇぇぇ!! 正義ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
シェイドの能力で空高く跳ね上げられた、瓦礫のような石板は、正義の軌道とちょうど重なった。
歴石《……う、嘘だ………こんな事があって……》
正義「いっけええええええええええええええええええ!!!」
歴石《我が予言は……絶対に狂わないイイイイイイイイイイイ!!》
正義&大王「「 未来は……お前のものじゃない!! 」」
――― 黄 昏 正 義 ―――
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【太陽の歴石】と呼ばれた予言の石板は、木っ端微塵に消え去った。
最後に残ったのは、黄昏 正義、【恐怖の大王】、そして……共に戦った仲間達だった。
最後に残ったのは、黄昏 正義、【恐怖の大王】、そして……共に戦った仲間達だった。
正義「……終わった……?」
言い終えると、正義は倒れこんでしまった。大王が受け止めると、どうやら眠ったようだ。
大王は、塵になった【太陽の歴石】を見つめるように、呟く。
大王は、塵になった【太陽の歴石】を見つめるように、呟く。
大王「【太陽の歴石】……。
何故お前に、今日までしか時が刻まれていなかったのか、やっと分かったよ。」
何故お前に、今日までしか時が刻まれていなかったのか、やっと分かったよ。」
正義を地面に寝かせると、大王はゆっくりと、【太陽の歴石】があった場所へ歩いていく。
大王「未来とは、『未だ来ない』もの。
だからこそ人は、未知なる未来に思いを馳せ、現在 を生きる。
そして現在は過去となり、歴史に刻まれる。」
だからこそ人は、未知なる未来に思いを馳せ、
そして現在は過去となり、歴史に刻まれる。」
大王「マヤ文明は、それに気づいたんだ。だから辞めたんだ。未来を、刻む事を。」
大王「【太陽の歴石】、お前は不要になったんだ……。
これからの未来は、現在を生きる人間達の手で刻んでいく。」
これからの未来は、現在を生きる人間達の手で刻んでいく。」
大王「……あえて言わせてもらおう。」
―――最期まで、お疲れさま、だ―――
マヤの予言編第X5話「サイゴ」―完―