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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代ーズ-16a

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匿名ユーザー

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 約束は1時間後だったが少々早く来てしまっただろうか
 緊張が高まっていく感触を胸の内に覚えながら
 高奈先輩に促されて、扉の中へ


「あ、ちょっと待っててね!」


 「ヒーローズカフェ」の裏から回って中へ入ると
 以前会った美人の店員さんと、女の子二人が慌ただしく動いていた

 もしかして、いや、もしかしてじゃない
 俺は早く来てしまったようだ、いくらなんでも急ぎ過ぎたか

「こんにちは。結さん、真理さん」
「こんにちは高奈先輩」
「おー、夜さん」

 高奈先輩が女の子達と挨拶を交わしている
 二人とも俺達より年下のようだ、中学生くらいだろうか
 店員さんと何か早口で話している子に視線が吸い寄せられた
 その子の面影は、店員さんになんだか似ている
 まさか店員さんの妹さんなのだろうか?

「話で聞いたお客さんって、そちらの?」
「ええ、関係者よ」

 先輩はもう一人の子と話をしていた
 お客、とはつまり俺のことなのか? 不意に視線があった

 頭を下げる

「初めまして、商業一年の早渡です」
「こちらこそ。相生と言います」
「同じく、篠塚でーす」

 店員さんと話してた子も挨拶を返してきた
 不意に目が合う。背中が熱くなるのを感じた
 篠塚ちゃんも相生ちゃんも、何というか、美しい子だった
 年下の子だろうが美人さんは美人さんだ、はっきり言い切っておく

 てか何だこの空間
 何というか美女密度が高過ぎないかな?
 野郎独りだと、ちょっとかなりアレだぞこれは!?

「シマウマかー」

 篠塚ちゃんの声に意識を引き戻される
 彼女は俺の腕の一点を眺めていた

 分かるぞ
 彼女が見ているのは俺が腕に掛けているジャケットだ
 これは先輩にさっき謎の説得されて仕方なく脱いだゼブラ柄の一品モノだ
 当初、俺はこれ着てビシッと決めて「怪奇同盟」の店主夫妻に挨拶する積りだったんだ

「うん、いいと思います!」

 にっこり、というよりは、にんまりした表情で彼女はそう評した
 その言葉に思わず頬がほころびそうになる

 どうやら彼女はこのジャケットの良さを分かってくれたようだ!
 先輩には派手過ぎるから脱いで頂戴とお願いされたが
 年下の美人さんにそう思ってもらえると嬉しいぜ!

「ありがとう」

 嬉しさを抑えつつ感謝を伝える

「早渡君。美弥さんが、待っているわ」

 二人に軽く頭を下げた俺は
 先輩の後に続いて、階上へと上がった



 「ヒーローズカフェ」は一階が店舗で、二階が住居になっているらしい
 俺達は其処へお邪魔することになった

 どうも落ち着かない
 最初は元気よく挨拶して盟主さんへの贈り物をお渡しするはずだった

 それだけのはずだったんだ
 それがまさか、ここまで緊張してくるとは

 落ち着け、しっかしろ早渡脩寿
 俺は今、大事なお遣いを果たそうとしてるんだ

「はい、どうぞ」

 美人の店員さんが俺達の分の飲み物を出してきた

「次お店で出す予定の新作だから、遠慮なく飲んでね」
「ありがとうございます」

 お礼と共にドリンクを受け取る
 グラスに入っているのは澄んだ青い飲み物だった

 あれ? 美人さんは確か一階にいた筈じゃ
 一緒に上がってきたわけでもないのに、いつの間に?

「美弥さん、こんにちは」
「いらっしゃい高奈さん。そうか、この子が」

 思わず飛び上がりそうになった
 遂に、「ヒーローズカフェ」の店主、「怪奇同盟」の美弥さんに会うことになった

 一礼して、美弥さんを見る
 あの方だ。以前ここに来たとき厨房に立っていた方だ

 間近で会い、驚いた
 美弥さんは意外な程に若かった
 前に見たときはてっきり渋い雰囲気の似合う紳士だと思っていた
 いや、今も変わらずその雰囲気を纏っている
 しかしその外見は、ひょっとすると俺と同世代なのではと錯覚する程だ
 まさか、ここまで若い方だとは思わなかった

 美弥さんの横に美人さんが歩み寄る
 俺達を見て、彼女は微笑んでいた

「自己紹介ね。私は篠塚瑞希。で、こっちが旦那の美弥です」
「『怪奇同盟』の、篠塚美弥です。よろしく」
「ちなみに下に居たのが、私達の娘とそのお友達」

 マジかよ!?
 お二人は夫婦だったのか!?
 このお二人が「怪奇同盟」の店主さん夫婦だったのか!?

 しかも何気に重要ワードが飛び出したよな!?

 あの子は、妹さんじゃなくて娘さん!?
 下で会った篠塚ちゃんは、美弥さんと美人さんの娘さん!?

 落ち着け、俺!!
 莫迦が!! これが落ち着けるか!!

 そのなんだ、美人さんはまだ10代でないかという外見だ
 それこそ、篠塚ちゃんと奥さんが姉妹じゃないかと思う程の!!
 それが、何だって!? 娘だって!? 美人さんが人妻!? そして母親!?

「ほら、ドリンク飲んで落ち着いて」
「あっ、す、すいません!」

 瑞希さんに促されるまま飲み物に口を付ける
 喉から胃へと冷たい感触が滑っていき、清涼感が広がった

 そうだ、落ち着け俺
 てか、こっちから挨拶しなきゃ駄目だろ俺!

 篠塚さん夫婦に深く頭を下げる

「改めましてご挨拶します! 今年三月まで『広商連』の『団三郎』圏内にあります
 『七つ星団地』に身を置いていました、早渡脩寿と申します! 今年四月から商業高校に通っております!
 お忙しい中申し訳ありません! この度は『七つ星』の養い親から『怪奇同盟』の盟主様への贈り物をお渡ししたく参りました!」

「そうか、『広商連』にいたのか」
「『団三郎』系は……、美弥、知ってる?」
「一応な」

 お二人ともどうやら知っていたようだ
 胸を撫で下ろす。良かった、スムーズに行きそうだ





 「広商連」
 正式には「広域商業協同組合連合会」という長ったらしい名前がある
 字面だけじゃ何だ? となるが、要するに都市伝説やその関係者がひしめくマーケットのようなものだ

 この国には昔から怪異が実在し、怪異と関わる人々がいて、そうした者達が独自のネットワークを築いていた
 特に「商い」に関するネットワークは柔軟にして強固なもので、表の人間達には知り得ない独自の市場を作り上げていた

 そして、各地に存在する裏の市を結び合わせるのが、この「広商連」というわけだ
 「広商連」は特に三つの勢力に大別することができ、それぞれ日本三名狸伝説にあやかった名を持っている
 つまり、「団三郎」系と、「芝右衛門」系、「太三郎」系だ。聞いた話ではなんでも、狸は商いの神様、ということらしい
 このうち東日本では、やはりというか「団三郎」系の影響力が最も強く、当然「七つ星団地」も「団三郎」系の勢力圏にある

 「団三郎」系は「宮内庁」のお墨付きを得て商業をやってるとかそういう話を耳にしたこともあるが
 最も有名なのは「『組織』嫌いの『首塚』遠慮」というフレーズだろう

 「組織」嫌い、というのは字の如く、「団三郎」勢力圏内の市場に対して「組織」の介入を許していない、という意味だ
 どうも昔、市場に流れてきた危険な「呪宝」を奪取しようと「組織」の者が強引な武力介入をやらかしたらしく
 「広商連」が止めに入った所、無関係の民間人を含む多数の死傷者を出す事態にまで発展したそうだ

 それ以降、「広商連」、特に「団三郎」系では市場への「組織」の介入に対して過激になっており
 「組織」関係者が市へ潜入しようとした所を水際で取り押えているという話だ
 というか、俺も実際そういう仕事をやったことがあった

 ただまあ、「組織」が市場を監視しておきたいという理由も理解できる
 市、マーケットというと聞こえは良いが、実態は闇市に近く、文字通り色々な連中がひしめいている
 その中には普通「ならず者」と呼ばれる手合いも存在するのであり、曰く付きの盗品が流れてくることもままある
 もっとも、先の事件以来「広商連」も店側への監視を厳しくしているようで、外部から付け込まれないように頑張っているらしいが

 そして、「首塚」遠慮、というのはかなり語弊のある表現だ
 外部からは信じられないかもしれないが、「団三郎」勢力圏では「首塚」、特に平将門様に対する信仰が今なお篤い

 人だろうが怪異だろうが、年配の方々は大抵、将門様を「新皇様」と崇めているし
 自分達が飯を食っていけるのは新皇様のお陰だ、そう語っていた爺様がいたことは今でも覚えている

 こういう具合なので、将門様の勢力、「首塚」の者が市を訪れたとなれば、当然の如く大騒ぎになる
 なんというか、「お殿様が下町にやって来た!」レベルのお祭り状態になるらしい

 そうなると市の管理者や「広商連」としては
 「商売の都合上、色々と差し支えが出来てしまうので、可能ならば控えて頂けると……」という感じになる
 とはいえ「首塚」からの使者ともなると、もう立派な上客であり、あからさまにそういう態度を取れるはずがない

 つまり「首塚」遠慮という表現は、管理者側の複雑な心境を吐露した程度のものだ

 ただ、「組織」もそうだが、「首塚」の者も、消耗品のお買い物程度の用事で市へ来ることはまず無いだろう
 先に話したように、商いの実態は闇市に近い。一応、伝承や都市伝説関係の物品を手広く揃えている、とはいえだ

 例えるとこんな具合だ
 「河童の秘薬」伝承が伝わる地域から、我こそが本家だと名乗る家が複数現れ、銘々が「秘薬」を作り、それを「霊薬」として売りに出す
 その中には勿論詐欺師のような連中も混じっていて、「秘薬」と称して単に片栗粉を練っただけの物を堂々と売りに出す奴もいる
 つまり、市に並ぶ品々は玉石混淆で、商品を見極める“目”というのがお客の側にも要求されるというわけだ
 中には安価な掘り出し物が存在するのかもしれないが、そんな良い話は滅多に無い

 結局、金に糸目を付けないのなら、いくら値が張っても安定した品質の物を入手できる「ゴブリンマーケット」等を利用した方が早い
 「組織」にしても「首塚」にしても、「広商連」のマーケットよりもグレードの高い所で調達するだろう
 つまりはそういうことだ

 大分長くなったが、「七尾」から逃げ出した俺と友人を拾ってくれたというのが
 「広商連」は「団三郎」勢力圏内の「七つ星団地」という所だった
 なんか霊獣の毛を編んで作った素材や、正体不明の保守サポートをやったりしているらしいが
 実はかなりお世話になったにも関わらず、「七つ星」の提供するウリというのが今でもよく分かっていない

 が、とにかくだ
 「怪奇同盟」の方とようやく挨拶できたわけだ
 やったぜ親父殿! 遂に俺はお遣いを完遂できそうだ!!



「なるほど。高奈さんから話は聞いたけど
 四月から『怪奇同盟』に接触しようとして上手くいかなかったらしいね」
「あ、はい。南区の墓地で『墓守』さんとお会いしようと頑張ってみたんですけど、全く」

 高奈先輩がどこまで話したのかは分からないが
 多分、俺が非常に恥ずかしい行為に及んだことは既に伝わっているはずだ

 とりあえず今はそのことを考えないようにしよう

「南区の『墓地』って話だけどね。脩寿君、念のため墓地の場所を聞いてもいい?」

 瑞希さんがそんなことを尋ねてきた

「ああ。あの、学校町の南東、って言えばいいでしょうか。自宅の近くの墓地なんです」
「うーん」

 あれ?
 なんかまずい答え方だったか?

「その墓地だとすると、『南区』の墓地じゃなくて『東区』の墓地だな」
「……えっ?」
「東区で一番古い墓地よね。あそこなら東の『墓守』さんの管轄の筈だけど」
「あっ、えっ?」
「早渡君の一連の奇行が原因で、遠野さんに変態と思われたかもしれないな」
「ああ、あのっ、あそこって『南区』じゃ無かったんですか……?」
「脩寿君、あそこは『東区』よ」

 ……OK
 どうやら俺は壮絶な思い違いをしていたらしい
 しかも、やはりというか俺の恥ずかしい行為についてもバッチリ把握していたようだ


 恥ずかしいッ!!
 めっちゃ恥ずかしいッッ!!
 穴があったら全力で飛び込みたい気分だ!
 顔面から火の手が上がってるんじゃないかと思うほど、熱い!


「まあ、四月に引っ越してきたんじゃ仕方ないわ。東区って広いし」
「す……すいません」

 瑞希さんのフォローに、思わず顔を覆いたくなる
 学校町の地理に関しては完全に頭に叩き込んだはずなのに
 まさか、やっちまうとは……。もう消え入りたい。全力で消え入りたい

「あの、それで……盟主様は、何か具合が悪いんでしょうか
 先程高奈先輩から『怪奇同盟』が活動休止状態だと話は聞いたんですけど」

 死にそうな声でようやく疑問を搾り出す
 べ、別に話題を逸らそうってわけじゃないんだ
 ただ、高奈先輩の話でも挙がってた盟主さんの件が引っ掛かっていたからだ

「『怪奇同盟』は無くなったわけではないんだ」

 美弥さんがそう答える

「ただ、今は少し難しい状況でね」

 言葉少なに語る美弥さんの口調に
 どことなく歯切れの悪さが混じっているのは気の所為では無いはずだ

「そうだったんですか」

 それだけしか言えない
 俺のような奴が立ち入って良い話題では無い
 心の中で美弥さんと瑞希さんに失礼を詫びて、持ってきた贈り物を持ち直す

「すいません。盟主様への贈り物です。昔、お世話になったお礼だそうです」

 美弥さんに贈り物を両手で受け渡した

「よろしくお願いします。多分、越州の秘酒です」
「分かった。こっちで預かっておくよ」
「ありがとうございます」

「盟主様ってお酒好きだっけ」
「……」

 瑞希さんの問いに、美弥さんは無言だった

 空間に静寂が訪れた
 しばしの沈黙のなかで俺は固まる
 何かを話すべきだろうか、しかし、何を?


 そこでようやく気が付いた

 室内が沈みかけた夕陽の赤で満たされていたことに

 何故か、奇妙な気分になった

 以前もこの場に居たかのような、不思議な感覚だった


「早渡君」


 美弥さんと目が合う

 最初に出会ったときのように、美弥さんは俺をじっと見詰めていた

 自分の視線が瑞希さんの方へ揺れる

 瑞希さんもまた、俺の目に眼差しを向けていた


 不思議な気分だった

 まるで、世界の時が止まったような



 美弥さんが静かに告げる


「一つ、伝えさせてくれ」


 美弥さんの言葉に、俺の心が震えていた


「この町にも様々な意思が渦巻いているし、ときに衝突したりもする」


 何故だかは分からなかった


「そんなとき、何が正しいのか分からなくなることもある」



 だが、俺は胸の奥で何か熱いものが震えるのを感じていた



「理屈ではないんだ。この町も、人も。勿論、都市伝説も、契約者も。――だから」



 俺の魂が、震えていた



「君自身が感じ取ったことを大切にしてほしいんだ」



 夜の黒と、夕の赤とが混じり合う、この時分



「この町へ来た君の歩みが、実り多いものであることを願っているよ」



 このとき、確かに
 俺は美弥さんからその言葉を受け取ったのだ













          早渡脩寿
          ようこそ、“学校町”へ





「次世代ーズ」 16 「はじまり」





☞ 「アクマの書き手 ◆MERRY/qJUk」さんの
  「ヒーローズカフェにて」へ
  本スレ Part12の>>503-506




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