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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代ーズ-17a

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17 持満




 深夜、学校町北区

 闇夜の静寂に沈んだこの地区で
 彼らは微かな灯りの中、酒を酌み交わしていた

 幸いなことにこの町には住人のいない廃屋が多い
 彼らが今夜潜伏しているこのプレハブの廃工場もそうだ
 棲み処を持たない彼らにとっては身を潜めるのに好都合だった

「まこと、長閑な町よな」

 独り言のように口にし、酒で満たされた杯を傾ける
 その者は着流しのような和服に身を包んでいるのだが
 袖から覗く腕も、時折小さく揺れる頭も、深紅の包帯に覆われている

 そればかりではない
 その者に酌する者も、その者の近くに座す者達もまた
 肌を隠すかのように紅い包帯で体中を覆っているではないか

 そして、彼の者からやや距離のある場に控える者達は
 白い包帯を体に巻き付けており、その姿は木乃伊を彷彿とさせる
 しかしその白い包帯の者達でさえ上腕には紅い包帯が一巻き結えられていた


 「朱の匪賊」

 彼らは「トンカラトン」のみで構成された都市伝説集団である
 「朱の師団」と自称する彼らは、その年の夏から学校町に潜入していた
 幾多もの有力な勢力がひしめくこの町に危険を冒してでも辿り着かねばならなかった

 全てはある目的の為に


「兄上の遺志を継ぎ、『十六夜の君』を助力せねばならない
 それこそが我々、四番隊の使命だ」


 「十六夜の君」と呼ばれる者がいた
 強力な護衛を伴っているとはいえ、彼女は複数の勢力から狙われていた

 救わねばならなかった

 斯くして「朱の匪賊」三番隊は動いた
 しかし健闘虚しく彼らは壊滅し、死に体の三番隊隊長は
 唯一生き残った部下と共に四番隊の本拠である信濃の山間へ逃げ延びた

 余命僅かという状況の中、彼は告げた

『己に代わり、「あの御方」の配下と合流し、加勢してはくれまいか』

 義兄弟の契りを交わした四番隊隊長は
 三番隊隊長の遺言を引き受けることに決めた

 だが義を誇りとする「朱の匪賊」とはいえ筋は通さねばなるまい
 本来ならば彼らの長「師団長」へと開申しなければならない一件であった

『どうか、団長には内密にしてほしい』

 それは義兄の頼みにより止められることとなった
 義弟も、死に際の懇願に対し深く問うことはしなかった

 四番隊は、唯一生き残った三番隊の者を加え
 義兄の弔いの後、「十六夜の君」の本隊を探し出すこととなった

 彼女は「狐」と呼ばれ、恐れられ、あるいは蔑まれていた
 一刻の猶予も無い、直ちにこの者達を加勢せねばならなかった

「中之条よ」

 暫しの沈黙の後、着流しの「トンカラトン」が口を開く
 彼こそがこの場に集う「匪賊」、その四番隊の長であった
 姓を「包」、名を「六郎」と謂い、この名は「師団長」より賜ったものだ

「此処へ来てひと月余りになる
 我々は未だに『十六夜の君』に会えぬままだ」

「何分、『あの御方』の敵が多い町です
 恐らく身を潜めているものかと思われます」

 頭を下げ、本心を押し隠しながら中之条は応答する
 彼が三番隊唯一の生き残りであり、四番隊の先導を担っていた

 この町、学校町へ来た理由は
 他ならぬ「あの御方」が此処に居るという情報を掴んだからだ
 そして四番隊もその後を追うように学校町へ入り込んだのである

 しかし
 肝心の「あの御方」の配下とは一向に出会えぬまま
 徒に時間だけが過ぎ行き、今はもう九月になってしまった

「大胆な御方よな、『組織』の塒に潜り込むとは」

「この町で成すべきことがあるのでしょう」

 そう、「あの御方」は一度この町へ立ち入ったと聞いている
 三年程前の話だ、そのとき「あの御方」はこの町から姿を消している

 そして今回
 「あの御方」の手勢は再びこの町に姿を現した

「早くお会いせねばなるまい」

 隊長の言葉に中之条は再び頭を下げる
 そうだ、四番隊は早く「あの御方」に会わねばならない
 彼ら四番隊は我ら三番隊とは異なり「あの御方」の「洗礼」を受けていない

 彼らに状況を訝しまれる前に、「あの御方」の下へ引き入れねば

 中之条の心中にはじっとりとした焦燥が張り付いている
 最大の不安は、自分自身が「十六夜の君」の顔を知らぬことだ
 「あの御方」と御目見えしたとき、中之条は顔を上げることが出来なかった

 恭順の欲と共に畏怖の念を感じたのだ

 この町に残る微かな気配を探っているが成果は挙がらない
 「あの御方」の配下と出会うことが出来れば良いのだが
 中之条は臍を噛む思いで現状の打開を模索していた

 とはいえ、あの御威光を忘れられる筈がない
 あの恍惚は正しく天にも昇るかのような心地だった
 嗚呼、早く「あの御方」とお会いせねば、早く四番隊を引き合わせねば

 中之条の本心を知らず、今宵彼らは酒を酌み交わす
 ところで、と隊長の近くに控えた深紅の「トンカラトン」が話題を変えた

「隊長殿、副隊長と副々隊長の件は如何致しましょう」

「構わん、放っておけ。彼奴輩も餓鬼では無い」

 大方嫁獲りでしょう、別の配下がそう呟き、つられて数体が笑う
 隊長もまた相好を崩し小さく頷いた後、杯の残りを一気に呷った


「して、皆、忘れてはならぬ」

 傍に控える者から酌を受けながら
 隊長、包六郎は先程より声を張り上げた

「この町には今、『一ツ眼の鬼灯』が居る!」

 酒宴の雰囲気が一気に引き締まる
 闇夜のもたらすよりも深い静寂が場を支配した

「己れとの勝負をあしらい続け、神聖であるべき戦場に唾する不届者よ!!」



 その者は「一ツ眼の鬼灯」と呼ばれていた
 元は人の身であったようだが「人言の物怪」と誓った挙句に「呑まれた」者だ
 彼の者が振るう力の凄まじさは、四番隊の本拠である信濃に於いても聞こえる程であった

 当然の如く四番隊隊長もまた彼に挑んだ
 そして仕掛けた手合を悉く去なされることとなった

 最後に遇ったのは、もう何年も前のことになるか
 とある寂れた町の小さな公園、奇しくも誰彼時の出来事である

 『ぬゥゥっっ!! 「一ツ眼の鬼灯」ィッ!! いざッ尋常にィ勝負ゥゥっっ!!』

 四番隊隊長、包六郎は抜刀し彼の者へ迫った

 そして四番隊の部下がその場へと駆けつけた所、既に「一ツ眼の鬼灯」の姿はなく
 そこにあったのは、公園内で生真面目にも犬の鳴き真似を続ける乱心した隊長の姿であった



「彼奴の力で味わわされた屈辱の味、決して忘れては居らぬッ!!」

 隊長の言葉尻に怒りが滲む
 そう、彼にとって今回この町を訪れたのは
 積りに積もった雪辱を果たすための意味もあるのだ

「今度こそ彼奴と雌雄を決し、その首級を挙げる――ッ!」

「「「応ッッ!!」」」


 隊長の怒号に、配下の「トンカラトン」が応じた
 四番隊隊長、包六郎はこのとき並々ならぬ怒気を放っていた



 彼らは「朱の匪賊」
 「狐」の手勢に加勢する為にやって来た、「トンカラトン」の集団である





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