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連載 - 悪意が嘲う・悪意が消えたその後に・純白の騎士-05c

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 呼吸が、苦しい
 思考に霧がかかったような感覚


 ……あぁ、また、だ
 そういえば、ゲルトラウデの姿を見かけるたびに、こんな状態になっていた気がする

 いつもは、傍に、誰かがいた
 ユニコーン以外の、誰かが

 シスター・ドリスなり、カインなり、ドリスなりがいて
 だから、この状態になっても…どうにか、持ちこたえられた

 だが
 今は、いない
 ユニコーンはいてくれるが、自分のこの状況をどうにかできる訳ではない

 ぐらぐらと、どんどん、意識が遠ざかっていく
 そんな、自分を見下して…………ゲルトラウデが、邪悪に笑ったように、見えた


「ヘンリー!」
「………っ」

 倒れそうになった体が、支えられる
 遠ざかって行っていた意識が、ゆっくりと戻ってくる

「ぁ……」
「ったく。冷静に考えりゃ、俺、あの二人と顔見知りじゃないから、あの状態で起きられたら面倒なんだっつーの………いや、あの猫が自信満々に「任せろ、説明してやる」的な顔はしてたけど、にゃーしか言えない奴に説明は無理だろ」

 ヘンリーの体を支えたのは、パスカル
 あら、とゲルトラウデが、小さく笑った

「あら、ヘンリーのお友達?………ヘンリーに、こんな可愛らしいお嬢さんのお友達がいるとは、知らなかったわ」
「……お前が知ってる、「教会」でのヘンリーにはそういう友達はいないかもしれないが、「教会」の外では、俺のような知り合いもいるんだよ」
「…あら…………ふふ、そうね、その子は「教会」の子飼い。外での行動は、私達も全ては把握していませんわ」

 パスカルの言葉に、優雅に微笑むゲルトラウデ
 だが………下っ端とはいえ、「MI6」に所属し、人の裏を見てきたパスカルだからこそ、わかる
 その下に、どす黒い感情が潜んでいる、その事実に

「……まぁ、いいわ。ヘンリー………いえ、「乙女の騎士」、良い返事を期待していますよ?」

 くすくすと微笑んで、ゲルトラウデはヘンリーとパスカルに背を向ける
 ユニコーンは、今にもその背中を角で貫こうとせんばかりに興奮しているようだったが……かろうじて、ヘンリーが手で制した
 …その、ヘンリーの手は………かすかに、震えている

 ………ゲルトラウデの姿が、完全に見えなくなって
 ふぅ、とパスカルは小さくため息をついた

「…ったく。タイミングが悪いにも程があるだろ。よりによって、エイブラハムの側近中の側近のゲルトラウデと遭遇とか……」

 パスカルが、呟き終わるよりも、前に

「……って、おい、ヘンリー!?」

 ヘンリーが、膝をついた
 呼吸が、おかしい
 顔色が悪い上に、脂汗が滲んでいる
 ユニコーンが慌てた様子を見せるが、ヘンリーは大丈夫だ、とでも言うように、軽く頭を振った
 ……明らかに、大丈夫じゃない

「あぁ、もう、過呼吸かよ!?紙袋かビニール袋………って、そんな都合よくないかっ」

 ヘンリーが買い物に使ったエコバックならあるが、中身を取り出す手間が……………

「ったく…ほら、こっち向け!」
「…ぇ……」

 ぐ、と
 顎を、掴まれた
 薄らぐ意識の中、パスカルの顔が近づいてくるのがわかり


 ………………柔らかな感触


(………あれ)

 あれ?
 あれ?あれ?………………………あれ?

「………っは…………ったく、落ち着いたか?過呼吸起こすなんて、あの女に何かトラウマでもあるのかよ」
「え………ぁ……」
「…おい、しっかりしろ、この処女厨。まだ意識がはっきりしないか?」

 ……意識は
 はっきりしてきつつ、ある
 あるの、だが
 ……だからこそ
 どうするべきか、思考が、混乱しかけ

 その、混乱しかけた、中
 ゲルトラウデの姿が、脳裏に浮かび………辛うじて、混乱から脱出した
 忌まわしい記憶が同時に引きずり出されそうになり、必死に、押しとどめる

「ぁ、いや………大したことでは、ないから………すまない。迷惑をかけて」
「…まぁ、話したくなきゃ話さなくてもいいけどよ。とりあえず、部屋に戻るぞ」

 ヘンリーが落としていたエコバックを拾うパスカル
 …ユニコーンは、いつの間にか姿を消していた

 わかっているのだろう
 自分では、ヘンリーのトラウマを、どうにもできないのだと
 むしろ………余計に、忌まわしい記憶を引きずり出しかねない
 それが、わかっているのだ

「いや、大丈夫………似ているんだ、ゲルトラウデは……俺の、母親と、姉に」
「似てる?姿がか?」
「いや、姿は全く別物だよ………………雰囲気が、似ているんだ」

 そう
 あの忌わしい、売女達と……ゲルトラウデは、よく似ていて
 だからこそ、あの時の記憶が引きずり出される

「……俺がユニコーンに殺させた、母親と姉と…………似ている言うよりも、ほぼ、同じ雰囲気なんだ」

 ………ユニコーンに、己の家族の命を奪わせた、あの、過去の記憶が




to be … ?



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