一夜、開けて
まだ、ディランは目を覚まさない
繰も、そんなディランの手を握ったまま、傍らで突っ伏している
まだ、ディランは目を覚まさない
繰も、そんなディランの手を握ったまま、傍らで突っ伏している
「…さて、と。この二人が目を覚ました時に備えて、飯くらいは作っておいてやるか」
「そうだな」
「そうだな」
ようやく、膝枕状態から解放されて立ち上がるパスカル
………途中で、正座状態からソファーに移動させてもらってよかった!!
そうじゃなければ、足が痺れていた、絶対に!!
………途中で、正座状態からソファーに移動させてもらってよかった!!
そうじゃなければ、足が痺れていた、絶対に!!
「何か、食材買ってくる。マンションの傍に24時間営業のスーパーあるしな」
「まぁ、俺達の部屋から食材持ってくりゃいいって話でもあるが…俺の部屋に戻ると呂布に捕まる恐れがあるし(説明面倒臭ぇ)、お前んとこは…」
「一人分の最低限の食材しか常備してないな。ユニコーン用の干し草と人参とキャベツなら結構あるけど」
「人参とキャベツはともかく干し草は、な…」
「まぁ、俺達の部屋から食材持ってくりゃいいって話でもあるが…俺の部屋に戻ると呂布に捕まる恐れがあるし(説明面倒臭ぇ)、お前んとこは…」
「一人分の最低限の食材しか常備してないな。ユニコーン用の干し草と人参とキャベツなら結構あるけど」
「人参とキャベツはともかく干し草は、な…」
それに
どちらかが、必ず部屋に残るべきだろう
ディランが目を覚ました時、理由を聞かなければならないし
それに、ディランの仲間だという者達が来た時の説明役も必要だ
どちらかが、必ず部屋に残るべきだろう
ディランが目を覚ました時、理由を聞かなければならないし
それに、ディランの仲間だという者達が来た時の説明役も必要だ
にゃん、とダミアが小さく鳴く
見張りは任せろ、とでも言っているのだろうか
その横では、菊花もちょこん、と大人しく座っていた
見張りは任せろ、とでも言っているのだろうか
その横では、菊花もちょこん、と大人しく座っていた
「それじゃあ、行ってくるな」
「気をつけろよ。どこに「教会」の連中がうろついてるか、わからない状況なんだからな」
「大丈夫。俺も子飼いとは言え、一応「教会」の一員だから。突然、攻撃してきたりはしないさ。ユニコーンも傍にいるしな」
「気をつけろよ。どこに「教会」の連中がうろついてるか、わからない状況なんだからな」
「大丈夫。俺も子飼いとは言え、一応「教会」の一員だから。突然、攻撃してきたりはしないさ。ユニコーンも傍にいるしな」
そう言って、部屋を出たヘンリー
ふぅ、とほっとパスカルは一息ついた
ふぅ、とほっとパスカルは一息ついた
だが、直後
嫌な予感のようなものを感じたのは、果たして、諜報員故の勘だったのだろうか?
嫌な予感のようなものを感じたのは、果たして、諜報員故の勘だったのだろうか?
マンションの近所の24時間営業のスーパーから、ある程度の食料を購入しての帰路
もう少しでマンションに着く……と、言うところだった
もう少しでマンションに着く……と、言うところだった
「あら?ヘンリー君?久しぶりね」
かけられた、声
どこか、甘ったるさが混じる声に…ヘンリーは、かすかに体を硬直させた
前方から、一人の女性が歩いてくる
カソックをまとった、清楚な雰囲気の女性
どこか、甘ったるさが混じる声に…ヘンリーは、かすかに体を硬直させた
前方から、一人の女性が歩いてくる
カソックをまとった、清楚な雰囲気の女性
……直接話した事は、ほとんどない
ただ、その姿に見覚えはあった
ただ、その姿に見覚えはあった
「………シスター・ゲルトラウデ?」
「えぇ。覚えていてくれたのね」
「えぇ。覚えていてくれたのね」
どこか、儚さすら感じさせるような、笑み
しかし……ヘンリーはその笑みに、やや、後ずさってみせた
しかし……ヘンリーはその笑みに、やや、後ずさってみせた
………鼓動が、早くなる
呼吸が、落ち着かない
呼吸が、落ち着かない
「何故、シスター・ゲルトラウデが、ここに?」
「エイブラハム司祭長が、この街に用があると仰いまして。その付き添いですわ」
「エイブラハム司祭長が、この街に用があると仰いまして。その付き添いですわ」
あぁ、そう言えば、あの男の部下だったか
そう言えば、その傍らにいる事が多かったような
そう言えば、その傍らにいる事が多かったような
「……「教会」は、学校町には不介入のはずでは?」
「あら、「教会」としての用でなければ、問題はないはずですわ………それに」
「あら、「教会」としての用でなければ、問題はないはずですわ………それに」
ゆっくり
ゲルトラウデが、近づいてくる
ゲルトラウデが、近づいてくる
「…………神の、ご意思のままに。神が望むならば、たとえどんな場所であろうとも、私達はそこに向かうべきなのですから:
………足が、動かない
ぐらり、思考を揺さぶられる
ぐらり、思考を揺さぶられる
脳がかき回されているような錯覚
記憶の奥底が、混ぜっ返されて、ひっくり返されているような…
記憶の奥底が、混ぜっ返されて、ひっくり返されているような…
刹那、ヘンリーの傍らに、ユニコーンが姿を現した
角を向け、ゲルトラウデを威嚇する
角を向け、ゲルトラウデを威嚇する
「……ッユニコーン、落ち着け……」
「あら…嫌われてしまっているのかしら」
「あら…嫌われてしまっているのかしら」
少しさみしげに笑う、ゲルトラウデ
ぐらり、ぐらり、ぐらり
記憶が、引っ掻き回される
ぐらり、ぐらり、ぐらり
記憶が、引っ掻き回される
痛い
苦しい
苦しい
普段、思い出さないようにしている記憶が引きずり出される
「…………ねぇ、ヘンリー・ギボンヌ」
穏やかで、清らかな声
だが、ヘンリーは感じ取ってしまう
その、甘ったるさを
その裏に隠されたものを
その、甘ったるさを
その裏に隠されたものを
「私達に合流して、協力する気はないかしら?」
彼女を見るたび……たとえ、今回のように接近されなくとも
遠くから見るたび、その声を聴くたびに
同じような経験をしてきた
遠くから見るたび、その声を聴くたびに
同じような経験をしてきた
記憶を穿り返される錯覚
普段、思い出さないように封じ込めている記憶を引きずり出される錯覚
普段、思い出さないように封じ込めている記憶を引きずり出される錯覚
ゲルトラウデ・オベラートと言う女を見る度に、ヘンリーはどうしても思い出してしまうのだ
自らが殺害させた、己の母と姉の姿を
その、死に際を
その、死に際を
そして、自分が彼女達に強要されようとした、行為を
その、忌まわしい記憶は
ヘンリーの精神を、確実に追い詰める
ヘンリーの精神を、確実に追い詰める
to be … ?