「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-25

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だれでも歓迎! 編集
 私は何も覚えていない
 人であった頃の記憶など、私にはない


 …ただ、その時の心だけが、残っている





                        Black Suit D





「はい……はい、そうです……非道である、と言わざるを得ません」

 …その日、寺生まれのTさんたちと別れた後
 黒服は、携帯で連絡を取っていた
 …「首塚」の、組織に
 伝えたのは、Tさんの提案した作戦と、あとは…

「はい。「組織」の一部が、「鮫島事件」を発動しようとしています………えぇ、そうです。この学校町を、そのまま巻き込むつもりのようです……私は、そちらには関わる権利を持っていません。その件に関する情報を手に入れる事ができたのが、奇跡のようなものです…」

 …「組織」の一部勢力が、「夢の国」の侵攻にあわせ、行おうとしている作戦
 その情報を手に入れる事が出来たのは、奇跡のようなものだ
 その奇跡のお陰で、自分は彼らにこうやって、注意を促す事ができる

『ふん…っ相変わらず、己らが絶対に正しいと思っておるようだのう』

 電話の相手は将門だ
 …いや、最初は日焼けマシンの青年と話していたはずだったのだが、途中で将門が、携帯を青年から取り上げて会話に割り込んできた
 正直、彼相手に話すのはプレッシャーがかかって仕方ないのだが…

「…お恥ずかしい事です」
『お前は、むしろ謙虚すぎるくらいだ。少しは我を出したらどうだ?』
「……私は、「組織」の歯車に過ぎません。自己を主張する権利は…私には、ありませんから」

 …自分は、「組織」の歯車だ
 こんな行動を取っている以上、いつ消されてもおかしくない存在
 一応…今回の、Tさんが提案してきた作戦を提出すれば、少しは相殺されるかもしれないが
 ……それでも、自分の命は、この存在は……いつだって、綱渡り状態なのだ

『くっくくくくくく!お前らしいな。昔、我が褒美をやると言った時も、そう言って辞退したなぁ?』
「…あれは、ただ、あなたのお膝元で暴れていた都市伝説を制圧しただけ……こちらの、「組織」としての仕事でしたから」

 くくくく、と将門は、楽しげに笑っている
 …そう言えば、あの時のあの都市伝説はどうなっただろうか
 正直、あれは「組織」では制御しきれないと判断し、将門に任せたのだが…
 ……今のところ、あれが再び出現したと言う情報もないから、大丈夫…なの、だろうか?
 とりあえず、将門を信じるとしよう

「……とにかく、お気をつけください。「鮫島事件」が発動したら…」
『うむ、わが同胞も、確実に消されるであろうな。それは避けたい。我らとしても…それの発動は、「夢の国」の浸食同様、阻止していくとしようではないか』

 ……その答えに、ほっとする
「首塚」がそれに警戒するならば、少しは事態が変わってくれるかもしれない

『…それにしても』
「………?」
『良いのか?我らに塩を送り続けて……お前は、「組織」の歯車であるというのならば、この行動を続ける限り、お前の命は風前の灯火ぞ?』
「…私としては…貴方たち「首塚」の組織が存在し続けることは、「組織」にとって有益であると考えます」

 ほぅ?と
 電話の向こうで、将門が興味深げな声をだす

「…「組織」は、唯一にして強大な都市伝説。これに敵対できる勢力は、長く生まれてはきませんでした………だから、「組織」は増長してしまった。私は、そう考えています」

 …そうだ
 天敵がいなかったから
 だから、「組織」は今のような状態になってしまった
 対等に渡り合える敵対勢力が存在していれば、今のような状態にはならなかっただろう
 「夢の国」に付け入られる隙とて、生まれなかったかもしれない

『…くくく、なるほど…!常に対等の敵対勢力がある事で、「組織」に緊張感を持たせるという事か』
「…………そう言う、事です」
『くくく…………くかかかかかかかかかか!!』

 何が楽しいのか、将門が高らかに笑い出す
 携帯ごしであると言うのに…ざわり、悪寒を感じた

『良いぞ…!我を利用したければ、いくらでも利用するが良い。我を恐れながらも、必要と在らば利用する………お前のその考え、気にいった!「組織」に見捨てられたならば、いつでも我元に来るがよい!お前がこちらに来るのを待っている者もいるでなぁ……くくくっ』
「…勿体無いお言葉です」

 笑っている、将門の声が続く
 と、ようやく携帯を取り返したのか、日焼けマシンの青年が、慌てて声をかけてきた

『お、おい、本当に大丈夫なのかよ、お前!?「組織」に目ぇつけられてんじゃ…』
「……問題ありません……「組織」に不良品の歯車であると認識されれば、私は消される。それだけです」

 そう、それだけ
 …ただ、それだけなのだ
 かつては人であったとしても…今の自分は、「組織」の歯車でしかない
 …それ以外では、ありえないのだから

 青年が、まだ何か言ってくるのを振り払うように
 黒服は、ぶつり、通話を切ったのだった



「おいっ!?……くそ、切られた」

 携帯を手に、不服そうな青年
 それを前に、将門は思案していた

 ……何か、引っかかる
 あの黒服は、昔、己の膝元で愚かにも暴れていたとある都市伝説を捕縛するのに、協力させた事がある
 あの時、その都市伝説を「組織」に持ち帰らず、こちらに預けてきた時から…疑問であったのだが

「……歯車、か」

 自分は組織の歯車だと
 あの黒服は、口癖のように言う

 それは、誰かに言い聞かせているというよりは……まるで、「自分自身に言い聞かせている」かのようで

 だから、将門は疑問に思う
 あの黒服は、本当に、「組織」の黒服であるだけなのか

「…調べてみる価値は、あるかもしれんな…」

 将門は、誰にも聞こえぬ声量で呟くと
 黒服を心配するように携帯を見つめ続ける青年に、視線を戻し、己の部下に優しい言葉でもかけてやるか、と考えるのだった








  ねぇ、覚えてるわ
  私たちは、貴方のことを覚えてる
  貴方が何者だったのか
  ちゃんと、全部覚えているわ

  …そして、何故、あなたがこうなってしまったのか
  それも、全部覚えてる

  だから、これは私たちの罪滅ぼし
  貴方に手を貸すのは、私たちの罪滅ぼし





                           ????????????








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