初めから、気に食わなかった
だが、だからと言って、どうこうする気も起きなかった
相手は、あまりにも大きすぎて
自分が何かしたところで、痛くもかゆくもないだろうから
だが、だからと言って、どうこうする気も起きなかった
相手は、あまりにも大きすぎて
自分が何かしたところで、痛くもかゆくもないだろうから
だが、それでも
いつかは、復讐してやりたい
自分達のような存在を生み出しておきながら虐げ、時に奴隷のようにこき使おうとする、あの連中に
いつかは、復讐してやろう
そんな願いを抱きながらも、実行には起こさなかった
復讐心がない訳ではない
だが、実行に起こすまでには至らなかった
この凍りついた心に、復讐の火が燃え上がる事はなく、燻る事にしかならなかったから
いつかは、復讐してやりたい
自分達のような存在を生み出しておきながら虐げ、時に奴隷のようにこき使おうとする、あの連中に
いつかは、復讐してやろう
そんな願いを抱きながらも、実行には起こさなかった
復讐心がない訳ではない
だが、実行に起こすまでには至らなかった
この凍りついた心に、復讐の火が燃え上がる事はなく、燻る事にしかならなかったから
ある時、周りの奴らが子供を拾ってきた
元は人間だと言う、人間を止めてこちら側に来た小さな子供
元は人間だと言う、人間を止めてこちら側に来た小さな子供
どこまでも無垢で、どこまでも無邪気で
透明だ、とそう感じた
色が、ない
幼く、好奇心の強い子供、たやすく自分達の色に染まるだろうと考えた
事実、子供はあっさりと、こちら側に馴染んでいった
子供の心は悪魔達に染め上げられていく
透明だ、とそう感じた
色が、ない
幼く、好奇心の強い子供、たやすく自分達の色に染まるだろうと考えた
事実、子供はあっさりと、こちら側に馴染んでいった
子供の心は悪魔達に染め上げられていく
興味はなかった
そんな子供はどうでも良かった
だからその輪に加わりもせず、遠巻きに見ているだけだった
馬鹿馬鹿しい、騒がしい
自分達の色に染めようとしている癖に
だが、決定的な所で染めきれず、中途半端に透明な子供
近づいてくるそれが鬱陶しくて、無視し続けた
気が向いた時は相手をしてやったが、特に面白くもなかった
ただ、あいつら相手に完全に染まりきらないそれを珍しいとは、そう思った
そんな子供はどうでも良かった
だからその輪に加わりもせず、遠巻きに見ているだけだった
馬鹿馬鹿しい、騒がしい
自分達の色に染めようとしている癖に
だが、決定的な所で染めきれず、中途半端に透明な子供
近づいてくるそれが鬱陶しくて、無視し続けた
気が向いた時は相手をしてやったが、特に面白くもなかった
ただ、あいつら相手に完全に染まりきらないそれを珍しいとは、そう思った
あれは、いつだっただろうか
透明だった子供、色がついた
残虐な、血の色に
透明だった子供、色がついた
残虐な、血の色に
あいつらがつけた色じゃない
あいつらは悪魔の癖に、あの子供を残虐な血の色に染めるのを避けていた
あいつらは悪魔の癖に、あの子供を残虐な血の色に染めるのを避けていた
すぐにわかる
連中がつけた色だろう、と
人間ではなくなった子供
人間共の噂で、言葉で、想いで、その在り方を歪められる
連中がつけた色だろう、と
人間ではなくなった子供
人間共の噂で、言葉で、想いで、その在り方を歪められる
案の定、歪めたのは連中だった
子供が、連中が虐げている者を助けてばかりいたから
子供に残虐な色を付けて、敵を増やすように仕向けた
残虐な血の色で染め上げられた子供
その癖に、まだ完全には色がついていないまま
意味もなく残虐行為をするようにはなったけれど
それでも、完璧には残酷になれないまま
子供が、連中が虐げている者を助けてばかりいたから
子供に残虐な色を付けて、敵を増やすように仕向けた
残虐な血の色で染め上げられた子供
その癖に、まだ完全には色がついていないまま
意味もなく残虐行為をするようにはなったけれど
それでも、完璧には残酷になれないまま
もし、完全に残虐な血の色に染め上げられたならば
この子供は、実の姉だと言うあの女にすら、止めを刺すだろうから
止めを刺さない間は、まだ、完全に染め上げられていない証拠だ
この子供は、実の姉だと言うあの女にすら、止めを刺すだろうから
止めを刺さない間は、まだ、完全に染め上げられていない証拠だ
「なぁ、お前、いつも一人でいるから退屈なんだろう?遊ぼう」
どこまでも、無邪気な子供
連中ですら、完全には色を付けきれなかった
……誰かが修正してやれば、残虐な血の色は抜けるだろう
だが、それは自分がやる事じゃない
やってやる義理もない
この子供の存在は、自分の心に火はつけない
凍りついた心につこうとする火は、燻り続けるだけだから
連中ですら、完全には色を付けきれなかった
……誰かが修正してやれば、残虐な血の色は抜けるだろう
だが、それは自分がやる事じゃない
やってやる義理もない
この子供の存在は、自分の心に火はつけない
凍りついた心につこうとする火は、燻り続けるだけだから
「あれ?どっか、行くのか?」
声をかけられ、小さく舌打ちした
気づかれずに行くつもりだったと言うのに
気づかれずに行くつもりだったと言うのに
「元々、ここに住んでた訳でもねぇし、どうでもいいだろ」
「でも、クロ兄、便利だからって、最近ずっとここにいただろ」
「でも、クロ兄、便利だからって、最近ずっとここにいただろ」
……その呼び方はやめろと、何度も言ったと言うのに
直せと言うのも面倒になった
凍りついた自分の心は、何事にも本気にはなれぬまま
直せと言うのも面倒になった
凍りついた自分の心は、何事にも本気にはなれぬまま
そうして、何百年も過ごした自分の心に
ほんの少しだけ、火がついた
ほんの少しだけ、火がついた
「やりたい事をやりに行くだけだ……あいつらに言いふらすなよ、面倒だから」
「やりたい事?……前に、言ってた奴か?」
「どうでもいいだろ」
「やりたい事?……前に、言ってた奴か?」
「どうでもいいだろ」
あぁ、面倒だ
背中に翼を生成する
さっさと、行ってしまおう
背中に翼を生成する
さっさと、行ってしまおう
「また、ここに来るか?」
………あぁ、やめろ、見上げるな
俺は、お前の兄なんかんじゃない
お前の家族なんかじゃない
迷惑だ、やめろ、鬱陶しい
俺は、お前の兄なんかんじゃない
お前の家族なんかじゃない
迷惑だ、やめろ、鬱陶しい
「知らねぇよ。俺は、坊や達とつるみたい訳じゃねぇんだ。お前達の事なんざ、どうでもいいんだよ」
言い切って、飛び立つ
子供は、のんきにこちらに手を振っていた
またいつか来るだろうと、のんきに考えているのだろう
子供は、のんきにこちらに手を振っていた
またいつか来るだろうと、のんきに考えているのだろう
お前達なんざ、知るか
こっちはようやく、ほんの少しこの心に火がついたのだ
それに、集中させてもらおう
こっちはようやく、ほんの少しこの心に火がついたのだ
それに、集中させてもらおう
元々、気に食わなかった
俺達を生み出しながら、蔑み虐げ、貶め続ける連中が
復讐したいとは願っていたが、本気にはなれないままだった
俺達を生み出しながら、蔑み虐げ、貶め続ける連中が
復讐したいとは願っていたが、本気にはなれないままだった
だが
ふとした拍子に、その心に火がついた
連中が気に食わない
自分一人では、敵う筈もないだろう
それでも、刃を向けてやろうと言う気になった
ふとした拍子に、その心に火がついた
連中が気に食わない
自分一人では、敵う筈もないだろう
それでも、刃を向けてやろうと言う気になった
うまく、内側に入り込んで
そこから、じわじわと浸食してやろう
連中を清貧に、尊いものであり続けさせようとする連中を、堕落させてやろう
そうして、連中を歪めてやるのだ
それが、俺の復讐
そこから、じわじわと浸食してやろう
連中を清貧に、尊いものであり続けさせようとする連中を、堕落させてやろう
そうして、連中を歪めてやるのだ
それが、俺の復讐
連中が、あの子供にしたように
俺が連中を歪めて、黒く染め上げてやろう
俺が連中を歪めて、黒く染め上げてやろう
復讐は、今のところうまくいっている
内側から、末端から
じわじわ、じわじわ、堕としめる
その在り方を歪める為に
ゆっくり、ゆっくり、じわじわと
内側から、末端から
じわじわ、じわじわ、堕としめる
その在り方を歪める為に
ゆっくり、ゆっくり、じわじわと
あの男のしている事が成功すれば、さらに連中は歪むだろう
馬鹿な連中
自ら悪魔を、敵対者を招き入れた事に、何百年も気づかぬまま
馬鹿な連中
自ら悪魔を、敵対者を招き入れた事に、何百年も気づかぬまま
このまま歪み続け、いつか滅びるがいい
連中が歪みきって、黒く染まりあがった時
俺の心は、満足するのだろうか?
それはわからない
俺の心は、満足するのだろうか?
それはわからない
生まれた時から凍りついたままの、俺の心
何をしても満足しない
何事にも夢中になれない、何事にも満足できない
冷めきった、氷の心
火がついても、常に燻る
奇跡的についた火とて、いつ消えるかわからない
何をしても満足しない
何事にも夢中になれない、何事にも満足できない
冷めきった、氷の心
火がついても、常に燻る
奇跡的についた火とて、いつ消えるかわからない
満足できるかどうか
それすらも、どうでもいい
それすらも、どうでもいい
今は、ただ
百年かけても堕落しようとしない強情張りの天使を、徹底的に堕落させる
それに、集中するだけだ
百年かけても堕落しようとしない強情張りの天使を、徹底的に堕落させる
それに、集中するだけだ
to be … ?