無数の氷の針が、セシリアに突き刺さろうと迫る
ぱっ、と、血飛沫が飛び散った……ようには、見えなかった
見えたのは、ただ、銀のきらめき
セシリアの姿は消え代わりに現れた銀の蝶の群れが、メルセデスに襲い掛かる
ぱっ、と、血飛沫が飛び散った……ようには、見えなかった
見えたのは、ただ、銀のきらめき
セシリアの姿は消え代わりに現れた銀の蝶の群れが、メルセデスに襲い掛かる
バキバキと響いた、鈍い音
接近されるよりも前に、メルセデスの周囲の空気中の水分が凍りつき、壁となってメルセデスを護った
接近が叶わなかった蝶の群れは、反撃を恐れるようにメルセデスから離れ、一か所に集まってセシリアの姿に戻る
接近されるよりも前に、メルセデスの周囲の空気中の水分が凍りつき、壁となってメルセデスを護った
接近が叶わなかった蝶の群れは、反撃を恐れるようにメルセデスから離れ、一か所に集まってセシリアの姿に戻る
………完全に、攻撃を避けきれた訳ではなかったらしい
ぽたり、流れる血
肩に突き刺さったその氷の針を、セシリアは小さな炎を生み出す事で溶かした
その様子に、メルセデスは小さく舌打ちする
ぽたり、流れる血
肩に突き刺さったその氷の針を、セシリアは小さな炎を生み出す事で溶かした
その様子に、メルセデスは小さく舌打ちする
「っち…………腐っても魔女である上に、「組織」上層部メンバーだな」
「……貴様、私に恨みでもあるのか?」
「……貴様、私に恨みでもあるのか?」
先ほどの言葉などから、考えて
何か……個人的な恨みを持たれているような、感覚
セシリアのその疑問に……メルセデスは、どこか見下したような、冷たい視線を向けてきた
何か……個人的な恨みを持たれているような、感覚
セシリアのその疑問に……メルセデスは、どこか見下したような、冷たい視線を向けてきた
「覚えてすらいないか?……それとも、気づけていないのか?」
「………?」
「まぁ、いい」
「………?」
「まぁ、いい」
ひゅうひゅうと、冷気が漂い出す
ただでさえ冷たい冬の空気が、さらに凍てつく
ただでさえ冷たい冬の空気が、さらに凍てつく
「俺の邪魔をするならば」
はらはらと振っていた、雪が
だんだん大きくなって
だんだん大きくなって
「ーーーーこのまま、死ね」
そして
突如、降り注ぐ雪が、巨大な雹へと変化した
大玉のスイカ程の大きさ
それが、一斉に降り注ぐ
突如、降り注ぐ雪が、巨大な雹へと変化した
大玉のスイカ程の大きさ
それが、一斉に降り注ぐ
「っちぃ……溶けろっ!」
セシリアが産み出した火球が、セシリアの頭上から降り注ぐ分の雹だけを狙って溶かした
体力や精神力の消耗を抑えるためにそうしたのだろう
だが
体力や精神力の消耗を抑えるためにそうしたのだろう
だが
「《カルトレーゲン》」
メルセデスの短い言葉に応じるように
溶けて液体と化したそれらが、一斉に鋭いナイフの形に変わった
再び襲いかかるそれに、セシリアは舌打ちして火球をぶつける
水と化した元ナイフは、ぱしゃりとセシリアの体を濡らすだけで終わった
溶けて液体と化したそれらが、一斉に鋭いナイフの形に変わった
再び襲いかかるそれに、セシリアは舌打ちして火球をぶつける
水と化した元ナイフは、ぱしゃりとセシリアの体を濡らすだけで終わった
「お前が、私にどんな恨みがあるのかは知らんが……「組織」上層部としてお前を拘束させてもらうぞ」
「---っは。餓鬼一人の心すら救えないお前が「組織」上層部?「組織」は随分と人材不足なんだな?」
「---っは。餓鬼一人の心すら救えないお前が「組織」上層部?「組織」は随分と人材不足なんだな?」
---ズキリ
メルセデスの言葉が、再びセシリアの心を抉る
メルセデスの言葉が、再びセシリアの心を抉る
メルセデスの言う「餓鬼」が誰の事なのか
セシリアには、わからない
ただ
彼が言い放った内容から、連想されたのは
セシリアには、わからない
ただ
彼が言い放った内容から、連想されたのは
決定的と言えるほどに仲たがいしてしまった
大切な、弟の事で
大切な、弟の事で
セシリアに罪悪感を沸かせる、その言葉を
確実に、セシリアに隙を作ってしまう
確実に、セシリアに隙を作ってしまう
「…《カルトシュナイデ》」
メルセデスの手元に生まれる刃
氷の翼をはばたかせ、メルセデスは一瞬でセシリアに接近して見せた
氷の翼をはばたかせ、メルセデスは一瞬でセシリアに接近して見せた
月明かりを反射する氷の刃が、セシリアに振り下ろされようとして
きぃん、と
響いたのは、乾いた音
響いたのは、乾いた音
「……っ!」
「っぶね」
「っぶね」
受け止めたのは、黒き大鎌
まるで、闇をそのまま切り取ったような色だ、と、セシリアはふと、悠長にそんな事を考えてしまった
まるで、闇をそのまま切り取ったような色だ、と、セシリアはふと、悠長にそんな事を考えてしまった
闇を纏い、大鎌を手にするのは、少年
…あぁ、見覚えのある少年だ
数回、顔を合わせた事がある
…あぁ、見覚えのある少年だ
数回、顔を合わせた事がある
「…黄昏 裂邪、か」
「あ、えっと確か、セシリアの姉ちゃん、だったっけ?」
「あ、えっと確か、セシリアの姉ちゃん、だったっけ?」
あぁ、向こうも、こちらを覚えていたようだ
…二度目に顔を合わせたときは、ずいぶんと無様な姿を見せてしまった覚えがある
そのうち、改めて謝罪しなければ
…二度目に顔を合わせたときは、ずいぶんと無様な姿を見せてしまった覚えがある
そのうち、改めて謝罪しなければ
「ごめんね、ローゼちゃん呼んであげたいけど、済ませたい用事あるから」
「…構わない。この程度の怪我ならば、ローゼの部下の手を煩わせるまでもないしな」
「…構わない。この程度の怪我ならば、ローゼの部下の手を煩わせるまでもないしな」
針が刺さった傷は、対して大きな傷でもない
…あの氷の刃で切り付けられるより、ずっとマシだろう
…あの氷の刃で切り付けられるより、ずっとマシだろう
「……昨日の餓鬼か」
「よぉ、かき氷野郎…昨日の借り、返しに来たぜ」
「よぉ、かき氷野郎…昨日の借り、返しに来たぜ」
す、と大鎌をメルセデスに向ける裂邪
どうやら、彼はメルセデスに個人的に因縁があるらしい
だが
どうやら、彼はメルセデスに個人的に因縁があるらしい
だが
「…君は彼に因縁があるようだが。できれば、下がった方がいい」
「え?でも…」
「あれは………正直、厄介な相手だ」
「え?でも…」
「あれは………正直、厄介な相手だ」
この少年は、確かに優れた能力を持っているようだ
だが
「相手が悪い」
セシリアは、そう感じてしまう
だが
「相手が悪い」
セシリアは、そう感じてしまう
「……借りを返す、なぁ?」
くっく、と
裂邪の言葉に、メルセデスは笑っているようだった
どこか、小ばかにしたような笑い
その笑い方に、裂邪がむっとしたのがわかる
裂邪の言葉に、メルセデスは笑っているようだった
どこか、小ばかにしたような笑い
その笑い方に、裂邪がむっとしたのがわかる
「返せるもんなら、返してみろよ!人間如きが!!」
ひゅうう!!と、また冷気が強くなった
また、雪を変化させるのか!?
セシリアは、頭上を警戒する
また、雪を変化させるのか!?
セシリアは、頭上を警戒する
ニヤリ
その挙動に、メルセデスが、笑う
その挙動に、メルセデスが、笑う
「《カルトフォーレ》」
------ぱきんっ
「っ、あ!?」
「セシリアの姉ちゃんっ!?」
「セシリアの姉ちゃんっ!?」
濡れていた、セシリアの体
それが、ぴしぴしと凍り始めた
それだけではない
ただ、彼女の体を濡らしていただけのはずの水は、瞬時に鋭いナイフと化し、内側にその刃剥ける
すなわち
無数の氷のナイフが、一瞬でセシリアの体を血塗れにした
それが、ぴしぴしと凍り始めた
それだけではない
ただ、彼女の体を濡らしていただけのはずの水は、瞬時に鋭いナイフと化し、内側にその刃剥ける
すなわち
無数の氷のナイフが、一瞬でセシリアの体を血塗れにした
「《カルトレーゲン》」
そして
鮮血が飛び散る様子を見て、メルセデスが再び呟く
鮮血が飛び散る様子を見て、メルセデスが再び呟く
セシリアの体から流された、その血が
「なっ!?」
その、全てが、鋭く小さなナイフへと変化した
それらが、一斉に裂邪に狙いを定め、飛び掛かる
それらが、一斉に裂邪に狙いを定め、飛び掛かる
大鎌を振り下ろす事で、裂邪はそれを防ぎきって見せたが
「っぶねぇ……液体なら何でも凍らせられるのかよ……ってセシリアの姉ちゃんっ!!}
「……っ問題、ない」
「……っ問題、ない」
大丈夫だ
こういう時に、備えて
こういう時に、備えて
彼を呼び出し、待機させていたのだから
きらり
どこかから飛んできた、一本の矢
…それが、セシリアの体に突き刺さった
どこかから飛んできた、一本の矢
…それが、セシリアの体に突き刺さった
え、と裂邪が驚いた、その直後
セシリアの全身の怪我が、一瞬で消え失せる
彼女に放たれたのは、癒しの力を持つ矢
彼女の使い魔の一人が放った、魔法の矢
セシリアの全身の怪我が、一瞬で消え失せる
彼女に放たれたのは、癒しの力を持つ矢
彼女の使い魔の一人が放った、魔法の矢
「レライェの治癒の矢か…面倒な」
心から面倒くさそうにつぶやいたメルセデス
…ちらり
はるか遠くの、セラフィムの群れの様子に視線をやり、どこか忌々しげに舌打ちして
…ちらり
はるか遠くの、セラフィムの群れの様子に視線をやり、どこか忌々しげに舌打ちして
……そして
その視線は、裂邪達のはるか下
空き地に積み上げられている、除雪された雪の山へと、伸びた
その視線は、裂邪達のはるか下
空き地に積み上げられている、除雪された雪の山へと、伸びた
「悪いが、お前がいくらこちらを傷つけようとも、こちらには治癒の手段がある」
「あぁ、レライェの治癒は面倒くせぇ」
「あぁ、レライェの治癒は面倒くせぇ」
だから、と
メルセデスの視線は、セシリアと裂邪に、戻った
メルセデスの視線は、セシリアと裂邪に、戻った
「さっさと片付けたほうが早いって事だよな」
ぐしゃ、と聞こえてきた音
それは、大人の背丈ほどまで積み上げられていた雪の山が、一瞬で溶けた音
そして、 溶けて産み出された液体は
メルセデスの力で、巨大な竜の形へと、代わり
それは、大人の背丈ほどまで積み上げられていた雪の山が、一瞬で溶けた音
そして、 溶けて産み出された液体は
メルセデスの力で、巨大な竜の形へと、代わり
「-----噛み砕かれろっ!!!」
水の竜は、一瞬で凍りつき、巨大な竜の氷像と化し………セシリアと裂邪の体を食いちぎるべく、その咢を向けてきた
to be … ?