「ご気分はどうですか?」
「……悪くない。大丈夫」
「……悪くない。大丈夫」
目を覚ましたクラリッサ
ひとしきり泣いて少し落ち着いたところで、彼女の様子を見に、診療所の女性が顔を出してきた
メアリーと言う名前らしいその女性から、クラリッサは自分が置かれている状況を説明された
ひとしきり泣いて少し落ち着いたところで、彼女の様子を見に、診療所の女性が顔を出してきた
メアリーと言う名前らしいその女性から、クラリッサは自分が置かれている状況を説明された
…自分をここに運んでくれたのは、あの少年だったらしい
ただ、その少年も途中で力尽きて、結局、他の人が運んでくれようだが
……どれだけ迷惑をかけてしまったのだろう、自分は
ただ、その少年も途中で力尽きて、結局、他の人が運んでくれようだが
……どれだけ迷惑をかけてしまったのだろう、自分は
「…あの人は」
「?」
「…トライレスは、無事?」
「?」
「…トライレスは、無事?」
自分は、かなり出血したはず
その血を浴びれば、彼女は助かる……はずだ
ただ、出血多量により意識を失った後、彼女がどうなったのか
それがわからないのが、クラリッサは不安だった
その血を浴びれば、彼女は助かる……はずだ
ただ、出血多量により意識を失った後、彼女がどうなったのか
それがわからないのが、クラリッサは不安だった
「えぇ、ご無事ですよ。先ほど、この診療所に戻られて…」
「……!そう」
「……!そう」
良かった
ほっとする、クラリッサ
その様子に、どこか微笑ましそうな表情を浮かべつつ、メアリーは続ける
ほっとする、クラリッサ
その様子に、どこか微笑ましそうな表情を浮かべつつ、メアリーは続ける
「それで、彼女が、あなたに話があると。本当なら、もう少し休んでからの方がいいんでしょうけど…」
「…わかった。私は……大丈夫。面会に応じる」
「…わかった。私は……大丈夫。面会に応じる」
どれだけ責められても、かまわない
それくらいの覚悟は、もうできている
それくらいの覚悟は、もうできている
…トライレスは、ちょうど、部屋の外にいたのだろうか
「あら、そう?」
クラリッサの返答が、聞こえたようで
ぎぃ、と扉が開く
ぎぃ、と扉が開く
「っあ、トライレスさん、待っ」
誰かが、それを静止しようとしたようだが、間に合わない
部屋の中に入ってきたトライレスは、バスローブを纏った姿だった
それは、いいとしよう
彼女が纏っていた服は、クラリッサが操る鳥達によってズタズタにされたのだから
……ただ
彼女が鎖で引いてきた相手
一応バスローブは纏っているものの、色々とすごいことになっている、その惨状に
それは、いいとしよう
彼女が纏っていた服は、クラリッサが操る鳥達によってズタズタにされたのだから
……ただ
彼女が鎖で引いてきた相手
一応バスローブは纏っているものの、色々とすごいことになっている、その惨状に
ふっ、と
クラリッサの意識は、遠のいた
クラリッサの意識は、遠のいた
「もう、びっくりしちゃったわ、突然気絶するなんて……やっぱり、もう少し後にした方が良かったかしら」
「そういう問題ではありません」
「そういう問題ではありません」
はぁ、とトライレスの背後でため息をつくドクター
クラリッサの意識は、シモネッタにとっては幸いな事に、さほど時間がかからずに戻った
まぁ、軽いショックで気絶しただけなので、深刻な状況ではなかったのだが
クラリッサの意識は、シモネッタにとっては幸いな事に、さほど時間がかからずに戻った
まぁ、軽いショックで気絶しただけなので、深刻な状況ではなかったのだが
「………心の準備はしたつもりだった」
「つまりは、それを上回る衝撃だった訳ね」
「…完全に予想外で想定外。私もまだまだ未熟」
「つまりは、それを上回る衝撃だった訳ね」
「…完全に予想外で想定外。私もまだまだ未熟」
永遠にそっち方面には未熟なままでいいと思う
そこまで突っ込むべきかどうか、沙々耶は真剣に悩んだ
そんな沙々耶の様子は気にせず、トライレスはころころと微笑む
そこまで突っ込むべきかどうか、沙々耶は真剣に悩んだ
そんな沙々耶の様子は気にせず、トライレスはころころと微笑む
「それじゃあ………いいかしら?お話しても」
「かまわない」
「かまわない」
微妙にシモネッタの惨状から目をそらしつつ、クラリッサは頷いた
そう、とトライレスは微笑んで…手にしていた、先がシモネッタにつながっている鎖を、軽く引いた
そう、とトライレスは微笑んで…手にしていた、先がシモネッタにつながっている鎖を、軽く引いた
「あなたは、この豚が許せるかしら?」
「…シモネッタの事?」
「…シモネッタの事?」
そうよ、と微笑むトライレス
…クラリッサは意を決して、シモネッタに視線を向ける
びくん、と、怯えたようにシモネッタは体を震わせた
…クラリッサは意を決して、シモネッタに視線を向ける
びくん、と、怯えたようにシモネッタは体を震わせた
その、様子を見て
クラリッサは俯き、考え込み
クラリッサは俯き、考え込み
「…………………わからない」
と
そう、短く答えた
そう、短く答えた
「…心の整理が、つかないかしら?」
「かも、しれない………シモネッタは私を騙していたけれど。でも、私にとっては、唯一の友人だった」
「かも、しれない………シモネッタは私を騙していたけれど。でも、私にとっては、唯一の友人だった」
ぽそぽそと、クラリッサは答える
そう、シモネッタは、ただクラリッサを騙し、利用していただけ
しかし……クラリッサは確かに、シモネッタの事を友人だと思っていた
たった一人の友人
シモネッタにとっては、それは偽りの友情だっただろう
だが、クラリッサにとっては、それは本当の友情だったのだ………真実を知らないままでいれば、だったのだが
そう、シモネッタは、ただクラリッサを騙し、利用していただけ
しかし……クラリッサは確かに、シモネッタの事を友人だと思っていた
たった一人の友人
シモネッタにとっては、それは偽りの友情だっただろう
だが、クラリッサにとっては、それは本当の友情だったのだ………真実を知らないままでいれば、だったのだが
だからこそ
たとえ、その友情が偽りのものであるとわかった後でも
クラリッサは、シモネッタの事をどう認識したらいいのか、わからないのだ
たとえ、その友情が偽りのものであるとわかった後でも
クラリッサは、シモネッタの事をどう認識したらいいのか、わからないのだ
「……シモネッタ。少し、質問に答えてほしい」
びくん!と
怯えたように、シモネッタが体をはねらせる
怯えたように、シモネッタが体をはねらせる
「…「13使徒」の中に……私のように。真実を知らされていなかった者は、いるの?」
シモネッタは、怯えたような表情を浮かべる
ちらり、とトライレスに視線を向けた
ちらり、とトライレスに視線を向けた
んー、と、トライレスは軽く考え込むような表情を浮かべて……にっこり、ほほ笑む
「仕方ないわね。「ごめんなさい」以外喋っても、いいわよ」
ただし、嘘をついたら許さない
そうとでも言う表情
……おびえた様子のまま、シモネッタは答える
そうとでも言う表情
……おびえた様子のまま、シモネッタは答える
「………いる、わ」
「そう…それは、誰?」
「……リュリュとマドレーヌ。ジョルディにニーナ……この四人は、知らされていないし知らない……はず」
「そう…それは、誰?」
「……リュリュとマドレーヌ。ジョルディにニーナ……この四人は、知らされていないし知らない……はず」
自分が知っている範囲では
そういう様子で、シモネッタは答える
……ジョルディを除けば、皆、自分より年下のメンバーばかりだ
その事実に、クラリッサの思考は暗くなる
そういう様子で、シモネッタは答える
……ジョルディを除けば、皆、自分より年下のメンバーばかりだ
その事実に、クラリッサの思考は暗くなる
「…カイザー司祭様は、知っていた、と言う事…」
どこか暗く呟いた、その言葉に
…トライレスの手元がかすかに動いたような気がした
それを察知したのか、慌ててシモネッタは続ける
…トライレスの手元がかすかに動いたような気がした
それを察知したのか、慌ててシモネッタは続ける
「あい…………カイザー司祭、は。真実を知らせないよう、脅迫されていたはず…………っ!?」
「あらあら。質問された事以外は喋っちゃ駄目じゃない」
「あらあら。質問された事以外は喋っちゃ駄目じゃない」
ぐい、と
笑顔のまま、鎖を引いたトライレス
シモネッタが、苦しげな声を漏らす
笑顔のまま、鎖を引いたトライレス
シモネッタが、苦しげな声を漏らす
「……脅迫?」
その単語に、クラリッサは反応し、顔を上げた
「…詳しく、聞かせてほしい」
「…っ私も、詳しくは知らない…………っけど、何らかの弱みを握られて……エイブラハム様やゲルトラウデ、それにメルセデスに対して……強くでる事が、できていなかったはずよ……」
「…っ私も、詳しくは知らない…………っけど、何らかの弱みを握られて……エイブラハム様やゲルトラウデ、それにメルセデスに対して……強くでる事が、できていなかったはずよ……」
軽くせき込みつつ、シモネッタはクラリッサの質問にそう答えた
……気づいていなかった
気付けていなかった
自分が尊敬し、信頼していた人が、そんな目に合っていただなんて
何故、気づけなかったのだろう
偽りの憎悪に踊らされ、自分の心と目はそこまで曇ってしまっていたのか
クラリッサは改めて、自分の愚かさを悟る
気付けていなかった
自分が尊敬し、信頼していた人が、そんな目に合っていただなんて
何故、気づけなかったのだろう
偽りの憎悪に踊らされ、自分の心と目はそこまで曇ってしまっていたのか
クラリッサは改めて、自分の愚かさを悟る
…そして
同時に、安堵する
カイザー司祭までもが、自分を騙していたのではないのだ、と
同時に、安堵する
カイザー司祭までもが、自分を騙していたのではないのだ、と
ただ唯一、その真実が
クラリッサの、ふと気を抜けば崩れそうになる心を支えたのだった
クラリッサの、ふと気を抜けば崩れそうになる心を支えたのだった
to be … ?