「そうですか。ファシルが、死にましたか」
部下の報告を受けて、エイブラハムは小さくため息をついた
まったく……異教徒に買収されようとは
何と言う、恥さらしか
まったく……異教徒に買収されようとは
何と言う、恥さらしか
「でも、さすがですよね、トライ・ミニッツ・ライトニング!ファシルの背信に気付いていたなんて!」
無邪気な声が、響く
まだ、10代半ばほどと思われる、少女だ
可愛らしい外見に似合わず、彼女もまた、「13使徒」の一人であり……高い戦闘能力を保持している
エイブラハムの、側近の一人だ
まだ、10代半ばほどと思われる、少女だ
可愛らしい外見に似合わず、彼女もまた、「13使徒」の一人であり……高い戦闘能力を保持している
エイブラハムの、側近の一人だ
「…………」
「あれれ?ゲルトラウデ、どうしたの?」
「あれれ?ゲルトラウデ、どうしたの?」
と
少女は、エイブラハムの傍らで彼の書類仕事を手伝っていた女性…ゲルトラウデの表情に、首をかしげた
線の細い、どこか、儚さすら漂わせている、ゲルトラウデ
その形のいい眉を歪ませ、思案しているようにも見える
少女は、エイブラハムの傍らで彼の書類仕事を手伝っていた女性…ゲルトラウデの表情に、首をかしげた
線の細い、どこか、儚さすら漂わせている、ゲルトラウデ
その形のいい眉を歪ませ、思案しているようにも見える
「…少々、タイミングがよすぎるように思えます」
「??どう言う事?」
「つまり、トライ・ミニッツ・ライトニングが、ファシルを見張っていた、と?」
「??どう言う事?」
「つまり、トライ・ミニッツ・ライトニングが、ファシルを見張っていた、と?」
エイブラハムの言葉に、はい、と頷くゲルトラウデ
む~、と少女は考え込み……すぐにオーバーヒートしたようで、ゲルトラウデに言う
む~、と少女は考え込み……すぐにオーバーヒートしたようで、ゲルトラウデに言う
「ゲルトラウデ、ファシル司祭長が見張られていたかどうか、予知できなかったの?」
「…無茶を言わないでください。流石に、あの方の身の回りまでは警戒していませんでしたから」
「…無茶を言わないでください。流石に、あの方の身の回りまでは警戒していませんでしたから」
ゲルトラウデの答えに、むむ~、と不満げな少女
エイブラハムが、小さく苦笑する
エイブラハムが、小さく苦笑する
「レティ、ゲルトラウデを困らせてはなりませんよ?彼女の予知能力とて、万能ではないのですから」
「…は~い」
「…は~い」
エイブラハムの言葉に、しゅん、とする少女…レティ
その仕種は、年頃の少女、そのもの
とても、その両手を血で染め上げているとは、考えられない
その仕種は、年頃の少女、そのもの
とても、その両手を血で染め上げているとは、考えられない
「どちらにせよ、フェシルが見張られていた可能性については、考慮すべきかもしれませんね」
「…トライ・ミニッツ・ライトニングの動き、警戒すべきでしょうか」
「そうですね…」
「…トライ・ミニッツ・ライトニングの動き、警戒すべきでしょうか」
「そうですね…」
ふむ、と考え込んだエイブラハム
答えを導き出すためか、ゲルトラウデに尋ねる
答えを導き出すためか、ゲルトラウデに尋ねる
「ゲルトラウデ、ファシルは、なんらかの異界で、異教徒と接触していたそうですね?」
「はい。どうやら、電脳空間内の一種……COA、でしたか。そこで接触していたそうです」
「…なるほど」
「はい。どうやら、電脳空間内の一種……COA、でしたか。そこで接触していたそうです」
「…なるほど」
にこり、と
エイブラハムが、微笑んだ
それは、温和そのものの、笑み
エイブラハムが、微笑んだ
それは、温和そのものの、笑み
しかし
その下で、どのような感情が動いているのか?
…それは、エイブラハム本人にしか、わからない事だ
その下で、どのような感情が動いているのか?
…それは、エイブラハム本人にしか、わからない事だ
「それでは……彼に、その異教徒について調べさせましょうか」
「トライ・ミニッツ・ライトニングに、ですか?」
「そうです。もし、その異教徒が見つかったならば……そのまま、始末させれば良いのです」
「トライ・ミニッツ・ライトニングに、ですか?」
「そうです。もし、その異教徒が見つかったならば……そのまま、始末させれば良いのです」
物騒な事を口にしながらも、どこまでも、笑みを浮かべ続けるエイブラハム
難しい話についていけなくなってきていたレティが、顔をあげる
難しい話についていけなくなってきていたレティが、顔をあげる
「そっか。トライ・ミニッツ・ライトニングだったら、優秀だからそこまでできるもんね!」
「えぇ…まぁ、彼が始末できなくとも。我らの同士を惑わせた悪魔など、天が罰を下すでしょうけどね」
「えぇ…まぁ、彼が始末できなくとも。我らの同士を惑わせた悪魔など、天が罰を下すでしょうけどね」
無邪気なレティの頭を、よしよし、と撫でてやっているエイブラハム
その様子はまるで親子のようにも見えた
その様子はまるで親子のようにも見えた
「試しますか、彼を」
「えぇ……本当に、我らの同士となったのか。神の試練を与えましょう」
「それをクリアできたら、本当に私達の仲間って事ですね!」
「えぇ……本当に、我らの同士となったのか。神の試練を与えましょう」
「それをクリアできたら、本当に私達の仲間って事ですね!」
そうですよ、とレティに微笑みかけながら
あの男の、真意次第では
新たな「13使徒」候補を探すべきだ、と
残酷な思考を、めぐらせるのだった
新たな「13使徒」候補を探すべきだ、と
残酷な思考を、めぐらせるのだった
「……任務了解」
エイブラハムからの指令を受け、トライ・ミニッツ・ライトニングは、それを承諾した
携帯の通話を切った後………やや間を置いて、どこかにかけなおす
携帯の通話を切った後………やや間を置いて、どこかにかけなおす
「………すまない、このような時間に…………………少々、想定外の事が起きた…………………引き続き、任務は続行する……………心配をかけて……すまない」
…再び、通話を切って
トライ・ミニッツ・ライトニングは、一瞬の閃光と共に、その場から姿を消した
トライ・ミニッツ・ライトニングは、一瞬の閃光と共に、その場から姿を消した
己が使命を果たす
ただそれだけの、単純な目的の為に
彼は己の意思を殺し、動き続ける
ただそれだけの、単純な目的の為に
彼は己の意思を殺し、動き続ける
己に待つ未来に
気づく事など、なく
気づく事など、なく
to be … ?