…ぜぇぜぇと、肩で息をする天地
倒れこみそうになる体を、気力だけで支えた
まだ、倒れれる訳にはいかない
……止めを、刺さないと
倒れこみそうになる体を、気力だけで支えた
まだ、倒れれる訳にはいかない
……止めを、刺さないと
「……か、は」
雪の上に倒れこんでいるレティ
ごぽ、とその口から、大量の血を吐き出している
ごぽ、とその口から、大量の血を吐き出している
天地の攻撃は、レティに命中した
だが、即死させるには至らなかった
あの、毒水で作られた竜を消滅させた際、その威力の大半を持って行かれたのだろう
そうでなければ、あんな小さな体、一撃で消滅させられていたはず
だが、即死させるには至らなかった
あの、毒水で作られた竜を消滅させた際、その威力の大半を持って行かれたのだろう
そうでなければ、あんな小さな体、一撃で消滅させられていたはず
……止めを、刺さなければ
あぁ、いや
それよりも、先に
あぁ、いや
それよりも、先に
「……直希っ」
友の様子を確認しようとした天地
倒れている直希は、友也に抱えあげられようとしていて…
倒れている直希は、友也に抱えあげられようとしていて…
「…まったく、君も無茶をする」
と
口元から血を流したまま、小さく苦笑して
ふらり、とよろけながら立ち上がった
口元から血を流したまま、小さく苦笑して
ふらり、とよろけながら立ち上がった
………
え?
え?
「なお、き?」
「お前、大丈夫なのか?」
「お前、大丈夫なのか?」
影守に声をかけられ、あぁ、と頷いている直希
メガネのずれを直しながら、天地を見つめてくる
メガネのずれを直しながら、天地を見つめてくる
「…相手が毒水を使うのはわかっていのだ。前もって中和剤くらいは飲んでおくさ」
「な………な」
「まぁ、相手の毒が進化したがゆえ、ノーダメージとはいかなかったがな。どちらにせよ、中和剤も苦かったし、彼女の毒水も苦かった。しばし、苦い物は御免だね」
「な………な」
「まぁ、相手の毒が進化したがゆえ、ノーダメージとはいかなかったがな。どちらにせよ、中和剤も苦かったし、彼女の毒水も苦かった。しばし、苦い物は御免だね」
何というか
それなら、前もってこっちにくらい伝えてくれればよかったものを
……いや、合流したのが、すでにレティと対面している後だったから、駄目か
それなら、前もってこっちにくらい伝えてくれればよかったものを
……いや、合流したのが、すでにレティと対面している後だったから、駄目か
安心から、体の力が抜けそうになる
ふらついた体を、消していなかった天使の一人に支えられた
ふらついた体を、消していなかった天使の一人に支えられた
その天地の様子に、直希は口元の血をぬぐって近づこうとして
……ぐら
……ぐら
「っと!?」
「…むぅ。すまない、友也」
「…むぅ。すまない、友也」
盛大に足がふらつき、倒れかけた
中和剤を飲んでいたとはいえ、進化したレティの毒の水は、直希の体にダメージを与えたらしい
それが些細なものであったとしても、体の弱い直希には影響が出てしまう
中和剤を飲んでいたとはいえ、進化したレティの毒の水は、直希の体にダメージを与えたらしい
それが些細なものであったとしても、体の弱い直希には影響が出てしまう
「あまり、無理をするな」
「……むぅ。だが、僕にはまだ、やるべき事がある故」
「……むぅ。だが、僕にはまだ、やるべき事がある故」
気遣ってきた影守に、そう答える直希
友也に支えられた状態から、自力で立とうとして…だが、うまくいっていない
友也に支えられた状態から、自力で立とうとして…だが、うまくいっていない
「ところで。その刀、貸していただけるとありがたいのだが」
「……え?」
「……え?」
つ、と
直希の視線が、影守の持つ刀に、降りて
ぽつりと、直希はそう告げた
直希の視線が、影守の持つ刀に、降りて
ぽつりと、直希はそう告げた
「…借りて、どうするつもり?」
「もちろん、彼女にとどめを刺すが」
「もちろん、彼女にとどめを刺すが」
きっぱり、希の質問に答えた直希
雪の上に倒れたままのレティ
…放っておいても、そのうち、死ぬだろう
だが、直希は、己の手で止めを刺そうとしている
…放っておいても、そのうち、死ぬだろう
だが、直希は、己の手で止めを刺そうとしている
「…もう、戦う意思はないだろう。止めを刺さなくとも…」
「死者の遺言なのでね。僕は、それを実行しなければならないのだよ。僕の手で、止めを刺さなければならない」
「死者の遺言なのでね。僕は、それを実行しなければならないのだよ。僕の手で、止めを刺さなければならない」
それに、と
影守に対し…直希は、少し暗く、笑った
影守に対し…直希は、少し暗く、笑った
「……彼女の精神は、ネフィリムらしさが強く出ている。「にがよもぎ」に飲まれたことで、それがさらに顕著になってしまっている……残念だが、彼女は存在しているだけで、人に仇なす存在と化してしまっている。ヘタに生き延びられて、被害が拡散しては困るのでね」
感情の薄い声で、淡々と告げる直希
…彼にしては珍しい、非常に冷酷な、結論
その目は、酷く冷え切っていて
……いや
冷たくなろうとして、完全にはなりきれていない、目
甘さを抱えている直希は、完全には冷酷になりきれない
…彼にしては珍しい、非常に冷酷な、結論
その目は、酷く冷え切っていて
……いや
冷たくなろうとして、完全にはなりきれていない、目
甘さを抱えている直希は、完全には冷酷になりきれない
だから、こそ
ここで、レティにとどめを刺す事で
冷酷に、なりきろうとしていて
ここで、レティにとどめを刺す事で
冷酷に、なりきろうとしていて
この直希に刀を貸す事を、影守はためらった
今、直希に刀を手渡し、直希がレティにとどめを刺したら
今、直希に刀を手渡し、直希がレティにとどめを刺したら
…直希が
もう、二度と、這い上がれない場所まで落ちてしまうような錯覚を、覚えて
もう、二度と、這い上がれない場所まで落ちてしまうような錯覚を、覚えて
「------え」
その、声に
皆の視線が、一か所に集中した
皆の視線が、一か所に集中した
胸元に穴が開いているレティ
ごほごほごと血を吐きながらも、小さく口元に笑みを浮かべている
ごほごほごと血を吐きながらも、小さく口元に笑みを浮かべている
「…死んじゃえ、死んじゃえっ!!みんなみぃんな、苦い苦ぁいお水に飲み込まれて、死んじゃえっ!!この街ぜぇんぶ、お水に飲み込まれちゃえっ!!」
ごぉおう!!と
その体が、燃え上がる
世界に降りてきた燃え盛る星のように
そして、その熱が、周囲の雪を溶かし……どす紫色の、毒水へと変えていく
その水が、さらにさらに、辺りの雪を溶かし、どんどん吸収し
再び、あの竜の形を取ろうとする
その体が、燃え上がる
世界に降りてきた燃え盛る星のように
そして、その熱が、周囲の雪を溶かし……どす紫色の、毒水へと変えていく
その水が、さらにさらに、辺りの雪を溶かし、どんどん吸収し
再び、あの竜の形を取ろうとする
「くそっ!?」
影守が、刀に手をかける
在処が、飴をレティに放とうとする
希が、バラバラキューピーのパーツを放とうとする
直希が、天使を召還し、レティに攻撃しようとする
友也が、その体を引き裂こうと飛び掛かろうとする
在処が、飴をレティに放とうとする
希が、バラバラキューピーのパーツを放とうとする
直希が、天使を召還し、レティに攻撃しようとする
友也が、その体を引き裂こうと飛び掛かろうとする
その
どれよりも、早く
どれよりも、早く
ぱぁん、と
響き渡った、乾いた音
響き渡った、乾いた音
「…………ぁ」
レティの、額に開いた、小さな穴
ぱぁん、ぱぁん、と
続けて鳴り響いた、乾いた………銃声
ぱぁん、ぱぁん、と
続けて鳴り響いた、乾いた………銃声
「………うるせぇよ」
銃は、モンスの天使が持っていた、武器の一つ
その引き金を引いたのは、モンスの天使
では………なく
モンスの天使から、半ば強引に銃を奪い取った、天地
その引き金を引いたのは、モンスの天使
では………なく
モンスの天使から、半ば強引に銃を奪い取った、天地
射撃訓練など、受けた事もない天地
それでも、その狙いは、酷く、正確に……レティに命中して
それでも、その狙いは、酷く、正確に……レティに命中して
毒の、水が
ただの液体になって、辺りに飛び散った
レティを包み込む炎が、弱まっていく
レティの命の火そのものが、弱まっていくように
ただの液体になって、辺りに飛び散った
レティを包み込む炎が、弱まっていく
レティの命の火そのものが、弱まっていくように
「ぇ……あ…………や、だ、やだ…………レティ、まだ、死にたく、ない………っ」
ごぱ、と
血を吐き続けるレティ
その顔に、はじめて、恐怖が浮かんで
血を吐き続けるレティ
その顔に、はじめて、恐怖が浮かんで
まるで
何かに、誰かに、救いを求めるように、腕が、天に向かって伸ばされる
何かに、誰かに、救いを求めるように、腕が、天に向かって伸ばされる
「や、だ……………やだやだやだやだやだっ!!まだ遊び足りない、まだ殺したりない、死にたくないっ!!!メルセデスお兄ちゃん、助け」
------ぱぁんっ!!
再び、鳴り響いた銃声は、レティの悲鳴をかき消して
レティの腕が、ぱたり、雪の上に、落ちて
レティの腕が、ぱたり、雪の上に、落ちて
その、体は
今度こそ、動かなくなった
今度こそ、動かなくなった
to be … ?