息を切らせ、彼女は走る
深夜の学校町
ただでさえ、都市伝説が活動を活発化させる危険な時間帯
…その時間に外を出歩いていただけでも不運なのだが、彼女にとってこの日はさらに不運であった
それは、この日はたまたま、エイブラハム率いる「教会」「十三使徒」が、この街で何かをしでかそうとしている最中だった、と言う事
走る彼女を、氷で作られた彫像のような悪魔達が追いかけてくる
深夜の学校町
ただでさえ、都市伝説が活動を活発化させる危険な時間帯
…その時間に外を出歩いていただけでも不運なのだが、彼女にとってこの日はさらに不運であった
それは、この日はたまたま、エイブラハム率いる「教会」「十三使徒」が、この街で何かをしでかそうとしている最中だった、と言う事
走る彼女を、氷で作られた彫像のような悪魔達が追いかけてくる
「何よ……何なのよ……っ」
彼女は、契約者ではない
かと言って、一部の人間のように「異常(アブノーマル)」とか呼ばれる力がある訳でもない
本当に、ただの一般人
物語において、名前すら語られない背景の中の一人にすぎない存在
そんな存在が、この手の異質な存在に狙われたときの末路など決まっている
かと言って、一部の人間のように「異常(アブノーマル)」とか呼ばれる力がある訳でもない
本当に、ただの一般人
物語において、名前すら語られない背景の中の一人にすぎない存在
そんな存在が、この手の異質な存在に狙われたときの末路など決まっている
-------死だ
もっとも、それは、この場面に他の人間が現れなかった場合に限る
そして、このように描写されているからには、助けの手は大抵の場合、向けられるのだ
そして、このように描写されているからには、助けの手は大抵の場合、向けられるのだ
「……っあ!?」
雪に足をとられ、彼女は転んだ
振り返ると、氷の悪魔は既に目前まで迫ってきていて
振り返ると、氷の悪魔は既に目前まで迫ってきていて
けれど
その凍れる彫像は、どこからか飛んできた衝撃波によって破壊される
その凍れる彫像は、どこからか飛んできた衝撃波によって破壊される
「ぇ……」
たんっ、と
何かが、誰かが、彼女の横を軽く跳んでいく
それは、少年だった
高校生くらいだろうか、長い前髪で目元が隠れた少年
それが、腰から刀を下げていて……っひゅん、と、それを無造作に振った
彼女に襲い掛かろうとしていた氷の悪魔達が、切り裂かれていく
何かが、誰かが、彼女の横を軽く跳んでいく
それは、少年だった
高校生くらいだろうか、長い前髪で目元が隠れた少年
それが、腰から刀を下げていて……っひゅん、と、それを無造作に振った
彼女に襲い掛かろうとしていた氷の悪魔達が、切り裂かれていく
「あの、大丈夫ですか!?」
後ろから、声をかけられた
高校生くらいだろうか、少女の声
…しかし、安否を気遣ってくるその声は、彼女の耳に届かない
高校生くらいだろうか、少女の声
…しかし、安否を気遣ってくるその声は、彼女の耳に届かない
目の前で、刀を振るい戦う少年
その、姿から、視線を、そらせない
その、姿から、視線を、そらせない
「ぁ………あ………」
切り裂かれ、破壊される氷の悪魔達
カケラが飛び散り、少年の体に細かい傷を作っている
それでも、少年は構わずに氷の悪魔を破壊し続けていた
カケラが飛び散り、少年の体に細かい傷を作っている
それでも、少年は構わずに氷の悪魔を破壊し続けていた
何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も、刀を振り続ける、その、姿は
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も、刀を振り続ける、その、姿は
まるで
鬼のようで
鬼のようで
龍一が、刀を振るい続けている
その様子を見ながら、紗江は氷の悪魔に襲われていた女性に声をかける
紗奈も、花子さんや翼と共にすぐに追いついてきた
…この女性が襲われている気配に、真っ先に気づいたのは龍一だ
彼の、独特の勘なのだろうか
紗江が契約している犬神が気づくよりも、ほんの一瞬だけ、気づくのが早かった
おかげで、こうやって助けるのに間に合ったが…
その様子を見ながら、紗江は氷の悪魔に襲われていた女性に声をかける
紗奈も、花子さんや翼と共にすぐに追いついてきた
…この女性が襲われている気配に、真っ先に気づいたのは龍一だ
彼の、独特の勘なのだろうか
紗江が契約している犬神が気づくよりも、ほんの一瞬だけ、気づくのが早かった
おかげで、こうやって助けるのに間に合ったが…
「あの……」
「……ぁ……あぁ……」
「……ぁ……あぁ……」
カタカタと、女性は震えている
女性の視線の先では、龍一が最後の一体の核を叩き壊していた
自分達の背後からも氷の悪魔達は際限なく襲い掛かってきているのだが、翼が視線で次々と溶かして行っている
紗奈のアンサーさんや紗江の犬神もいる
もはや、この場に危険は、ない
女性の視線の先では、龍一が最後の一体の核を叩き壊していた
自分達の背後からも氷の悪魔達は際限なく襲い掛かってきているのだが、翼が視線で次々と溶かして行っている
紗奈のアンサーさんや紗江の犬神もいる
もはや、この場に危険は、ない
けれど
女性は、どこまでも震え続けていて
女性は、どこまでも震え続けていて
「……怪我は?」
「あ、私たちは大丈夫。この女の人も、大丈夫だと思うけど…」
「あ、私たちは大丈夫。この女の人も、大丈夫だと思うけど…」
…ゆっくりと
龍一が、近づいてくると
っひ、と女性は悲鳴を上げた
後ずさるような動きをして倒れかける女性を、紗江は慌てて支えた
龍一が、近づいてくると
っひ、と女性は悲鳴を上げた
後ずさるような動きをして倒れかける女性を、紗江は慌てて支えた
「あ、あの……」
「………っで」
「………っで」
女性は
紗江に、気づいていない
恐らく、今、彼女の意識は、龍一だけを捕えている
振り続ける雪を払うこともせず、ずぶ濡れのままで…そして、鞘に納めた状態とはいえ、刀を持って近づいてきている、龍一だけが
紗江に、気づいていない
恐らく、今、彼女の意識は、龍一だけを捕えている
振り続ける雪を払うこともせず、ずぶ濡れのままで…そして、鞘に納めた状態とはいえ、刀を持って近づいてきている、龍一だけが
そして
恐らく、彼女の中で
先ほどまで刀を振るっていた龍一の姿が、強烈に焼き付いていて
恐らく、彼女の中で
先ほどまで刀を振るっていた龍一の姿が、強烈に焼き付いていて
「----っ来ないで、この、化け物っ!!」
女性の、悲鳴じみた声が、響き渡る
その、向けられた言葉に………一瞬だけ、龍一の動きが止まって
その、向けられた言葉に………一瞬だけ、龍一の動きが止まって
直後
その長い前髪の下で、龍一が何かを思い出して諦めたような表情を浮かべたように見えたのは
紗江の、気のせいだっただろうか?
その長い前髪の下で、龍一が何かを思い出して諦めたような表情を浮かべたように見えたのは
紗江の、気のせいだっただろうか?
to be … ?