「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-63d

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 こちらを抱きしめてきている在処を見下ろす
 …まったく、こいつは

「……そういう言葉は、気軽に言うなと言っている」

 呟くように言いながら、在処を引きはがそうとする
 …予想より、力が強い

「気軽に、じゃないです…誤魔化さないでください」
「……誤魔化してはいないが」

 引き剥がす
 わかってる
 本気だからこそ、余計に、口に出すな、とそう考える

 俺に
 誰かに愛される資格など、存在するはずがない

 かつて、護りたい者を護る事もできず、怖がらせる事しかできなかった俺が
 化け物に一歩足を踏み入れている俺が、化け物以外の存在に愛されていいはずもない

「龍一」
「…みー」

 翼さんと花子さんが、こちらに来た
 …怪我は、ないようだ
 紗江と紗奈も、怪我はないように見える
 ぬらも……まぁ、こいつには怪我はないだろう
 こいつなら、戦うよりも「相手から気づかれないように」する事を選ぶだろうし

「……俺は、何ともありません。大丈夫です」
「大丈夫じゃないじゃないですか」

 じたばた
 こちらに改めて抱きつこうとしている在処を止めつつ、翼さんを見上げる
 …心配、させてしまっている
 まだこの人にとって、こちらは加護対象でしかないのだろう
 俺の方が、年下だから、俺の方が、弱いから
 …やはり、もっと強くならなければいけない

 この場にいる、全員
 その全てを、護りきれるほどに
 もっと、もっと、力が必要だ

「………」

 ちらりと、在処を見る
 必死な様子が、伝わってくる、伝わらないはずもない

 それでも
 俺は、それに答える訳にはいかないのだろう
 「彼女」への未練を引きずっている俺が、それに答えていい訳もない

「……雨村」
「何でしょうか」
「……「化け物」、とは、人とは決して相容れないもの。たとえそれが何者であろうとも、打ち倒すべき相手。それを、「化け物」と呼ぶ」
「………?」

 突然、何を言い出すのか、と言う様子だ
 構わず、続ける

「……だから。俺が真に「化け物」になったならば、「それでも構わない」となど、口にしない方がいい。お前も「化け物」と認識されて、討伐される側に回る」
「それでも、私は構いませんが」

 ………即答か
 何故、よりによって俺なのか

 一度、在処から視線をそらす
 …この辺りの相手は、まずは倒した
 そして、北区の方向に見える、あの黒い巨大なドーム
 ……まだ、やるべきことは、ある

「翼さん、天倉達が今生活しているマンションですが。彼女達の部屋は通常、発見されないのでしたね?」
「あ?あぁ、そうだけど」

 それがどうした?と首をかしげた翼さんに
 教えていただきありがとうございます、と頭を下げてから
 今度は、ぬらと、天倉達に視線を向ける

「…ぬら。天倉達を、家まで送ってやってほしい」
「この嬢ちゃん達をか?」

 え、と
 天倉達が、きょとんとした表情をする
 出来れば、目を放したくない
 目を離した隙に、「あの時のようになったら」という考えがぬぐいきれないのも事実なら
 …だが、あの場所なら、安全だろう
 「首塚」の保護範囲に手を出す馬鹿が、そうそういるとも思えない
 それに、ぬらが送るのならば、安心だ

「ご、獄門寺君。私達、まだ、戦えるよ?」
「……俺達でも対処できる相手がどんどんいなくなって、後には対処しきれないだけの者が残ってくる。危険だ」

 紗奈の言葉に、そう答える
 あの、冷気を操るような奴程の実力の者も、まだいるのだろう
 ……危険からは、遠ざけた方がいい

「それじゃあ……獄門寺君は、どうするの?」
「…俺は」

 紗江の言葉に、答えようとすると
 俺にしっかりと抱きつく事を諦めたらしい在処が、腕に抱きついてきた
 どう振り払おうか考えつつ、まずは紗江の言葉に答える

「……あの場所。恐らくは、今回の騒動の元凶がいるだろうから……あの場所へ、行く」

 今回の騒動について、俺は詳しいことは知らない
 だが、あの巨大な漆黒のドームからは、禍々しさだけが伝わってきて…そこに、何かあるような気がする

「でも、獄門寺君だって、危ないよ…」
「みー、花子さんも一緒に行くの。だから、大丈夫なの」

 ぴ!と、花子さんが元気に答えてきた
 ぽふん、と
 俺の頭に、翼さんの手が触れる

「俺も行くさ。「首塚」としても放っておけねぇしな」

 ……翼さんなら、そういうのだろう
 口では、「首塚」を言い訳にしているが、この人ならば、そうじゃなくとも、あの場所に向かうのだろう
 …だから、余計に、俺もあそこに向かうべきなのだ

「私も」
「……ぬら、天倉達を送るついでに、在処も家に送ってやってくれ。一応は女だし
「一応!?一応って酷いですせんぱ………って、今、私の事を「雨村」じゃなくて「在処」って」

 続こうとした在処の言葉を、遮って
 え?と、首をかしげた在処の腕を、振り払った
 刀の柄に、改めて触れる
 借り物の刀で、さて、どこまでやれるか

「……頼んだ、ぬら」

 視線を、ドームへ向ける
 意識を、ドームへと向ける



 昔の未練に引きずられている場合ではない
 今は、今の騒動を収める事に、集中すべきだ



 あの時の俺の絶望など
 今回の騒動には、関係ないのだから23:41 2011/08/24








to be … ?








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