「貴人サンジェルマン、それが俺の求める不老不死の都市伝説だ。」
「へえ……、まったく知りませんね。」
「かぁっくいぃぜぇ~?」
「へえ……、まったく知りませんね。」
「かぁっくいぃぜぇ~?」
学校町を一時的に離れた俺たちは飛行機に乗っていた。
行き先はドイツ。
目的はサンジェルマン伯爵の研究室の捜索。
及び、サンジェルマン伯爵との契約、せめて遭遇。
行き先はドイツ。
目的はサンジェルマン伯爵の研究室の捜索。
及び、サンジェルマン伯爵との契約、せめて遭遇。
「なんでマスターは不老不死に憧れるんですか?」
「別に俺は死ぬことは怖くない。」
新聞を何気なく開く。
ドイツ語で「北極にて謎の全裸筋肉男!?」と見出しが書かれている。
これもまた都市伝説なんだろうが……こんな強力なのとはやりあいたくないものだ。
「ただ……、保険はかけておきたい。相手は夢の国だけじゃない。」
「まあマスターは死ねばお仕舞いですからねえ。」
「そうだよ、俺は只の人間だ。だがやるべきことがある。俺はサンジェルマンに会わねばならない。」
「ああ、そういえばマスター。ドイツに着いたらあれやりません?ハーメルン訪問。故郷が懐かしいなあ!」
「故郷に帰ったら……マルゲリータでも食うのかい?」
「イタリアじゃないんですから!」
「別に俺は死ぬことは怖くない。」
新聞を何気なく開く。
ドイツ語で「北極にて謎の全裸筋肉男!?」と見出しが書かれている。
これもまた都市伝説なんだろうが……こんな強力なのとはやりあいたくないものだ。
「ただ……、保険はかけておきたい。相手は夢の国だけじゃない。」
「まあマスターは死ねばお仕舞いですからねえ。」
「そうだよ、俺は只の人間だ。だがやるべきことがある。俺はサンジェルマンに会わねばならない。」
「ああ、そういえばマスター。ドイツに着いたらあれやりません?ハーメルン訪問。故郷が懐かしいなあ!」
「故郷に帰ったら……マルゲリータでも食うのかい?」
「イタリアじゃないんですから!」
それは俺とメルにとって久しぶりの平和な時間だった。
とある漫画を思い出す偽死亡フラグなんぞ立てなければ、
次のアナウンスが来るまでは、
それは間違いなく鉄の檻に囲われた空の上での平穏だったのだ。
とある漫画を思い出す偽死亡フラグなんぞ立てなければ、
次のアナウンスが来るまでは、
それは間違いなく鉄の檻に囲われた空の上での平穏だったのだ。
ポォン!
シートベルトのサインだ。
「当機は、太平洋上を飛行しております。」
は?太平洋?なんで?
「まもなくバミューダトライアングルの地帯に突入いたしますのでシートベルトをお閉めください。」
「それでは良い、死への航空を……。」
何事だ?
ガバリ、と席を立ち、辺りを見回すと他の乗客全員が眠っていた。
シートベルトのサインだ。
「当機は、太平洋上を飛行しております。」
は?太平洋?なんで?
「まもなくバミューダトライアングルの地帯に突入いたしますのでシートベルトをお閉めください。」
「それでは良い、死への航空を……。」
何事だ?
ガバリ、と席を立ち、辺りを見回すと他の乗客全員が眠っていた。
「くそ……新手の都市伝説か!」
「マスター!どうするんですか?」
「相手はすでに解っている!まずは操縦席に向かうぞ!」
「マスター!どうするんですか?」
「相手はすでに解っている!まずは操縦席に向かうぞ!」
俺たちは走り出した。
正体は確実にバミューダトライアングル、もしくは魔のサルガッソー海域。
内部に入った飛行機や船舶が消滅、乗組員は白骨またはミイラ化した状態で数十年後に発見される。
時間操作系のかなり大型な都市伝説。
野生のそれなのか?
組織のそれなのか?
組織はあり得ない、俺の行方も掴んでいない筈。
それに俺一人にこんな巨大な戦力を裂いている時間など……。
違う。
俺を確実に仕留めに来た、という可能性もある。
学校町の戦闘では使いようのない戦力の有効活用と考えれば有りうる話だ。
ミイラ化した死体を蹴飛ばしながらファーストクラスの広い部屋に到達した。
誰の気配も存在しない。正しく死の国、死の世界、プライヴェートスクエア、私世界。
正体は確実にバミューダトライアングル、もしくは魔のサルガッソー海域。
内部に入った飛行機や船舶が消滅、乗組員は白骨またはミイラ化した状態で数十年後に発見される。
時間操作系のかなり大型な都市伝説。
野生のそれなのか?
組織のそれなのか?
組織はあり得ない、俺の行方も掴んでいない筈。
それに俺一人にこんな巨大な戦力を裂いている時間など……。
違う。
俺を確実に仕留めに来た、という可能性もある。
学校町の戦闘では使いようのない戦力の有効活用と考えれば有りうる話だ。
ミイラ化した死体を蹴飛ばしながらファーストクラスの広い部屋に到達した。
誰の気配も存在しない。正しく死の国、死の世界、プライヴェートスクエア、私世界。
「俺の能力の中でまだ動ける……、ハーメルンの笛吹きとやらは貴様だろう?」
唐突な声。
背後から俺に問いかける男。
黒い服を着ている男。
声に人間くささを感じない。違和感。
今までの黒服とは……違う!?
迷うことなく爺さんから貰ったナイフで斬りつける。
いつもより自分の動きをゆっくりに感じる。
ナイフはいとも簡単に男の手で止められてしまう。
そもそも大の男が振り抜いたナイフを簡単に止める?馬鹿な……。
背後から俺に問いかける男。
黒い服を着ている男。
声に人間くささを感じない。違和感。
今までの黒服とは……違う!?
迷うことなく爺さんから貰ったナイフで斬りつける。
いつもより自分の動きをゆっくりに感じる。
ナイフはいとも簡単に男の手で止められてしまう。
そもそも大の男が振り抜いたナイフを簡単に止める?馬鹿な……。
そうおもって俺が思考の渦をかきまぜていると黒服がゆっくり手をあげる。
俺が先程感じた違和感。
しかし違和感の原因はこの男じゃない。
もっと根っこ、根本的な問題。
敵はバミューダトライアングル、……そうだしまった。
『この空間こそが何かおかしい』んだ!
俺が先程感じた違和感。
しかし違和感の原因はこの男じゃない。
もっと根っこ、根本的な問題。
敵はバミューダトライアングル、……そうだしまった。
『この空間こそが何かおかしい』んだ!
「バミューダ……トライアングル。」
黒服が呟く。
俺は部屋の外、ナイフを犠牲にしてできるだけ遠くへ飛び退いた。
だが、メルが邪魔になって一瞬遅れる。
「しまっ……!!」
黒服が呟く。
俺は部屋の外、ナイフを犠牲にしてできるだけ遠くへ飛び退いた。
だが、メルが邪魔になって一瞬遅れる。
「しまっ……!!」
右脚だけがファーストクラスの部屋に取り残される。
「がああああああああっぁぁあぁあああああああああああああ!!!」
俺の右脚は急速に水分を失い、ミイラのように変化していく。
俺の右脚は急速に水分を失い、ミイラのように変化していく。
「マスター!!」
俺に突き飛ばされる形で難を逃れたメルが俺と黒服の間に立ちふさがる。
立ちふさがっても駄目だ。
恐らく、奴の能力は一定空間の時間掌握。
範囲に入れば即アウト。
馬鹿野郎、すぐに離れろ!
柄にもなくそんなことを思っているが痛みで上手くしゃべれない。
俺に突き飛ばされる形で難を逃れたメルが俺と黒服の間に立ちふさがる。
立ちふさがっても駄目だ。
恐らく、奴の能力は一定空間の時間掌握。
範囲に入れば即アウト。
馬鹿野郎、すぐに離れろ!
柄にもなくそんなことを思っているが痛みで上手くしゃべれない。
「やはり……、直は強烈だな。パワーが違う。」
黒服の男は満足げにほくそ笑む。
俺が打ち捨てたナイフは男の手の中でボロボロに錆びて、砕け散ってしまっていた。
黒服の男は満足げにほくそ笑む。
俺が打ち捨てたナイフは男の手の中でボロボロに錆びて、砕け散ってしまっていた。
完全に不意を突かれた、油断していたといって良い。
だが、こちらにだって備えはある。
誘拐した子供を透明にすることが俺たちには可能だ。
さっきも数人攫ってきたばかり、相手が油断している今こそ使い時。
俺とのやりとりの間に男の背後に配置しておいた数名の子供を一気に襲いかからせてやる。
すばやく笛を取り出し、悪魔の旋律を奏でた。
だが、こちらにだって備えはある。
誘拐した子供を透明にすることが俺たちには可能だ。
さっきも数人攫ってきたばかり、相手が油断している今こそ使い時。
俺とのやりとりの間に男の背後に配置しておいた数名の子供を一気に襲いかからせてやる。
すばやく笛を取り出し、悪魔の旋律を奏でた。
黒服の隙をついて、何人かの子供が襲いかかる。
男の動きが鈍ったのを見計らって俺の拳銃の弾丸もいくらかお見舞いしてやろう。
男の動きが鈍ったのを見計らって俺の拳銃の弾丸もいくらかお見舞いしてやろう。
そう、そのつもりだった。
「子供が……、操れない?」
なんど笛を吹いても手応えがなかった。
「ハーメルンの笛吹き、能力は操作系、対象は鼠・子供。
契約者の戦闘能力も高く、一人でも規模の小さい都市伝説なら殲滅可能。
武装は組織から奪った拳銃に加えてナイフを所持。」
動揺の為に俺の動きが止まる。
「マスター……、逃げますよ!」
メルが俺を抱えて走り始める。
確かに直接戦闘には向かない都市伝説だがメルは数人分に増えて俺を運んで逃げ始めた。
子供でも数人がかりなら俺を運べるというわけである。
なんど笛を吹いても手応えがなかった。
「ハーメルンの笛吹き、能力は操作系、対象は鼠・子供。
契約者の戦闘能力も高く、一人でも規模の小さい都市伝説なら殲滅可能。
武装は組織から奪った拳銃に加えてナイフを所持。」
動揺の為に俺の動きが止まる。
「マスター……、逃げますよ!」
メルが俺を抱えて走り始める。
確かに直接戦闘には向かない都市伝説だがメルは数人分に増えて俺を運んで逃げ始めた。
子供でも数人がかりなら俺を運べるというわけである。
コツ、コツ、コツ
後ろからゆっくりと死が足音を立てて近づいてくる。
「問おう、上田明也。
操作系都市伝説ならば……操作する物が無いときはどうやって戦うのだ?」
「問おう、上田明也。
操作系都市伝説ならば……操作する物が無いときはどうやって戦うのだ?」
“大人”になった子供達はすでに廊下に倒れている。
時間を制御して俺が操れないようにした?
だとしたら……、くそ!
時間を制御して俺が操れないようにした?
だとしたら……、くそ!
足止め程度に銃撃を行う。
しかし駄目だ。
弾速が時間制御で極限にまでゆっくりになってしまう。
相手の動きは止まらない。
しかし駄目だ。
弾速が時間制御で極限にまでゆっくりになってしまう。
相手の動きは止まらない。
ついに俺たちは貨物室の前まで追い詰められる。
どうする?
こんな簡単に手詰まりなのか?
俺は此処で終わるのか?
俺は小声でメルに行動を指示する。
チャンスは一瞬。
どうする?
こんな簡単に手詰まりなのか?
俺は此処で終わるのか?
俺は小声でメルに行動を指示する。
チャンスは一瞬。
「ハーメルンの笛吹き、お前は派手にやり過ぎた。ここで死んでおけ。」
奴の能力の範囲まで近づいてくる。
「バミューダ……」
「マスターだけはやらせません!!」
メルによる玉砕覚悟での突貫。
だがこの程度で倒せるなら俺は苦労していない。
「ふん、契約者をかばう都市伝説か?珍しい物だな。」
奴の能力の範囲まで近づいてくる。
「バミューダ……」
「マスターだけはやらせません!!」
メルによる玉砕覚悟での突貫。
だがこの程度で倒せるなら俺は苦労していない。
「ふん、契約者をかばう都市伝説か?珍しい物だな。」
結論から行こう。俺はここで終わりか?
いや、違う。
銃弾を防いだということは当たればダメージがあるということ。
ダメージがあるということは俺に勝ち目はあると言うこと。
いや、違う。
銃弾を防いだということは当たればダメージがあるということ。
ダメージがあるということは俺に勝ち目はあると言うこと。
俺はメルを犠牲にして貨物室の中に逃げる振りを始めた。
賭になるがやるしかない。
貨物室の中に逃げ込めば完全に袋の鼠。
どのみちやるしかないのだ。
賭になるがやるしかない。
貨物室の中に逃げ込めば完全に袋の鼠。
どのみちやるしかないのだ。
俺は増えていたメル達に貨物室に投げ込まれながら黒服の男の腹部に銃弾を撃ち込んだ。
メルが『バミューダトライアングルの加速能力を受けるその瞬間』とタイミングを合わせて、撃ち込んだ。
「トライアングル!」
目の前でかさかさと風化していくメル達。
伝説そのものの時間が急速に加速させられている為に分身達もその影響を受けるのだろう。
時間の経過は都市伝説をも容易く風化させるのか?
だが……
目の前でかさかさと風化していくメル達。
伝説そのものの時間が急速に加速させられている為に分身達もその影響を受けるのだろう。
時間の経過は都市伝説をも容易く風化させるのか?
だが……
それと同時に『加速された時』の中を弾丸は突き進んだ。
ズギュゥゥゥゥゥウウウウウン!!
ものすごい暴風が巻き起こる。
一瞬で黒服の男は肉片に変わり機内に飛び散る。
しかしその直後、時間制御領域を抜けた弾丸は普通の速度で航空機の天井と床に幾度か跳ね返って転がった。
一瞬で黒服の男は肉片に変わり機内に飛び散る。
しかしその直後、時間制御領域を抜けた弾丸は普通の速度で航空機の天井と床に幾度か跳ね返って転がった。
「時を加速させる、時を停滞させる。
バミューダトライアングルの能力はこの二つ。
何かしらの限定条件はあるがそれはこの際無視して良いだろう。
だが、『二つの正反対な作用を同時に発動すること』はできない!」
バミューダトライアングルの能力はこの二つ。
何かしらの限定条件はあるがそれはこの際無視して良いだろう。
だが、『二つの正反対な作用を同時に発動すること』はできない!」
どんなに都市伝説を使いこなしていたとしても、相反する作用は互いにそれを打ち消し合ってしまう。
つまりあいつを倒すチャンスはあいつの技が発動する瞬間であり、
自分じゃない誰かが『加速』させられている必要があったのだ。
つまりあいつを倒すチャンスはあいつの技が発動する瞬間であり、
自分じゃない誰かが『加速』させられている必要があったのだ。
「マスター……無事、ですか?」
黒服の完全な死亡を確認してから、殆ど崩れかけた身体を引きずってメルがこちらに寄ってくる。
「ああ、……お前のおかげだよ。」
その崩れそうな身体をここに引き留めるように俺はそっと彼女を抱いた。
飛行機がコントロールを失い、徐々に落下していくのが解る。
都市伝説は突破したが……、残念だ。
もう俺に飛行機を操縦する体力はない、技術もない。
我ながらうかつな真似をしたものだ……。
先程損傷した脚から血液が流れ落ちるのが解る。
メルの身体もいよいよ手応えが薄れてきた。
自分みたいな人間が……最低限誰かに愛されて死ねるんなら……。
黒服の完全な死亡を確認してから、殆ど崩れかけた身体を引きずってメルがこちらに寄ってくる。
「ああ、……お前のおかげだよ。」
その崩れそうな身体をここに引き留めるように俺はそっと彼女を抱いた。
飛行機がコントロールを失い、徐々に落下していくのが解る。
都市伝説は突破したが……、残念だ。
もう俺に飛行機を操縦する体力はない、技術もない。
我ながらうかつな真似をしたものだ……。
先程損傷した脚から血液が流れ落ちるのが解る。
メルの身体もいよいよ手応えが薄れてきた。
自分みたいな人間が……最低限誰かに愛されて死ねるんなら……。
「悪くないよな?そうだろメル?」
「…………………………。」
返事はない。
返事が聞こえない。
予想より相手の能力が強力だったらしい。
消えるな、消えるな、消えないでくれ、お前が俺にとって最後の……。
返事が聞こえない。
予想より相手の能力が強力だったらしい。
消えるな、消えるな、消えないでくれ、お前が俺にとって最後の……。
ポタリ
まだ一部がミイラ化した俺の身体には水分が残っていたらしい、視界が霞む。
始めて知ったよ、これが悲しいってことか……。
始めて知ったよ、これが悲しいってことか……。
絶望の中、ふと顔を上げると霞んだ視界の中に白衣の老人が立っていた。
「悪くない、と言ったね。しかしまだ最良ではないようだな、少年。
お節介焼きの老人から一つプレゼントをくれてやろう。」
お節介焼きの老人から一つプレゼントをくれてやろう。」
そして朗らかに厳かに響く声。
「私の名前はサンジェルマン、君に興味を惹かれた男だよ。」
【上田明也の協奏曲Ⅶ~貴人サンジェルマンの祝福~ fin】