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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-14a

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


小太刀 ─南冲尋定─


カシマによる稽古は葬儀の翌日から既に始まっていた
まずは基礎体力作り
入念なストレッチから始まり
隣町の──以前、カシマのいた──沼へと毎日走る
そして素振りと型の稽古

「幸い、我々都市伝説は総じて疲労の回復が早い」

カシマ流では、基本的には稽古に袋竹刀を用いる
袋竹刀とは、竹刀に革製の袋を被せたもので木刀に替わるものとして使用される
重さは非常に軽く、ビニール傘程度だ
長さは定寸、袋竹刀の場合は約97cm

「そして、君の年代の筋肉は非常にしなやか且つ成長も早い」

カシマの言う通り、初日は死ぬかと思った稽古も
今では肉体も精神も受け入れ始めていた

そんな稽古が2週間ほど続いた時のことだ
黒服の男が稽古中にやって来た……既に顔馴染みとなった黒服Dではない
「む……来た様だな」
黒服は無言で、抱えていた10本ほどの小太刀(脇差)を地に置く
「ふむ……これと……これ……」
カシマは置かれた刀をを手に取り
「この辺りは中々良いな……」
鞘から抜き、軽く振るなどして吟味する
3本を選び、輪に差し出す
「この3本のうちから手に馴染むものを選ぶといい」
「うん」
カシマは輪の言葉遣いを正しはしない
それは、輪には他者を敬う心が既に育っていることを知っているからだ

輪は3本を順に手に取り、ゆっくりと型をなぞる
「鞘から抜いて、もう一度やってみたまえ」
頷き、順に型を繰り返す
「……これが一番良いと思う」
輪が選んだのは、朱塗りの鞘に黒い柄巻の一振り
「では、それで良いだろう」
「うん」
「黒服殿、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
輪もカシマに続く
用が済んだ事を理解したのか、黒服は無言で残った刀を回収し、去る


「これって良い刀なの?」
「かなりの業物だな……かしてくれ……」
輪から小太刀を受け取る
長さは、外装全長69cm・刀身は40cmといったところか
カシマの持つ軍刀の全長が96cm・刀身が63cm程であるから……刀としては短い部類だ
「……刀工は」
上着から目釘抜を取り出し、刃を固定していた目釘を外して分解する
「……南冲尋定だと?!」
銘を見て驚愕するカシマ
「どうしたの?それって凄いの?」
「いや……判らん」
「判らないって……どういうこと?」
「えっち……いや、越前国の刀工で1500年頃に作刀していたと聞いた事があるが……」
「それで?」
「噂の域を出ない話だったのでな……よもや、実在するとは思わなかったのだ」
「……そうなんだ」
「相手の女性剣士を傷つけずに衣服のみを斬り裂き、相手の戦意を奪ったという逸話がある」
「凄いね」
「……使い手の技量もさることながら、斬れ味あってのものと言えよう」
「でも、何か……エロいね」
「……むぅ……いずれにせよ、良い刀ではあるな」
「じゃあ問題ないね」
「うむ」

*



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         ,,|.        ,.ィ='__ュ、!
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      ヽ   ヽヽ      /!  `iー
    .  ヽ   ヽ \    //   |
       南冲尋定[なんちゅうえろさだ]
(越前国の刀工。生没年不詳。作刀期間1493?1526年)

*



「ところで、カシマさんの刀は良いものなの?」
「ん……まぁ程々だな……ワタシのこれは陸軍九五式軍刀という」
「それは誰が作った刀なの?」
「これは通常の日本刀とは違い、刀工による作ではなく機械打ちの工業刀だよ」
「へぇ……機械で作った刀か……何かもっと凄いものかと思ってたよ」
「そうか……だが、工業的に作られたものの中には……
 稀にだが標準的な出来を遥かに上回るものが出来ることがある」
「……なるほど……それがカシマさんの刀なんだね」
「そして、頑丈な実戦向きという点では本来の日本刀を遥かに凌ぐものだよ」
「そうなんだ」
「うむ、手入れも楽だしな……さて、稽古を再開するとしようか」
「うん」

稽古を再開する
これより先は真剣を用いての稽古だ

「軽くでいい、斬ってみたまえ」
輪は抜き身の刀を構える
刃のすぐそこには、カシマの腕
「……」
カシマは自分の腕を斬ってみろと言うが……
手が震え、刀がカタカタと音を鳴らす
「出来ないか?」
例え軽くだとしても……すぐに治る傷だとしても……
斬れば皮膚が裂け、肉が裂け、血が溢れる
「………………出来ない」
「ふむ……斬った後の事を想像したか?」
頷く
「……皮膚が裂け、肉が裂け、血が溢れるのが見えた」
「そうか……よし、いいだろう……当たり前と思うかもしれないが、その想像力はとても大事だ」
「……怖くて斬れないのに?」
「うむ……斬った結果、どうなるか……それを判った上で斬る、大事なことだ」
「判った上で……斬る」
「想像力の無い者は、簡単にヒトを斬れる……無駄な血を流す事となる」
「うん……判った」

「よし……では、もう一度だ」
「………………無理」
「焦る必要は無い……これは多くの時間をかけてもいい鍛錬だ」
「うん……そうだ……ちょっと、先に自分の指を斬ってみていい?」
「ん?……そうだな……」
しばし思案して答える
「その方がやりやすいならば……それでいい」
「うん」
深呼吸
意を決し、刃に左の親指を当て……スゥーッと引く
殆ど抵抗なく斬れる
刃を離すと皮膚が裂け、ぷっくりと血が溢れた
「……ふぅ」
息を吐く
「大丈夫か?」
「うん、平気だよ」
「では、次はワタシの腕だ」
「いや……それは、ちょっと無理」
「ははは、だろうな……血が止まるのを待って、型をなぞろうか」
「……うん、そうする」
助かったという表情の輪

カシマによる稽古は精神的な鍛錬も多い
輪にとっては、肉体的な鍛錬よりも厳しいと感じることの方が多い様だった
それは輪がその鍛錬の意味を深く理解している証でもある

*



[♪ On the load 誰も旅の途中 本当の自分自身出逢うため ♪]
携帯が鳴る
刀を鞘に収め、脇に置いていた携帯を手に取る
「サチからだ」
「ん、もうそんな時間か」
時刻は16時前、サチからの連絡は自然と稽古終了の合図となっていた
通話する
『もしもし、輪くん?』
「うん」
『夕飯は何がいい?』
「う~ん……ちょっと待って、カシマさんと相談する」
『は~い』

こんなやり取りが繰り返される日々
五月蝿かったセミの声も、涼しげな虫の音に替わり
季節は、夏を送り秋を迎え始めていた



*


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