喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
この話は、夢の国とクロスしています
夢の国編・秋祭り1日目(決意)
三人が秋祭りの会場へと足を踏み入れたのは
祭りが始まってから、だいぶ後になってのことだ
祭りが始まってから、だいぶ後になってのことだ
「占いを頼みたい」
実体化した軍装のカシマが言う
「はいはい、いいですよ」
「夢の国について……判るかね?」
「……」
「ん?……やはり、難しいのか?」
「いや……それが……」
「なんだね?」
「今日はもう何度も聞かれて、さっきも占ったばかりなんですよ」
「ふむ……」
「だから、まぁ……お代はいいですよ」
「そうか、ありがたい」
「今日は何も起こりません、侵攻は明日です」
「……そうか……明日か」
相当な決意で臨んでいるのか、カシマは大きく息を吐く
「そういうことなんで、ゆっくりと祭りを楽しんでください」
同業であるタロット占いの女性も共通の見解を示しているとのことだった
「うむ、ありがとう」
カシマは紙幣を置き去る
「あ……ちょっと!……あぁ……行っちゃったか」
実体化した軍装のカシマが言う
「はいはい、いいですよ」
「夢の国について……判るかね?」
「……」
「ん?……やはり、難しいのか?」
「いや……それが……」
「なんだね?」
「今日はもう何度も聞かれて、さっきも占ったばかりなんですよ」
「ふむ……」
「だから、まぁ……お代はいいですよ」
「そうか、ありがたい」
「今日は何も起こりません、侵攻は明日です」
「……そうか……明日か」
相当な決意で臨んでいるのか、カシマは大きく息を吐く
「そういうことなんで、ゆっくりと祭りを楽しんでください」
同業であるタロット占いの女性も共通の見解を示しているとのことだった
「うむ、ありがとう」
カシマは紙幣を置き去る
「あ……ちょっと!……あぁ……行っちゃったか」
*
仕方ない、受け取っておこう
男はそう思い、変わりに背後へと声を掛ける
「なぁ、アンサー」
「なんだ? なんだ?」
「彼らの未来が分かるか?」
「……女が死ぬ、男も死ぬ 死ぬ」
「!」
軍装の男と女子高生に少年の三人
彼らがうち二人が死ぬのか?
「彼ら三人のうちの二人ってことか?」
「……そうかもしれない違うかもしれない、判らない 判らない」
「そうか……」
現時点で分かるのはこれだけだ
未来は常に変わっていく
男には、彼らが自分の道を切り開いてくれることを願うことしか出来ない
「占うってのも辛いもんだよな……」
「それがお前にできる最善の行いなのだから仕方あるまい」
背後にスゥーッと古代ローマ人の様な格好をした男が現れ言う
「わかってるよ」
自分にやれることを全力でやればいい
男はそれを理解している
「なら、何もいうことは無いな」
「ふん、お前まるで偉そうな天使か何かみたいなこと言ってるぞ」
「私はエンジェルさんだからな」
男はそう思い、変わりに背後へと声を掛ける
「なぁ、アンサー」
「なんだ? なんだ?」
「彼らの未来が分かるか?」
「……女が死ぬ、男も死ぬ 死ぬ」
「!」
軍装の男と女子高生に少年の三人
彼らがうち二人が死ぬのか?
「彼ら三人のうちの二人ってことか?」
「……そうかもしれない違うかもしれない、判らない 判らない」
「そうか……」
現時点で分かるのはこれだけだ
未来は常に変わっていく
男には、彼らが自分の道を切り開いてくれることを願うことしか出来ない
「占うってのも辛いもんだよな……」
「それがお前にできる最善の行いなのだから仕方あるまい」
背後にスゥーッと古代ローマ人の様な格好をした男が現れ言う
「わかってるよ」
自分にやれることを全力でやればいい
男はそれを理解している
「なら、何もいうことは無いな」
「ふん、お前まるで偉そうな天使か何かみたいなこと言ってるぞ」
「私はエンジェルさんだからな」
*
「というワケだ」
カシマが戦いは明日からだと説明する
「じゃあ、今日は普通に遊びながら周辺を把握しようよ」
「そうだね、どこに何があるか把握した方が良いと思います」
「うむ、そうしよう」
「じゃあ何処から行きましょ……ぁ……」
サチの言葉が止まる
「ん?……ああ、彼か」
サチの視線を追うと、高校生の男子がいた
例の一件の彼だろう
「……」
「まだ、好きだった?」
「ぇ?……ぅ~ん……まぁ……そう言われればそうかも」
「そう……」
「でも今は……前の好きとは違うよ」
「ふ~ん……?!」
今度は輪の視線が固定されている
「どうしたの?輪くん?」
「……伝説……等身大フィギュア……」
「ぇ?……なに?」
「遠目にみても判るあのディティール……カラオケ……そうか!」
「……カラオケ大会?」
「サチ!歌は?上手い?!優勝できる?!」
「 ぇ? ぇ? え? え?」
「ダメかな?」
「……わたしは……ちょっと……」
人前で歌うなんて、見るからに向いていない
「だよね……カシマさんは?」
「……歌か……友人と良く歌ったものだ」
「よしッ!出よう!!カシマさん、優勝を狙うよ!!」
「む、そうか……優勝か……全力を尽くそう」
「そうだね、どこに何があるか把握した方が良いと思います」
「うむ、そうしよう」
「じゃあ何処から行きましょ……ぁ……」
サチの言葉が止まる
「ん?……ああ、彼か」
サチの視線を追うと、高校生の男子がいた
例の一件の彼だろう
「……」
「まだ、好きだった?」
「ぇ?……ぅ~ん……まぁ……そう言われればそうかも」
「そう……」
「でも今は……前の好きとは違うよ」
「ふ~ん……?!」
今度は輪の視線が固定されている
「どうしたの?輪くん?」
「……伝説……等身大フィギュア……」
「ぇ?……なに?」
「遠目にみても判るあのディティール……カラオケ……そうか!」
「……カラオケ大会?」
「サチ!歌は?上手い?!優勝できる?!」
「 ぇ? ぇ? え? え?」
「ダメかな?」
「……わたしは……ちょっと……」
人前で歌うなんて、見るからに向いていない
「だよね……カシマさんは?」
「……歌か……友人と良く歌ったものだ」
「よしッ!出よう!!カシマさん、優勝を狙うよ!!」
「む、そうか……優勝か……全力を尽くそう」
*
『カシマ、歌います』
『朝だ夜明けだ潮の息吹 ぐんと吸い込む銅色の 胸に若さの漲る誇り
海の男の艦隊勤務 月月火水木金金!』
海の男の艦隊勤務 月月火水木金金!』
「上手い!カシマさん、歌上手いです!でも……軍歌?」
カシマ、一部の人に大きな拍手を受けるも……予選敗退
*
『りんです、8さいです……いっしょうけんめい歌います』
「ぁ……輪くん……サバよんでる」
『ぽーにょ ぽーにょ ぽにょ さかなの子ぉ 青い海からやってきたぁ』
「でも……かわいいぃぃぃ」
予選通過
本気だ……本気で優勝を狙っている
本気だ……本気で優勝を狙っている
*
「あ、姫さん?」
「あら、輪くん」
「「優勝狙ってる?」」
「「……」」
「あら、輪くん」
「「優勝狙ってる?」」
「「……」」
お互いの動機は違えど、目指すは同じ優勝
両者の間でバチバチと火花が散る───幻視
両者の間でバチバチと火花が散る───幻視
「……そうだ、姫さん」
「何かしら?」
「例の彼とは上手く行ってるの?」
「!」
「あ……何か進展したんだ?」
「!……(メンタル攻撃?!)」
「さっき、すぐそこで彼を見たよ……歌聴いてるかもね」
「!……(何で知っているの?!)……輪くん、8才だったかしら?」
「!」
「た し か !! 10 さ い !! くらいじゃなかったかしら!!」
周りに聞こえる様な大きな声で、かつ大きなアクションをとる
「ちょ!姫さん?!」
「何かしら?」
「例の彼とは上手く行ってるの?」
「!」
「あ……何か進展したんだ?」
「!……(メンタル攻撃?!)」
「さっき、すぐそこで彼を見たよ……歌聴いてるかもね」
「!……(何で知っているの?!)……輪くん、8才だったかしら?」
「!」
「た し か !! 10 さ い !! くらいじゃなかったかしら!!」
周りに聞こえる様な大きな声で、かつ大きなアクションをとる
「ちょ!姫さん?!」
両者、一歩も引かず
「ふふふ」
「あはは」
「あはは」
*
結果、4位だか5位だかで敗退
両者引き分けとなった
両者引き分けとなった
「負けた・・・」
「ま、まぁこういうこともありますって!」
「ま、まぁこういうこともありますって!」
「ぅぅ……優勝じゃないと……意味無いのに……」
「仕方ないよ、輪くん……ね?」
「仕方ないよ、輪くん……ね?」
お互いの付添い人に慰められる二人
「牛スジカレー食べよう?ね?」
「……ハンバーグも」
「うん、そうだね……ハンバーグも買ってトッピングしてみようね」
「……うん」
「……ハンバーグも」
「うん、そうだね……ハンバーグも買ってトッピングしてみようね」
「……うん」
そんな感じで、祭りを大いに楽しんだ三人であった
カシマはそれを見て、微笑ましく思う
こんな毎日であれば、どんなに良いだろうか……そう思う
だが、彼らの胸に秘められた思いは硬い
こんな毎日であれば、どんなに良いだろうか……そう思う
だが、彼らの胸に秘められた思いは硬い
思い出す
ここへ来るまでにあった事を……
ここへ来るまでにあった事を……
*
喫茶ルーモア
「カシマさん、何でルーモアに?」
サチが首をかしげる
「いや……しばらく来ていなかったのでね」
歯切れの悪いカシマ
「今日は秋祭りなんだしさ、皆で行こうよ」
輪が提案するも
「むぅ……秋祭りか……」
黙り込むカシマを見て、二人は肩をすくめ
「カシマさんは隠し事が得意では無いんですから、諦めてください」
「そうだよ、カシマさんにそういうのは向いて無いよ」
「……仕方ない」
そう呟いて、カシマは話し始める
サチが首をかしげる
「いや……しばらく来ていなかったのでね」
歯切れの悪いカシマ
「今日は秋祭りなんだしさ、皆で行こうよ」
輪が提案するも
「むぅ……秋祭りか……」
黙り込むカシマを見て、二人は肩をすくめ
「カシマさんは隠し事が得意では無いんですから、諦めてください」
「そうだよ、カシマさんにそういうのは向いて無いよ」
「……仕方ない」
そう呟いて、カシマは話し始める
夢の国、そして組織の暗部が動くということを
しかも夢の国は秋祭りの会場を狙う可能性が高いという
しかも夢の国は秋祭りの会場を狙う可能性が高いという
だが、カシマはルーモアで待機するつもりでいる
何故ならこの喫茶店は現在、組織の管理下に置かれており
広域の指定非難場所となっている為、彼はここを守るという
何故ならこの喫茶店は現在、組織の管理下に置かれており
広域の指定非難場所となっている為、彼はここを守るという
「でも、ここは西区だよ?北区には大分距離があると思うんだけど」
輪が疑問をぶつけ
「確かに距離はある……が、ひとたび戦闘が開始されれば全域に広がってもおかしくは無い」
返された言葉は、事の重大さを明快に表していた
「そんな大規模な戦いに……それじゃあ、犠牲になる人達も……」
サチは言葉を続けることができない
言えば現実になりそうで恐ろしかったからだ
輪が疑問をぶつけ
「確かに距離はある……が、ひとたび戦闘が開始されれば全域に広がってもおかしくは無い」
返された言葉は、事の重大さを明快に表していた
「そんな大規模な戦いに……それじゃあ、犠牲になる人達も……」
サチは言葉を続けることができない
言えば現実になりそうで恐ろしかったからだ
再び沈黙
「だから、済まないが二人とも祭りには行かないで欲しい」
二人は頷きはしない
祭りには、何も知らずに楽しんでいる人々がいる
自分達には安全な場所で、ただ嵐が過ぎ去るのを待てというのか……
しかし、同時に自分達の無力さを自覚してもいる
何が出来るというのだろうか
二人は頷きはしない
祭りには、何も知らずに楽しんでいる人々がいる
自分達には安全な場所で、ただ嵐が過ぎ去るのを待てというのか……
しかし、同時に自分達の無力さを自覚してもいる
何が出来るというのだろうか
何もせずに時間だけが過ぎる
刻一刻と、募る不安
刻一刻と、募る不安
「……わたしが祭りの会場地域を案内します」
「な?!何を……サチ殿?!」
突然、意を決した様に口を開いたサチに驚く
いや、実際に意を決している
「カシマさん、さっきから……手が、刀の柄に行ったり離れたりしてる」
「!」
待てと行った当人ですら、この状況を持て余している
「そうだね……行こうよ、カシマさん」
「輪……キミまで……」
「非難してくるヒトがいるかは判らないんだし、現場の方が助けられるヒトも多いはずだよ」
「そうですよ…・・・大体、カシマさんには誰かの犠牲を待つなんて向いていません」
「何せ、カシマさんは皆の為に命を捨てちゃう様なヒトだから都市伝説になってるんだしね」
「それに、カシマさんが行かなくても二人で行っちゃいますからね」
「うん、行っちゃうね」
たたみ掛ける二人に押され、気持ちが揺らぐ
「な?!何を……サチ殿?!」
突然、意を決した様に口を開いたサチに驚く
いや、実際に意を決している
「カシマさん、さっきから……手が、刀の柄に行ったり離れたりしてる」
「!」
待てと行った当人ですら、この状況を持て余している
「そうだね……行こうよ、カシマさん」
「輪……キミまで……」
「非難してくるヒトがいるかは判らないんだし、現場の方が助けられるヒトも多いはずだよ」
「そうですよ…・・・大体、カシマさんには誰かの犠牲を待つなんて向いていません」
「何せ、カシマさんは皆の為に命を捨てちゃう様なヒトだから都市伝説になってるんだしね」
「それに、カシマさんが行かなくても二人で行っちゃいますからね」
「うん、行っちゃうね」
たたみ掛ける二人に押され、気持ちが揺らぐ
彼らが行くというなら、誰が彼らを守るというのだ
これでは行かざるを得ない
この二人は、いつもこうだ
一度決めたら梃子でも動かない、鉄の意志
これでは行かざるを得ない
この二人は、いつもこうだ
一度決めたら梃子でも動かない、鉄の意志
「……全く……どうしてそんなに……」
だが、カシマに他人のことをとやかく言う資格は無い
彼が三人の中で一番、行くことを望んでいるのだから……
彼が三人の中で一番、行くことを望んでいるのだから……
「判った…・・・行こう!」
「うん!」「はい!」
「ただし、私から離れないでくれよ?」
「「わかってます!」」
「うん!」「はい!」
「ただし、私から離れないでくれよ?」
「「わかってます!」」
*
こうして、三人は戦場へと向かうこととなる
カシマは、店を出る前にカウンターへ視線を移す
そこには黒服がいる
カシマは、店を出る前にカウンターへ視線を移す
そこには黒服がいる
だが、カシマが見ているのは別の人物
彼ならば……あのマスターならば……
待つことが出来たのだろう
だが、自分はまだ未熟だ
気持ちを……この不安を抑えることが出来ない
彼ならば……あのマスターならば……
待つことが出来たのだろう
だが、自分はまだ未熟だ
気持ちを……この不安を抑えることが出来ない
待つとはこんなにも苦しいことなのか……
初めて知る、今までに感じたことの無い質の恐怖
初めて知る、今までに感じたことの無い質の恐怖
生前に、何度か外から店の様子を伺ったことがある
サチ殿から聞いた話から考えて、他人事と片付けられる様な人物ではなかった様に思える
彼が客を……契約者達を迎える時にあんなにも穏やかであったのは
きっと、この恐怖を乗り越えたという安堵によって形作られていたのだろう
きっと、この恐怖を乗り越えたという安堵によって形作られていたのだろう
カシマは、店を出る前にカウンターへ向かい一礼する
必ず戻ってくる
二人を守り、自分の命も捨てず
必ず、ここへと戻る
二人を守り、自分の命も捨てず
必ず、ここへと戻る
三人は戦場へと向かう
全てを守り抜くという決意を胸に……
全てを守り抜くという決意を胸に……