喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
最短詠唱魔法
学校町の北に隣接する町
山荘
山荘
「桃……受け取ってきたぞ」
「もも!もも!おぃしぃれす!」
いつもの如く桃を奪い取り食べ始める
どうやら、新鮮で硬い状態の桃が一番好きな様だった
「もも……たべるれす?」
大分打ち解けた……というか餌付けに成功したらしく
最近は、桃を勧めてくれる
「いや、俺は缶詰を食べるからいい」
正直、硬い桃は苦手だ
小さい頃からの慣れとは恐ろしいもので
硬い桃が美味いことは知っていても、そう簡単には受け入れられなかった
そんなことを考えながらソファーに腰を下ろすと
桃娘は俺の方をじっと見つめてきていた
「ん?何だ?……またクソが詰まったのか?」
ふるふると首を振る
違うらしい
「ぃたぃ?……からだぃたぃ?」
俺の体のあちこちには火傷の跡が少し残っている
今日は桃を受け取るため、町に下りたのだが……
黒服の男やらコーラを持った男やらチャラチャラした男に……フルボッコにされた
まったく……あの町の都市伝説や契約者は乱暴なヤツが多い
アイツら……いつか絶対に倒す
「もも!もも!おぃしぃれす!」
いつもの如く桃を奪い取り食べ始める
どうやら、新鮮で硬い状態の桃が一番好きな様だった
「もも……たべるれす?」
大分打ち解けた……というか餌付けに成功したらしく
最近は、桃を勧めてくれる
「いや、俺は缶詰を食べるからいい」
正直、硬い桃は苦手だ
小さい頃からの慣れとは恐ろしいもので
硬い桃が美味いことは知っていても、そう簡単には受け入れられなかった
そんなことを考えながらソファーに腰を下ろすと
桃娘は俺の方をじっと見つめてきていた
「ん?何だ?……またクソが詰まったのか?」
ふるふると首を振る
違うらしい
「ぃたぃ?……からだぃたぃ?」
俺の体のあちこちには火傷の跡が少し残っている
今日は桃を受け取るため、町に下りたのだが……
黒服の男やらコーラを持った男やらチャラチャラした男に……フルボッコにされた
まったく……あの町の都市伝説や契約者は乱暴なヤツが多い
アイツら……いつか絶対に倒す
*
いつの間にか桃娘が隣に座って、懐かしいおまじないを唱えている
「ぃたぃのぃたぃの……」
「心配……してくれてるのか……」
「とんでれぇぇぇ」
「トンデレって……おまえ……」
「ぃたぃのぃたぃの……」
「心配……してくれてるのか……」
「とんでれぇぇぇ」
「トンデレって……おまえ……」
『べ、別にアンタのために太ったんじゃないんだからねッ!!』
豚の顔をしたツインテールの少女(?)が頬を染めつつ
殴りたくなる様なセリフをのたまっている
いや、別に頼んでないし……デブ専でもないから……
そんなツッコミをいれつつ妄想を閉じる
殴りたくなる様なセリフをのたまっている
いや、別に頼んでないし……デブ専でもないから……
そんなツッコミをいれつつ妄想を閉じる
「とんでれぇぇぇ」
まだ飽きずに続けている
魔法で殆どは再生させたが、治りきらなかった怪我がわずかに残っていた
こんな程度の傷は自然に治るまで待てば良い
そう思っていた
「ぃたぃのぃたぃの……とんでれぇぇぇ」
必死な顔だ
「……」
まだ飽きずに続けている
魔法で殆どは再生させたが、治りきらなかった怪我がわずかに残っていた
こんな程度の傷は自然に治るまで待てば良い
そう思っていた
「ぃたぃのぃたぃの……とんでれぇぇぇ」
必死な顔だ
「……」
俺は新しい術式を組む
ほんのわずかな詠唱で発動する魔法を……
ほんのわずかな詠唱で発動する魔法を……
「ぃたぃのぃたぃの……とんでれぇぇぇ」
「……とんでれ……」
桃娘の声に合わせて、小さく詠唱する
すると、小さな火傷がパッと消えた
火傷が消えたのに気付いたのか、桃娘の瞳が輝く
「わぁぁ……きぇたよ……ぃたぃのきぇたよ!」
嬉しそうに、きゃっきゃと笑う
「ぃたぃのぃたぃの……とんでれぇぇぇ」
「……とんでれ……」
パッと消える火傷
弾ける笑顔
「……とんでれ……」
桃娘の声に合わせて、小さく詠唱する
すると、小さな火傷がパッと消えた
火傷が消えたのに気付いたのか、桃娘の瞳が輝く
「わぁぁ……きぇたよ……ぃたぃのきぇたよ!」
嬉しそうに、きゃっきゃと笑う
「ぃたぃのぃたぃの……とんでれぇぇぇ」
「……とんでれ……」
パッと消える火傷
弾ける笑顔
そうこうしている内に、全ての怪我は消えてしまっていた
満足げに頷いている桃娘
「こぇで、だいじょぶじょぶ……もう、ぃたくなぃ」
魔法使いにでもなった気分なのだろうか……
実際には俺が魔法を使って直しているというだけの話だ
だが……俺はそのことを教える気は無い
満足げに頷いている桃娘
「こぇで、だいじょぶじょぶ……もう、ぃたくなぃ」
魔法使いにでもなった気分なのだろうか……
実際には俺が魔法を使って直しているというだけの話だ
だが……俺はそのことを教える気は無い
「……とんでれ……」
俺の組んだ術式の中で
最も短く、最も効果が弱く、最もダサい詠唱魔法
効果は肉体の再生……掌に収まる程度の傷を癒す術式
最も短く、最も効果が弱く、最もダサい詠唱魔法
効果は肉体の再生……掌に収まる程度の傷を癒す術式
こんなやり取りが繰り返される山荘での日々
山々は色づき初めている
季節は夏から手を離し、秋の只中にいた
季節は夏から手を離し、秋の只中にいた