「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-10

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とある組織の通話録1


 ―――やあ、元気だったかな?
 む、何故無反応なのか…あぁ、私が誰かって?
 私だよ私、君の担当者さ。

 今何時だと思っているのか?
 そんなことは知らないよ、私はただ電話をかけているだけだからね。
 まあ、もし君がこの電話によって睡眠でも妨害されたというのなら…ざまぁwwwとでも言わせて貰おうか……ってぬぉぅうああああ!!
 こ、コンクリートを爪で引っ掻くのは止めてくれたまえ、私はそれが大の苦手なんだ!
 …まあ、今の失言については謝罪しよう。
 流石にレディ相手にあの態度は失礼だったからね。

 さて、本題に入ろうか。
 君が私達に敗北してから早三ヶ月、今回は君の初仕事について伝達するよ。
 それでは、命令する。


 ―――『日本の学校町という地にて、現在当該地域に在住している同士と共に、人に仇為す都市伝説達を殲滅せよ』。


 ―――まあ簡単な仕事だよ、適当にぶらついて、襲ってきた都市伝説を返り討ちにすればいいだけだから。
 ああ、家をどうするのかって?
 新しい家を用意するのは無理だから、今学校町にいる同士―――まあ、これは私の息子なんだがね―――と同居してもらうことになる―――そう、かつて君が敗北した、あの少年だよ。
 ほう、嫌だ、と。
 成る程成る程、つまり働く気など無い、と。
 おやおや、まあまあ。
 いや、いいんだよ?
 それが君の意思ならば、私はそれを尊重しよう―――ただしこれまでしてきた援助の分は、利子付きでたっぷりと取り立てさせてもらうがね。
 …そうか、やる気になってくれたか。
 おじさんとっても嬉しいよ。

 まあそれでだ、チケット等はこちらで用意するから、出来るだけ早く日本へ向かって欲しい。
 何々、あいつなら大概の都市伝説は大丈夫だろうって?
 ふむ、そこまで息子のことを評価してくれるのは嬉しいが…そんなことはないよ。
 確かにあいつの能力は物理的な戦闘力ならばかなりのものだ…だが、そのかわりに実体の無いものに対しては何の力も持たない。
 それに、物理的な力という単純なものに特化しているからこそ、自らを遥かに越える力―――今回ならば数か、には対抗しづらいということもあるしね。
 うん? 今回とはなんの話だ?
 ああ言ってなかったかな。
 どうやら《夢の国》にこっぴどくやられたらしいよ。
 まあその状況を聞いたら、負けるのも仕方が無いとは思ったけれどね。


 …と、そういうことで、君の初任務、楽しい楽しいお仕事の始まりだ。
 ―――それでは、グッドラック………ってなんだね、まだ聞きたいことがあるのかね?
 ……ふむふむ、成る程。


 ―――私達の、目的が知りたい、と。


 聞いていないのかい、息子から?
 む、説明しておくようにとあれほど言ったのに…あのドジッ娘め。
 …なぜ息子なのにドジッ娘なのか、だと?
 よくぞ、よくぞ聞いてくれた!
 私の息子は、とても女装が似合うのだよ!
 まずものぐさなせいで髪が長いし、体質なのか毛が生えん!
 その上同居人達と同じ風呂を使っているから匂いも甘い感じだし、声も高く家事万能!
 ついでに化粧水なんぞを作っているせいか、肌もスベスベだ!
 更には―――むしろ私はこれこそが、凡百の女装と息子との差だと思考しているのだが―――微乳だ。
 いや、息子は小さい頃はポッチャリしていてね…痩せたときに、何故か胸の脂肪だけ残ったのだよ。
 ―――ああ、母さんとなんか離婚しても良いから女装した息子と結婚したい!
 あの甘~い声で「お父さんと結婚するー」なんて言われたい!
 ついさっき、母さんから息子に罰ゲームで女装をさせることにしたと連絡があってね…その写真が届くのが今から楽しみで楽しみで……ハァハァ。
 …ハハハ、変態変態とそう誉めてくれるな、照れるじゃあないか。

 それはそうと、私達の目的だったね。
 まあ……一言で言うとするのならば、そう―――『世界を護るため』、そのために私達は存在しているのだよ。
 む、なぜそんな嘘っぽいーだなんて言うのかね…ロマンが感じられないのかい、世界を護るだなんて?
 ふーむ…いまじド下手な詐欺師でもそんな陳腐なことは言わない、ねえ。
 しかし、全ては本当のことなのだよ。
 ……まあ、疑問を持ったままではお仕事の効率も悪くなるだろうし―――かるーく教授してやろうではないか。


 ―――まずは、だ。
 私達が戦っているものは何だね?
 そう、都市伝説だ。
 ならば、都市伝説とは何か―――詰まる所、それは単なる人の噂話にしか過ぎないのだよ。
 人のある所何処にでも現れ、そして忘れ去られて消えていく…そんな噂話にね。
―――何を以て噂話が都市伝説と成り、それが現実と為るのか、それは解らない。
 しかしそれは、確かに実現しているんだ。
 ……例えば、日本のプロ野球界にはア○ロンという選手がいる。
 この選手にはとある噂があってね…《アー○ンは空間を歪めている》というものだ。
 本来はただの偶然だったのだよ。
 少し他人より相手のエラーが多く、少し他人よりフォアボールが多かった、ただそれだけだ。
 しかしそれが今となっては都市伝説となり、実際に彼に力を貸している…。
 これは何を意味するか―――それはだね、『都市伝説は現実を上書きする』ということだよ。
 さて、そのことを頭に入れた上で聞いてくれたまえ。

 今この世にはどれだけの都市伝説と契約者がいるのか…それは分からない。
 だがその中には色々な者がいるというのは、説明するまでもないことだ。
 当然悪事を働く者もいるし、更にはそれを一般人に目撃されて何とも思わない者もいるだろう。
 ならば、こういう噂が拡がることも、無いとは言い切れないだろう?


 ―――《都市伝説は確かに現実に存在する》という、噂がね。
 そして噂は何らかの要因によって都市伝説へと変化し、実体化する―――。


 ―――ほうら、これだけ…たったこれだけのことで、世界の危機の出来上がりだ。
 …ふむ、それだけで世界が崩壊するものか、か。
 ……《南米に潜むナチスの総統》の話を知っているかい?
 この世に最も大きな混乱をもたらす都市伝説の一つだよ。
 それが何故表に出てこないのか…それは、数多くの人に認識された時、その存在は都市伝説でなく、ただの現実に成り下がるからだ。
 そしてただの現実と成り下がった都市伝説は力を失い、消えていく……。
 しかし、もし《都市伝説は確かに現実に存在する》という都市伝説が生まれ、実体化したら…そんな制約は気にすることではなくなる。


 歴史は変わり、陰謀は全て実際に起こったこと、起こることとなり、そして人智を越えた怪物達が我が物顔でのし歩く―――。
 ―――そんな世界が壊れていないと……君は本気で、そう思えるかい?

 ―――まあ、そういうことだ。
 だから、私達…『メンバー』の目的が『世界を護ること』だというのも、 あながち間違いでは無いのだよ。
 その為の手段として、人に危害を加える都市伝説や凶悪な犯罪を起こす契約者達を狩っているわけだ。
 納得してくれたかね?
 ……そうか、良かった。
 学校町に着いたら、また連絡してくれたまえ。
 ―――ではまた、いずれ。

プッ、ツー、ツー、ツー…………




電 話を切った私は独りごちる。

「―――まあそれは『メンバー』の目的であって、"私達"の目的ではないのだがね」

 そう。
 先程少女に話したことは決して嘘ではない。嘘ではないが―――同時に真実でもない。
 だが、その真実に辿り着く為のピースは与えたつもりだ。
 あの聡明な少女は、きっと辿り着くだろう。
 だが。

「…まあ、どうでもいいか」

 そう、どうでもいい。
 例え相手が何であろうと、"私達"には止まる気などないのだから。
 くくく、と口から押し殺した笑い声が漏れる。

「―――それにしても、『組織』に『首塚』、『怪奇同盟』、『機関』。更に『薔薇十字団』にかの『第三帝国』、そして我らが『メンバー』か……学校町という地は、本当に異常なまでに都市伝説を引き寄せるな」

 実際、それにフリーの者達が加われば…本当に、異常な都市伝説の密度だ。
 確かに都市伝説が集まりやすい土地というのは世界中に存在するが―――流石にここまでのものは稀だ。
 何らかの理由が存在するのだろう。
 一人の探求者としては非常に興味をそそられるのだが―――"私達"にしてみれば、何の意味も無いものだ。
 ―――"私達"は、多くの都市伝説が生まれ、そして消えて逝くのを、ただ観察できればそれで良いのだから。


「―――さあ、見せてくれ学校町。更なる戦いを、更なる死を、更なる生を! それを観てこそ、"私達"の目的は達成されるのだから!」


 ―――その叫びを聞く者は誰も居らず、ただ、薄暗い部屋の闇へと溶けていく。




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