「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-11

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秋祭り3日目~昼頃


 罪には罰。
 そんな言葉がある。
 詮の無いことだとわかってはいても、考えざるをえない。
 ―――今のこの状況は、自分への罰ではないのだろうか―――と。


「フフ、フフフフフ―――うつだ。しのう」


 ………こっちがこんなことになっているのには、一応ある理由がある。
 話は、数十分前に遡る―――。



 スーパーボール掬い屋のおっちゃんとの激闘は引き分けに終わった。
 というのも、全てのスーパーボールを掬うのには成功したのだが、それに当初提示した金額である500円のその三倍、1500円も使わされたからである。
 最終的にはおっちゃんと互いに認め合って握手を交わし、こちらは掬ったスーパーボールを、おっちゃんはお代を返すということで決着した。

「おぅ、また来いよー嬢ちゃん!」
「はい、こちらこそ喜んでー!」

 なんて言って爽やかにおっちゃんと別れ、その辺をブラブラしていた同居人たちと合流する。

「…おにいさん、遅い」
「そうですよー全く。女の子を放っておくなんて、そんなだから少年はモテないんです」
「いや、それとこれとは関係ないでしょうよトバさん…でもごめんなさい」
「…クイには?」
「ゴメンな、クイちゃん。また今度カステラ作ってあげるな」
「…また食べ物で釣ろうとしてる…」

 つぶらな瞳でじとっ、と見つめられた。…うう。

「…でも、しかたないから、許してあげる」
「…うん、ありがとうね」
「私もただでは許しませんよ? そうですね…あのお店でカレーを奢ってくれたら、許してあげないでもないです」
「はいはい、わかりましたよ」

 トバさんが指をさしたお店は、中々繁盛しているようだった。
 お店の人に強面な人が多いのが少し気になるが、そんなことはどうでもいいくらい美味しそうな匂いがする。
 三人で並んでカレーを三つ、ご飯とナンで頼んだ。
 辛さはそれぞれクイちゃんが辛口、トバさんとこっちは甘口。
 クイちゃんは辛いものは食べられるが熱いものは苦手で、逆にトバさんは熱いものは大丈夫だが辛いものは苦手で、かくいうこっちはその中間。
 熱いものも食べられなくはなく、キムチのようなエスニック系でないものは、辛くても美味しく頂ける。
 カレーのちょっぴり刺激的な香りとナンの芳ばしい香り、ほかほかご飯のなんともいえないいい匂いとが食欲をそそる中、
 代金を払ってその美味しそうな匂いの源を受け取ろうとお店のおばさん(……と言ってもいいのだろうか。綺麗な人だし)へと手を伸ばし、一瞬だけその目と目が合って―――。


 ―――そして世界は崩壊した。




 ―――以上が、少年に起こったことであります。
 現在少年は多少の精神錯乱状態となっておりますため、以降は私トバさんこと、《ジェットばあさん》がお送りしようと思います。


 カレーを受け取った後、「気付いてた、あのおばさん、絶対に気付いてた…!!」やら「あぁ終わった、もうダメだ…」やら呟き始めた少年を、クイちゃんと一緒に
「気のせいじゃないですか?」「…多分」「ちゃんとどこからどう見ても女の子ですよ、自信持ってください!」「…似合ってる」「ていうか、もしバレてても可愛いから大丈夫ですって!」「…自信を持って」
なんて言って慰めていたら、半泣きで「もうやめて…こっちの心のライフはとっくにゼロよ……」なんて言ってきました。
 ……何か悪いことでも言ったでしょうか? そんなことを考えながらお祭りの特設ベンチを見つけ、そこに少年を座らせます。
 すると、少年はベンチの上で身体を丸めて自分の世界に閉じ籠ってしまいました。
 女の子として見たら少し大きめな身体を小さくちぢこめている少年を見ていると、
なんというか…こう、体の底から何かが沸き上がってくるといいましょうか、とにかくクるものがありますが、とりあえず少年に近付きます。
 少年のうぐひぐぐすぐすという泣き声を聞いて背筋がゾクゾクとしていますが、それを隠して少年に話しかけます。

「…少年、安心して下さい」

 声に込める感情は、優しさ。
 震える少年の心を融かすかのように暖かい、そんな優しさを込めます。

「……なに、トバさん?」

 腕の間から覗く瞳には、涙がたっぷりと溜まっていました。
 それを見ていると、もっと少年をいぢめたい、という欲望が沸き上がってきますが、今は流石に自重しておくことにします。

「少年」

 紡ぎます。極上の笑みと共に、いぢめる言葉ではなく、励ましの言葉を。

「…今のその小さくちぢこまっている姿は、本物の下手な女の子よりも、女の子らしいです。自信を持って下さい。あなたはもう既に―――立派な、女の子ですよ」

 ―――完璧。
 そう言わざるをえませんね、これは。
 言葉の選択も、それを発する態度も、これ以上ないというレベルでした!
 こんな慰められ方をしたら、少年のように単純な子なんかすぐさま笑顔を輝かせることでしょう!
 そう確信しながら、少年の様子を窺います。
 すると―――。


「うっ、ううう…ふわ、うわあああぁぁん! ……ひぐ、ぐっ…うぐ、ぐすっ…」


 ―――マジ泣きに移行していらっしゃいました。
 …ってなんでですかホワイ!?
 さっきまでは八分泣きだったのに、悪化する要素なんかなかったと思うんですが!?
 そんな混乱する私をしり目に、少年に近付くクイちゃん。
 アイコンタクトで「…やりすぎ。…あとは私がやるから」と伝えられます。

 ……はあ。思春期の少年のオトコゴコロというものは、まったくもって複雑怪奇なものですね!



 ―――まあそんなこんなで、冒頭の台詞へと続くわけです。
 なぜあんな精神錯乱状態になったのかですが…クイちゃんが聞き出したところによると、
曰く、「精神を安定させるために『自分は女だ女だ女なんだ体は男だけどきっと心は乙女のはずそう自分は漢女(おとめ)なんだ』と
自己暗示をかけていたのに、あのカレー屋さんのおばさんにバレたと思ったら暗示が全て消し飛んだ」、らしいです。
 なぜバレたと思ったんですか? という質問をすると、
「目でわかった。微笑ましいものを見るような目に、ちょっぴりこうなんか憐れむような、労るような感じが混じってた」と答えてくれました。
 ……正直だいぶ被害妄想気味だと思うのですが、そこには触れないでおこうと思います。
 一応泣き止みはしたのですが、未だに暗い声で「そうだ、こっちは家畜なんだ…家畜に神はいないんだ……」なんて呟いている少年をクイちゃんと二人で見守っていると、なにやら周囲が騒がしくなってきました。
 その騒ぎの内容を聞き取ってみると、「禿マッチョ……エベレストの……ヒトガタ…」というような、断片的な情報が手に入りましたが……これでは意味不明すぎます。
 いや、なんとなくニュースで聞いた覚えもあるのですが…。

「…禿マッチョ…?」

 と、自分でも気付かない内に呟いていたようです。
 なんら意識して発した訳ではなかったそれは、しかし劇的な効果を発揮しました。
 ビクン! と跳ねるように少年の体が立ち上がります。

「っ、少年」

 どうしたんですか、と話しかけようとしたその時、視界の端に全裸で爆走してくるマッチョマンが映りました。

 ―――次の瞬間、一瞬の内にとんでもないことが起こります。

 まず、少年がその場で高速回転を始めました。
 いったいどうやったのか、能力を発動しています。
 時速80キロを叩き出すその脚力は凄まじく、その回転はまるで竜巻のよう。
 あまりの速さにアスファルトからは火花が飛び散り、そこから焦げ臭い匂いすらします。
 マッチョは「そんなもの気にするに値せぬ」とばかりに突っ込んできました。
 対する少年は―――女装しているからでしょう―――超高音の大気を高速振動させそうな叫び声と共に、
大地よ揺らげといわんばかりに全力で踏み込むと、その手に整地用ローラーを生み出し、その全ての速度と遠心力をもってそのマッチョに叩きつけました。

 ガイン! という硬いもの同士がぶつかるような轟音が大気を揺らし―――アッパースイング気味に振られたローラーに打ち上げられたそのマッチョは、街の何処かへと飛んでいきました。



 ―――とんでもなく心臓に悪いショック療法だ。
 そうこっちは思う。
 暗示が破れたことで精神がどん底まで落ち込んでいたのが、トバさんの「…禿マッチョ…?」という呟きによって、即座に覚醒させられた。
 思い出されたのは昨日の夕方、後を追ってきたマ神の姿。
 咄嗟に飛び上がり辺りを見回すと、昨日と同じ、全裸でハゲたマッチョな魔物―――いや、むしろどことなくパワーアップしているような気すらする―――が、こちらに突撃してくるのが見えた。
 ……そこから先はよく覚えていない。
 できたばかりのトラウマを刺激されてパニックに陥り、気付いたときには、グシャグシャになった整地用ローラーを手に持って棒立ちになっていた。
 トバさんたちに話を聞くと、こっちはどうやら火事場の馬鹿力であのマ神をホームランしたらしい。
 普通の鉄よりも丈夫なはずなローラーが巨人の手で丸められたかのようにねじ曲がっているのも含めて、
とても信じられないような話なのだが―――クイちゃんまでがそう言い張るということは、本当のようだ。
 身体に意識を向けると全身がだるく、特に左腕には上手く力が入らない。
 だがそんな身体の不調をしり目に、心はとてもスッキリとしていた。
 マッチョをホームランしたことが、図らずも溜まったストレスを少なからず発散させたようである。

「んんっ―――よし!」

 軽く伸びをし、気合いを入れる。
 この程度のことでへこたれていてどうするか!
 一ヶ月後、母さんに「ああ、女装? 余裕だったよ!」なんて答えられるくらいの意気でいかなければ!

「トバさん、クイちゃん。もう大丈夫だ、心配かけてごめんな!」

 そう謝ると、

「ええ、私がかけた言葉にも原因があったようですし…こちらこそ、すいません」
「…ごめんなさい」

という謝罪の言葉が返ってくる。


 そんなこんなで無事復活したこっちたちは、トバさんの「神社にお参りにでも行きませんか?」との提案にのり、神社へとやってきた。
 出店がいっぱいな境内の中、お賽銭箱にお賽銭を入れ、カランコロンと鈴を鳴らしてお参りを済ますと、改めて祭りを楽しみ始める。
 射的に夢中になっているトバさんとクイちゃんを暖かく見守っていると、「占いいかがですかー」という声が聞こえてきた。
 占いかー初めて見るなあ、なんて思いつつそちらに目をやる。
 そこには、その占い師だとおぼしき若い男の人と、その両脇に控えるようにして立つダンディなおじさんとハンサムなお兄さんの姿があった。
 一見普通の人たちだが、なんというか……。

「……あれ、人じゃないの、かな?」

 なんとなくおかしい感じがする…というか、あのハンサムな人、着てるマントの中が空っぽなような……?

「……よし、いってみるか」

 男だろうが女だろうが、度胸は大切である。
 その占い師さんの所へと近付いて、

「えーっと、すいません。占ってもらえますか?」

そう声をかける。

「おお、いらっしゃい! 何について占うんだ?」
「う、えーと…」

 言葉が詰まる。正直、考えていなかった。
 高速で頭を働かせ…あることを思い付く。

「…えーと、実は会ってみたい人たちがいるんですけど…その人たちと会うためのヒントみたいなのを、占ってもらってもいいですか?」

 これは本当だ。
 今の自分には、都市伝説関連の面識がゼロに等しい。
 この街で色々頑張ることを決めたのだから、せめて情報交換をできるような人と知り合いにくらいはなっておきたいのだ。

「うーん、会ってみたい人か……もうちょっと指定はできないかな?」

 いくとしたら、ここだろう。

「あの…都市伝説について、なんですけど」
「……なんだって?」

 ―――どうやら、ビンゴのようだ。

「ええと、間違ってたらごめんなさい。―――あなたも、都市伝説の契約者ですか?」
「―――ああ、そうだ。…"も"ってことは、君も?」
「はい。こっちは《ジェットばあさん》と《地震発生装置》、《重いコンダラ》の契約者です」
「多重契約、しかも三つか……大丈夫なのか?」
「ええ、だいたいは。しんどいときもありますけど、その辺は事情があってなんとかなってます」
「…そうか。俺は《エンジェルさん》と《怪人アンサー》の二つと契約している」

 こっちのおっさんが《エンジェルさん》でこっちのマントが《怪人アンサー》な、 と両脇を指差すお兄さん。
 なんというか…。

「…ダンディなエンジェルさんですね?」
「…よく言われる」

 なぜかちょっと落ち込み気味なお兄さんである。
 紹介されたお二人と「よろしくな、嬢ちゃん」「よろしく! よろしく!」「はい、こちらこそお世話になります!」なんて挨拶を交わしていると、お兄さんが復活した。

「まあそれはそうと、占いだ! 都市伝説関連の人物と知り合いになるヒントみたいなのが欲しいんだよな?」
「はい。恥ずかしながら、契約者の方に出会ったのも、この街ではお兄さんが初めてなんです」
「なるほどな…よし。おっさん、やるぞ」

 メモ帳とペンを構え、お兄さんは「エンジェルさんエンジェルさん、お越しください」と呟き始めた。
 ペン先が一人でに動きだし、メモ帳に言葉を記す。
 そこに現れた文字、それは―――。

「……『今夜』、ですか?」
「そうみたいだな。まあインチキっぽいかもしれんが、信頼性はそこそこだ」
「そうなんですか…ありがとうございます」

 そこそことはなんだ、いやおっさん文字化けとかもするじゃねえか、と言い争い始めたお兄さんとエンジェルさんを眺めつつ、懐から財布を取り出して、

「えっと、助かりました。これ、お代です」

そういってお金を差し出すと、

「ん? ああ、今日は都市伝説の関係者にはただで占いをしてるんだ。だからお代はいらんよ」
「え、でも、悪いですし…」
「いいっていいって。昨日戦いにあまり参加できなかったから、そのぶんサポートくらいはしなくちゃ、な」
「えっと…では、お言葉に甘えさせていただきます」
「おお、甘えとけ甘えとけ」

そう言ってくれてても、でもやっぱり悪いような・・・あ、そうだ!

「えと、すいません。もしよかったら、電話番号教えてもらえませんか?」
「…え?」
「あ、いや、ダメだったらいいんです! でもここで初めて会った仲間ですし、教えてもらえたらお礼もできるなって思って…」
「い、いやいいよ、喜んで!」
「え、ホントにいいんですか?」
「ああ、むしろこっちからお願いしたいくらいだ!」
「あ、ありがとうございます!」

 そんな会話を交わし、滅多に使わない携帯電話の赤外線通信機能に苦戦しつつも、連絡先を交換し終わる。

「えっと、今日はありがとうございました! このご恩はいずれお返ししますね!」

 目には目を、歯には歯を、恩には恩を、である。
 こういうことは人として、大切なことだと思う。

「いやいや、こちらこそ。お返し、楽しみにしてるよ」
「じゃあ、また今度伺います。さようなら!」
「ああ、また今度な!」
「さよならだ、嬢ちゃん」
「さよなら! さよなら! また今度! また今度!」

 別れの挨拶を交わし、その場を去っていく。
 いい出会いだった。
 なんだか心の中もほんわかしているような気がする。

「いいことがあったみたいですね?」
「うわ!?」

 いつの間にか近付いてきていたトバさんが、いきなり話しかけてきた。
 思わず声をあげると、隣のクイちゃんと共にクスクス笑う。

「…はあ。んっとにもう、驚かせんでよ」

 ため息をついてそう苦言を呈すが、

「まあまあ、いいじゃないですか!」
「…こまかいことは、気にしない」

 と、二人して受け流してきた。

「…はあ」

 もう一度ため息をつき、しかし顔は笑みを形作っている。
 大変だったし辛いこともあったけれど、いいこともたくさんあった。

「…終わりよければ全てよし、かな?」

 今日これまでにあったことを思い浮かべながら、こっちはそう結論づけた。




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