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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 合わせ鏡のアクマ-17

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合わせ鏡のアクマ 17


私達はまず、××や子供達が消えた辺りへ行こうと山に入った。
山道を登っていくと、妹ちゃんがピクリと震えて動きを止めた。
「どうしたの?」「・・・・・・・・・」
妹ちゃんは黙ったまま、道から外れた木々の中を睨んでいた。
「・・・こっちから兄さんの気配がします!」
言うが早いか妹ちゃんは道から外れて走り出して行ってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってってば!!」


「・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・」
「おかしいですね、確かにこっちにいるはずなんですけど」
妹ちゃんはキョロキョロ辺りを見渡し始めた。
「・・・お願い、ちょっと休ませ「こっちです!」
・・・・・・あぁもう!
「兄さーん!兄さーん!!」
「・・・ぜぇ、××ー!どこなのよー!!・・・・・・うわっと!?」
危ない危ない、また木の根っこにつまづいた。これで何回目だろうか
息もあがってきている。木の間、道無き道を全力疾走しているのだから当然といえば当然なんだけど。
そんな私に比べて妹ちゃんは木の間をスルスルと流れるように進んでいく。
無駄のない動きをすることで余計な体力の消費を抑えている結果なのだが・・・
あまりにキレイな動きだったので思わず足を止めそうになってしまったほどだ。
「兄さーん!どこに・・・・・・今度はこっち!」
急に方向を変える時でさえ、強引に身体を捻るわけではなく・・・
まるで最初からそっちへ進んでいたかのように見えるくらい自然な動きなのだ。
とても普通の小学生のできる動きではない。
おそらく『座敷童』だった頃に覚えた技術なのだろう。
しかし、どれだけ技術が凄かろうとその身体はまだ小学生の女の子だ。
疲れが見え始めたのか、ようやく妹ちゃんは止まってくれた。
「ハァーッ・・・・・・ハァーッ・・・・・・やすま・・・ぜぇ・・・して・・・・・・」
妹ちゃんは答えず、周りを見渡し続けていた。

*


「・・・おかしいですね、山に隠されたにしては兄さんの気配が強いです」
「つま・・・り・・・?ふう・・・」
「兄さんは完全に隠されたわけではないかも、つまり呼びかければ戻ってくるかもしれません!」
「・・・本当?」
「山に隠されかけているから、気配を追っても捕まえられないんでしょう
  ですが完全に隠されていないならば、兄さんの意識に訴えかければ応えてくれるはずです」
妹ちゃんはスッと人差し指を立てた手を前に突き出した。
「この方向から、兄さんの気配を強く感じます。鬼ごっこができないなら立ち止まって呼ぶしかありません」
妹ちゃんと目が合う。その真剣な眼差しに射抜かれると、まるでその黒い瞳に吸い込まれるような錯覚を感じる。
「お願いします・・・これしか、方法がないんです」
「・・・私だって助けたいって言ったでしょ?断る理由なんかないわ」


「兄さーん!帰ってきてください、兄さーん!」
「××ー!お願い戻ってきて!!」
・・・かれこれもう30分は経つだろうか。
日も段々と落ちてきたし・・・なかなか成果は上がらない。
「兄さんの気配は確実に強くなっています・・・・・・でも、あと一押し足りないッ!」
横の木をドン、と拳で叩いた妹ちゃんの表情にも焦りが見え始めている。
「山の気配も・・・強くなっています、早く兄さんを連れ戻さないと・・・」
「連れ戻さないと、どうなるの?」
「ミイラ取りが、ミイラに」
・・・遭難者の捜索隊が、遭難すると。いや相手は都市伝説、遭難より怖ろしい。
「あのさ、妹ちゃん危ないんだったら一度引き返した方が「ダメです!」
妹ちゃんは目を吊り上げながら怒っている。
「こうしている間にも兄さんが危険にさらされているのに・・・私達だけ安全な場所になんて行けません!」
「でも、××なら『俺なんかに構わず、早く逃げろ!』って言うよね」
「でしょうね。でも、今この場に兄さんはいません」
「・・・そうね」
妹ちゃんは優しく微笑むと、口に手を添えてまた叫びだした。

*


「兄さーん!」
・・・段々苛立ってきた。こんなに私や妹ちゃんが呼んでもちっとも姿を現さないなんて。
答えが帰ってこないことへの怒りと、寂しさ・・・それに任せて私は思いっきり叫んだ。

「戻ってきなさいよバカァー!私をまた一人にするつもりかーっ!!」

溢れる想いを叫びに込める。これで駄目なら・・・と、諦観し始めた。
と、木々の間を突風が吹き抜けた。
「わっ」 「きゃっ」
思わず目を閉じたが、ゆっくりと目を開ける。

目の前に男の子が立っていた。

・・・・・・誰?
「兄さん!」
「え、ほんとう?これが・・・××?」
年のころ3,4歳・・・おそらく彼が『神隠し』に始めて遭ったときの年齢なのだろう。
男の子が私に近寄ってきて、手を差し出してきた。
妹ちゃんを見ると、黙ってうなづかれた。いや、だからどうしろっていうのよ。
「えーっと・・・・・・・・・おかえり、××」
他に言葉が思いつかなかったが、それで十分だろう。私は男の子の手を取った。
私の手をそっと握り返して男の子はニッコリと笑ったかと思うと、
その姿が急にぼやけて光の粒みたいなものが暗くなり始めた空へ飛び出していった。
「なに、これ・・・」
「たぶんこれで解決です。少なくとも兄さんの方は・・・」
周りでは、風も吹いていないのに木々がざわめいていた。
「おでましです」
「ははは・・・逃げられると思う?」
「大丈夫です、私に考えがありますから」
信じてるからね。と呟いて、私は何も見逃さないように木々の暗がりに目を凝らし始めた・・・

*


 ・・・彼が目を覚ますと、そこには見慣れた自分の部屋の天井があった。
「契約者!」 「契約者様!?」
「アクマ・・・ザクロ・・・あれ?俺は確か山で・・・」
喉が渇いて声が上手く出せない、いったい俺になにが・・・
「契約者、お水だよ!」
「契約者様が倒れてしまわれた後のことを、これから順を追って説明させていただきますわ・・・」
まだ夢の余韻に浸ってボーっとしている頭で、ザクロの言葉に反応し首でうなずく。
それを確認すると、ザクロはゆっくりと山に入ってからのことから説明し始めた。
それを聞いていた俺は、布団からゆっくりと立ち上がった。
「だから二人が山へ・・・って、契約者様?」
「二人を追うぞ」
もうすぐ日が暮れる、今からならまだ間に合うはずだ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!契約者様はまだ体が本調子じゃ」
「そんなこと言ってる場合か!妹と友達の命が懸かっているんだぞ!」
折りたたみ式の鏡をふたつ持ち、靴を履き始める。
「ザクロ、俺を乗せて全力で山まで飛ばせ。そこからはにおいで辿れるはずだ」
「は、はい・・・」
靴を履き終わると、俺は転げるようにドアから外へ飛び出していった。

「・・・それで、倒すアテはありますの?」
俺達は一直線に山へ向かっていた。家の屋根や電信柱は、ザクロの障害にはならない。
「まぁな・・・・・・『神隠し』に遭っている間、夢をみたんだ」
「夢?」
「昔の夢だ。確か俺が山で迷子になってた間の思い出・・・なんで今まで忘れていたんだか」
脳裏に蘇るのはあの頃の山の光景。
ざわめく葉っぱ 吹き抜けた風 隣には自分と同じくらいの・・・
「着きましたわ」
いつの間にか、山へ着いていたようで。ザクロはにおいを嗅ぎつけたらしく山を登り始める。
「ま・・・説明するよりやった方が早い。急いでくれ」
 ・・・木々は、怪しくざわざわと揺らめいていた。

*


「おーい!二人ともどこだー!!」
ザクロに振り落とされないようにしっかる捕まりながら二人を呼ぶ。
「姫さーん!あと我が愚昧よ!」
「誰が愚昧ですか誰が!」
ザクロが気付き、慌てて向きを変える。妹の声に驚いた俺は、そのまま落ちて転がった。
「ああっ!契約者様!?」 「ちょっと大丈夫××!?」 「契約者ー!!」
「だ、大丈夫だ・・・ほら、鏡も割れてないだろ?」
「あの、兄さん。それって鏡をかばって体から落ちたってことですよね・・・?」
「いいか、妹よ。そこは気にしてはいけないところだ・・・・・・いってぇ・・・」
「やっぱり思いっきり打ってるじゃないですか!」
うるさい、今はそれどころじゃないだろうが。
その時ヒュッと、なにかが木の間からこちらへ飛んできた。
「せいっ!」
妹が声を上げつつ腕を振ると、飛んできたもの・・・尖った木の枝はなにかに弾かれて落ちた。
それがなにかなど、気にしている場合ではなかった。妹と姫さんに声をかける。
「二人ともザクロに乗れ!ザクロ、いけるか?」
「三人はちょっとつらいですが・・・大丈夫です」
「よし、二人とも急いでくれ!」
「ちょ、ちょっと!いったいなにを・・・」
「なにってそりゃあ」
山の上の方を指差す。
「『神隠し』と話をつけにいくのさ」


「ザクロ!もう少し右だ!」
「妹ちゃん、左から」
「分かってます、ていっ!」
 ・・・ザクロが走っている間、何度も石やら木の枝やらが飛んできた。
しかし、それは全て光の膜によって弾き落とされていた。走るザクロの周りを覆って淡く光るそれは・・・
「・・・バリアー?」 「く、詳しいことは後で・・・」

*


たしかに、今は悠長に話を聞いている場合ではない。
「・・・!左だザクロ!」
「はい!」
「ねぇ、さっきからどこに向かってるわけ?」
姫さんが話しかけてきたので、簡潔に答える。
「『神隠し』の本体だ、そこにいけばたぶん・・・なんとかなる」
「なんでその場所がわかるの、調べたわけ?」
「いや・・・分かる」
「「!」」
俺の言葉に姫さんと妹が動揺していた。まぁそりゃ驚くだろうけど・・・
「なんつーかな・・・感じるんだ。こっちの方だ、ってな」
「そう・・・なんだ」
「ああ、そろそろだ」


突然、森を抜けた・・・違う、ここは木が生えていないだけの空き地だ。
空き地の中央には、石でできた社が小ぢんまりと建っていた。
しかし、社は土で汚れ空き地も草が伸び放題になっている。長いこと人が来ていなかったようだ。
空き地の外でざわざわと木が揺れる音が次第に大きくなってきた気がする。
ピリピリと張り詰めた空気に、アクマとザクロが周囲を警戒し始めた。
 ・・・だが、今は戦う時じゃない。
社に近づくと、妹が後ろに寄ってきた。チラリ、とその姿を見てから社に手を当てて話し始める。
「山の神様、山の神様、どうか隠した子供をお返しください」
ざわざわと木々は揺らめいたままだ。
「彼等の親が悲しんでいるんです。どうか、お返しください。寂しがりな、山の神様」
ざわざわ、ざわざわと木々が揺らめく中で

『その頼み、聞き届けよう』

どこか威厳に満ちた、しかし幼い子供の声が・・・聞こえた気がした。

*


「・・・と、これでいいかな」
社についた土を軽く手で払い、呟く。
「ねぇ、さっきなにやったの?」
「簡単なことだ。『神隠し』っつーだけあるからそれを起こすのは山の神とか・・・それに近いやつだ」
社をポンポンと叩きながら姫さんの問いに答える。
「『神隠し』伝承がある山なら、そういうのを祀った場所があると思ったのさ。それがこれ」
「ふーん・・・でも、なんで頼むだけで子供達を返してくれるなんて思ったわけ?」
「なんとなく」
「・・・もし、そのまま攻撃してくるような相手だったらどうするつもりだったのよ」
「・・・・・・・・・うん」  「考えてなかったんかい!!」
「しかたねーだろ!俺の中で山の神様っつったら優しいってイメージがあるんだからよ!」
二人が言い合っている近くで、都市伝説達もまた言葉を交わしていた。
「・・・これからも、兄さんをよろしくお願いします」
「当たり前ですわ」
「うんうん、僕も契約者がいなくなったら寂しい・・・し、あと力が弱くなって困るからね!」
アクマがサラッともらした本音に二人(正確には一人と一匹)は笑いあった。

「よーし、山を降りるぞー。そろそろ子供たちも気がついて帰り始めてるだろう」
「そうね、暗くなってきたし急がなきゃ」
皆が歩き出してしばらくは沈黙が続いたが、それを「兄さん」という声が破った。
「・・・なんだ」
「あの・・・話したいことが、たくさん・・・あるんです」
「ああ、俺もだ」
笑顔でうなずくと、妹も笑い返して続けた。
「それじゃあ今晩、泊まっていいですよね。あ、荷物は持ってきてありますから」
・・・・・・は?
「そういうことで、先に帰ってますからねー・・・ザクロさんお願いします」
「あ、ちょっと待て!!」 「・・・いいなー、私も押しかけようかな」
不穏な言葉を発した姫さんを置いて、ザクロに乗って山を駆け下りる妹を走って追いかけながら
どこか懐かしい、小さかった頃に戻ったような気分を感じる俺であった・・・






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