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連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-14

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黒服Hさんによるピュアな少年の為の淫語講座


 将門様の宴会を明日に控えたある日のこと。

 なんだかテンションが上がって眠れないので、こっちは夜の街を散歩していた。
 …宴会が楽しみで眠れないなんて小学生か自分、と思いつつ、パジャマ姿で路地裏を歩く。
 パジャマは当然(……といえるようになった自分が悲しい)女物だ。
 いつのまにか外出時だけでなく家の中でまで女装を義務付けられており、男として生活できるのは学校だけという状況なのである。
 ……ぶっちゃけ泣いていいと思う。
 しかも、だ。
 女装をし始めて一週間、明らかにトラブルが増えている。
 ついさっきの変態がいい例だ。
 おやつ代わりの魚肉ソーセージを、ぺろぺろと舐めつ咥えつ歩いているところにいきなり抱きついてきたその変態。
 日課となりつつある幸せな散歩タイムを邪魔されてイラッときたので、ボコボコに叩きのめしたあとに全裸に剥いて磔にしてやった。
 いい気味だなあくっくっく、と暗い笑みを浮かべるこっち。
 もぐもぐとソーセージを咀嚼しながら、その路地の角を曲がる。

 すると、そこには―――。

「………なんぞこれー」

 ―――手足の生えた毛玉がいました。




「はあ、やっぱりそういう『組織』ってあったんですねー…」
「ああ…というか、本当に知らないのか? 中々個性的なやつもいるから、特に最近は色々目立ってたと思うんだが……」
「そうなんですか? 最近目立ってたっていうと……《夢の国》とか、《エベレストの禿マッチョ》とかですか?」

 そんなわけありませんよねー、と笑い飛ばすこっち。
 だが、

「いや、《夢の国》はともかく、《エベレストの禿》は『組織』の一員で間違いないぞ」
「……………はい?」
「ああ、ついでに言っとくと《エベレストの禿》も《南極のヒトガタ》も謎の隕石も、さらには秋祭りの時の全裸マッチョも全て同一人物だ」

 ……えーと、なんていうか…。

「…あの、そんなことを許しちゃってていいんでしょうか…? というか、こっちの個人的な精神衛生的にも取り締まってくれると嬉しいんですが……」

 そう頼んではみるものの、即答で「無理だろうな、あいつだけは。黒服の中でも色々な意味で別格だし」と切り捨てられた。
 トラウマが封じられることがないという事実に、マジっすかー、と若干へこむこっち。


 ―――この、毛玉改め黒服Hさんは、都市伝説の管理をしている『組織』に属しているらしい。
 最初に一目見たときにはどうやら誰かと電話していたようで、「な、毛玉がしゃべってる!?」と驚いたものの、まあこんな奇妙で愉快なものは大概都市伝説関係だろうなーと考え、電話が終わるのを待って声をかけてみた。
 結果はビンゴ。
 "髪が伸びる"というその能力を含めて、中々気さくで面白いいい人だった。

「それにしても、本当に制御が難しいんですねー、それ…」

 こっちが声をかけたあたりで髪が縮み、普通の人っぽくなっていたのだが……お近づきの印に送れるものをなにも持っていなかったこっちの、「すいません、えと、この食べかけのソーセージでよければ……あの、一緒に食べませんか?」
という申し出に快く了承してくれたHさんと交互にソーセージをかじっていると、髪がドバッとものすごい感じで伸びてきた。

「ああ、まあな……だがもう慣れたよ」

 おお、なんというクールな受け答え…!
 かっこいい大人の男の人って感じで、憧れるなあ……。
 そんなことを思いつつHさんの顔を見上げている(こっちの背は低めなのだ)と、その口が小さく動いたのに気がついた。
 なんなんだろう? 訊いてみる。

「えーと、なにかおっしゃりました?」

 そんなこっちの問いに帰ってきた言葉は、

「いや、女の子が肉棒をしゃぶってるなんて、まるでフェ○チオみたいだなと思っただけだ」

 ……フェラ○オ? なんだろう、フェラーリ的ななにかだろうか。

「あの、すいません。フ○ラチオってなんですか?」

 とりあえず訊いてみることにする。
 我が家の教育三箇条は『好奇心にはとりあえず従え・困ったら人に訊いてみろ・やられたら三倍返し』である。

「フェラチ○を知らないのか? ……いや、そうだな…要は、男を悦ばせる呪文のようなもんだ」

 男を喜ばせる、かー。
 別にこっちはそんなことを言われても嬉しくないんだけど……いや、きっと大人になればわかることなんだろう。

「ちなみに、だ。仲良くなりたい相手の耳元で『○ェラチオしましょうか?』と囁くという文化も存在している」

 へぇ、そんな文化があったとは知らなかった。Hさんは物知りだなあ。
 そう思って、ふと気づく。
 ―――これは、「俺と仲良くしたかったらそう言いなさい」的な意味ではないか? と。
 なるほどそういうことならば、と納得したこっちは、てくてくとHさんに近付いていく。
 二人の距離がほぼゼロになったところで、両腕をHさんの首に回してつま先立ちし、その耳に唇を寄せて囁いた。

「…○ェラチオ、してさしあげましょうか?」

 ドバッ!! と。
 その瞬間、こっちは髪の洪水に呑まれたのだった。




 毛玉を通り越して毛海といえるほどにまで広がったHさんの髪が(おおよそ)元に戻ったのは、それから数分後のことだった。

「大丈夫か? …すまんな、まさか本当に言うとは」
「いえ、大丈夫です。…まあ、能力なんですし仕方ないですよ」

 そう返し、携帯で時刻を確認する。
 ……ダメだ、そろそろ帰らないと。
 深夜に帰宅し、一晩中閉め出された苦い記憶が脳裏をよぎる。

「すいません、もうそろそろ帰らなきゃいけないので……」
「ああ、そうか。気を付けて帰r……いや、ちょっと待った」

 呼び止められた。なんだろう?

「大した用事じゃあないんだが…ヤッターマンとコーヒーとライターを、三つ続けて言ってくれるか?」
「それくらいいいですけど…おまじないかなにかですか?」
「まあ、そんなようなもんだ」
「えーと、では。…ヤッターマンコーヒーライター。……これでいいんですか…って、髪! 髪ものすごい伸びてますって!」
「おおっと、失礼。あまりにもいい感じだったもんでな」

 自分の髪の毛がとんでもない勢いで伸びているというのに、涼しくそう言い放つHさん。
 …ホントにすごいな、この人。

「じゃあな。俺ももう帰る。縁があったらまた会おうじゃないか」
「はい、さようならHさん。またこんど!」

 別れの挨拶を交わし、背を向けるHさん。
 その背中を見送りながら、思う。

(―――あの髪の毛、うっすらとだけど、血の匂いがしたな……)

 本当にうっすらと、まともな人間なら確実に気付かないだろうというレベルで、だが。
 Hさんの背中が、曲がり角の向こうへと消える。
 ……きっと、彼には彼の戦う理由があるのだろう。
 それがこっちのものと噛み合えば別にいい。
 だがもし、その理由同士がぶつかりあったとしたら―――。

「―――いや、考えるだけ無駄、かな」

 そうなったら、そうなったときのこと。
 悪いことなんてのは、起こってから考えればいいのだ。

「―――よし! 明日はいっぱい料理するぞー!」

 思考を明日の宴会へとシフトさせる。
 将門様は料理を持ってきてもいいといっていた。
 自分の作ったものを、多くの人においしく食べてもらえるチャンスというのは、案外少ないのだ。
 なにを作ろうか、なにを作ったら喜んでもらえるだろうか。
 わくわくとそんなことを考えながら、こっちは家に帰って行った。




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