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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-15

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匿名ユーザー

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宴会当日、宴会の準備


 将門様の宴会当日。
 昨夜…というか今日の深夜まで起きていたその代償に、いつもよりも遅く起きることになったこっちは、今台所に立っている。
 理由は簡単。
 昨日ふと、「宴会になにも持ち込まないなんて失礼なんじゃね?」と思い付いたからだ。
 これまで"宴会"なんてものを体験したことがないので、ぶっちゃけそのへんがよくわからない。
 まあ持ってって損はないだろうということで、とりあえず料理を開始しよう。

 …と、その前に。
 冷蔵庫の中を覗き、買ってきた食材とあわせて足りないものがないか確認。

「…と、生クリームおけ。チョコもいいし…薄力粉とベーキングパウダーも。―――よし!」

 食材が完璧なのを確かめ、次に用意するのは入れ物。
 これには運びやすさを考えて、重箱とバスケットを使うことにする。
 クローゼットの中からそれらを探しだし、今度こそホントに料理の開始。
 ちなみに、面倒な下ごしらえ、時間をおかないといけないものは、昨日の内にやっておいた。

 まずは、いなり寿司作りへと取りかかる。
 油揚げはすでに油抜きをしてあり、落し蓋をして煮ている最中だ。
 鍋の様子を見ると、煮上がるまでもう少し。
 なので、その間に酢飯を作ることにする。
 用意するのは四つの飯台。そのそれぞれに、ご飯とそこに対応する具を入れていく。
 ご飯は水を増して昆布と一緒に炊いたもので、それに甘めに仕上がるよう、砂糖:酢:塩を12:15:1の割合で作った合わせ酢を振りかけ、まんべんなく混ぜ合わせていく。

「……………、」
「……どうしたの、クイちゃん…?」

 視線を感じて振り向くと、そこにはこちらをじーっ、と見つめているクイちゃんの姿があった。
 はて、なんだろうか、と首をかしげ……ふと気付く。

「…もしかして、混ぜたいの?」

 そう訊くと、答えはコクコク、という首の上下運動で返ってきた。
 そういうことならやってもらおうか、と、ご飯をまんべんなく切るように混ぜるよう言い渡して、油揚げの様子を見る。

「―――ん。煮汁もなくなってるし、ちょうどいい頃合いだね」

 鍋から油揚げを取り出していく。
 今回は「ただのいなり寿司じゃあつまらないだろう…常考」という考えの元に、四種類のいなり寿司にチャレンジしているのだ。
 一つ目は、最もよくみる形であろう俵型。これには白ゴマを混ぜた酢飯を詰める予定。
 二つ目は、巾着型。こちらには、作り置きしておいた栗の甘露煮とゆでたぎんなんを酢飯と一緒に詰め込み、ゆでみつばで口を結んで作る。
 三つ目は、しのだ巻き。これは、かっぱ巻きののりの部分を油揚げにした、というと形がわかってもらえると思う。
 ゆでたきゅうりを中心に、酢飯を油揚げで巻いて、これまたゆでみつばでくくって仕上げ。
 最後のは、単純に三角形の油揚げに酢飯を詰めたもの。それだけだと味気ないので、酢飯にじゃこや白ゴマを混ぜることにした。
 暇そうにこちらを見ていたトバさんを誘い、三人でクイちゃんが仕上げた酢飯を油揚げに詰め込んで、しっかりと形を整える。
 できあがったいなり寿司はそのまま、サランラップを敷いた四段重ねの重箱にぎっしりと並べていく。が……。

「……うーん、作りすぎちゃったかー」

 決して小さくはないその重箱を占領してなお、けっこうな数のいなり寿司が余っていた。
 いやまあどうしようっていっても、方法は一つしかないんだけど。

「うー……ねえ、もうこれ昼ごはんでいい?」

 そのこっちの問いに、「いいですよー」「…おいしそう」という、それぞれの色よい返事が返ってきた。…まあ、聞く前からわかってはいたけどね。
 でも、昼ごはんを作らなくてもいいというのはけっこうありがたい。
 もうすでに時刻は昼過ぎ。移動時間も考えたら、ちょっと危なめである。

「…あとはなにつくる?」

 こっちを見上げながら、クイちゃんが訊いてきた。
 うーん、作るものか……一応、予定では……。

「カステラは作ってあるから、とりあえずドーナツとビスケット。それとシュークリームも」

 この三つなら手元にある素材で十分作れるし、簡単な方だしね。

(ビスケットは焼くだけでいいにしても、ドーナツとシュークリームは急がないとなー)

 そんなふうに考えていると、

「…手伝う」
「まあ、いつも美味しいご飯を食べさせてもらってますし…手伝ってあげましょう!」

 という、同居人たちからの嬉しい言葉が。
 ……うん、よし。
 人の厚意は無下にするなとも言いますし、手伝ってもらいますか!
 ちょっちタンマ、と同居人たちを制し、パパッと材料を用意。
 さらにドーナツのレシピを簡単にはメモにまとめ、トバさんに手渡す。

「ふむ。この通りにやればいいんですか?」
「うん、そう。まあ、わからないところがあったら無理せず訊いてくれい」

 了解しました、と助っ人両名。
 今回二人に任せたのは、半分ほどをチョコでコーティングするドーナツだ。
 チョコの種類はストロベリーとホワイト。
 ストロベリーチョコは普通の生地で作ったドーナツを、ホワイトチョコはココアを練り込んだ生地で作ったドーナツをコーティングする。
 まあ生地を作って揚げるだけだし、注意するところも大概メモに書き込んであるから…心配はいらないだろう。
 さっそく同居人たちが薄力粉とベーキングパウダーをふるい始めたのを横目に確認しつつ、

「さて、こっちはシュークリームを作りますか!」

 シュークリームの材料を揃え、気合いを入れる。
 シュークリームの中身は四種類。
 ホイップクリーム、チョコクリーム、カスタードクリーム、キャラメルクリームの四つだ。
 まずは簡単なカスタードクリームから。
 ガラスのボールに卵、砂糖、コーンスターチと小麦粉を入れてダマの出来ないようによく混ぜ、牛乳を少しずつ加える。
 そうしたらそれを電子レンジでチン。
 取り出しては混ぜ取り出しては混ぜを繰り返し、十分加熱できたら、バターとバニラエッセンスを投入して完成だ。

 次に作るのは、シュークリームの本体であるシュー皮。
 鍋に水とマーガリンを入れて煮溶かし、火からおろしたあと、ふるった小麦粉とベーキングパウダーを入れてダマにならないようによく混ぜる。
 混ざったら弱火にかけて、こがさないようにかき混ぜながら、二分くらい練っていく。
 それを火からおろし、卵を一つづつ割って入れながら手早く混ぜ、190度にあっためておいたオーブンに入れて、クッキングシートをひいた天板に丸くたねを落とす。
 あとは190度で10分、160度で10分、150度で15分焼けば、それで完成。
 この時注意することは、絶対にレンジの扉を開かないことだ。開いてしまうと、シュー皮がぺっちゃんこにしぼんでしまうのである。

 さて、シュー皮を焼いている間に、残る三つのクリームを作ってしまうことにする。
 チョコクリームもキャラメルクリームも同じく、ベースになるのはホイップクリームだ。
 細かく刻んだチョコを牛乳と一緒に溶かしておき、その時間を利用して大量のホイップクリームを作る。
 砂糖を入れた生クリームをハンディミキサーで手早く泡立て、その三分の一ほどに溶かしたチョコを加えれば、それでチョコクリームのできあがり。
 キャラメルクリームの方も同じ作り方のため、ひとまずキャラメルを作ることにする。
 フライパンを用意しようとすると、三つあるコンロの内の一つで、助っ人たちによってドーナツが揚げられていた。

「おー、トバさん、クイちゃん。ドーナツどんな感じよ?」
「お陰さまで、いい感じですよ」
「…あとは、チョコをつけるだけ」

 うん。頼もしいことに、トバさんもクイちゃんもしっかりドーナツ作りをこなしているようだ。
 時計を見て、「この勢いなら間に合いそうだなー」と安心しつつ、キャラメルを作り始める。
 フライパンにグラニュー糖とバター、蜂蜜、生クリームと牛乳を入れ、茶色くなるまで煮詰めていく。
 いい匂いがしてきたところで火から下ろし、残りのホイップクリームの半分と混ぜることによって、キャラメルクリームの完成である。
 これでクリームが全て完成したで、そのそれぞれを絞り器に入れ、焼き上がったシュー皮をオーブンから取りだしておく。
 これでシュークリームはもうほとんど完成だ。
 トバさんたちの様子を窺ってみると、あちらももうほとんど完成しているようだ。
 それならばと、シュー皮を冷ます間にビスケットを焼くことにする。
 冷凍庫から作り置きのビスケット生地を取りだし、トントントン、とリズミカルに生地をスライス。
 厚みは五ミリくらいにし、切った生地はクッキングシートを敷いた天板に乗せて、オーブンで焼いていく。
 焼く時間は短め。
 今回は焼きを甘めにして、ウェット感をだすことにした。

 と、ここまでくれば、料理は完成した同然。
 なので、もう一つの重大な用件を済ませてしまうことにする。
 ドーナツを作り終わり、そのやりきった感を満喫しているトバさんとクイちゃん。
 その二人の目と鼻の先にまで近づいていく。

 ―――もうすでに覚悟は決めてある。

 ―――あとは実行するだけだ。

 こっちは床に正座し、真っ直ぐに同居人たちを見つめる。
 彼女たちもなにかを察したのか、無言でこちらを見つめてきた。
 その二人の顔を静かに見回し、言う。

「―――こっちを、女にしてください」

 そう。
 女装がバレたらヤバいのなら。
 あえて女装に全力を尽くし、バレないようにすればいいのだ。

「……わかりました。そこまでの覚悟があるのなら……クイちゃん、やりましょう」
「…私も全力をつくす」

 …二人の目に若干の喜色が浮かんでいることは、気にしないことにした。
 そんな頼もしい(けれど少し不安な)返事を受け、こっちは立ち上がる。
 生まれて初めて、自分の意思で女装をするために。

 化粧のやりかたを伝授され、着せ替え人形になること十数分。
 目の前にあるのは、鏡に映った自分の姿。

 顔には、実際にされていた自分でさえ「…あれ?」と思うような自然な化粧(ナチュラルメイクというらしい)を施された。
 …いまいち違いがわからないのは、きっとこっちがそういうのに興味がないからだろう。
 着ているのは淡い紺色の短いワンピースに、肩がでる形の黄緑の上着。
 上着は前でとめるようになっていて、そこに花の形のモチーフみたいなものがあしらわれている。
 その長い袖の先のヒラヒラしたフリルが可愛らしいなあ、と思う。
 下は白とピンクの縞々の二ーソックスに、確か……ガーターベルトとかいうやつを着けている。
 まあ、全体的に見て、可愛くなくはない、と思う。
 胸元と肩が露出しているのは気になるが、こちらはまだいい。
 問題なのは……。

「…あのさ、トバさん」
「なんですか、少年? 大丈夫、似合ってますよ」
「うん、まあありがと。でも、でもさあ……これ、いくらなんでも短すぎない?」

 裾を手で抑えながらい、そこのところを抗議してみる。
 そう、ワンピースの丈が本当に短い。
 スカート部分がふんわりしているのは別にいいのだが、太ももの三分の二くらいが完全に露出しているのだ。
 いやまあ、寒いのは平気だとしても、これはさすがにはしたないような気がしなくもない。

「えー、こんなもんですよ。ねー、クイちゃん?」
「…可愛いんだから、問題なし」
「そうそう。……て、少年。そろそろ料理、仕上げないとヤバくないですか?」

 トバさんのその声に時計を確認すると、確かにそのとおりだった。

(………まあ、恥ずかしいのは我慢すればいいか……はあ)

 そんなふうに、服については諦め、自分を納得させておいた。
 ドーナツとビスケット、そして昨日の内に作っておいたカステラをトバさんたちにバスケットに入れてもらい、その間にこっちはシュークリームの仕上げにかかる。
 シュー皮の上の方に切れ込みをいれ、その隙間からクリームを流し込んでいく。
 ジャストでシュークリームを仕上げた時には、全ての準備をトバさんとクイちゃんが整えてくれていた。
 最後のシュークリームをバスケットにいれ、あとは出発するばかり。

「よっしゃ、行ってきます!」
「気をつけて行くんですよー」
「…いってらっしゃい」
「はーい! 手伝ってくれてありがとー!」

 と元気よく挨拶を交わし、右手にいなり寿司の入った重箱を、左手に各種お菓子の入ったいくつものバスケットを持った。
 バスケットはそれぞれの大きさや持ち手の長さを変えているため、同時に持つことができるのだ。
 自宅のあるマンションを飛び出し、お菓子が潰れないよう慎重に、かつ宴会に遅れないよう急ぐ。

 ―――どんな人たちに会えるんだろうか。

 そんな期待に胸を踊らせつつ、夕暮れ時の街を歩いていった。



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