「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-09

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 とある金持ち私立学校の前でのんびり待っているとTさんの携帯に連絡が来た。
「…………ああ、じゃあ適当に急いで来てくれ」
 2,3言喋るとTさんは電話を切る。
「黒服さん?」
「ん」
 電話の相手は昨日来てくれるように頼んだ黒服さんらしい。しばらく待つと黒服さんがやってきた。
 残念ながら男に戻っていたが。
「ここは?」
「金持ちの御息女が通ってらっしゃる学校だ」
 黒服さんが訊ねるとTさんは缶コーヒーを差し出しつつ答えた。
「でてくるのをまってるの~」
「いったい誰を?」
「秘密」
 黒服さんにも待っている人物を教えない。どうも秘密主義っぽいな、Tさんは。
「あなたも知らないのですか?」
 黒服さんが俺に話を振ってくる。
「そうなんだよ黒服さ~ん。この秘密主義野郎になんか言ってやってくれよ。男一人じゃ怪しすぎるが女性もいればきっと怪しくない。とか言われて駆り出されて、俺午後の授業サボりなんだぜ?」
「いえ、私は……」
 待てば答えは自ずと分かるだろうからいいです。と黒服さん。
「せっかく男に戻ったんだから気合入れようよ」
「こういう性格なので」
 む、乗ってこないじゃないか……。
「もう少し待ってくれ」
 学校の時計を確認しながらTさん。そろそろ二時か。


 キーンコーンカーンコーン――……


 チャイムの音が響く。
「もうすぐだ」
 Tさんがそう言うのでとりあえず待つ。やっぱり学校前で来るということはアレか? 出待ちしてんのは先生とかか?
「来たな」
 更にしばらく待っているとTさんが自分の飲んでいたコーヒーの空き缶をゴミ箱に放り込み、学校に向かって歩き出す。
「お、おい」
 俺もついて行く。俺の鞄の中のリカちゃんも必然ひっついて来るし、黒服さんも付いてくる。
 そして、
「失礼」
「お邪魔しまーす」
「おじゃましますなの」
「失礼しますよ」
「はあああああああああああ!?」
 学校の前に止まっていた高そうな車に割と自然な流れで乗り込んだ。

「じゃあ運転手、やってくれ」
 なぜかTさんが言う。
「ちょっと待ちなさいよっ!」
 反対側のドアから乗り込んでいた女の子がさっきからなにやら叫んでいる。
 ってかこの子――
「よう、久しぶり! 赤い靴の嬢ちゃん!」
 ≪猿夢≫や≪ドナドナ≫の時にあった嬢ちゃんがいた。なんだ。Tさんが待っていたのはこの嬢ちゃんなのか。
 ん? ってことは……
「あの変態も居やがるな?」
「呼んだかな?」
 変態が現れやがった。…………変態なのは自覚してるということなのか?
 変態はTさんを見るとなにやら頭を下げて、
「あ、いつぞやのお人、あの写真はありがたく――」
「なにをもらったのよあんた」
「いや、そんなことはどうでもいいか」
 変態は赤い靴の嬢ちゃんの追求から逃れるように言うと、Tさんに話しかける。
「いったい何をしに来た? いや、どうやってこの場所を突き止めた?」
「ああ、お嬢さんのお父上にお会いしたくてな。ここを突き止めるのは嬢ちゃんの顔さえ分かっていれば簡単だったぞ」
 あ、だからTさん俺から嬢ちゃんの寝顔写真を借りていったのか。
「……なんで会いに行きたいの?」
 嬢ちゃんが鋭い目で問うてくる。
「いやいや」
 秘密だ。っとTさん。
「それで連れて行くわけないでしょ?」
「そこをなんとか」
 両手を合わせて拝んでいる。
「せめて目的を言いなさいよ!」
「んー」
 ハイテンションな嬢ちゃんの言葉にTさんはしばし考え、
「金儲けの話を持ってきた」
 言った。
 その言葉に嬢ちゃんは、
「ふ、うふふふふ、あっはははは!」
 爆笑した。
「へぇ~? あんたみたいのが?」
 そう言うとこっちの服装やらなんやらを舐め回すように見る嬢ちゃん。
 は、はずかしいじゃないか……
「とても信じられないわねぇ」
 嬢ちゃんはうろん気に見てくる。
「そこの男、組織とやらの黒服だな?」
 変態もこっちを疑わしげ見てくる。
「フレンドリーに行ってみたんだが駄目だったか」
「おしかったな」
「どこがフレンドリーなのよ! なにがおしいのよっ!」
 やはりハイテンションな嬢ちゃんを見つつ、どうしたもんかね~とTさんと顔を見合わせる。
「はぁ、……まあいいわ」
 溜め息と共に嬢ちゃんが言う。
「え?」
 つい反応する俺たち。
「連れて行ってあげるわ」
 おお、マジっすか!?
「ほんとなの?」
 リカちゃんも嬉しそうにしてい……
「ハハハ、どうよ? 俺の腹話術! 幼女声だってバッチリだぜ?」
 車の運ちゃんはこっちのことは知らないっぽいな。突然喋る人形見てビビってた。ってことはあの変態も、まあ当然視えてないわな~。視えてたら嬢ちゃんに対してボディーガードが――身内からの被害を防ぐために――付いてそうだしな。
「ええ、別に構わないわ」
「おい」
「うるさい、黙ってなさい」
 反対意見っぽい変態、しかし嬢ちゃんは黙らせると、
「ほら、運転手、会社にやってちょうだい」
 と言った。
 運転手は釈然としないような困惑顔のまま車を発進させた。

 学校町の隣の隣、それなりの大きさを誇る学校町より更に大きな都市にその会社はあった。
「ここよ」
 嬢ちゃんが言う。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
 大人なTさんと黒服さんはお礼を言っているが俺とリカちゃんはそれどころではない。
「でっけえ」
「おっきいの」
 ばかでかい会社だ。なんというか、勝ち組の香りがする……。
「社長室か?」
 Tさんが嬢ちゃんに訊ねる。
「ええ、たぶん今日はそこにいるわ」
 どうでもよさげに答える嬢ちゃん。
「よし、じゃあ行くか」
 やったら豪華な入口を抜け、受付を嬢ちゃんの顔パスで通り抜けてエレベーターに乗る。
 エレベーターで最上階まで昇り、出てすぐ、目の前にはこれまた豪華な拵えの扉があった。
「ここよ」
「よし、じゃあ行くか」
 そう言って特に気負いなく扉を開ける。
「失礼」
「お邪魔しまーす」
「しまーすなの」
「失礼します」
「……」
 室内には厳つい作りの机を我がものとしている机と同じような厳つい顔したおっちゃんとその秘書っぽい姉ちゃんがいた。
「誰だ?」
 おっちゃんが突然の侵入者に誰何の声を上げる。娘さんと一緒にいるくらいでは友好的にはなってくれないようだ。
「≪寺生まれで霊感の強いTさん≫。長いからTさんとでも呼んでくれ」
 Tさんが無駄に爽やかに自己紹介する。
 おっちゃんは無言で睨んでいる。
 まあ、まともな自己紹介に聞こえないよな。とリカちゃんにこの部屋にいる間は喋らないようにと言い含めながら思う。
「じゃあ、私は出て行くわね」
 あの時の借りは返したわよ。と俺に言って、嬢ちゃんはとっとと出ていってしまった。
 かわいいとこあるじゃねえか……。
「さて」
 Tさんは机の前まで歩いて行くと、
「ちょっとばかし、そう、小遣い程度の儲け話を持ってきたよ」
 言った。

「儲け話ぃ?」
 超胡散臭そうにおっちゃんが言う。
「ん」
 Tさんはまたやたらと自信満々っぽい。
「二日後、学校町と通称される町で秋祭りが催されるのをご存じか?」
 そしてなんか切り出し始めた。確かに二日後、三日間かけて秋祭りをするが……、黒服さんと顔を見合わせる。
 わけわからん。
「それがどうした?」
「貴方から祭りの実行委員や町に働きかけてもらい人事権を掌握してもらいたい」
 ってか主導権を握ってもらいたい。とTさん。
「なぜそんなことをせねばならん」
 おっちゃんの言葉に多少間を置き、
「その祭りでは大量の人が参加する」
 金が動くぞ。とTさんは言う。
「大量の金が動く証拠はあるのか? あったとしても何故この私が働きかけねばならん?」
「証拠……か」
 Tさん考え、

「俺の不思議パワーで見抜いたんだっ!」

 輝く笑顔で髪をかきあげ、歯までキラーンとか光らせてなんかフカシやがった!!
「話にならんな」
 そりゃそうだろう。
「まあそう言ってくれるな」
 そう言ってTさんはおもむろに空中に浮遊し始めた。足を組んで空中にある見えない椅子に座っているかのような状態になる。
 おっちゃんと姉ちゃんは目を剥いている。
 どうでもいいが偉そうだなぁ、Tさん。
「この通り、不思議パワーに関しては本当のことだ」
 そして、と言って黒服さんを手で示す。
「大量の人が動きますね? 貴方がたのところが」
 突然話を振られた黒服さんがギョッとしながらも答える。
「え、ええ。間違いなく、祭りなんて開かれればこのタイミングです。アレを警戒して皆して出張らないわけにはいかないでしょう」
 満足そうにうなずくTさん。
「人が動けば金も動く、これで金が動く証拠にでもしてくれ、そしてあなたが働きかけなきゃならん理由だが、こちらとしてはこの地域での貴方の会社のネームバリューでできるだけ穏当に祭りの掌握をしてもらいたいんだ。地域貢献の事業とかなんとかいってな。貴方の利益的には単純に金だな。後は地域の行事への貢献における好感度アップか?」
 とTさん。
 さて、と一息入れ、
「驚いたことにこの黒服さん家、たくさんの黒服さんがいらっしゃいます」
 通販番組みたいな語り口が始まりやがった。
「そしてその黒服さんたち、今なら祭りの実行係として無償で3日間働きますよ! 更に出店ではそれなりに彼等も買い物してくれることでしょう!」
「え"!?」
 あ、黒服さんがなんかカエルが踏みつぶされるかのような悲鳴を上げた。
 Tさんはスルーして話を続ける。
「そのくせこの黒服さんたち、儲けもプレゼントしちゃうそうです」
「え、や――むぐっ!?」
 あれ、黒服さんの様子がおかしいな? いや、まあちょっと前からおかしかったけど……あ、Tさんの手が光ってる、
「――――っ!――――っ!」
 どうも黒服さんはなぜか喋ることができないようだ。

「無駄なことを喋らないでいてくれると、俺は幸せだな」

 ぼそりと、なにか声が聞こえた気がした。
「……………………」
 いやぁ、何が起こっているのかわっかんねぇなー!!
 それはそれとして、Tさんとおっちゃんの話は続く。
「私がそのトリックや無茶苦茶な話を信じるとでも?」
 おっちゃんはとりあえず目の前の超常現象はトリックと割り切ることにしたらしい。ついでに儲けの無償プレゼントも信用する気はないらしい。
「んん……」
 Tさんが悩んでいる。
 なんかもう実力行使とかしたらどうだろうとか思う。難しい話わかんねえし。
「――――」
 さて、これからどうなるんだろうと思いながらぼーっとしてると黒服さんが俺に熱い視線を向けているのに気づいた。なんだ? 俺はちょっとあなたみたいな人とは残念ながら付き合え……え? 違う? 
「――――!」
 Tさんを指差している。
 いや、別にそっちの世界を否定はしないけどでもいきなりここで薔薇の花を咲かせられても……え? 違うの?
「――――!!」 
 ……なるほど!
「Tさん」
 良く分からんかったので結局Tさんを呼んで黒服さんを指差してやる。
 Tさんはそれを見て頷き、指を鳴らす。すると黒服さんがしゃべりだす。
「――そ、それでしたら」
 黒服さんはいつも持ち歩いているジェラルミン製の鞄を開けた。
「これでどうでしょうか?」
 そう言って直角定規? とホッチキス? にGの文字が挟まれた文様が描かれた紙を一枚取り出した。
「む」
 その紙を覗き込んだおっちゃんの表情が変わる。
「な……に!?」
 どうもたいそう驚いているようだ。
「あなたが協力していただけるのならば、うちのモノがそちらの会社の優遇をここに約束いたしましょう」
「まさか、お前が……?」
 なにやら展開が素敵なことになっているな。
「ええ、『会員相互の特性と人格の向上をはかり、よき人々をさらに良くしようとする団体』の一人、ですよ。ではここにサインを」
 黒服さんがどうも押してるっぽい?
「……ふん」
 おっちゃんが黒服さんの紙に見た感じしぶしぶとサインした。
「これでいいのか?」
 おっちゃんの言葉に黒服さんがTさんに振り向く。
「要求は通りましたよ」
 Tさんは、
「完璧です。あとの細かい打ち合わせも追々連絡するということで、とりあえずは祭りの実行委員と町にすぐに掛け合っておいてください」
 愉快な祭りになるといいな。
 そう、冗談めかして言った。
 う~ん、どうもこれで話が済んだっぽい? 俺すっかり観客だなおい。
 とまれ、何か言いたそうなおっちゃんと姉ちゃんを無視して俺たちはその部屋を退室することにした。

「いったいどういうことなんだ」
「わけわかんないの」
 全く状況を理解できない俺とリカちゃん。
「や、助かった。ああいう人間に対抗するための権力的な力がない身としてはマジで、助かった」
 Tさんは黒服さんに感謝することしきりだ。
「それはかまいませんが」
 続けて、
「どうしてまた祭りの人事権などを?」
「正直なところ≪組織≫が表だって動いてくれるのなら今回ここに来ることもなかったんだが、流石に町の行事に表だって動くわけにもいかんだろ? 一応≪組織≫の存在は公にしたくないはずだよな?」
 とTさん。
 黒服さんは都市伝説の存在自体を伏せておきたいのですよ。と答える。
「で、祭りの主導権を握ると具体的にはどうなるんだ? 黒服さんの謎の紙であのおっちゃんはこっちに付いたってことでいいのか?」
「ええ、我々の表用の顔の一つを晒しましたからね」
 あの名前は強力ですよ。と疲労感たっぷりに黒服さん。
 Tさんが缶コーヒーをどこからともなく取り出して黒服さんに渡す。
「ご苦労様」
「ありがとうございます」
「で、あのおっちゃんがこっちに協力してくれるのは良いとして、秋祭りの人事権だか何だかを握ったりするとどうなるんだ?」
「そうですよ、祭りなんて開かれれば大量の人を≪夢の国≫が喜んで喰らいに来ますよ?」
「ああ、だろうな」
「だろうなって」
 それなら祭りの中止を頼めよ。
「いつかは喰いに来るのはもう分かっていること。侵攻してきた時期的に考えて≪夢の国≫も祭りの期間を狙っているとみてもいいと思う。そこまで分かれば防衛しやすいようにこっちも準備をしておけばいい。その方が祭りを下手に中止して祭りの時期以外に攻め込まれるよりもまだ事が露見しづらいだろう」
 そうか! と黒服さん。
「≪夢の国≫は数を喰らえば喰らうほど強大になる。だからこそ町を取りこもうとしていて、そして、それなら人が集まる祭りの時期を逃すわけがない」
 これが祭りを狙いに来る理由だな。とTさん。それに、
「警備員や祭りの出店、その他町の見回りに黒服が大量にうろついていたり各地でパレードがひた走っていても、祭りならばそんなに怪しい光景にはならんだろう」
 奴にとってもこっちにとっても祭りの期間は町中で動きやすいんだ。と続ける。
「ということは」
 ということは?
「すまんがこう、分かりやすく頼む」
 Tさんは頷き、
「表向きはあのしゃっちょさんが地域への慈善事業なり何なり理由つけて祭りを事実上掌握。で、そこから完全に祭りの指揮権をとって祭り――町に≪組織≫の皆さまを堂々と投入。≪夢の国≫が現れたら結界なり気合いなりで一般人から距離をとらせつつ排除。もともと一般人には視えない、赤い靴みたいなのもいるし、まあ公にはなかなかならんだろ」
 当面の作戦はこんなところか。と説明してくれた。
「……その黒服の投入の指揮は」
「俺は≪組織≫の中じゃもう鬼籍入りしてるから」
 つまり……
「頼みます」
「……………」 
 あ、なんか過労死するサラリーマンって末期にはこんな感じなんじゃないだろうか? って表情してる。
「あなたは作戦中どうするんです?」
「この作戦で学校町の人間を餌にして≪夢の国≫を釣る。で、そこから大元を辿って潰しに行く」
 餌と言ういい方に黒服さんは不快そうな顔をした。まあ、あまりよくない言い方だよな。
 なんというか、わざとそんな言葉を選んでいる気がするが……
 ……ん?
「大元?」
 俺の疑問。Tさんはうなずき、
「≪夢の国≫関連の都市伝説をまとめていて、更に契約者を操ってる大元だ」
「それは」
 黒服さんが反応する。
「知ってるか?」

  夢の国の創始者は地下で冷凍睡眠してまだ生きている。



            ●



 夕刻、学校町北区にある山、その付近に≪夢の国≫は居た。
「山の隠し神様は私たちのこと嫌いみたいだね」
 彼女は誰ともなく言う。
 その後ろからマスコットたちが何人かやって来る。しかし、
「あれ? どうしたの?」
 彼女は疑問の声をかける。
 彼等の内幾人かは腕を斬り落とされたり身体に半ばまで切り込みが入っているようだった。
「ん?」
 そんな中、首のないネズミのマスコットキャラクターが紙切れを持ってきており、彼女に手渡した。
「これは……?」


 ――近日中、学校町にて≪夢の国≫が大きなパレードを開催する。
   各々方注意されたし。――


 彼女は紙きれを見たまま首をかしげている。
「何でばれちゃってるんだろうね?」
 マスコットたちからの答えない。
「んー」
 彼女が悩んでいるとマスコットたちは、
「あーあーこら、喧嘩しないの」
 腕のない犬のマスコットと二匹のシマリスのマスコットが首の無いネズミのマスコットとなにやら争いだした。
「もう」
 彼女が見ている前で犬のマスコットとシマリスのマスコットたちがネズミに解体されていく。
 そして数秒後――
「きれいになったね」
 犬とシマリスは完全に復活して満面の笑顔をしていた。まあもともとそういう顔なのだが。
「キミたちはまだそれでいいの?」
 彼女が訊ねるとネズミとアヒルは妙にコミカルにうなずく。
「へんなの」
 くすくす笑うと彼女は山に背を向ける。
「もともとここは場所にふさわしくないからいいけど、町を夢の国にするときに苦労しそうだね」
 彼女は紙切れと山とを見つつ呟く。そして、
「っ!」
 突然襲ってきた痛みに腕を押さえる。
「この呪いも面倒だなぁ」
 やがて引いていく痛みに耐えながら彼女は歩く。
「次に行ってみよう? 祭りが始まるまでには準備を整えなきゃね」


 彼女は歩く
 彼女は探す
 王様はね?
 地下で眠っているんだよ?



            ●


「つまりTさんはその大元が全部悪いって思ってるってこと?」
「ん」
「へぇー」
 なんともめんどくさい話だね。後ろにいるやつが本命でいつも出張ってきてる契約者は部下に過ぎないってことか。
「それは、あの契約者は操られているだけ、ということですか?」
「ああ、一年前アレに刺されたナイフを投擲して突っ返してやったんだが、そのときに一瞬だけ契約者の方の意思が出た」
 アレは操られてるか何かだなとTさん。
「かわいそうなの」
 たしかに。
「だとしたら、契約者は救いだせますか?」
 黒服さんの質問にややTさんは考え、
「大元をどうにかできればおそらくは」
 そこまで言ったところでエレベーターが一階に到着し、扉が開いた眼前に変態が居た。
 なんだなんだ?
「あの子を危険に巻き込むような相談事はしていないだろうな?」
 変態が低い声で言ってくる。
「大丈夫だ。少し、しゃっちょさんの御力を貸していただいただけだ」
「あの子には」
「何も害はないさ」
 ただ、
「秋祭りには参加しない方がいい」
 ≪夢の国≫を釣る餌だからな。と変態の横を通りながら言う。
 変態は振り向き、
「なあ、あんた」
「なんだ?」
 低い声のまま問いかける
「本心で餌なんて言っているのか?」
「作戦における役割では、どんなにきれいに言葉を飾っても祭りは餌だ。いや、囮でもいいか」
 さ、行こう。
 そう言ってTさんは嬢ちゃんが待っているだろう車へと歩いて行く。
 変態は微妙な表情をしている。あれは、悲しんでいるのだろうか?
 黒服さんも複雑そうな表情だ。
 好感度下がってるんじゃないか~? Tさん。もっと口八丁にいけばいいのに。
「なあ、Tさん」
「どうした?」
「俺は、俺とリカちゃんは、Tさんを信じてるぜ?」
「しんじてるの」
「……ありがとう」
 大元を叩くってことは一番危険を冒すのはTさんなんじゃないかね? どうせいつも通りあっさり解決するんだろうが
 まったく、秘密主義で困った奴だが、うん。俺は信じるよ。



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