「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-08

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 東地区のとあるスーパーの前で俺は張り紙をペタペタ貼る作業をしていた。
「なんでこんなことを……」
 俺の愚痴に手に持ったメモを見ながらTさんが答える。
「準備ができているのとそうでないのとで被害は変わるもんだ」
「つっても」
 この文面で分かるのか?

 ――近日中、学校町にて≪夢の国≫が大きなパレードを開催する。
   各々方注意されたし。――

「分かるやつには分かる」
「そうかねえ」
 そう言いつつも張り紙を貼り終わる。
「あなた方でしたか」
 次に行こうとしたところで女の人に話しかけられた。
 …………あっれー?
「……」
「……」
「あ、あのときのおじさ……ん、なの?」
 リカちゃんの戸惑いの声が聞こえる。そう、目の前には(おそらく)この前会った黒服がいたのだ。
 女体化して身体の線が細くなっている上に一体誰の趣味なのか、巨乳だったが。
「うはははははははっ、ははははははっ!!」
「笑わないでください」
「いやだってさっ……、っく、ふ、ははは!」
 やばい、笑いが止まんねえ、多少落ち込んでいるような黒服さんに悪いと思いながらも落ち着くまで待ってもらう。
 そして、
「いや、うんごめんごめん」
 黒服さんは、まあいいですが。とか言っている。
 そんな黒服さんだが、なんというか、格好がやたらとエロイ、これは、たぶんブラとか着けてないんじゃないか?
「この前のドナドナとか猿夢の時に会った黒服さんだよな?」
「ええ」
 一応確認してみるとやっぱりあの時の黒服さんだった。
 話を聞いてみると、どうもマッドガッサーとやらに女体化ガスを食らったらしい。
「そうかそうか、そいつはいい」
 俺と一緒に笑っていたTさんが面白そうに言う。
「笑い事じゃありませんよ」
 うんざり顔の黒服さん。まあとりあえず、
「はい、チーズ」
 パシャ
 写真を一枚。
「……なんですか? いったい」
「趣味だからあまり気にしないでくれ」
 ああ、また俺のアルバムに良いモノが追加されるな~。
 それはそうと、
「こんなとこで会うもんなんだな」
 俺はてっきり黒服さんみたいのは社会の裏で仕事をしているもんだと思ってたんだが、
「いえ」
 張り紙を指差し
「これの貼り主を探していたんですよ」
 今現在張って回っている紙をそのしなやかな指で指差している。
 ちなみに今日は朝からずっとこの紙を貼って回っている。
「おいTさん、やっぱり勝手に張り紙して回るのはやばかったんじゃないのか?」
「まあ、普通に考えてまずいだろうな」
 この野郎、言いだしっぺのくせにしらっと言いやがって。
「いえ、確かにまずいといえばまずいのですが」
 黒服さんが言うにはまずいのは世間一般的な意味でではなく、
「この内容の方に問題がありましてね」
「そうだろうな」
 当たり前のようにTさん。
 黒服さんの言うことはもっともだな。俺もつい先日作戦やらなんやら吹き込まれた身だが、それでも今現在Tさんがとっている行動はやはり異常に映る。
「なんですか? これは」
「内容通り、≪夢の国≫が学校町に盛大にパレードを展開するから気を付けろ~。ってことじゃねえの?」
 黒服さんに言うと、黒服さんは、
「それはそうですが、情報の出所はどこなんですか? 組織でもこんな情報は持ってませんよ」
 とのことだ。Tさんは懐に手を突っ込むと、
「これを見てくれ」
 折りたたまれた紙片を差し出した。
「これは?」
「≪夢の国≫の内部告発文書」
 黒服さんはそれを受け取ると紙を広げていく。
「これは」
 広げられた紙には穴が開いていた。更にそのほとんどが赤黒いなにかで変色しており、
「文字が」
 消えかかった文字があった。

  ――ゆめのくに まちを とりこむ まち としでんせつ いっぱい

「これをどこで?」
 紙片を返しながら黒服さんが言う。
「≪夢の国≫と戦って、刺されたときに一緒にナイフに刺さっていた」
 おかげで血塗れでかなわん。とTさん。ってこれ血かよ!
「信用できるんですか?」
 黒服さんが疑問顔で訊いてくる。
「おそらくは、そもそもこんな微妙な情報じゃあ罠にしようがない。最初は"まち"と言ってもどこの町のことだかわからないんで正直あまり役には立たない情報だと思っていたくらいだしな」
 だが、
「現在、≪夢の国≫がこの町に侵入しているな? どういうわけか知らんが活発に活動もしているみたいだ。知り合いの情報屋兼占い師の占い結果だと≪夢の国≫はこの学校町に"侵攻"してきたらしい」
 そうなると先程の紙片にも意味が出てくる。とTさん。
「それはつまり」
 黒服さんが先を促すように言う。
「≪夢の国≫が取り込む"まち"というのがこの学校町のことなんだと思う」
 確証がないのが残念でならないが。と付け足した。そして溜息を一つ吐き、
「まあなんとなく奴さんの狙いが判明したんでこうして注意喚起の張り紙をしていたんだ。で、そんなことをしつつ」
 そう言って俺を指差す。
「組織の人間がこの不審者を見つけに来るのを待っていた」
「あ~、確かにこんなことしてれば組織の人が来そうだわ」
 俺は張り紙を改めて見る。どうも都市伝説界隈では≪夢の国≫は結構大きな存在らしい。そんなものが危険なことしますよ~、と各所で触れまわっているんだから組織としてもちょっとその面拝もうかなくらいには思うだろう。
 そしてこの野郎、自分は不審者に含んでねえっ!
「違う黒服だったら話が面倒くさそうだったがあなたなら話が早そうだ」
 Tさんは人の良さそうな笑みで黒服さんに近寄っていく。
 この手の人間がそういう笑顔で人に近づいて行くという光景は正直怖い。
「明日、是非とも付き合ってもらいたいことがあるんだ」
 笑顔だ。笑顔なのだが、有無を言わせない雰囲気だ。威圧している。
「はぁ」
 まあ明日なら、毒ガスも抜けると思いますし。と黒服さん。
 なんだ、戻っちまうのかよ。勿体ないと多少思わないでもないのに……。
「よろしくお願いします」
 Tさんは相も変わらず笑顔だ。あ、そうだ。
「ついでにこいつもよろしく」
 俺はそう言って張り紙を残りの半分程渡す。
「……これは?」
「張り紙だな」
「張り紙じゃん」
「はりがみなの」
「いえ、どうしろと」
 む、確かにこのままではどこに貼ればいいのかわからないだろう。
「Tさん」
 呼びかけるとTさんはすぐに察してメモをいくつか渡す。
「このメモは?」
「情報屋から仕入れたこの町のいくつかの都市伝説が行動範囲としている場所のメモだ。あと俺の携帯番号」
 メモをよく見る黒服さん。
「文字化けが激しいですね」
「大体の場所が分かれば問題ないんじゃね?」
 別に個人個人に一枚ずつ渡して回るわけじゃないんだしな。
「この張り紙を見てくれるかどうか、信じるかどうかは人それぞれだろうが、『何かあるかもしれない。』と思うことは突発的に事に巻き込まれるよりも有利に立ち回れる。と、いうわけで」
 頼んだ。とTさん。
「いいでしょう」
 黒服さんもうなずく。
「で、まずはどこから――」
「西区の端の方だな」
 ここは東区である。
「……」
 黒服さんが何か言いたそうにこちらを見てくるが場所指定のメモを渡したのはTさんだ。俺は悪くない。
「頑張れ」
「頑張って!」
「がんばれ、がんばれっ!」
「…………ではまた明日お会いしましょう」
 俺たちに背を向ける黒服さん、その美しい後ろ姿がひどく哀愁漂って見えた。
 あ、周りの人間が(特に男)黒服さんを見てる。本人これに気づいたらどう思うかねえ?


            ●


 学校町西区にある廃工場の一つ、そこに彼女の姿はあった。
「ここも良くはないなぁ」
 立ち並ぶマネキンや、その残骸が散らばる中、彼女は嘆息をもらす。
「他の工場にも回ってみようか」
 そう言った視線の先には首のない、影絵のようにまっ黒な世界一有名なネズミがいた。
「あんまり遊んでいないでその首戻したらどう?」
 ネズミは手をぶんぶん振って拒否する。
「キミはもともと好奇心が強い子だからしょうがないのかな」
 首がない今の状況を楽しんでいるのかもしれない。と彼女は思う。
「キミも、そのオマルを抜かないとね」
 帽子をかぶったアヒルにも声をかける、しかしこちらも現状に特に不満など無いようだ。
「まったくもー」
 女――≪夢の国≫の契約者は、その外見から推し量れる年齢よりも妙に似合う子供っぽい口調で言うと、己の腕を、そこに刻まれた呪に触れる。
「これもなんなんだかよくわからないし、この町の人はみんな強いねー」
 思い出してみると、この町に入って一週間と少し、ずいぶんな数の契約者や都市伝説と戦った。
「≪夢の国≫の黒服さんも何人か組織から帰ってこないし」
 彼等は≪夢の国≫から離れ過ぎていた。おそらく皆消されているだろう。
「正義ってなんだろうね?」
 腕に呪を刻んだ契約者が言っていた言葉を思い出して呟く。これが分かると呪も解けるそうだが、周りの≪夢の国≫の住人たちも自分も回答が出せない。
「私はみんなで夢の国で楽しめればいいのに」


  彼女には夢の国の歪さが分からない 
  彼女には自分が出したメッセージの記憶は無い
  彼女には夢の国に反抗する人間のことがよく分からない
  彼女には夢の国にみんなを招く義務がある


     だから、夢の国は拡大を望む。



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