「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-10

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 Tさんがあの会社のおっちゃんになにやら電話をかけている。
「ああ、そうだ。…………、いや、学校町のなるべく全域に仮設トイレを用意していただきたい。……ん、一か所に固めるよりも全域にまんべんなく…………、それは秘密ということで。ええ、では」
 そう言って電話を切って一息つくTさんを見てとりあえず問いかける。
「何でまた仮設トイレなのさ」
 Tさんはああ、とうなずくと説明してくれた。
「都市伝説には特殊なテリトリー内でその能力を最大限に引き出すタイプの存在がいる。そういうことだ」
「ってーと、」
 トイレ……ああ、
「花子さんとかか?」
「正解」
 花子さんね~、やっぱり本当にいるの? と訊いてみたらTさんは割と居るとか答えた。いいな~、会ってみたいな~。
「ああ、そうだ。契約者よ」
「? なんだ?」
 Tさんは片手をこっちに差し出してくる。
「携帯を貸してくれ」
「はい?」
 とりあえずわけがわからなかったので理由を訊いてみると、
「サチ、ルーモアのバイトの子の番号、知ってるだろう?」
 と言ってきた。
「あ、ああ」
 やはりわけがわからないがとりあえずTさんに俺の携帯を渡す。
「どうも」
 Tさんはそう言うとアドレス帳を見ていく、
「何でまたサッちゃんに?」
「いや、用があるのは別の人」
「?」
 やはりわけがわからない。サッちゃんの電話番号で他の誰と連絡をとろうというのだろうか?
 悩んでいるうちに電話は繋がったらしい。会話が始まる。
「……どうも、寺生まれのTさん、です。軍人さん――カシマさんに代わってくれる?」
 Tさんはそう電話の向こうに言う。 
 カシマさん? はて? だれだ?
「どうも、張り紙は見てくれたか? …………そう、そろそろ決戦かな、と」
 なにやらまじめな話をしてるな。
「……ええ、以前お願いしていた件で、……ん。それじゃあ、……そうだな、酒、そう、酒でも飲みますか」
 酒だぁ? なんだなんだ? 真剣な話かと思ったら違うのか?
「ん、じゃあ待ってる。住所は――」
 住所を伝え終わるとTさんは携帯を俺に返した。
「で、いったいなんなんだ? あの電話の内容は」
 俺が疑問顔で訊くとTさんは、
「あ~、と」
 微妙に気まずそうな顔になる。 
 コレは問い詰めるべきかな?
 そう思った瞬間、そこでまたタイミング悪く電話がかかってきた。
 Tさんは鳴っている自分の携帯を取る。
「もしもし、……ああ、黒服さんですか」
 どうも相手はあの黒服さんらしい。
「はい、…………あー、ちょっと待ってくれ」
 無言で睨みつけているとTさんがスピーカーモードにしてくれた。
「オーケーです」
 Tさんがそう言うと、携帯からあの黒服さんの声が聞こえた。
『――そうですか。では、この前話した≪鮫島事件≫等を考慮に入れたうえで、何かこちらに対して用意してもらいたい物などは発生しませんでしたか?』
 黒服さんはついこの前会った時に話題になっていた≪鮫島事件≫が何かTさんの作戦に影響を与えなかったか訊ねるつもりのようだ。
 Tさんは、
「問題ないよ。どちらにしろ≪夢の国≫の大元の位置は誰にもわからないんだ。≪鮫島事件≫の効果範囲外にある可能性だってあるし、正直、俺は≪夢の国≫で手いっぱいで≪鮫島事件≫にまで手を回せない」
 不快だがね。っと言い、また一息吸い、
「まあ、こちらも≪組織≫、いや、学校町を利用させてもらうのだし、こっちが多少利用されてもしょうがないくらいには考えているよ。皆でいくつもの掌の上で楽しく踊ろうじゃないか」
 と言って皮肉げに笑った。
 Tさんはそこで思い出したようにあ、と言うと、
「そうだ、黒服さん、貴方には≪夢の国≫の大元に殴り込む時に是非とも御力をお貸しいただきたいのだが、かまわない?」
 Tさんが思い出したように言う。
『ええ……いえ、少し時間をください。スケジュールを確認しますので』
「ん、分かった」
 黒服さんも大変なんだろうな~、主にTさんのせいで……
 そんな感慨に浸っていると、今度は黒服さんがTさんに問いかけていた。
『ところで、首塚をご存じですか?』
 なんだそりゃ? 俺は知らないぞ?
「≪平将門の首塚≫だな」
 Tさんはさも当たり前のように答える。
『ええ、ご存じでしたか』
「≪組織≫と不仲なことも、ルーモアの件についてもな」
 不穏当な言葉が聞こえた。
『まったく、頭が下がりますね。……彼等も今回の件、祭りには参加してくれるそうですよ≪鮫島事件≫についても彼等も阻むスタンスのようです』
 前会った時に私と共にいた金髪の青年も首塚のメンバーなんですよ。と黒服さん。
 ん? 首塚は組織と敵対しているんだよな? ……二重に禁断?
『それと≪怪奇同盟≫という集団が墓場に逃げ込めば結界で護ってくれるという話も入りました』
 また知らん名前が……。
「≪怪奇同盟≫が?」
『ご存じで?』
「組織に居た時に少し、都市伝説の風化で都市伝説の均衡を保とうとするこの町の自警団みたいなものだろ?」
『おおむねそんな感じです』
「そうか」
 いい感じに役者がそろってきたのかな? とTさん。
 Tさんは一拍、二泊と置いて、窺うように電話の向こうに声をかける。
「……なぁ」
『はい?』
「相当に危険な橋を渡っていないか? ≪組織≫と敵対する≪首塚≫との知り合いもそうだし、≪組織≫とは違う理念で動いている≪怪奇同盟≫も、それに俺の今回の作戦に関わらせてしまったこともそうだが」
『いえいえ、気にしないでください』
 黒服さんは明るく返す。が、声に隠しきれない疲れが滲んでるな~これ。
 Tさんはあー、とかうー、とか言った後に、
「もし何かあったら俺は貴方に全力で力を貸す。遠慮なく言ってくれ」
 一拍の間、
『ええ、こき使わせていただきます』
 黒服さんの声は何か、笑っているような声だった。
「ん」
 安心したように一つうなずくと、Tさんは電話を切った。

 心配なら心配とはっきり言やぁいいのに、この人は変なところで……、いや、それはともかく、
「で、怪奇同盟と首塚って?」
「ん、あぁ――」
 俺はとりあえず疑問をぶつけてやった。Tさんは時折俺の発する質問に答えつつ説明してくれる。
 怪奇同盟についてはよく知らないらしい、墓場ネットワークとやらを通じて情報を交換して、各々が都市伝説に対処する。みたいな個人活動が主な集団らしい。
 そして、首塚だが、基本は怪奇同盟同様、個人が基本的な活動単位、だけどこっちには明確なお偉いさんがいて、
 曰く、それは古い祟り神、≪平将門の首塚≫だという。
 そして、
 曰く、彼等と黒服さんの所属する組織は仲が悪いという。
 曰く、彼等も一応祭りでは協調する気はあるようだという。
 曰く、彼等のうちの一人がルーモアのマスターを殺したという。
「よしわかった」
 そう、とてもわかりやすい説明だった。
 じゃあ、
「なんで俺にすぐに教えてくれなかった?」
 Tさんも最近首塚という集団の存在を知ったらしい。よく実態を知らないという≪怪奇同盟≫についてはまあ、いい。だけど、なぜ知った時に≪首塚≫について教えてくれなかったのだろうか? 少なくともルーモアの件については俺にも知らせてくれてもよかったんじゃないか? そんな俺の質問にTさんは、
「さっきも説明した通り、首塚はどちらかと言うと≪組織≫以外には潔癖な集団だ。少なくとも将門公の周囲はな。ルーモアのマスターを殺害したのは確かに首塚の人間だがそれは将門公の意思ではない。だが契約者よ。貴女は最近までルーモアのマスターの死を酷く悼んでいた。そこに首塚の者がマスターを殺害したなどと言えば首塚そのものに敵対意思を向けかねん。だから今まで黙っていた」
 こんなことをのたまった。
 正論だね、くそ! 俺もそれがわかって認められるくらいには落ち着いたさ。
「そうかい」
 溜め息を吐き、文句の一つでも言ってやろうとすると、部屋のベランダの方から声が聞こえた。
「そのように悼んでくれているというのは嬉しいものだな。なぁ、青年」
「!?」
 ベランダを見てギョッとする、そこには片腕の軍服姿の男がいた。
「軍人さん、よく来てくれた」
 Tさんはそう言うとガラリとベランダに通じる窓を開ける、軍服の男は腰に吊った刀――軍刀とやらだろう。をかすかに鳴らしながら部屋に入ってくると、丁寧に挨拶してきた。
「さて、この御仁には初めてお会いすることになるのかな」
「お、おお」
 若干引き気味になる俺、
「ワタシはカシマ、サチ殿を契約者に頂く都市伝説だ」
 そして軍服の男は――カシマさんは名乗った。
 Tさんはカシマさんとこの前葬式の時に初めて顔を合わせたらしい。今は輪君の稽古をつけているとか。
「輪少年はその後、どうだ?」
 Tさんが一番気になるところを訊いてくれた。俺はあれから少し行きづらくてルーモアには足を運んでないのだ。
「うむ、少年は強くなる。その強さがまっすぐに伸ばすのが師としてのワタシの役目だろうか」
 カシマさんは重々しく語る。何と言うか、この人になら、任せて大丈夫な気がする。そんな雰囲気を醸し出している。どこかTさんに似ているような気がする……。
「そうか」
 Tさんは頷く。そして二人とも多くを語らない。そのくせこの二人は何かを解り合っているようだった。

「さて、本題に入らせてもらうが」
 突然、Tさんは無理やり空気を変えるように切りだす。
「≪夢の国≫関連のことだな?」
「そうだ」
 カシマさんも一瞬で察して話を合わせる。
「そう言えば、あの張り紙、あれは青年が張ったのか」
 そうだ。と答えるTさん。
 正確には張ったのはTさんと俺とリカちゃんと黒服さんだがな。
「それで、時期的に見て明日からの秋祭り、その日程のどこかで≪夢の国≫が仕掛けてくる可能性が高い。だから、」

 俺の契約者をルーモアに匿ってくれ。出来れば町からも出た方がいい。

 は?
 何を言っているのかいまいち理解しがたい。
 Tさんは続ける。
「≪夢の国≫の侵攻と合わせて≪組織≫の暗部も何やら企てているらしい。出来るならこの町から離れた方ガハッ――!」
 とりあえず回し蹴りを入れた。
「何をす――」
 続いて殴り、踏みつける。野郎は床を転がり即座に立ち上がる。
「何をするんだ」
 驚き顔だがダメージがあまり入ってなさそうだな、クソッ!
「何勝手に蚊帳の外に俺を追い出そうとしてるんだ? ふざけんなよ!」
 さっきの情報隠匿のことといい、俺は不満をぶちまけてみる。
「危険だからな」
 案の定取り付く島もない。だけど、
「ああそうだろうさ危険だろうさ、この町の皆が危険だね! なのにその危険を察知しているくせに碌に皆に危険を広めずに利用するような真似をしてやがるTさんに何で俺が守られにゃならん!」
 譲るつもりは無い。
「俺も人形の嬢ちゃんも能力を契約者に付与するタイプの都市伝説じゃない。契約者よ、貴女は一般人と変わらないんだ」
「一般人だぁ!? 身贔屓なんてしてくれるなよ!? 俺は≪寺生まれで霊感の強いTさん≫と≪電話をかけてくるリカちゃん人形≫の契約者だ! 俺にはTさんの町を餌にしたとかいうばかげた作戦の顛末を見届ける義務がある! 俺には町の皆と同じかそれ以上の危険に身を晒す義務があんだよ!」
 どてっ腹に蹴りを入れてやる。
「だから知ってること丸ごと全部俺に喋っちまえ! 俺とTさんとリカちゃんはもう共犯なんだからよ!」
「――っ!」
 咳きこんでいたTさんが口を開く。何か言うつもりか? 来るならきやがれ!
 そんなふうに身構える俺だが、不意にTさんの肩に手が置かれる。
 カシマさんだった。
「いい御仁だな」
「…………あぁ」
 Tさんは頷くと、いや、と否定の言葉を入れる。
 馬鹿なんだよ、これは……と。

            ●


 Tさんは頭冷やすついでに酒飲んでくるとかなんか微妙にちぐはぐなことを言ってカシマさんと出ていってしまった。
 俺が黙っているとリカちゃんが気を使って声をかけてくれた。俺もそれに乗ることにする。
「ハハッ! どうだリカちゃん! Tさんに言ってやったぜ!」
「お姉ちゃんすごいの!」
「そうだろうそうだろう! 俺はいざとなったらルーモアのマスター張りの死に様を見せてやるぜぇっ!」
 そこで空気が止まってしまうのを感じる。
「…………っち、あーくそ、いかんな」
「どうしたの?」
「いや、うん。Tさんにゃ悪いことしたかもしれんな、と」
「?」
 一応全部俺のことを考えた上でだったんだよな、まあ気に食わんけど。でもやっぱり、
「殴る蹴るはやばかったか」
 ちょっと反省しちまうぜ。そんなことを思っていると、
「お姉ちゃん」
「ん?」
「わるいとおもうなら、ごめんなさいすればいいの」
「…………」
 リカちゃんは簡単な、あまりに簡単で、だからこそやりづらい解決策を示してきた。
「……はは」
「どうしたの?」
「いや、そうだな。うん。そうだ、ごめんなさいすればいいんだよな」
 笑いながら言うが、いかん、そんなこと言うと想像しただけでこっぱずかしいっ!!
「ありがとうリカちゃん、Tさんにとっととごめんなさいして≪夢の国≫を一緒にぶっつぶそうぜ!」
「そうなの! みんなでいっしょなの!」
 なんというか、みんないい人だねぇ、まったく。あーあ、らしくもなく怒鳴ったせいかもう疲れたな。うん。早くTさん帰って来ないものか。



            ●


 彼の契約者の住むマンションから出てすぐの公園に彼はカシマと共に来ていた。
「すまない、わざわざ御足労願ったのに」
「気にすることはない。いいものを見せてもらったからな」
「……面目ない」
 彼は渋い顔をして手に持ったグラスを呷る。
「先程も言ったが、秋祭りの間中はなるべくこの町から離れていた方がいい」
 月を見上げながらぼんやりと言った言葉にカシマは答える。
「さて、ワタシの一存では決めれないのでな」
「そうか」
 それから少しの無言の間、それを破ってカシマが訊ねる。
「作戦とやらだが、」
 彼はそれに率直に答えた。
「町の人間を餌にして≪夢の国≫を釣るんだよ。見てくれ」
 そう言ってゆび指す先、そこには仮設トイレや祭りの出店用のテント、更には【Pied Piper appears!Magus accepts the rat exterminating!】の文字も遊具に見受けられる。
「もう準備は整っている。後はどう皆が動くのかだな」
 まあそこまでは知らん、餌は餌で自由にしてくれればいい。と彼は言う。
「ふむ、ワタシも青年に積極的に協力したいのだがな」
「無理は言えないさ」
「祭りの間、町を出ろと皆に言って回ったりはしないのかね?」
 カシマの言葉に彼は首を横に振る。
「そんなことをしても一般人は信じちゃくれないだろうし、よしんば信じたとしても民族大移動なんぞ起こした日にゃそれこそ大混乱が起きてそこを狙った≪夢の国≫に喰われる」
 危険についてを冷静に対処できない一般人にまで触れまわるのは逆に危険なんだ。
 それに、
「祭りの日に契約者たちだけが皆町から離れたら、≪夢の国≫が攻めてきたときに町や人を守る者が居なくなってしまうしな」
「フフッ」
 愉快そうに笑ってカシマがグラスを傾ける。
「なんだ?」
「いや、悪役ができん人間だなと思ってな」
 しばし無言、その末彼は、
「ほっといてくれ」
 そう言う。それに対してもカシマはまた愉快そうに笑い、
「そうだ」
 一つ、かねてからの頼みごとをしようと思った。
「?」
「手が空いたらでいいので探して欲しい者がいる」
 そう言って彼は画像を差し出す。防犯カメラの映像データから出した画像を。
「……マスター殺害の犯人か」
「ああ」
 できれば皆には内密に、とカシマが言い、彼は頷く。と、そこで彼に苦笑が浮かぶ。
「どうした?」
 カシマが訊くと、
 契約者に隠しごとがまたできてしまったなぁ。と彼は笑った。
 すまんな。と割合真面目に謝るカシマに冗談だ、かまわないよ。と返し、画像をもう一度見て、返答する。
「ん、分かった。今回無事に生き残れたら必ず探し出しましょう」
「それではなんとしても生き残ってもらわねばな」
 違いない。と二人して笑い、どちらともなく月を見上げる。
 視界にはほぼ真円になっている月と、舞い散る桜の花弁がある。
「もう秋に突入しようというのに花見酒ができるとはな」
「おつだろう?」
「ああ、秋の月と桜とはまた贅沢なことだ」
 そう言って彼はまたグラスを呷る。
「明日、明後日頃には満月かね」
 カシマが呟く。
「そんなところだろう」
 彼は返答を期待していないそれに答えを返す。
 しばし、無言――
「次は、祝い酒でも飲みたいものだな」
 ややあってそう言ったカシマは彼にグラスを差し出す。
「必ず」
 彼も答えるようにグラスを差し出す。
 チンッ、と、グラスが合わせられた。

 秋祭り前夜、とある公園の出来事である。


            ●


 学校町のとある場所、そこに彼女は居た。
「見つけた」
 それはそれは嬉しそうな声で彼女は言う。
「ここなら町を≪夢の国≫にした後もまだまだいっぱい人を招けるね!」
 それそれは妙案だという風に彼女ははしゃぐ。
「じゃあみんな、準備をしよう」
 それはそれは当然だとでも言うように彼女は虚空に声をかける。
「王様を皆で讃えよう!」
 それはそれは当たり前だとでも言うようにいつの間にか住人が並んでいる。
「この町の祭りもみんな私たちを祝福してくれるよ!」

 その瞬間から、ちらほらあった≪夢の国≫の目撃情報が、一切消えた。



 秋祭り開始まであと、数時間。



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