ポストコラプス・カノン > 新京首都防空戦

新京首都防空戦とは、絶滅危惧暦(E.F.)179年1月21日から始まった、旧瑞州連合(OLZU)の首都、新京上空における一連の防空戦である。

目次 交戦勢力
1.前史
2.戦闘
-1.空挺邀撃
-2.対空戦闘
-3.宇宙戦
3.撤退命令

悪性軌道起源種(MOB)
旧瑞州連合
・連邦軍
 ・連邦陸軍
 ・連邦空軍
・宇宙州同盟(LSS)
前史
E.F.179年1月10日、スポナー衛星のうち「ゴルト群」に分類される一群のスポナー衛星は、その全ての再活性化が確認された。これらのスポナー衛星は一週間程度の間沈黙を守っていた。

しかし連邦軍宙兵隊の軌道監視団は、それぞれの内部に高エネルギー反応があることを観測しており、何らかのタイミングでそれらが解放される、つまりスポナー衛星は大規模かつ即時のMOBの生産に向けてエネルギーをため込んでいる状態であると1月17日に報告していた。翌日、OLZU上層部は、復興が進んできている瑞州南部の情勢を鑑み、この事実を公表しないことを決定した。

ゴルト群に属するビフロンス45-Hから排出されたゾンビに向かう、LSSのMC-64S グレウォール。

戦闘
空挺邀撃

迎撃支援に向かう、連邦軍のMC-71P シーボーグII。

1月21日13時18分、ゴルト群に属するアスタロト51-D衛星からMOB「エンダードラゴン」の超大型種個体が排出されたことを皮切りに、ゴルト群の各衛星からMOBが猛烈な勢いで生産、射出された。この事実を知った連邦軍は、20分には全軍にデルコン1を発令し、落下するMOBの迎撃準備態勢を取らせると共に、宙兵隊の軌道監視団に落着予想地域の特定を急がせた。30分には特定作業が完了し、落着地域は首都・新京を中心とする一帯と予測され、OLZU上層部が近辺に非常事態宣言と避難命令を発した。同時刻、ミッドコース段階での迎撃や地表防護のため、裂敵機(MC)の部隊が各基地から出撃を始めている。

13時46分、最初の接敵が降下中の宇宙州同盟(LSS)第509降下猟兵 [*1] 機によって報告されると、空挺邀撃に参加した他部隊もそれに続いた。このとき、LSS第871観測小隊 [*2] はMC-71P[E] EWACシーボーグ3機にて出撃し、防空エリアにおける目標探知・迎撃管制を担当していたが、新京上空空域の管制が3機をもってしても「実質的に不可能」になるほど、降下中のMOBの数が膨大であることを報告している。

50分、他のMOB群に紛れる形で「エンダードラゴン」の通常種個体が数体降下中であることを第871小隊の2番機<スネークピット12>が探知。「エンダードラゴン」は飛翔型MOBに分類され、超大型種でなくとも対処が難しい個体であり、防空エリア上層部を守備していた連邦陸軍第567機動空挺中隊 [*3] がその対処に向かったが、53分にはそのうちの一体により、この戦闘においてMC部隊初の被撃墜機が生じた(10番機<スパイラル25>)。

時間が経つに連れMOBの総数は増加し続け、空挺邀撃では殲滅しきれなかったMOBが地上に落着し、侵攻を始めるようになった。また空挺MCの部隊を運んでいた輸送機が、その輸送中に飛翔型MOB「ブレイズ」や「ガスト」「ファントム」に囲まれて撃墜されるなどの悲劇も起きている。16時56分にはMC-65D ドライス4機で構成されていた第398機動支援小隊 [*4] が全滅した。

対空戦闘
地上では、近隣の基地から緊急出撃した部隊が続々と到着し、対空防御に当たっていた。しかし通常種による波状攻撃は空挺邀撃部隊との共同でなんとか耐えしのいでいたものの、超大型種が続々と降下し始めると状況は一変し、対空射撃が命中すれど有効打にならない、という事態が頻発するようになる。

この戦闘の中でも特にはたらきが際立っていたのは、連邦陸軍第501機動打撃中隊である。特に同隊隊長の三沢マサキ一尉<シペリペジウム01>は、手ずから改修したMC-71G シーボーグIIの専用機を駆って、超大型種のMOBを落着前に3体、落着後に4体撃破することに成功し、元より高かったキルスコアを13まで伸ばしている。彼の指揮のもと、シペリペジウム隊は八面六臂の働きを見せ、隊長機以外にも複数体の超大型種を撃破する隊員が表れた。しかし流石に宇宙から絶え間なく送られ続けるMOBを相手に消耗しきった地上部隊も、特に対MOB戦に特化していない機甲科などの通常部隊などから、次第に喪失数を増やしていった。

14時57分に連邦軍が最初に失陥した新京東部エリアでは、ネスト構築の動きが確認されている。このとき東部エリアに落着したMOBは、「洞窟グモ」などネストを構築するのに重要と推定されているMOBの他にも、通常MOBでも戦闘に参加せずネストの建築資材を運んでいたりするなどの現象が観測されており、これが後の撤退命令およびネスト強襲作戦の立案に繋がる。

宇宙戦
宇宙においては、数的不利を悟ったLSS司令部により、スポナー衛星の破壊作戦が大急ぎで策定されていた。この任を負った3個航宙大隊や宇宙艦隊が14時30分までには出撃準備を整え、先鋒艦はすでに出撃している状況にあったが、14時41分、軌道監視団はゴルト衛星群周辺に夥しい数の「エンダードラゴン」「ガスト」「ブレイズ」「ファントム」や拠点防衛型MOB「シュルカー」が漂っていることを発見した。

この情報は直ちにLSS司令部に通報されたが、先鋒のメンデレーエフ級軌道強襲艦・CES-05 ゲーリュサックは既に攻撃圏内におり、夥しい数のMOBからのスウェーム攻撃を被った。ゲーリュサックの直掩を担当していた第215直掩小隊 [*5] や臨時で割り当てられていた第267直掩小隊 [*6] のMC8機、そしてゲーリュサック自体も善戦したが、「エンダードラゴン」の超大型種個体の出現にはなすすべもなく、17時28分にはゲーリュサックが轟沈、17時39分には直掩MCのうち最後まで残っていたサランジェ中尉機<ビュレット01>も撃墜され、ゲーリュサック隊は全滅した。

先立つこと14時50分、LSS司令部はゲーリュサック救援のために艦隊を進めるかどうかで意見が分かれており、軍部はゲーリュサック救援を強固に主張した一方、研究組織上がりの文民で構成される「機関閥」は彼我の戦力差から無謀な行為であると反対した。軍部の最高指導者である西村ゴウイチロウ代将は機関閥の理解の無さに業を煮やし、独断でCES-01 メンデレーエフおよびCES-10 ボルツマンの出撃命令を下した。

二隻は15時23分までに現場宙域に到達したが、既にゲーリュサックはMOBの大群に取り囲まれており、二隻が近づける状況にはなく、逆に二隻も包囲外層のMOBからの攻撃を受けることになる。メンデレーエフの直掩部隊である第211直掩小隊の隊長、長尾シュンイチ中尉<ピリオディック11>は最新鋭のMC、MC-79E ドルネラスを駆り、超大型種MOBを5個体撃破する戦果を挙げエースパイロットと認定されたものの、しかし状況は好転することなく、二隻は包囲網を突破しきれないまま、僚艦の撃沈を見守る結果となってしまった。

撤退命令
これ以上の消耗をよしとしなかったOLZU上層部は、連邦軍統合幕僚監部やLSS司令部に、落着MOBの掃討を中止、現地部隊を撤退させよとの命令を18時51分に下す。これ以上の被害拡大を望まない統合幕僚長らが抵抗したものの、結局は撤退命令を飲まざるを得ず、指揮下部隊にも撤退の指示を発した。この点について、OLZUは考え無しに撤退命令を出しているわけではなく、「通常MOBでさえ戦闘に参加せずネスト構築の作業に参加していることから、いったん引き上げることで全ての落着個体をネスト構築作業に集中させ、ある程度までネストが組みあがった時点で反撃を開始」するという筋書きのもとの命令であった。当然現地部隊では反対する者も多かったが、文民統制の原則には逆らえず、脆弱な歩兵部隊から順に退却していった。

一方で、MOBが人間らを見失い戦闘行動を見せない距離にまで下がったMC部隊は、ネストを中心とする包囲網を形成し、その包囲網の外側で避難する民間人たちの援護に当たった。

戦闘後、LSSの西村代将は、最高司令部の許可なしに独断で軌道強襲艦を動かしたという点について訴追され、軍法会議が開かれるまでの数週間、代理を立てた上で代将の任を暫定解除、大佐扱いで謹慎処分となった。しかし数日後、東部ネスト攻略作戦が連邦軍とLSSの合同で開始されるとともに、嫌疑取り消しの上代将に復帰、再びLSSの軍司令官として活躍することになる。

最終更新:2024年04月09日 01:06

*1 隊長:片岡タカノブ大尉。

*2 隊長:デニス・E・マツナガ大尉。

*3 隊長:間内クラヒト1等陸尉。

*4 隊長:賀島ショウタロウ2等陸尉。死後、二階級特進して3等陸佐。

*5 隊長:エリック・ド・サランジェ中尉。

*6 隊長:中前シゲトシ中尉。