偽りの姉妹

作者(匿名可):えふ
マスタリング難易度:多分実セッションに使うのには向いてない シナリオ難易度:任意

『イントロダクション』

あらすじ(トレーラー)

酸の雨から逃れるために、あなたたちは近くにあった建物に入りました。
そこでは4人の傷ついた少女たちがいました。
彼女たちは変異昆虫に襲われた結果、皆ひどく負傷していて、とても戦えそうにありません。
彼女たちはあなたたち姉妹に、その変異昆虫を倒し、自分たちの体が治せるような素材を持ってきてほしいと頼むのですが……。
そこで姉妹達を待ち受けていたのは、狂気の物語でしかありませんでした。
(【注意】『占星術殺人事件』のネタを劣化して割ってしまっています)

シナリオを行う上での予備知識

特になし

NPCデータ

  • ガスト(頭無し) ジャンク。彼女はこのシナリオ中意思ある行動を起こしませんので性格は設定されていません。
  • ハッカ(腕無し) ホリック。好戦的で少しガサツな、男勝りな性格の少女です。腕以外の攻撃手段を一つは持たせることを推奨します。
  • カナメ(胴無し) オートマトン。女剣豪のような喋り方をする冷静な少女です。
  • フロワ(脚無し) アリス。丁寧語で話す、人懐っこくてふわふわとした雰囲気の少女です。

ハンドアウト

特になし

『アドベンチャーパート』

導入

PC達が外を歩いていると、ひどい酸性雨が降ってきます。その酸はなかなか強く、強靭なドールの体であってもあまり長期間さらされては無事で済みはしないでしょう。
辺りを見ても、ほとんどの建物は酸による腐食を受けており、雨宿り先として使えそうにありません。
しかしながら、一つだけ酸の腐食をほとんど受けていない建物を見つけます。
ドールたちがなかなか建物に入ろうとしないのであれば、このまま外に居てはダメージを受けることになるがそれでいいか、と警告しましょう。
それでも外にいるというのであれば実際に1,2点ダメージを与えてしまってください。

カルマの設定

「人助けの依頼を受けること」

イベント

○少女たちの設定(イベントではありません。NC情報)
中に入ると、そこには四人の少女が暮らしています。
彼女たちはみな酷く損傷しており、みなそれぞれ頭部、腕部、胴部、脚部を全損してしまっています。
頭部を損傷してる少女は時折痙攣しますが、意識のあるような動きをすることはありません。
ドールならば頭が無くても動けるのでは、といぶかしがるPLがいれば「確かに普通のドールならば動くはずですが、あなた達はまだこの終わった世界では初心者でしかありません。ですからこの少女が動かないのが自然なのか不自然なのかは判断できません」などと説明しておきましょう。
残りの3人の少女はひどく損傷してはいるものの、流石はドール。ほぼ自由に活動することができます。
頭部を損傷した少女がガスト、腕部を損傷した少女がハッカ、胴部を損傷した少女がカナメ、脚部を損傷した少女がフロワという名前です。
この4人(会話が可能なのは3人)姉妹達は出来るだけ和気藹々とした、愛すべき仲良し姉妹として演出してください。
実はガストはすでに変異昆虫によって殺されてしまっています。また、残りの3人は戦闘で負傷したのではありません。
ここにいるガストと呼ばれる少女は、残りの3人達が心のよるべとするために作った偽物であり、3人の腕、胴、脚をつぎはぎして作られたただの肉人形です。
よってドールとして活動することは出来ず、時折痙攣するだけでしかありません。
他の3人の少女たちは皆既に狂気に陥ってしまっています。

○自己紹介
PC達が建物に入ってきたとき、3人の少女はPC達を敵と警戒し、ハッカは他の二人を守るために前に出ます。
この時、彼女たちの体がぼろぼろであること。首のない少女が奥の方で座らされていることを伝えてください。
PC達は少女たちのぼろぼろの姿、特に時折痙攣している首のない少女に恐怖感を覚えます。狂気判定をさせてください。
自分たちがドールであるという旨を述べれば、多少は疑いつつも彼女たちは比較的すんなりとその事実を認めてくれます。
その後3人の少女は自己紹介をし、またフロワがガストを喋れない本人に代わってPC達に紹介します。
フロワはガストを紹介し終えると「そうだ、4人で撮った写真があるんです!」と言ってPC達に顔のわかる3人とおそらくはガストと呼ばれる子であろう少女が笑顔で写っている写真を見せてくれます(なお、死後撮った写真です)。NCが望むのであれば、『笑顔』などのカケラを与えても構いません。

○何故負傷しているのかと聞くと(PC達が尋ねないようならNPCの側からそれとなく事情を話し始めてください)
会話例:
ハッカ「フン、この前変異昆虫の襲撃を受けたんだ。その日はちょっと、私がガストと喧嘩しちゃって……、お互い頭を冷やしたほうがいいだろうってガストが暫く外に出ていったんだ。で、その間に変異昆虫がやって来て……」
カナメ「で、もちろん大苦戦。おまけにハッカは私のせいだ私のせいだって泣き出すし……」
ハッカ「おい、その話はナシっつっただろ!」
フロワ「うふふ、あの時のハッカちゃんはかわいかったなぁ」
ハッカ「やめろって……」
カナメ「ああすまない口がすべった。でまあ途中でガストも戻ってきたし、何とか追い払うことはできたんだが、皆手ひどくやられてしまってな。このざまだ。せめてガストの奴だけでもどうにかしてやりたかったんだがな。喋れないのはかわいそう過ぎる」
カナメ「頼める道理なんてないことを承知で頼みがある。その変異昆虫を倒して、体を治せそうな素材を持ってきてはくれないか? 出来る限りの礼はさせてもらう。大したものはないが、ここにあるものならなんだって持って行っていい。だから……頼む」
のようになり、このカナメの頼みを受けるとカルマが達成されます。

○変異昆虫との戦い
変異昆虫は北の森から来たこと。ハッカたち姉妹が弱らせたはずだが数日たっているので既に回復しているかもしれないこと。などをハッカたちの口から伝えます。
雨がやむのを待ってPC達が北の森へ向かうと、特に何のイベントも起こさず変異昆虫(シデムシの強化版のようなもの)が現れます。
ですがここではバトルパートは発生しません。
変異昆虫はすでに弱っているらしく、比較的簡単に倒せます。
各姉妹に行動判定を行わせ、成功したら任意のパーツを一つだけ、失敗したら二つを損傷させることで戦闘に勝利したものとみなします。
戦闘に勝利すれば、ハッカたちの修復に必要な素材は集まります。
戦闘終了後、PC達に再び行動判定を行わせてください。視覚、聴覚に関係するパーツが使用可能です。
  • 判定に成功したら(全員が失敗した場合も成功と同じイベントを起こしてください。シナリオ上必要なイベントです)
蟲の苗床にされた、哀れな少女の遺体を発見します。しかも驚くべきことに、その顔は写真で見たガストのものと同一です。
PC達に-1の修正で狂気判定を行わせてください。
判定に大成功していた場合は、あの建物にいたガストと呼ばれる頭のない少女よりも、この哀れな少女の遺体の方が写真で見たガストに体つきが近いことに気が付きます。

○カタストロフ
少女の遺体を発見して少しすると、再び酸の雨が降ってきます。なんにせよ、一度建物に戻るべきだとNCから進言してよいです。
その際、PCが望むのならば少女の死体を持ち帰らせても構いません。持ち帰らなくてもシナリオ上問題はありません。
PC達が建物に戻り、ハッカたちに修復のための素材を渡すと、彼女たちは大層喜び、PC達に礼を言ってから体の修復を開始します。
(ガストの死体を訝しんだPC達が修復素材をなかなか渡そうとしなければ、「おお、取ってきてくれたのか、ありがとう!」などといってこちらから働きかけてしまってください)
しかし彼女たちは一向にガストの体を修復しようとはしません。まるでガストの体を修復するという選択肢が初めからないような、そんな雰囲気で自分の体を治しています。
PC達がガストの体を調べようすればハッカたちは不自然な方法でそれを止めようとします。(例えば明らかにわざと突き飛ばし「手が滑った」というなど)
その不自然さに、PC達は恐怖を覚えます。PC達に狂気判定を行わせてください。
  • 持ち帰ってきたガストの死体を見せる、あるいはガストの顔をした死体が存在したことを伝えると。
会話例:
フロワ「嘘ですよ、そんなの」
カナメ「そうだ、ガストは死んでなんかいない」
ハッカ「嘘に決まってる! だってガストが、ガストが、死んだはずがない。そんなわけない。だってそうだとしたら、私が、私が殺したようなもんじゃ……」
カナメ「違うハッカ、そんなはずがない! ガストは、ガストは生きている! 死んでなんかない!」
フロワ「……わかった。やっぱり、この子たち、ネクロマンサーの手先だったんだよ。だからこんな嘘をつくんだ。だからすぐに殺さないと! 殺さないと。コロサナイト」
のように少女たちは理性を失い、襲い掛かってきます。-2の修正で、PC達に狂気判定を行わせてください。

『バトルパート』

ハッカ、カナメ、フロワの3体のサヴァントをNCが任意で作成してください。
望むのであれば、戦力が拮抗することを望んだNCが増援を送ったことにして、その他ホラーなどを出現させても構いません。

『エンドパート』

そこには3つの動かぬ骸と、ガストと呼ばれていた頭のない体だけが残りました。
PC達がガストの体を調べるならば、行動判定をさせてください。視覚に関するパーツが使用できます。
行動判定に成功すれば、その体が不自然なものに見えます。まるで3つの素材を張り合わせたコラージュ画像のようなチグハグさがあるのです。
大成功ならば、当たりに転がる3つの死体と比較することで、その体がハッカの腕、カナメの胴、フロワの脚のつぎはぎであることに気が付きます。
偽物のガストの体が3人のつぎはぎで出来ている事に気が付いたPCは、姉妹を失う哀しみに耐えきれず、狂気に落ちた3人のことを思い、そしてそれが明日の自分の姿でないとは言い切れないことに怯えます。-2の修正で狂気判定を行わせてください。
この狂気判定に失敗したPCがいれば、3人の狂気に思いをはせるそのPCの目にあるものが映ります。
それはおそらくフロワの物であったのだろうカメラです。4人の思い出が詰まっていたのだろうカメラです。
そのPCが望むのであれば、カメラを『たからもの』として取得しても構いません。
PC達が望むのなら、この哀れな姉妹たちを埋葬することも可能です。その場合、『葬儀』『埋葬』などのカケラを与えてもよいでしょう。

エンディング例

気が付くと雨は止んでいます。
もうここには、なにもありません。
仲間の死に耐えられなかった、哀れな姉妹たちのむくろ以外はもう何も。
あなた達はやがてこの建物を去って行きます。
黄色い雲は、まるで少女たちを嘲笑っているかのようでした。

『その他』

出会う姉妹の設定などはNCによって任意で変えてしまっても構いません。
ですがハッカとガストが喧嘩してしまい、頭を冷やすために出て行ったガストが変異昆虫にやられてしまうという部分は出来るだけ残しておいてください。
その自責の念があるからこそ、姉妹達は狂気に陥ってしまったのですから。

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最終更新:2013年03月24日 03:54