超獣機神ダンクーガの最終回
ギルドロームとルーナの裏切りに遭い、 ムゲ帝国に見捨てられたシャピロは逆襲に出た。 だが、すでに残された戦力では、 ガンドールとダンクーガに立ち向かえる力はなく 火星基地は、すべて破壊された。 神への野望を果たせぬまま、 アステロイド基地でシャピロは倒れた……
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シャピロの亡骸を抱いたままの沙羅を、忍たちが見つめる。
亮「忍、わかってやれ。沙羅の気持ちを」
忍「あぁ、わかってる。だがな……」
亮「だが?」
忍「……いや、いいんだ」
亮「そうか……」
沙羅が忍たちのほうへ向き直るが、ガックリと膝をつく。
一同「沙羅!」「沙羅!」
忍「気を失ってる……」
亮「張り詰めいたものが、プッツリ切れたんだ」
不気味な振動が響く。
葉月「この振動は……? 獣戦機隊はただちに帰還せよ、帰還せよ! アステロイド基地の破壊が迫っている! ガンドール、離脱用意!」
乗組員「ガンドール、離脱用意!」
忍「行くぜ!」
雅人「うん!」
亮がシャピロを見やる。
亮 (あんたの気持ち、わからんでもなかったがな…… だが力だけでは、人の心はどうすることもできん)
ガンドールがアステロイド基地を後にする。
シャピロを残したまま、アステロイド基地が炎に包まれる。
ムゲ帝国の前線基地。
『アステロイド前線基地、消滅しました』
ムゲ帝王「我々は奴らを見くびりすぎたようだな。まぁ、良い。こんなこともあろうかと、ギルドロームをまだあの宇宙に残してある」
デスガイアー「しかし、ギルドローム将軍が万が一敗れた場合……」
ムゲ帝王「フフフ。それも面白いではないか、デスガイアー。もしそのような強敵がこの宇宙に現れたのであれば、貴様と2人、また思う存分戦おうではないか。そして再び力の帝国を築き直すのだ。さぁ、立て、デスガイアー」
デスガイアー「はっ! ありがたきお言葉、身に余る光栄。このデスガイアー、若き日を思い出し、思う存分戦う覚悟! 来るなら来い、ダンクーガ! 貴様はこのデスガイアーが倒す! 必ず叩き潰す! 燃える、燃えるぞ! 血が、戦いの血が騒ぐ!」
ガンドール艦内では、葉月博士たちのもと、ムゲ帝国の分析が行なわれている。
葉月「さまざまな情報をコンピューターにインプットした結果、この方向に敵の宇宙があることが判明した」
忍「じゃ、このまっすぐをずっと飛んできゃ、ムゲ野郎をぶっ叩けるわけだ!」
葉月「いや、そう簡単にはいかん。知ってのとおり竜の命、つまりこのガンドールのエネルギーは、180日と3日しかもたない。しかも、奴らの宇宙と我々の太陽系があるこの宇宙とは、別の空間に存在している。そこへ到達するためには、超空間を移動しなければならない」
忍「超空間かなんか知らねぇが、このガンドールだったら!」
葉月「いや、竜の命、つまりガンドールの融合炉は、180日と3日しかもたないのだ。もう残りは少ない。しかも敵の宇宙へ超空間を通って移動するには、膨大なエネルギー量を必要とする。今、ガンドールのプラズマエネルギー融合炉に残ったエネルギーで送り込める質量は……」
亮「まさか……」
忍「……ダンクーガの質量?」
葉月「だがしかし、この方法はとるわけにはいかん」
亮「地獄への片道切符ってわけですね」
葉月「うむ。ガンドール砲のエネルギーに乗せて、敵の宇宙へ送り込むことはできる。だが帰って来る方法、エネルギーがない……」
忍「チッ、そんなことは構やしねぇ! 今、奴らをぶっ叩かねぇと、またやって来る! 俺は行くぜ!」
雅人「怖いけど、僕も行く!」
亮「……だがな、忍」
忍「亮! てめぇ、ここまで来て行かねぇって言うのか!?」
亮「いや、そうじゃねぇ。沙羅抜きでどう戦うか、その方法を考えねぇと」
忍「う…… 沙羅か」
亮「あぁ。ダンクーガは、我々の戦闘エネルギーの集合体だ。1人欠けても戦いにはならん」
雅人「そうだね。沙羅がいなくちゃ、僕たち……」
忍「あぁ…… だがな、なんか方法があるはずだ! なぁ、博士!?」
葉月「しかし、クーガー1台欠けても、合体エネルギーはありえない」
忍「畜生! ここまで…… ここまで奴らを追い詰めながら、あと1歩、あと1歩ってところで! くっ……くそぉ!」
「フン! 何、泣きごと言ってんだい!? 冗談じゃないよ!」
沙羅が現れる。
沙羅「私を抜きにして、そんなこと決めないどいて! もう私には失うものは何もないんだ。どこへだって行くよ! 行ってとことん戦ってやるよ!」
忍「沙羅、お前……」
沙羅「何も言わないでおくれ。心配してくれるみんなの気持ちは痛いほどわかる。だから…… だから私も、一緒に連れてってもらうよ!」
忍「よぉし、これで決まりだ。博士、もう止めることはできねぇぜ!」
葉月「うむ、仕方ないだろう。だが、私もダンクーガに片道切符を渡すつもりはない。地球へ戻り、ガンドールのエネルギーの補充と、超空間移動機能をガンドールに付け加える作業を急ぐ」
忍「へっ、大丈夫だって。それまでにゃ、ムゲ野郎に『参った』って言わせてるぜ! なぁ?」
雅人「そうさ、軽いもんさ!」
葉月「結城、悪いが聞かせてくれ。ローラの歌、シャピロが作った歌には、何か意味があったのか?」
沙羅「えぇ。あの神の洞窟に共鳴した宇宙音のハーモニーが乱れ、あいつはそれを聞いて、あんな野望を……」
葉月「宇宙の共鳴か…… あり得るかもしれん」
雅人「あれ、そう言えばローラは?」
葉月「戦闘中の心配で、疲れて眠ってるんじゃないのか?」
その頃ローラは格納庫で、密かに雅人のランドライガーのコクピットに何かをしている。
突如、ガンドールに攻撃が降り注ぐ。
ギルドローム将軍の乗機ギルバウアーが現れる。
忍「あっ、あれは……! 奴は、あの一つ目野郎!」
ギルドローム「フフフ、愚かな地球人よ。貴様たちの勝利は束の間の夢であったことを、このギルドロームが教えてくれよう。そして、この戦いが悪夢の始まりであることを知るであろう。フハハハハ!」
忍「行くぜ!」
忍たちが出撃し、ダンクーガがギルバウアーに立ち向かう。
ギルドローム「出たな、ダンクーガ。今、宇宙を貴様の墓場としてくれる!」
忍「来やがれ、一つ目の化け物め!」
その様子を、ルーナが小型機の中で見ている。
ルーナ「フン。ギルドローム将軍、思う存分戦いなさい。あなたが勝とうが負けようが、私にとってはどうでもいい。私に必要なのは、一番強い男、その力……! ハハハハハ!」
ダンクーガとギルバウアーの戦いが開始される。
ギルドローム「むっ、思ったよりのスピードとパワー。未開の星のマシンとしては、なかなかやるな。だがギルドローム流のやり方は、パワーでもスピードでもない!」
ギルバウアーの胴の一つ目が妖しく光り、幻覚攻撃をしかける。
忍「うっ、化け物め、また目くらましを始めやがったな! 何しようってんだ!?」
ダンクーガの数倍はあろうかという、巨大なギルバウアーの姿が現れる。
忍「こ、こいつは!?」
ギルバウアーの一つ目からのビームが、ダンクーガを捉える。
忍たち「わぁぁ──っ!?」
異様な空間がダンクーガを包み込み、忍たちを翻弄する。
ローラ「大丈夫…… ダンクーガ?」
葉月「ビームに捉えられているだけだが、中の彼らには、別のイメージが与えられているのかもしれない」
ギルドローム「フフフ、ダンクーガが壊れなくとも、間もなく貴様たちの脳が、精神がズタズタになる!」
葉月「藤原、司馬、式部、結城、君たちの与えられている苦痛は……」
忍「幻覚だってんだろ? へっ、こんな術に引っかかる俺じゃねぇ!」
亮「大したもんだぜ、忍! 修行を積んだ俺よりも、その単純なオツムが強いとはな! 沙羅、大丈夫か!?」
沙羅「あぁ、大丈夫さ! もう私には、怖いものなんか何もないからね!」
忍「雅人、大丈夫か!?」
亮「大丈夫か!?」
沙羅「雅人!」
気を失いかけていた雅人が正気を取り戻し、操縦席にあるローラのペンダントに気づく。
雅人「あっ、これは!?」
忍「雅人、気がついたか!?」
雅人「う、うん! 大丈夫だ!」
忍「よぉし、これで行けるぜ! 博士、頼みがある。あの化け物を、ムゲ野郎との宇宙の真ん中に誘い込む!」
葉月「では!?」
忍「そうだ、ガンドール砲のビームを発射してくれ。あいつ諸共ぶち抜いて、俺たちはムゲの宇宙へ突っ込む!」
葉月「……しかし」
亮「それっきゃないようだぜ、博士」
沙羅「あぁ、やるっきゃないね!」
雅人「そうだよ!」
葉月「……やむを得んようだな。ガンドール砲、スタンバイ!」
乗組員「ガンドール砲、スタンバイ!」
ギルドローム「むぅっ!? な、何をしようと? わしの術が効かなかったというのか?」
葉月「ガンドール、始動!」
乗組員「始動します!」
ガンドールが母艦形態から竜形態へと変形する。
射程上に、ダンクーガとギルバウアーを捉える。
ギルドローム「ま、まさか!?」
葉月「発射!」
忍「やってやるぜ!!」
一同「おぅ!!」
ガンドール砲が発射される。
ダンクーガがビームを背面に受け、ギルバウアー目がけて突進する。
ギルドローム「うわ、うわぁぁ──っ!?」
ギルバウアーがビームエネルギーを浴びて、砕け散る。
ダンクーガがエネルギーに乗ったまま、突進し続ける。
葉月「ビームエネルギー、120パーセント持続!」
乗組員「データ良好!」
葉月「頼むぞ…… 藤原、司馬、結城、式部」
忍「やるぜ、俺たちは。イゴール長官、アラン、ゲラールの兄貴、見ていてくれ!」
亮「これも定めか……」
沙羅「新しい宇宙で、新しい夢を見させてもらうよ」
雅人「ローラ……」
宇宙の彼方へと飛び去るダンクーガを、ガンドールの乗組員たちが敬礼で見送る。
葉月「必ず…… 戻って来てくれ!」
異空間内。
ルーナ機が戦場を離脱して、ムゲ本国を目指す。
ルーナ (もうここまで逃げれば…… この空間までは、奴らも追って来られまい。私は帰る、ムゲ帝王のもとへ。そして再び力を取り戻す。フッ、結局あのシャピロという男は、ほんの少し私に夢を見せてくれただけ…… 私にとって男とは、望む物すべてを与えてくれる存在でなければならない!)
突如、ダンクーガが背後から現れる。
ルーナ「な、何!? あ、あれはまさか…… ダンクーガ!?」
エネルギーの奔流とともに突き進むダンクーガが、ルーナ機を跳ね飛ばす。
ルーナ「ど、どうして奴らがこの異空間を飛行して……!? わああぁぁ──っっ!!」
ルーナ機が爆発四散する。
ダンクーガが異空間の彼方へと飛び去って行く。
地球、神の洞窟。
ローラが泉のそばで、祈りを捧げる。
葉月博士がやって来る。
葉月「ローラ、やっぱりここにいたのか。神の洞窟のメロディに、変化はあったかね?」
ローラ「うぅん……」
葉月「そうか……」
ローラ「きっと変わるわ…… そしてお兄ちゃんたち、みんな元気で帰って来る。そうだよね?」
葉月「あぁ、そうだとも。きっと帰って来るさ。彼らのことだ。きっと帰って来る。」
葉月「さぁ、帰ろう」
ローラ「うん」
2人が洞窟を出る。
外には太陽の光が満ち、草花に覆われた大地がどこまでも広がっている。
最終更新:2014年08月08日 12:56