超獣機神ダンクーガ 失われた者たちへの鎮魂歌のエンディング

忍「やったな……!」
雅人「何か、変だよ?」
沙羅「何が?」

赤い空が消えていく。

沙羅「宇宙が消えていく!?」

ムゲ・ゾルバドスの魔宮がそびえ立っている。

忍「あっ、あれは!?」
沙羅「ゾルバドスの、城?」
亮「やっと敵の本拠を突き止めたってわけだ」

ムゲ帝王「愚か者たちが! この私の宇宙の聖域に踏み込み、そしてこの私を怒らせてしまったことを、後悔させてやる」

魔宮から巨大な砲門が突き出す。

ムゲ帝王「肉体よ、滅びるがいい。獣性を超え人知を超え神とならん、それがお前たちの精一杯の進化、ダンクーガに託した願いであったとしたら、それは地球人の底知れぬ無知というもの。なぜなら、お前たち地球人の理想の進化の究極は、この私だからだ!」

忍「何か始めるつもりだぜ!」
亮「気をつけろ!」
一同「おぉっ!」
ムゲ「我が悪霊の餌食となれ……!」

砲門が強烈なエネルギーを放つ。
ダンクーガは身をかわすが、エネルギー波がダンクーガへと方向を変える。

忍「何ぃ!?」

エネルギー波が悪霊と化し、ダンクーガに取りつき、凄まじい衝撃が忍たちを襲う。

一同「うわぁぁ──っ!」「ううぅ──っ!」

ダンクーガの全身が砕け、装甲が剥がれ始める。

忍「いけねぇ!」
雅人「駄目だ…… 気が遠くなっていく……」
亮「ゾルバドスめ……! 物質エネルギーだけでなく、お、俺たちの精神エネルギーまで吸い取ってしまう気か!?」

ムゲ帝王「ワッハッハッハ!」

沙羅「冗談じゃないよ、そんなこと……」
雅人「ロ…… ローラ……」


地球。
ローラの部屋では、愛犬ベッキーが花瓶を倒す。

ローラ「駄目じゃない、ベッキー」

割れた破片を拾おうとして、その先端がローラの指を指す。
ローラが血の滲んだ指を見つめ、忍たちを想う。


忍たちは依然、苦しみ続ける。
亮の脳裏に、自分の師の言葉がよぎる。

(亮…… 今まで何のための修業じゃ? 何のために道を極めてきたのじゃ? 邪悪を絶つ、これが満ちの行き着くところ──)

亮「はっ、老師…… 忍、大丈夫か!?」
忍「あ、あぁ。畜生め! なんとかしねぇと、ダンクーガがもたねぇ」
亮「今、俺が奴の心を読む。何か方法が見つかるかもしれん」

亮が目を閉じ、思念を集中する。

亮「奴の笑い声が聞こえる…… 奴は、この宇宙の悪霊の力を俺たちに送り込んでいるんだ。俺たちの自由を奪っているのは、精神エネルギーだ!」
忍「じゃあ、俺たちも精神エネルギーで! もう、エネルギーなんか残っちゃいねぇ。だがな、奴の後ろに悪霊が渦巻いているっていうんなら、俺は祈るぜ…… 力を借りるぜ。ダンクーガのために死んでいった人たちの力を!」

ダンクーガが断空剣を、力強く構える。

ムゲ帝王「愚かな! まだ無駄な抵抗をしようというのか!?」

忍「お願いだ、力を貸してくれ! イゴール長官…… アラン…… ゲラールの兄貴!」
沙羅「私も頼むよ。シャピロ、力を貸して……!」
雅人「ドン、力を貸して……!」

ダンクーガの剣身に、精神エネルギーが漲ってゆく。

忍「う…… うおおぉぉ──っっ!! やってやるぜぇぇ!!」
一同「おぉぉっっ!!」

ダンクーガが渾身の力で、魔宮目がけて断空剣を投げつける。
断空剣は外壁を突き破り、宮内を突き進み、そしてムゲ帝王の身体に深々と突き刺さる。

ムゲ帝王「おぉっ!? うぅわああぁぁ──っっ!!」

断末魔の叫びと共に、魔宮が崩れ落ちてゆく。

忍「やった!」
雅人「うん!」

突然、大地が大きくひび割れる。
周囲には突風が吹きすさび、雷が鳴り響く。

忍「な、なんだ!?」
亮「ムゲの宇宙の終わりだ。奴が死ねば、奴の宇宙も……」

戦場の惑星が、木端微塵に大爆発を遂げる。


何もなくなった宇宙空間を、ボロボロのダンクーガが漂っている。
機内の忍、沙羅、雅人、亮の4人。
気絶しているのか死んでいるのか、目を閉じたまま動かない。

(沙羅のモノローグ)

ねぇ……
ねぇ、私たち、戦いに勝ったのかしら?
ハン、そうは見えないね、私には。

だってそうだろ?
こんな、こんなふうにボロボロになって、
何もかも奪われちまって、
それで、どうして勝ったなんていえるのさ?

確かに地球は救えたかもしれない。
悪魔の手からね。

でもさ、私たち空しすぎるよ……
違う?

ねぇ、忍、雅人、亮。
ねぇ、みんな聞こえないのかい?

返事をしておくれよ……

基地戦艦ガンドールがダンクーガに接近してゆく。
艦内では、葉月博士がじっとダンクーガを見つめている。
ローラが目を潤ませている。

『ダンクーガ接近。間もなく回収します』


THE END

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年08月08日 12:47