宇宙の騎士テッカマンブレードの第48話


ついに、ラダム樹が一斉開花し、
人類はオービタルリングに避難を開始した。

一方、完成したカタパルトから、
最後の希望を賭けてブルーアース号が発進するが
来襲したソードの執念のボルテッカにより、
その夢は断たれてしまうのであった。

そして今、2つの種族の未来を賭け、
ブラスター化に成功したエビルとブレードとの
雌雄を決する戦いが始まろうとしていた。




壮烈!エビル死す



宇宙空間を舞台に、テッカマンブレードとテッカマンエビルが、最後の戦いを繰り広げている。
オービタルリングに1人で取り残されたアキが、その戦いを窓から見守る。

アキ「Dボウイ…… (どうすることもできないの? 私には、本当に何もしてあげられないの……?)」

エビル「兄さん、とっても嬉しいよ! 今、俺は生きていることの素晴らしさを、この肌で感じているよ」
ブレード「シンヤ…… お前やケンゴ兄さんがラダムとなり、ミユキが死ななければならなかったのも、全て宿命で片付けられるのか!?」
エビル「嫌だなぁ、兄さん。俺はむしろ感謝しているのさ。ラダムになったおかげで、兄さんとの勝負にケリがつけられることをね!」

一歩も譲らない戦いの末、ブレードがオービタルリング壁面へ叩きつけられる。

エビル「覚悟おぉぉ!!」

エビルを突進をブレードがかろうじて回避し、反撃に転じる。


一方の地球上では、ラダムたちの侵略が始まっている。
スペースナイツ基地には、次々と世界中の情報が入ってくる。

「A-164地区、連絡が途絶えました!」「F-502地区もです」
「D-375地区、生存者20パーセントを切りました!」

ミリィ「チーフ、このままじゃ」
フリーマン「わかっている。だが今は、1人でも多くの人間をオービタルリングに脱出させる以外、手はない。ブルーアース号も、ソルテッカマンさえも失った我々には、今は他にできることはない。あとは、テッカマンブレードに託すしか」
ミリィ「お願い、Dボウイ……」


宇宙空間では依然、ブレードとエビルの激戦が続いている。

エビル「最高だぁ! 最高だよ、兄さん! こんなにも充実した時を過ごせるなんて。もう、ラダムも人間も関係ない!! この瞬間が俺のすべてだよ、兄さん!」
ブレード「シンヤ!」


地球上では、人々がラダムから逃れて、次々にオービタルリングへと駆け込んでいる。

兵士「待ってください! 落ち着いて! 落ち着いて、順番に! 一度には乗りこめません! 落ち着いてください!」

その中に母と幼い子供がおり、子供が転倒する。

子供「ママぁ!」
人々「どけどけぇ!」「邪魔だぁ!」「死にたいのか!?」
母親「坊やぁ!?」

人々に危うく踏みつぶされそうになる子供を、兵士が助け、抱き上げる。

兵士「大丈夫か、坊主?」
母親「どうも、ありがとうございます」

彼方に、侵略してくるラダムの姿が見える。

兵士「チッ、ついにここにも押し寄せて来たか」
子供「ぼくたち、みんなしんじゃうの?」
兵士「大丈夫さ、坊主。俺たちには、まだテッカマンブレードがいる!」
子供「てっかまんぶれーど……?」


宇宙空間での戦い。

ブレード「ボルテッカアアァァ──ッッ!!

ブレードがテッカマン最強の武器、ボルテッカを放つ。
エビルはそれをかわそうとするが、かわしきれずに肩をかすってしまう。

怯んだエビルの隙を突き、ブレードが突進する。

ブレード「うぅおおぉぉ──っ!」

チャンスかと思われたそのとき、額のランプが点滅を始め、ブレードは苦しみ始める。
不完全なテッカマンであるブレードの、タイムリミットである30分が近づいていたのだ。
すかさずエビルの反撃。吹き飛ばされたブレードがオービタルリング壁面をぶち破り、内部に飛び込む。

アキ「Dボウイ!?」

タイムリミット間際で苦しむブレードに、エビルが近づいてくる。

エビル「フフフ。どうしたんだい、兄さん。もう息切れかい?」
ブレード「シンヤ……」

身動きができないブレードを目がけ、エビルがランサーを振り下ろす。
これで最期か──と思いきや、エビルはランサーを、ブレードの目の前で止める。

ブレード「なぜだ……? なぜ、止めた?」
エビル「フン、こんな形で終わらせたくはないのさ。兄さんとの戦いをね。そんな弱々しい兄さんに勝っても、嬉しくも何ともないさ。対等の条件でぶつかって勝たなきゃね。テックセットを解きなよ、兄さん。決着は、1時間後だ」
ブレード「シ、シンヤ……」
エビル「フフフ…… ハッハッハッハ!」

エビルが高笑いしながら、去って行く。

ブレード「ペガス!」


アキがDボウイのもとへ急ぐ。壁にもたれかかって倒れている人影が見える。

アキ「Dボウイ!? Dボウイ!」

Dボウイと思いきや、それはテッカマンエビル・シンヤ。
アキは銃を抜き、銃口をシンヤへ突きつける。

シンヤ「気丈だね…… さすがは、兄さんが愛する女性だけのことはあるな。死んだ母さんにそっくりだ」
アキ「え……?」
シンヤ「死んだ母さんは、決して俺たちを、甘やかしはしない人だった。よく言われたよ、男の子は泣くんじゃないって」
アキ「なぜ、そんなことを私に?」
シンヤ「フッ、さぁね。ただ、誰かに無性に話したくなっただけさ。ぐぅっ!」

懐から血が、ポタポタと滴り落ちる。

シンヤ「ブラスター化した代償さ。でも、これで兄さんと互角に戦える……」
アキ「Dボウイは、あなたのお兄さんなのよ。どうしてそこまで、ボロボロになってまで戦うの? そんなにお兄さんが憎いの?」
シンヤ「憎い? フッ、憎いわけじゃないよ。むしろ、愛しているんだ。愛するゆえに、憎い。血の宿命さ」
アキ「血の宿命?」
シンヤ「テッカマンにならなくても、いずれは戦うことになったはず。元々一つだったものが引かれあい、元に戻ろうとする戦いなんだから。俺と兄さんの戦い、邪魔をしないでくれ!」

シンヤが、よろよろと立ち上がる。

アキ「行かせないわ! Dボウイは殺させない。今の私にとって、Dボウイは全てよ。Dボウイを守るためだったら、私はどんなことだってする。今ここで、あなたを……!」
シンヤ「できるかい? 兄さんと同じ顔の俺を」

銃を握るアキの手が震える。
シンヤは臆することなく、アキに近づいてくる。
アキはついに、引き金にかけた指に力を込める。

声「やめるんだ! アキ!」

暗がりの中から、Dボウイが現れる。

アキ「Dボウイ!」
Dボウイ「アキ、これは俺とシンヤの戦いだ。下がっていてくれ」
アキ「駄目! 私は、私は……私は!」
Dボウイ「下がるんだ! 頼む、下がってくれ!」
アキ「嫌……」
Dボウイ「下がれ!」

アキはとうとう銃を落とし、膝を折って崩れ落ちる。

タカヤ「シンヤ……」


ブレードとエビルの戦いが再開される。

ブレードはもちろん、エビルもまた満身創痍である。
互いにランサーの攻撃は狙いを外れ、体中に傷を負い、攻撃のたびに息を切らす。
エビルがついに決意し、最後の手段に出る。

エビル「うぅぅおおぉぉ──っっ!!」

突然の咆哮と共に、エビルの全身が赤い光に包まれる。
上半身の装甲が鋭角的に変貌し、背からは異様な尾を備えた姿へと変わってゆく。

ブレード「エビルが、ブラスター化を!?」

悪魔を思わせる異様な姿となったブラスターテッカマン・エビルが姿を現す。

ブレード「うぅぅおおぉぉ──っっ!!」

ブレードもまたブラスターテッカマンへと進化する。
ブラスターテッカマンブレードとエビル、進化したテッカマン同士の死闘が幕を開ける。

ブレードとエビルが二筋の光と化し、地球の大気圏内へと舞い降り、超高速で地球上空を駆け抜ける。
砂漠の上、山々、オーロラの光の中。
アラスカのスペースナイツ基地からも2人の姿は見え、ミリィは祈るように戦いを見守る。

人々「ブレードだ!」「テッカマンブレードだぞ!」
レビン「Dボウイ! 負けるんじゃないわよ!」
子供たち「テッカマンブレード、がんばれ!」 「ブレード!」


戦いの場は再び宇宙空間に移り、ブレードとエビルは、アキの目の前に躍り出る。

エビル「これで最後だ……! ブレード!」

ブレードとエビルが互いに、ボルテッカの発射態勢に入る。

エビル「ボルテッカアアァァ──ッッ!!」
ブレード「ボルテッカアアァァ──ッッ!!」

ブラスターテッカマン同士による、最大出力のボルテッカが放たれる。
壮絶な光と衝撃がぶつかり合い、わずかに力負けしたブレードが、全身の装甲を砕かれつつ吹き飛ばされてしまう。
凄まじい光の奔流の中、エビルが同じく全身の装甲を砕かれつつ、ランサーを構えて突進して来る。

ブレード「何っ!?」
エビル「さらばだ、ブレードぉぉ!! うぅおおぉぉ──っ!!」

ブレードがとっさに身構えるものの、エビルの方が一手早く、絶体絶命──

エビル「──ぐぉっ!?」

突如、エビルの動きが鈍る。無理なブラスター化による肉体への反動が、ついに限界に達したのだ。
エビルのランサーの狙いは外れ、ブレードの肩を貫く。
そしてブレードの反撃のランサーは、エビルの腹を貫く。

2人のテッカマンはそのまま、オービタルリングへと落下してゆく。


オービタルリング内。
火の手が上がる中、ブレードがかろうじて、致命傷を逃れている。
しかしエビルはブレードのランサーにより、急所を貫かれている。

エビル「うぅおおぉ……」
ブレード「エビル!? ……!?」

エビルが力尽き、倒れ伏す。

ブレード「エビル!? エビル!」

エビルの頭部のクリスタルが光り出し、中から小さな虫が外へ飛び出し、焼けつく床の上で力なく蠢く。
テックセットが解除され、シンヤの姿に戻る。
ブレードがシンヤを助け起こす。

ブレード「シンヤ!」
シンヤ「兄さん…… 悪い夢を、見ていたみたいだよ……」
ブレード「シンヤ!? お前、元に!?」

シンヤの顔からは険しさが消え、穏やかな表情に戻っている。

シンヤ「あれが、ラダムの本体さ…… ラダムは、寄生生物なんだ。体を持たない、脳髄だけが高度に進化した知的生命体かもしれない。どんな環境だろうと、高等生物の体を奪うことによって、星そのものを支配できるからね……」
ブレード「こいつが、お前を……!? もっと早くこいつの存在に気付いていれば、お前を元に戻すことも!」
シンヤ「無理だよ…… 僕がもうすぐ死ぬから、ラダムは僕を見捨てたんだ。仕方ないことだったんだ…… うぅっ!」
ブレード「シンヤ!?」
シンヤ「今、世界中で生み出されている素体テッカマンは、彼らの体なのさ…… 勝った、よね……?」
ブレード「う……」
シンヤ「僕は兄さんに、勝ったんだよね……? ブラスター化の限界が、あそこで来なければ、あのとき確実に、兄さんの心臓を捉えてたよ…… ようやく、兄さんに勝ったんだ…… 素晴らしいよ、兄さんは…… 本気で、僕と戦ってくれたんだもの…… うぅっ!」
ブレード「もう喋るな!」
シンヤ「嬉しい、はずなのに…… 悲しいな…… いつまでも、兄さんと…… 戦っていたかった…… 目標、なくなっちゃったじゃないか……」
ブレード「シンヤ……」

シンヤが力ない手で、自らのクリスタルを差し出す。

シンヤ「これで、月へ行きなよ…… ケンゴ兄さんが、待っている……」
ブレード「シンヤ!」
シンヤ「ごめんね…… 兄さん……」

シンヤが兄の腕の中で、事切れる。

床を這い回るラダム虫を、ブレードが踏み潰す。

ブレード「こいつのために……! こいつの、こいつのためにぃ!!」

怒りと憎しみを込めるように、ブレードはラダム虫を何度も、跡形ないまでに踏み潰す。

ブレード「……うううおおぉぉ──っっ!!」


そこへ、アキが駆けつけてくる。

アキ「Dボウ──イ! Dボウイ、良かった!」
ブレード「来るな! アキ!」
アキ「う……!?」
ブレード「来るな」
アキ「Dボウイ……!? はっ!」

ブレードの手にしているエビルのクリスタルに、アキが気づく。

アキ「それは!?」
ブレード「アキ、俺は今から月へ行く!」
アキ「えっ!?」

ブレードが通路壁面のレバーを倒す。
通路の隔壁が閉じてゆく。

アキ「待って、Dボウイ!」
ブレード「来るな!」

ブレードは次第に、隔壁の向こうへと消えてゆく。
アキは必死に駆け寄ろうとする。

アキ「Dボウイ! もう一度、もう一度、顔を見せて! Dボウイ!!」
ブレード「Dボウイも相羽タカヤも今ここで死んだ! 俺はテッカマンブレードだ!!」
アキ「Dボウ──イ!! Dボウイ、Dボウ──イ!!」

完全に閉じてしまった隔壁にアキがすがりつき、泣き崩れる。


ペガスに乗り込んだブレードは、シンヤのクリスタルを掲げ、オービタルリングを飛び立つ。

アキ「Dボウ──イ!!」

ブレード「オメガ…… これですべて、終わりにしてやる!!」

ブレードが月面のラダム基地を目指し、宇宙空間を突き進む。
この世にたった1人残った肉親のもとへ。

その、たった1人の肉親を、自らの手で殺すために……


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最終更新:2018年10月27日 19:44