魔法騎士レイアース2の第1話

※ ここまでの物語は本家エンディングドットコム(アニメ版)をご覧ください


獅堂 光(しどう ひかる)龍咲(りゅうざき) 海、鳳凰寺 (ふう)の3人が、異世界セフィーロを救う魔法騎士(マジックナイト)としての戦いを終え、東京に戻って来てから何日かが過ぎた。

光は、自宅の剣道道場で座している。
2人の兄、次男の(まさる)と三男の(かける)が、その様子を覗いている。

翔「……光 ここのところ ずっと元気ないなぁ」
優「このまえ東京タワーに社会科見学にいってから ずっとあぁだぞ」
翔「東京タワーで何かあったのか!?」
優「な 何があったというんだ??!」
翔「東京タワーのみやげ物屋で みやげを買う団体客にはねられたとか! 光があんまりかわいいから 変な奴が声をかけたとか──っ!!」
優「おれたちのかわいい光に不届きな真似をする輩はゆるさんぞ!!!」
優・翔「うおおおおお
翔「あたりまえだ! 光と親しくつきあいたい奴は 俺たち三兄弟を倒した後 交換日記からはじめてもらうぞ!」
優・翔「オォ──ッ

意気込む2人をよそに、長男の(さとる)が、光の前に進み出る。

光「覚兄様……」
覚「元気がない訳は話せないか」

光が無言で頷く。

覚「わかった なら聞かない」
光「ごめんなさい 覚兄様……」
覚「己の迷いは己で断つ 光がそう決めたのなら 最後まで貫けばいい」
光「……はい」

優と翔も、光のもとへ。

優「ずるいぞ 覚兄さん! 俺も心配なんだからな」
光「優兄様」
翔「あ~っ 俺だって かわいい光が心配だ!! つらいことがあるなら兄様の胸でお泣き」
光「翔兄様 ……ありがとう 兄様たち」


海は自宅で両親と共に、朝食をとっている。
沈んだ面持ちの海を、母が気遣う。

母「どうしたの? 海ちゃん ママの料理 何か失敗してた?」
海「あ 違うの ママ ちゃんとおいしいわ」
父「ほんとうにどうしたんだい 海 最近ずっと元気がないね 海のお手製ケーキもすっかりご無沙汰だし」
海「う ううん なんでもないの ごめんなさい ちょっと食欲がないだけ」
母「具合が悪いなら 一度お医者様に見ていただいたほうがいいんじゃないかしら」
海「ほんとうにだいじょうぶよ パパ ママ ごめんね 心配かけて」
父「ひょっとして恋わずらいでもしてるのかい?」
海「ち…… 違うわよ!!」
父「恋はしたほうがいいぞ 海 恋をしたおかげで パパはママのようなすてきな女性と結婚できたんだから」
母「ま パパったら」
海「ああ 朝っぱらからこの万年新婚夫婦は…… …… そんなロマンチックな悩みじゃないのよ……」


風が自宅を発つ。

風「いってまいります」

姉の(くう)が呼び止める。

空「待って 風さん」
風「空お姉様」
空「途中までいっしょにいきましょ」

空「あなたが最近 元気がないから お父様 お母様がご心配なさってるわ」
風「…… すみません……」
空「あやまらないでいいのよ なるべくお父様お母様にご心配おかけしないよう いつもがんばっているあなたですもの よっぽどのことがあったのね」
風「……」
空「風さん その悩みをいっしょに分かち合える人はいる? 悩みをわかってくれる人がいないのはつらいわ でも一人じゃないなら いっしょに悩んでいっしょにその悩みからの出口を捜してくれる人がいるなら…… だいじょうぶよ きっと」
風「……はい」
空「今朝お母様に 帰りが遅くなるとお話ししてたのは その人たちに会うため?」
風「ええ 今日の放課後『東京タワー』で会うお約束を」
空「『東京タワー』 『東京タワー』で売っている『ひよこまんじゅう』はおいしいわね」

深刻そうだった空が、急に浮ついた笑顔となって浮かれる。

風「…… とりあえず おみやげに買ってまいりますわ お姉様 『東京タワー』は 私たちにとって忘れられない場所ですから……」


学校の放課後、東京タワーの展望台。
光が、空を見つめている。

光「エメロード姫……」

海が不意に光を抱きしめ、風も現れる。

光「わっ!」
海「そんな泣きそうな顔しないで 私までまた泣いちゃいそうだわ」
光「海ちゃん 風ちゃん 夢に見るんだ 『セフィーロ』でのこと この『東京タワー』から招喚された『セフィーロ』 火山 海 空に浮かんだ山 『柱』であるエメロード姫に支えられた 不思議な世界 そこで起こった『戦い』 エメロード姫 『セフィーロ』という世界の『柱』 その『意志の力』で『セフィーロ』の平和をたった一人で支えていた…… その人を 私がこの手で……」

光が拳を握りしめ、あまりの力に血が滴る。

海「や やめなさい 光!」

風が優しく、ハンカチで血を拭う。

風「『セフィーロ』で使えた『魔法』も この『東京』では使えないようです 私には治してさしあげられないんですから 無茶しないで……」
光「ごめん…… でも 私がいい気になって 正義の味方きどりで『魔法騎士』になったから…… ザガートが戦いを起こした理由も エメロード姫のほんとうの『心』もわからなかったのに……」
海「それは私も同じよ 東京に帰りたいって 最初はそれだけだったけど…… でも『魔法』を使えるようになって 成長する武器と防具を手に入れて 『魔神(マシン)』を蘇らせて…… 自分のすることはきっと エメロード姫やセフィーロのみんなが喜んでくれることだと思っていた」
風「まるでRPG(ロールプレイングゲーム)のような世界でしたのに『現実』だったんですね ゲームのようにはっきりと『正義』と『悪』とに分かれていない 悲しい『戦い』 それぞれ自分自身の『願い』のために戦って あんな悲しい結末を迎えてしまった……」
海「私 あれからもうRPGできなくなっちゃった どんなゲームの敵相手でも 『この敵にもほんとうはどうしようもない事情があったんじゃないか』って思えちゃって プレイヤーの私は自分が『勇者』だと信じてても 敵にしてみれば『悪者』は私なんだなって どうしても考えちゃうの」
光「……もう一度『セフィーロ』にいきたい 私たち結局 何もできなかった ……もう一度セフィーロにいって 今度こそ『柱』であるエメロード姫が大切に守っていたあの国のために 自分ができることをしたい……」
海「そうね」
風「そうですわね」

突如として、眩い閃光が3人を包む。

光「この光は!」
海「『セフィーロ』に招喚された あのときと……」
風「同じ光ですわ!」


光がやむと、3人は真っ暗な空中にいる。

海「!! こ ここは!?」

落雷が響く。

海「きゃっ! 雷!?」
風「空がまっくらですわ!」
海「きゃあああ──!!」
光「ここはどこだ!?

眼下には一面、波打っている何かが見える。

海「海に落ちる──!」
風「あれは海ではありませんわ!」
海「え?!」
風「地面が波うっているんですわ!」
海「このままじゃ海みたいな地面にぶつかっちゃう──!」

何かが光たち3人を受け止める。
光たちが初めてセフィーロに来たとき、一同を助けた巨大魚、フューラ。

光「フューラ!? フューラじゃないか!」
海「フューラ! 助けてくれたのね! ありがと──っ♥」
風「……ということは ここは『セフィーロ』」
海「そんな……! 海や空に浮かんだ山や火山は どうなったの?」
光「私たちを どこかへつれてってくれるのか?」

フューラは3人を乗せたまま、地上からそびえ立つ城へと舞って行く。

光「お城……?」

光たちが城に降り立つ。
魔法騎士としての武器を作った女性、創師(ファル)プレセアがいる。

光「プレセア!! プレセア!」
プレセア「ヒカル ウミ フウ ……導師(グル)クレフにうかがったわ ……つらい戦いだったのね 創師として異世界から招喚される『魔法騎士の伝説』は知っていたけれど まさかこんな真実が隠されていたなんて…… ……ごめんなさい 私の作った武器は あなたたちを苦しめる原因になってしまったわね」

光たちは、首を横にふる。

プレセア「さ いらっしゃい 導師と王子がお待ちよ」
海「導師はわかるけど…… 王子?」

プレセアは光たち3人を、城の奥に招く。
導師クレフが、光たちを待ち受けている。

プレセア「導師 王子 ヒカル ウミ フウです」
光「クレフ……」
クレフ「異世界の少女たちよ 何も知らぬまま つらい戦いへ導いてしまったのは この私だ ……すまない」
海「いいえ…… 異世界からきた私たちより あなたのほうがよっぽどエメロード姫を知っていた…… あなただってつらかったはずよ
クレフ「ウミ……」
光「私たちは姫のためにも この『セフィーロ』のためにも 何もできなかったんだな」
声「それは違う」
風「その声は……」

物陰から、かつての戦いで3人を救った少年、フェリオが現れる。

風「フェリオさん……」
フェリオ「魔法騎士は 姉上の『願い』をかなえてくれた」
光「あ…… 姉上……?」
フェリオ「エメロード姫は 俺のたった一人の姉上だ」
海「じゃ…… 王子って…… あなたのことだったの?」
フェリオ「王子といっても 剣の修行や昼寝にばかりいっしょうけんめいで ほとんど城には戻っていなかったがな」
風「それで エメロード姫に近しい方しか知らないはずの『魔法騎士の伝説』をごぞんじだったんですね」
フェリオ「……黙っていて悪かった 俺にとっては王子なんて立場は面倒なだけだ だから誰に話すつもりもなかった」
風「……なら 私はあなたの お姉様を……」

風の頬を、涙が伝う。

フェリオ「『柱』が消滅する直前に 俺は姉上の『声』を聞いた 最後の一瞬だけでも『柱』としてではなく 自分の愛する人のためにだけ祈れて『幸せ』そうだった」
その『声』は私にも聞こえた 『魔法騎士』に『すまなかった』と そして『ありがとう』と」
光「……ありが……とう……」

光たちがその言葉を反復しつつ、涙を拭う。

光「クレフ 『セフィーロ』はいったいどうしたんだ? まえにきたときと まったく地形が変わってしまってる」
クレフ「……『柱』を失ったからだ 世界をその意志の力で『安定』させていた『柱』がいなくなったいま 『セフィーロ』は『混沌』と化している」
海「前にきた『セフィーロ』はエメロード姫が創り上げたものだったから 姫を失って崩壊してしまったのね」
クレフ「……この城は『セフィーロ』の人々を避難させるため 私やほかの魔導師 招喚士(パル)など 『意志の力』の特に強い者たちで創り上げた」
風「このお城も 『意志の力』で?」
クレフ「しかし それも長くはもたん 一日も早く 新しい『柱』を見つけなければ 『セフィーロ』は『消滅』する それに他国の軍がもう すぐそこに迫っている」
海「他国?」
クレフ「あれだ」

空の彼方に、巨大な3つの物体が見える。

光たち「あれは!?


つづく

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最終更新:2020年01月19日 04:48