セフィーロの新たな柱を巡り、隣国のオートザム、チゼータ、ファーレンを交えて戦いが繰り広げられる。
その最中、光の魔神レイアースと、オートザムの司令官イーグルのファイターメカ(ロボット)・FTOは、モコナの中へ吸い込まれ、突如として東京上空へと転移する。
イーグル「ここは……!?」
光「東京!?」
道を行く人や車、空を飛ぶ鳥も、動きを止めている。
光 (動いてない!? 時間が止まってるのか!?)
モコナ「そこが『柱の試練』の場 そこから『試練』を越えて ふたたびセフィーロに戻ってきた者が 次の『柱』となる」
光「次の『柱』!?」
イーグル「……名まえを 教えていただけますか?」
光「光 獅堂 光」
イーグル「……ヒカル 可愛い名まえですね 僕はセフィーロの『柱』になると決めたんです だから…… あなたを倒してセフィーロへ帰ります」
FTOがレイアースに攻撃を加える。
セフィーロでは、クレフたち一同、オートザムの副官ジェオたちが、光とイーグルが消えたことに騒然としている。
ジェオ「イーグル!!」
ザズ「FTOの反応がどこにもない! 完全にセフィーロから消えちまった!」
海「モコナ! 光をどこへやったの!!」
海の魔神セレスがモコナに詰め寄ろうとし、弾き飛ばされる。
風の魔神ウィンダムが、セレスを受け止める。
アスコット「ウミ!!」
フェリオ「フウ!!」
カルディナ「あのふわふわの口ん中に ヒカルもオートザムの白いのも 吸い込まれてしもうたで!!」
ラファーガ「導師クレフ!! モコナはいったい……!」
クレフ「……モコナは 『来たるべき日まで絶対にザガートに渡してはならない』と エメロード姫より託されたもの…… モコナが何者か真に知りえたのは エメロード姫だけだ……」
クレフがモコナを睨みつける。
突如、クレフの冠が液体のように溶け、流れ落ちる。
プレセア「導師!!」
クレフ (この強大な力……!! まさかモコナは!!)
ランティス「イーグルと魔法騎士はどこへいった!?」
モコナ「異世界」
海・風「?!」
モコナ「魔法騎士 汝らが『地球』と呼ぶ場所だ」
海・風「地球!?」
ランティス「……おまえは何者だ……?」
無数の羽毛が舞い散り、モコナの背から、天使のような翼が開く。
モコナ「私はこの『世界』を創りし者 この世界 秩序 理 すべてを創造せし者 そして…… 汝ら魔法騎士たちが住む『世界』も私が創りしものだ」
イーグルは、不意に体の力が抜け、視界が歪む。
イーグル (こんなときに……)
光「炎の矢!」
レイアースが、炎の魔法で反撃する。
光「あなたはどうしてセフィーロの『柱』になりたいんだ!? オートザムのためか!?」
イーグル「……いいえ 違います 僕が『柱』になるのは 自分自身のためです」
光「?!」
ランティス「……『創造主』……?」
モコナ「そうだ 私はまず『地球』を含む世界を創った 絶対的統率者のいない無秩序で混沌とした世界 しかし生きる者すべての『意志』が未来への道を紡ぐ世界 それが『地球』だった しかし『地球』に住む者たちは日々争い 自らの住む『地』である『世界』そのものを破壊しつづけている だから私は『セフィーロ』を含む新たな世界を創造した 一人の『意志』がすべてを決める『世界』を」
風「では……『魔法騎士』と名づけられたのも」
海「……モコナ?」
光「自分のために『セフィーロ』をどうするつもりなんだ!?」
イーグル「僕は『セフィーロ』を……」
イーグルの体力が限界に達し、FTOが倒れる。
光「!!」
モコナ「オートザムのイーグル 汝は病に冒されているな」
イーグル「……えぇ セフィーロに着くまでもたないだろうと 医者にいわれてきましたから」
光「そんな!?」
イーグル「精神エネルギーの使い過ぎです オートザムは高度に機械化された国 精神力をエネルギーに変え すべてを動かす『力』にしてきました そして僕は『心』を使い過ぎたらしい…… エネルギー切れ寸前のメカのようなものです 僕はもうすぐ眠りにつきます 『永遠に覚めない眠り』に」
光「永遠に……?」
イーグル「この病は最終的に 体のすべての機能を停止させます けれど完全に死ぬわけじゃない 『眠っている』のと同じ状態になるんです ……もう二度と目は覚めませんが 僕はこの『セフィーロ』を『永遠に眠らせる』つもりです…… この国に住むすべての人々は隣国に移し…… 『柱』である僕だけがここに残って 永遠に眠り続けます セフィーロとともに…… 二度と悲劇を繰り返さないために」
光「どうして……? オートザムの司令官であるあなたが どうして!?」
イーグル「……己の命があとわずかだと知ったとき 誓ったんです 自分の人生の終わりは自分で決めようと そして…… 僕とともにセフィーロの歴史を終わらせることが 僕の『願い』です」
モコナ「それは汝の友 セフィーロの魔法剣士ランティスのためか」
光「ランティス!?」
イーグル「いいえ 違います 確かにランティスは己の死を懸けてまで 『柱』を犠牲にしてしか成り立たないセフィーロの歴史を終わらせようとしていました それが兄上と…… ずっとお守りしていた姫君の 悲しい恋の結末を知った…… 彼の『願い』だったから でも僕は ランティスに死んでほしくないんです ずっと憧れていたあのセフィーロの空と同じ瞳をした人を 死なせたくない…… ……これは彼の意志を無視した ただの身勝手な『わがまま』です 僕は僕の『願い』のためにセフィーロの『柱』になるんです」
光「……違う…… それじゃ エメロード姫と同じだよ! エメロード姫は自分を犠牲にして 大好きな人たちを守ってくれたけど 残された人たちはどうすればいいんだ!? 姫のことが大好きで 姫を何よりもたいせつに思っている人たちの心は どうなるんだ!? どうなるんだ!?」
海「光!?」
風「光さん!!」
モコナ「魔法騎士 獅堂 光は オートザムのイーグルとともに セフィーロの『柱』となるべく『試練』を受けている」
海「光だけ辛い目にあわせるなんて ぜったいいやよ!」
風「モコナさん! 私たちを地球へ送ってください!」
モコナ「それはできない 『試練の場』へいけるのは 資格を持つ者だけ」
海「資格なんてどうてもいいわ!! 私たち約束したのよ! どんなときも三人いっしょにがんばるって!!」
風「光さんを一人で戦わせるわけにはいきませんわ!!」
光「いっしょに帰ろう セフィーロへ あなたのことを愛している人たちが まってる もし あなたが『柱』になったら ランティスは…… きっとほんとうに悲しむと思う 私は あの人の兄様を…… 殺してしまった ランティスは私を責めずに優しくしてくれた ……でも 悲しそうな目をしてた あなたも同じだ イーグル 悲しい目…… あなたはほんとうにランティスが好きなんだね そしてきっとランティスも…… エメロード姫とザガートも同じだったんだと思う でも…… あんな『最後』を迎えてしまった もう誰かを悲しませるのはいやだ 愛する人を失って泣く人たちを見るのはいやだ そして…… 後悔するのは…… ぜったいにいやだ!!」
光の意思に呼応するように、東京タワーが縦に真っ二つに開き、その中に異世界への通路が形成される。
モコナ「新たな『道』が開いた 『地球』と『セフィーロ』をつなぐ『道』だ 次の『柱』は光」
海・風「……そんな……!!」
ジェオ「イーグル!!」
ランティス「……イーグルはどうなる」
モコナ「『柱』の試練を越えられなかった者は…… 消える」
レイアースがFTOを抱えたまま、東京タワーに開いた「道」を通ろうとする。
しかし見えない壁があるかのように、通過することができない。
光 (通れない!?)
モコナ「その『道』を通って『セフィーロ』に戻れるのは新たな『柱』のみ 資格のない者は消滅する」
光「いやだ!」
イーグル「!!」
光「ぜったいにいっしょに帰る!」
モコナ「資格のない者が『道』を通ることはできない」
光「資格なんて関係ない! モコナ…… 私は…… モコナを『仲間』だと思ってるよ 大事な友だちだって…… モコナもうなずいてくれたよね それは私に『資格』があったから? 私を好きでいてくれたからじゃないの?」
モコナ「……」
光「私はモコナが好きだからいっしょにいたい 一人でいるよりモコナといっしょにいたほうが ずっとずっと楽しいから 大好きだから……」
レイアースは必死に、FTOを抱えたまで「道」を通ろうとする。
ダメージが重なり、光の体に次第に血が滲む。
イーグル「手を離してください! ヒカル!!」
光「モコナ…… 人は一人じゃ生きていけないよ…… セフィーロの『柱』は『一人』だ なんでもできるかもしれないけど 『一人』きりだ だからエメロード姫は ザガートを好きになったんだと思う 私も 海ちゃん風ちゃんがいてくれたから がんばれた 一人じゃないから ちゃんと生きてるから 大好きな人たちといっしょに しあわせになれるんだよ 海ちゃん! 風ちゃん! 今 帰るから!!」
最終更新:2020年01月19日 04:49