溝呂木眞也(ダークメフィスト)が待ち構える異空間「異形の海」に乗り込んだナイトレイダーが見たものは、岩に磔にされたウルトラマンネクサスだった。
弧門「ウソだ…… ウルトラマンが…… 姫矢さんが負けるなんて!」
溝呂木「そう取り乱すな。相変わらず女々しい奴だ」
弧門のクロムチェスターδの通信に溝呂木がハッキングをかけてくる。
弧門「溝呂木!」
溝呂木「ウルトラマンの敗北は、これから始まる聖なる儀式のほんのプロローグに過ぎない」
弧門「お前だけは…… 絶対に許さない!!」
弧門がトリガーを引こうとしたが、溝呂木は捕らえた佐久田を突きつける。
溝呂木「撃てよ」
弧門「佐久田さん!」
その一瞬の隙を突いて伸びてきた触手に、クロムチェスターδと他のメンバーの乗るストライクチェスターが絡み取られた。
和倉隊長「フルパワーで脱出せよ!」
石堀「ジェネレーター出力、低下!」
詩織「脱出できない!」
触手の主である、フィンディッシュタイプビースト・クトゥーラが現れた。
和倉「このビーストが触手の本体か!」
溝呂木「全てゲストは揃った。処刑の開始だ」
佐久田「処刑?」
溝呂木「冥府よ…… 動け!」
溝呂木がダークエボルバーを光らせると、ネクサスの手足を縛っている岩から新たな蔦が生え、ネクサスの全身に絡みついていく。
弧門「あれは……!?」
溝呂木「闇の波動だ。あの蔦がウルトラマンの全身を覆い尽くした時、姫矢の命の光は完全に消え失せる。その瞬間、奴に同化していた“光”はこの終焉の地に解き放たれる。俺はその“光”を奪い、無敵の超人となり、世界を思うままに動かしてやる…… より高き者、より強き者、より完璧なる者として! ふふふふ、はははは、あははははははは!!」
溝呂木の笑い声が響く中、現実世界でも市街地が次々に停電していった。
ナイトレイダー基地「フォートレスフリーダム」。
松永管理官「特殊振動波が、地上にまで……!」
吉良沢「溝呂木の儀式が、本当に黙示録の実践だとしたら、秩序は確実に崩壊するでしょう」
顔をこわばらせる松永。
吉良沢「でも……」
松永「でも?」
吉良沢「僕が見る未来は、まだ混沌の中にある。光は、完全にその輝きを失っていないということです」
岩に磔にされたネクサスの全身はほとんど蔦に覆われている。
精神世界で、姫矢准(ウルトラマンネクサス)はかつての記憶を思い返していた。
ある国で心を通わせた少女・セラとの日々。
しかし、その国で起こっていた内戦の戦火が姫矢たちの下まで及んだ。
姫矢は戦場カメラマンとして逃げ惑う人々を撮影していたが、セラが姫矢を探しに来た。
セラ「准ー! 准──!!」
姫矢を見つけ、笑顔で駆け寄るセラ。
その瞬間、爆発がセラを覆い──。
弧門「くそっ!!」
和倉「各機、発射可能な武器を全てビーストに集中せよ!」
弧門「えっ!?」
石堀「この状態での攻撃は……」
和倉「ビーストの気を逸らす、それだけでいい!」
凪「……了解!」
クロムチェスターδとストライクチェスターがクトゥーラを攻撃する。
溝呂木「和倉…… 無駄な足掻きは見苦しいだけだ」
クトゥーラが触手を振って、ストライクチェスターを岩に叩きつけようとする。
詩織「きゃっ!!」
佐久田「!!」
溝呂木「待て。まだ殺すな」
クトゥーラがストライクチェスターを持ち上げ、再度振り回し始める。
一方、ストライクチェスターはクロムチェスターδに絡みつく触手に狙いを定めていた。
和倉「凪、今だ!」
凪「了解!!」
ストライクチェスターが光弾で触手を攻撃。その拍子に、クトゥーラがクロムチェスターδを手放す。
驚きに目を見開く溝呂木。
弧門「クアドラブラスター、ファイヤ!!」
クロムチェスターδがストライクチェスターに絡みつく触手を撃ち、ストライクチェスターも脱出。
和倉「弧門、ハイパーストライクフォーメーションだ!!」
弧門「了解!!」
クロムチェスターδとストライクチェスターが合体し、ハイパーストライクチェスターになる。
和倉「凪、ウルティメイトバニッシャー、発射!」
凪「了解!!」
ハイパーストライクチェスターが、以前姫矢を捕らえた際に人体実験で得たウルトラマンのデータを元に作成した光線兵器「ウルティメイトバニッシャー」をチャージする。
凪「砕け散れ!!」
ウルティメイトバニッシャーがクトゥーラに炸裂!
なすすべなく雲散霧消するクトゥーラ。
溝呂木「やるな…… だがやはり無駄な足掻きだ。じきに処刑は終了する」
岩に磔にされたネクサスの首から下が完全に蔦に覆われている。
精神世界。
姫矢が目覚め、立ち上がる。その眼前にはセラがいた。
姫矢「……セラ」
セラ「准、素敵な写真、撮れた?」
姫矢は首を横に振った。
姫矢「俺…… 俺は、人が生きる姿を…… その意味を、撮りたかった…… だが俺が撮ったのは、人々の死の瞬間だ! 最低だよ……」
ナイトレイダーは地上に降り、溝呂木にディバイトランチャーを向けた。
和倉「溝呂木、ゲームは終わりだ」
佐久田はナイトレイダーの方に向かおうとしたが、溝呂木に捕まり、何らかの細工により気絶させられる。
溝呂木「どうかな?」
溝呂木が宙に浮かんだ。
溝呂木「はあっ!」
溝呂木がダークエボルバーを振るって暗黒光弾を放ち、和倉、詩織、石堀の三人に当てる。気絶する三人。
弧門「溝呂木っ!!」
弧門がディバイトランチャーを向けるも、再び地面に降りた溝呂木にダークエボルバーで突かれる。
吹き飛ぶ弧門。
その直後、殺気を感じ取った溝呂木が振り向き、後ろからディバイトシューターを突きつけようとしていた凪にダークエボルバーを向けた。
溝呂木「腕を上げたな。さすが俺が見込んだ女だ」
凪「ふざけないで。ビーストに成り果てた男が」
溝呂木「もう一度だけ聞く。俺の仲間になる気は?」
凪「なら言うわ。死んだ方がマシよ」
溝呂木「……だったら死ね」
溝呂木はダークエボルバーで凪のディバイトシューターを弾き、凪を斬りつけようとするも、立ち上がった弧門のディバイトランチャーの一撃を食らった。
他の隊員たちも辛うじて立ち上がる。
弧門「溝呂木、お前は僕が倒す!」
溝呂木「やれよ、坊や。だが頼りのウルトラマンはもういないぜ?」
溝呂木がダークエボルバーを展開し、ダークメフィストに変身した。
和倉「撃てーっ!!」
ナイトレイダーの総攻撃が開始された。
弧門は佐久田の下に向かおうとするが、ダークメフィストが暗黒光刃「ダークレイ・フェザー」を弧門に向けて撃つ。
再び吹き飛ぶ弧門。
和倉「弧門!! ……各員、チェスターに搭乗!」
ナイトレイダーは気絶したままの佐久田を残して、チェスターに向かった。
精神世界。
姫矢「俺は君に導かれ、光の力を得た……」
変身アイテム・エボルトラスターを見つめ、ネクサスとの出会いを思い返す姫矢。
姫矢「そして誰かを救うために戦い続けた。力を与えられたこと、それが俺に対する罰だと思ったから……」
これまでの、スペースビーストや闇の巨人との壮絶な死闘──。
姫矢「ボロボロに傷つき、独り孤独に死んでいくことが、せめてもの罪滅ぼしに違いないと…… でも、それも終わった……」
セラが首を横に振った。
セラ「准、その力は罰なんかじゃない」
姫矢「えっ……?」
エボルトラスターが輝く。
姫矢を赤い光が覆った。
姫矢は、かつて自身がウルトラの力を得た森の中の遺跡を幻視する。
遺跡の中には、スペースビーストを象った彫刻と、ビーストと戦うウルトラマンを象った壁画があった。
セラ「あなたに与えられたその光は、長い時を越えて、多くの人たちに受け継がれてきたの。その光を得た人たちは、時には大切なものを失いながらも、必死で戦ってきた」
姫矢「その光が、俺に……」
セラ「そう。准は選ばれたの、その光の継承者として」
姫矢「でも、俺にそんな資格があるのか? 俺は…… 君を……!」
セラ「准、私、准の写真が好きよ」
姫矢「えっ……」
顔を上げる姫矢。
セラ「准は撮ってくれたわ。私がこの世界に生まれ、生きていた証を」
姫矢「セラが、生きていた証……」
セラ「私、嬉しかった。初めて世界が輝いて見えた」
セラの姿が薄れていく。
姫矢「セラ!」
セラ「准と出会えて本当に良かった。ありがとう」
セラの姿が完全に消えた。
セラの声「守ってあげて。大切な人たちを、その力で」
立ち尽くす姫矢──。
弧門「食らえ!!」
ウルティメイトバニッシャーがダークメフィストに炸裂。
だが、ダークメフェイストはダークレイ・フェザーを撃ち返し、ハイパーストライクチェスターを損傷させる。
ハイパーストライクチェスターが煙を噴き、降下していく。
和倉「まだだ……!」
弧門「絶対…… 諦めるか!!」
姫矢がエボルトラスターを握りしめる。
姫矢「俺は今度こそ守ってみせる、この光で…… それが、俺に与えられた使命だ!」
姫矢が“光”となる。
そしてネクサスのコアゲージに光が点り、ネクサスは蔦を砕いて地上に降りた。
メフィスト「何?」
凪「ウルトラマンが……!」
弧門「姫矢さん!」
佐久田が目覚め、ネクサスを見つめる。
メフィスト「力とは、他者を支配し圧するためにある。それに気づけぬ貴様が、俺に勝てるはずがない!!」
ダークメフィストがネクサスの首を掴み、パンチとキックを打ち込む。
消耗したままのネクサスは吹き飛び、倒れた。
詩織「第2、第3エンジン復調!」
石堀「ハイパーエネルギー、充填!」
和倉「よし。弧門、ウルティメイトバニッシャー、発射!」
弧門「了解!!」
ハイパーストライクチェスターが再度ウルティメイトバニッシャーを撃ったが、ダークメフィストはダークレイ・フェザーで相殺した。
詩織「やっぱり効かない!」
石堀「次の一撃が、最後です!」
凪「奴の弱点を見つけ、そこに撃ち込むしか勝機はない!」
和倉「CIC、教えてくれ…… 最後の一発を、どこに撃つべきかを!」
吉良沢「ウルトラマンの、エナジーコアを撃ってください」
弧門「ウルトラマンを!?」
松永「まさか!?」
吉良沢「ウルティメイトバニッシャーは、ウルトラマンの放つ破壊光線の光電子マトリクスを元に作られました。組成データを修正すれば、純粋なエネルギーとして還元できる。つまり……」
和倉「ウルトラマンに、力を与えられる!」
吉良沢「ただし狙いは正確に。少しでも中心を外せば、意味がありません」
辛うじて立ち上がるネクサスだが、かなり疲弊している。
詩織「修正データ受信」
石堀「エネルギー、転換完了!」
和倉「弧門…… この一発をお前に託す!」
凪「ワンチャンスよ、できるわね?」
弧門は、溝呂木に命を奪われた恋人・リコがくれたキーホルダーを握りしめる。
弧門「……大丈夫です」
弧門「立て! ウルトラマン!!」
ウルティメイトバニッシャーがネクサスのエナジーコアに命中。
ネクサスが吹き飛び、倒れる。
佐久田「ああっ!!」
苦しむネクサス。掲げた腕もやがて落ちる。
作戦失敗を感じるナイトレイダーの面々。
しかし、やがてネクサスの体が光に覆われていき、エナジーコア、そしてその目に光が戻る。
立ち上がるネクサス。安堵するナイトレイダー、佐久田、そして孤門。
ネクサスはアンファンスからジュネッスに変身した。
メフィスト「馬鹿な……! 貴様の“光”はもう完全に消えかけていたはずだ!」
ダークメフィストが右腕のメフィストクローを展開し、暗黒光弾「ハイパーメフィストショット」を放つも、ネクサスは左腕のアームドネクサスで受け止める。
ネクサス「この力は、決して希望を捨てない人々のためにある。それに気づけぬお前が、勝てるはずがない!!」
ネクサスは受け止めたハイパーメフィストショットを光のエネルギーに変換し、ダークメフィストに撃ち返した。
ダークメフィストはその直撃を受けるも、爆発の中から立ち上がってきた。
メフィスト「希望? 笑わせるな! 俺は無敵だ、断じて負けはしない!!」
ネクサスとダークメフィストが上空に飛び上がり、激しい空中戦を繰り広げる。
やがてダークメフィストは、暗黒分裂弾「ダークレイ・クラスター」を地上の佐久田めがけて放った。
ネクサスは地上に降下して佐久田を庇い、障壁「サークルシールド」で分裂したダークレイ・クラスターを防ぎきる。
ネクサスが佐久田を見やってうなずく。泣き笑いの顔で、佐久田がうなずき返した。
和倉「ウルトラマンを援護する。全ミサイル発射!!」
凪、石堀、詩織「了解!!」
再度ダークレイ・クラスターを放とうとするダークメフィストにハイパーストライクチェスターのミサイルが撃ち込まれ、爆発が起こったがダークメフィストは無傷。
和倉「凪、来るぞ!」
凪「了解!」
ダークメフィストがハイパーストライクチェスターに突っ込んできたが、ギリギリで回避。
そこにネクサスが駆け付け、ダークメフィストをパンチで引き離した。
ネクサスが必殺光線「オーバーレイ・シュトローム」、ダークメフィストも暗黒光線「ダークレイ・シュトローム」を放つ。
ふたつの光線は激突し、巨大な対消滅爆発が起こった。
ネクサスは一度佐久田を見てから、爆発の中へ飛び込んでいく。
弧門「まさか……!」
爆発の中、光弾を放とうとするダークメフィストにネクサスがパンチを撃ち込み──新たな爆発が起こり、ネクサスとダークメフィストがその中で消滅していった。
離脱するハイパーストライクチェスターの中で、和倉が静かに敬礼を送る。
佐久田「姫矢く──ん!!」
うなだれる弧門。
しかし、その周囲が光に包まれ、そこに姫矢が姿を見せた。
姫矢「弧門……」
弧門「姫矢さん!」
姫矢「弧門。“光”は、絆だ」
弧門「“光”は、絆……」
姫矢「誰かに受け継がれ、再び輝く」
姫矢は笑みを浮かべ、弧門に背を向けて去っていった。
孤門の目に涙があふれる。
弧門(その言葉だけを残して、姫矢准は、消えた)
最終更新:2020年07月29日 20:31