ウルトラマンベリアルは最強の姿・アトロシアスとして甦った。
地上にベリアルの幻影が浮かび上がり、地上の人々に告げる。
ベリアル「俺はウルトラマンベリアル アトロシアス。かつてこの宇宙を崩壊させたのは、俺だ」
ハルヲ「ベリアル!? あいつ、死んだんじゃなかったのか!」
ベリアル「俺の体は、もうじき究極となる。その暁には、お前たちの星を吹き飛ばし、光の国の奴らに力を見せつけてやる」
光の国で、ウルトラの父、ウルトラの母がそれを察知する。
父「この力は……!?」
秘密基地の星雲荘。
リクやレイトたちが、ベリアル出現を報せるテレビの緊急速報を見ている。
ペガ「地震や洪水が増えたのは、なんで!?」
レム「この宇宙を繋ぎ止めている、ウルトラマンキングのエネルギーが低下しています」
レイト「クライシスインパクトの状態に、戻っちゃうんですかね……?」
AIBのモアとゼナから、通信が入る。
モア「リクくん!」
リク「ゼナさんか」
ゼナ「ウルトラマンベリアル アトロシアスは、リトルスターの元になったウルトラマンキングのエネルギーを、カレラン分子を使い、宇宙全体から吸収している。そして、伏井出ケイから奪ったストルム器官で邪悪な力に変換し、パワーアップしているようだ」
レイト(ゼロ)「このままだと爺さんも、宇宙も消滅して、ベリアルは無敵になっちまうぞ」
発とうとするリクを、レイトが制する。
レイト(ゼロ)「待て! 無暗に行っても、自滅するだけだ」
ライハ「カレラン分子……分解酵素。トリィが研究してた」
AIBの研究職員として勤めていたピット星人、トリィ・ティプ。
ライハ「カレラン分子を消すことができるって。それを使えば、エネルギーの吸収が止まるかも」
モアとゼナが、データを分析する。
モア「このカラータイマーからなら、分解酵素を侵食させることが可能だそうです!」
リク「カラータイマー? どうやって、そこに撃ち込むの?」
レム「星雲荘を宇宙船モードに移行させ、船体に容器を設置、低空飛行でなら目標に接近し、撃ち込めます」
ペガ「近づく前に、攻撃を受けない?」
レイト(ゼロ)「俺があいつを食い止める。その間に、ブッ込んでやれ」
リク「今度こそ…… 決着を着けないと!」
モア「ガスを作るのに10時間くらいかかるんで、レイトさん、休んでてください」
レイト「良かったぁ~! 帰れる~! 明日、大事な日なんです」
レイトが、伊賀栗家に帰宅する。
妻のルミナが迎える。
レイト「ただいまぁ」
ルミナ「おかえり。こんなときに、何してたの?」
レイト「あ…… 書類整理。ごめん。電話、繋がんなくて」
ルミナ「……心配させないでよ。大変だったんだから。避難警報は出るし、保育園から緊急呼び出しメールは来るし」
レイト「マユは? 寝てる?」
ルミナ「うん、起こさないでよ。はい、これ。今日ね、保育園でお絵描きしたんだって」
レイト、ルミナ、マユの家族3人を描いた絵。
レイト「これ、僕たちだ!」
レイトとルミナが、そっと寝室を覗く。
マユは穏やかに眠っており、レイトが優しく見守る。
ライハは夜の街外れで、格闘のトレーニングをしている。
(ケイ『お前たちに何がわかる? あのお方と一つになれた。これ以上の喜びがあるか?』)
一息つき、スマートフォンを手にする。
ライハ「レム、伏井出ケイの行方はわかった? ──そう。何かわかったら、連絡して。嫌な予感がするの」
AIB研究施設に、ゼナが車を停めている。
モアが夜食を持って、戻って来る。
モア「あぁ、おなかすいた。ゼナ先輩、何です、それ?」
ゼナ「ゼガンの修復率だ」
モア「ゼガンて、この前の?」
ゼナたちシャドー星人が擁していた怪獣、時空破壊神ゼガン。
ゼナ「戦いに出す。ウルトラマンジードとウルトラマンゼロだけでは、恐らく勝てない」
モア「え、そんな……」
ゼナ「相手は強大だ」
モアはコーヒーにミルクを入れてかき混ぜる。
ゼナが不意に、モアに顔を近づける。
モア「え? ちょ…… ゼナ先輩!? 私には、リクくんが……」
ゼナの視線は、モアではなくコーヒーに注がれる。
コーヒーの中に混ぜられたミルクが、渦を巻いている。
モア「な、何です?」
ゼナ「2つが混じり、竜巻…… 掴まってろ!」
ゼナが突然、車を出す。
ゼナとモアが星雲荘で、新たな作戦を説明する。
ゼナ「ゼガンの光線には時空の因子が含まれ、他の光線がぶつかることによって、時空の裂け目が生じる。その向こうは、永久追放空間だ。裂け目が閉じれば、この宇宙とは断絶される」
モア「その永久追放空間に、ベリアル アトロシアスを、放り出す作戦です!」
レム「プランを採用した場合、人類生存の確率が、0.2パーセントから5パーセントに上昇します」
ペガ「そんなに低いのか……」
リク「……よし、やろう!」
モア「ジーッとしてても、ドーにもならないものね!」
ライハ「私はケイを捜す。決着、つけないと」
翌日。
レイトはルミナとマユと共に、高級レストランで食事を楽しんでいる。
ルミナ「ねぇねぇ。こんな高そうなお店、本当に大丈夫?」
レイト「いいから、いいから」
マユ「美味しい~!」
レイト「良かった。じゃ、お願いします」
店員がハッピーバースデーの歌と共に、豪華なバースデーケーキを運んでくる。
周りの客たちも、微笑ましそうに手拍子をしている。
マユ「わぁ、すご~い!」
レイト「ジャ──ン! お誕生日、おめでとう!」
レイトからは、大きなぬいぐるみのプレゼント。
マユ「ありがとう」
レイト「どういたしまして」
ルミナ「良かったね!」
レイト「それから、ルミナさんにも、これ」
レイトはルミナにも、小箱を差し出す。
ルミナ「えっ? どうしたの、いきなり」
レイト「いつも、がんばってくれてるから。感謝の気持ち」
箱の中には、高級そうな腕時計。
ルミナ「えっ!? もらえないよ、こんなの」
レイト「今まで、僕なんかといてくれて、本当にありがとう」
ルミナ「……」
レイト「マユ、ろうそく消して」
マユが笑顔でケーキのろうそくを吹き消し、穏やかな時間が流れてゆく。
その後、レイトはルミナとマユとと共に、遊園地で楽しい時間を過ごす。
ルミナが、クレープ店の行列に並ぶ。
目の前の客のスマートフォンで見ているニュースが、目に入る。
『ウルトラマンベリアル アトロシアスは、高度4万キロメートルの高さに静止しており、謎の光を吸収し続けています。その未知なるエネルギーにより、再びクライシスインパクトが生じるのではとの見解もあり、私たちの生存はウルトラマンたちに委ねられていると言っても過言ではないでしょう』
レイトはマユと仲良く、ベンチでルミナを待っている。
スマートフォンが鳴る。
レイト「ごめん、マユ。ちょっと待ってて。──はい」
モア「あの…… ガスの製造、完了しました。30分後に作戦がスタートします!」
レイト「──はい、わかりました」
ルミナが不安げに、レイトたちのもとに戻って来る。
レイト「あ、ルミナさん! 僕、急に会議が入っちゃって……」
マユ「え~、パパ行っちゃうのぉ?」
レイト「ごめん。お誕生日なのに……」
ルミナ「パパはお仕事があるから、ここでお別れしよっか」
レイト「……ル、ルミナさん」
ルミナ「でも…… 会議じゃないよね」
レイト「え……」
ルミナが、レイトの胸元に手を伸ばす。
ルミナ「なんか、戦う感じのやつだよね」
内ポケットの、ウルトラゼロアイを手にする。
レイト「それは……」
ルミナ「色、似てる。ウルトラマンに」
レイト「え…… な、なんで」
ルミナ「知ってたよ。レイトくん、嘘つくの下手だから」
これまでしばしば、ルミナたちに仕事と言って、ゼロとしての戦いに臨んでいたレイト──
ルミナ「フフ……」
ルミナがゼロアイを、レイトの手に戻す。
ルミナ「さぁ、マユ。行ってらっしゃいして。パパはね、これから大事なお仕事があって、たくさんの人がパパのことを待ってるの」
マユ「……パパ。お仕事、がんばってね」
レイトはしばしルミナと見つめ合い、マユを優しく抱く。
レイト「マユ…… 明日も明後日も、マユがいっぱい笑って暮せるように、パパは仕事、がんばるから!」
ルミナが顔を背け、涙を拭う。
レイトが発とうとするが、その背にルミナがすがりつく。
ルミナ「晩ごはん、作って待ってるから……」
レイト「楽しみにしてる…… 一緒に食べよう。必ず」
レム「星雲荘はこれより、宇宙船モードに移行します」
リク「わかった。許可する」
ペガの残っている星雲荘が、大きく揺れる。
ペガ「わぁ、揺れた!?」
レム「上昇を開始します」
星雲荘が地上を突き抜け、本来の宇宙船の姿として宙に浮かぶ。
リク「すごい! これが、星雲荘!?」
レム「宇宙船ネオブリタニア号です。これより指定ポイントへ移動し、カレラン分子分解酵素ガスの容器を設置します」
リク「よろしく頼む!」
モア「作戦の概要を説明します! ウルトラマンゼロが、指定ポイントへ目標を誘導し、拘束。その後、ネオブリタニア号が接近し、分解酵素ガスを撃ち込みます」
ペガ「うん!」
モア「体内のカレラン分子消滅確認後、ゼガンとジードが出撃、光線干渉を引き起こし、発生した次元の裂け目に目標を追放し、作戦終了」
ゼナ「うむ」
モア「周辺住民は現在、避難中」
避難所へ向かう住民たちの中に、ハルヲの姿もある。
モア「レイトさん。娘さんとの大切な時間を、すみません……」
レイト「あいつをやっつけないと、明日がありませんからね!」
ゼロ「レイト……!」
モア「皆さん…… グッド・ラック!」
レイト(ゼロ)「始めようぜ!」
レイトがウルトラマンゼロに変身する──
ベリアルがついに地上に降り立ち、ゼロがそれを待ち受けている。
ベリアル「ウルトラマンゼロ……!」
ゼロ「ベリアル…… 来たな!」
ベリアル「最後に貴様の泣き叫ぶ声を聞いてやる」
ゼロ「光の国もこの星も、てめぇには指1本触れさせねぇ! 俺とジードがな」
ベリアル「ジード…… 息子の力を吸収できていれば、より完璧だったが。フン、どうやら反抗期のようだ」
ゼロ「チッ。貴様が父親ぶるのは、2万年早いぜ! 俺に限界はねぇ!!」
ゼロが一気に、ウルトラマンゼロビヨンドに強化変身する。
ゼロ「俺の刃を刻み込め。ツインギガブレイク!!」
ゼロの武器のツインゼロソード、ベリアルの振るうギガバトルナイザーがぶつかり合う。
戦いの余波で避難所が揺れ、転倒するハルヲをリクがかばう。
リク「店長、大丈夫ですか!?」
ルミナとマユが、伊賀栗家に帰宅する。
留守だったはずが、玄関のドアは開いている。
ルミナ「あれ、開いてる?」
マユ「ママ……」
ルミナ「ん?」
室内に、伏井出ケイが佇む。
ルミナ「伏井出先生……!?」
ケイ「お待ちしておりました。レイトさんが戦っていますよ」
ルミナが本能的に、マユをかばう。
ケイ「しかし、じきに終わるでしょう。なぜなら──」
ケイがルミナたちに、杖の先を突きつける。
マユ「ママ!?」
ケイ「ウルトラマンゼロ、聞こえるか? ……ウルトラマンゼロ!!」
ゼロ「この声は……」
レイト「伏井出ケイ!?」
ケイ「歯向かうのをやめ、ベリアル様に首を差し出せ」
ゼロ「何!?」
ケイが壁を目がけて杖を振るう。
壁に貼られていた、マユの描いた絵が真っ二つになる。
ケイ「可愛らしい家族の絵が犠牲になったぞ」
レイト「ま、まさか!?」
ゼロ「レイトの家に!?」
ベリアル「ストルム星人か…… まだ忠誠を誓うとは、愚かな奴だ! ウルトラマンゼロ! この星に来て、弱点を作ったようだな!」
動揺するゼロを目がけ、ベリアルの攻撃が炸裂する。
リク「どうしたんだろう、様子が変だ!」
ハルヲ「あぁ、負けちまうぞ!」
ケイ「武器を捨てろ。まずは── 娘だ」
レイト「や、やめてください!」
ゼロ「くっ……」
やむを得ず、ゼロはツインソードを捨てる。
伊賀栗家に、ライハが飛び込んで来る。
ライハ「そこまでよ!」
ルミナ「マユ!」
ルミナがケイに立ち向かう。
ケイが窓を突き破り、外へ飛び出す。
ライハ「2人は無事よ!」
ゼロ「ライハ!?」
レイト「ありがとうございます!」
ゼロ「家族を弱点と言ったな? それは違う! 守るべきものがあるから、俺たちは戦えるんだ!!」
ネオブリタニア号は、ベリアルのもとを目指している。
ペガ「そろそろ着くよ。用意はいい?」
地上では、ライハがケイと戦いを演じる。
ケイ「ハハハハ…… 見よ! ベリアル様の神々しい姿を! 私のストルム器官が、ウルトラマンキングの力を変換したのだ!」
ライハ「邪悪な力にね……」
ケイ「う、うぅっ!」
ストルム器官をベリアルに奪われたケイが、苦しみだす。
ライハ「あなたはもう長くない…… なぜ、そこまでするの!?」
ケイ「ベリアル様に助けられたその日から、私は自分の命を捧げると誓った! 光の国から盗んだウルトラカプセルを、怪獣カプセルとし、自らを実験台に、融合獣となった。この命が尽きるまで、あのお方のために戦う……」
ライハ「そう…… ならば、見せてみなさい。あなたの覚悟を!」
ゼロが、ベリアルを羽交い絞めにする。
ネオブリタニア号が、ベリアルへと接近する。
ゼロ「今だ、やれ!」
ペガ「いっけぇ──っ!!」
ベリアルがゼロの拘束を振りほどき、鋭い爪をゼロの体に突き立てる。
ゼロ「うおぉっ!?」
さらにネオブリタニア号にも、爪の一撃を見舞う。
ペガ「うわぁっ!?」
レム「高度低下。衝撃に備えてください」
ネオブリタニア号が火を吹きつつ、地上に不時着する。
ゼロもベリアルの連続攻撃を受け、ゼロビヨンドへの強化変身が解け、地上に倒れ伏す。
ルミナ「レイトくん……!?」
リク「ゼロ!?」
リクが我慢できずに、避難所を飛び出す。
ハルヲ「リク!?」
リクが物陰に隠れ、ジードに変身する。
リク「融合! アイ・ゴー! ヒア・ウィ・ゴー!」
ベリアル「終わりだ…… ウルトラマンゼロ!!」
倒れたままのゼロに、ベリアルが爪を振り下ろす──
リクの変身したウルトラマンジードが、ベリアルの攻撃を食い止める。
ゼロ「お前…… なんで来た!? 作戦と違うだろ!?」
リク「ジーッとしてても、ドーにもならないからです!」
ジードとベリアルの戦いとなり、ジードクローとギガバトルナイザーがぶつかり合う。
ベリアル「俺の血を受け継ぎながら、敵対する愚か者め!」
リク「ベリアル、僕が相手だ!」
最終更新:2020年09月30日 07:16