ターボレンジャーがヤミクモボーマを倒した直後から、地震はより一段と激しさを増していた。
ズルテン「立っていられないってんだ!」
瘴気の噴出はなお止まらず、ついには地面が爆発し始める。
駆け付けた力たちの前で、地面から暴魔特有の邪悪な気が噴き出し、暴魔百族の紋章となる。
さらに激しく爆発していく地面。
ズルテン「おぉ…… 割れる、割れるっ!! 大封印が割れていくぜってんだ~~っ!!」
壮絶な爆発──やがて、炎の中から竜人型の暴魔獣が大復活を遂げる。
俊介「出たぁ!」
洋平「とうとう間に合わなかったのか……」
ズルテン「にゅふふふふふっ、108匹暴魔獣大軍団の、お出ましだ~い!」
しかし、残り107体の暴魔獣が出てくる気配は一向にない。
ズルテン「……あれ? どうしたってんだ!? 108匹の暴魔獣はどうしたって~の!?」
暴魔獣「ここは大封印ではない!」
ズルテン「なんだと!?」
暴魔獣「俺は暴魔獣・フーインボーマ!!」
ズルテン「何!? 封印破りの名人として知られている、あのフーインボーマ!?」
フーインボーマ「大封印は、この俺が破る!」
力「黙れ、フーインボーマ!! 大封印は絶対に開かせん!!」
その時、暗雲とともに暴魔城が飛来する。
暴魔城は力たちに光線を浴びせて攻撃したあと、ズルテンとフーインボーマを回収して飛び去った。
暴魔城・大帝の間──
ネオラゴーン「フーインボーマ、もはや大封印も破れる寸前。あとはお前の封印破りの儀式を行うだけだ」
フーインボーマ「ははぁっ」
フーインボーマが首を垂れる。
ネオラゴーン「そして、その最後の儀式に必要なものは…… 生贄だ! 大封印の暴魔どもは、生贄を求めておる!」
巨大な水晶玉を手に取り、フーインボーマに差し出すネオラゴーン。
ネオラゴーン「この『封印球』に、生贄の命を吸い取らせて送り込んでやるのだ。そうすれば暴魔獣どもは、自ら大封印を破って出てくるであろう」
フーインボーマ「して、その生贄とは?」
ネオラゴーン「『人でもなく、暴魔でもない者』……!!」
力たちは川べりでキリカと合流していた。
川の水で濡らしたタオルで、力の汗をぬぐうキリカ。
力「……キリカ」
微笑むキリカ。
キリカが心を開いたことに、力たちも安堵する。
力がキメンボーマの形見のペンダントを取り出し、キリカに握らせる。
力「これは君のものだ。大切にするんだぞ」
うなずくキリカ。
そこにヤミマルが現れる。
力「ヤミマル!」
何も言わず、剣を振りかざして迫るヤミマル。
キリカ「やめて、ヤミマル!」
キリカがそれを制する。
ヤミマル「離せ! 俺は…… 俺は、ターボレンジャーを倒し、ネオラゴーンを倒し、人と暴魔、2つの世界の王となるんだ!!」
キリカを突き飛ばすヤミマル。
キリカ「どうすれば…… その心から憎しみを捨ててくれるの……?」
涙を流すキリカを見て、ヤミマルがさらにいら立ちを強めていく。
ヤミマル「黙れ…… 裏切り者!!」
ついにヤミマルがキリカに手を挙げた。
頬を張り飛ばされ、崩れ落ちるキリカ。
力「なんて奴だ!」
改めて力たちと戦おうとするヤミマル。
その姿をズルテンがあざ笑う。
ズルテン「ヤミマル、キリカ!」
ヤミマル「ズルテン!」
すかさずズルテンがフーインボーマに指示を送る。
フーインボーマの杖から放たれた光線が鎖となって流れ暴魔2人に巻き付き、動きを封じた。
フーインボーマ「フーインボーマの鎖に封印された者は、二度と逃れることはできん!」
キリカ「どうしようというの?」
ズルテン「大封印を開くための生贄にしようってんだ」
ヤミマル「なんだと!?」
力「何ぃ!?」
はるな「生贄だなんて……」
ヤミマルとキリカを助けようとする力たちの前にドラグラスが飛来。
ネオラゴーンの下僕となって久しいドラグラスは、かつての主人2人を捕まえて飛び去る。
力「許さんぞ、ズルテン!! 行くぞっ!!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
5人「ターボレンジャー!!」
力たちがターボレンジャーに変身する。
フーインボーマ「大封印開きの、邪魔をされてたまるものか!」
直後、フーインボーマの鎖で封印される5人。
フーインボーマ「『鎖封印』は誰にも解けぬ!」
ズルテン「ターボレンジャー、長い付き合いだったな! これでお別れかと思うと……」
泣きまねをするズルテン。
ズルテン「……うれしくて、涙が出てくるぜってんだ! やっちまえってんだ~!!」
ウーラー兵たちが骨ピッケルを投げつける。なすすべのないターボレンジャー──
しばらくして、暴魔百族の封印破りの儀式が始まった。
ヤミマルとキリカは磔にかけられ、たいまつを持ったウーラー兵たちがその周りで踊っている。
ズルテンを睨みつける2人。
ズルテン「ヒッヒッ、おとなしく生贄になれってんだ!」
フーインボーマの指示で、ウーラー兵たちが十字架に火をつける。
フーインボーマ「貴様らが燃え尽き、その命がこの玉に吸い取られた時、大封印が開くのだ!」
炎にまかれ、苦しむ流れ暴魔2人。
フーインボーマ「焼き尽くせ! 流れ暴魔の命を吸い取れ!!」
ふいに、キリカがヤミマルに向き直る。
キリカ「ヤミマル、なぜ私たちが生贄にされたかわかる?」
ヤミマル「この期に及んで、何が言いたいんだ!」
キリカ「これだけは知ってほしい…… 流れ暴魔は、この世で一番美しい存在だからなのよ!」
ヤミマル「まだうぬぼれる余裕があるのか!」
キリカ「違う! それは心のことよ…… 私たちは、人と暴魔の垣根を越えて愛し合った人たちの心を受け継いでる。それこそが、この世で一番尊く、一番美しいものなの!」
ヤミマル「たわけ! 俺たちを支えていたのは憎しみの心。これがあったからこそ、2万年を生き抜き、不死身のパワーを勝ち取ったのではないか!」
かたくなに己を曲げないヤミマルに、哀れみの目を向けるキリカ。
ヤミマル「俺は何度もこんな目に遭ってきたのだ…… 負けるものか!!」
キリカ「……あなたって人は……」
フーインボーマの祈りとともに炎は激しさを増し、封印球が流れ暴魔の命を吸って邪悪な青白い光を発する。
そして力たちは、変身が解けてもまだ縛めから逃れられずにいた。
芋虫のように地を這いながら進む5人。
力「キリカたちを…… キリカたちを死なせるわけにはいかないんだ……!!」
ヤミマルとキリカの命が、どんどん封印球に吸い取られていく。
そこに縛められたままの力たちが現れた。
力「待てっ!!」
キリカ「力……」
フーインボーマ「ぬぅ~、まだ生きていたとは。飛んで火に入る夏の虫とは、お前たちのことだ!」
力「なんだとっ!?」
フーインボーマ「今度こそ地獄へ送ってやる!」
フーインボーマの杖から光線が放たれる。
力が崖から飛び降り、ウーラー兵たちを踏みつけながら十字架の前に立った。
フーインボーマ「おぉっ!?」
そしてフーインボーマめがけて封印球を蹴りつける。
封印球はフーインボーマの胸に直撃して爆発し、さらにフーインボーマの杖が砕け散った。
フーインボーマ「し、しまったぁ!」
力たちが縛めから解放される。
十字架から降りる流れ暴魔2人。
ズルテン「あぁ~っ、なんてことを!!」
フーインボーマ「おのれ、ターボレンジャー!!」
力「たとえこの身を封印されたとしても、正義に燃える心までは封印できないんだ!! 行くぞぉっ!!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
5人「ターボレンジャー!!」
5人が再び変身を遂げる。
レッドターボ「高速戦隊!」
ターボレンジャー「ターボレンジャー!!」
ズルテン「やっちまえってんだ!!」
フーインボーマが口から破壊光線を吐く。
爆発の勢いを利用してジャンプし、流れるようなコンビネーション攻撃を決めていく5人。
レッドターボ「GTクラ──ッシュ!!」
ブラック、ブルー、イエロー、ピンクの作ったやぐらを潜り抜けながら、レッドがフーインボーマを斬りつける。
虫の息のフーインボーマ。
レッドターボ「行くぞ! Vターボバズーカ!!」
ターボビルダーからVターボバズーカが転送され、5人がそれをキャッチ。
続いて転送されてきたVターボエンジンがバズーカに合体する。
レッドターボ「Vターボエンジン・オン!!」
唸りを上げるVターボエンジン。
Vターボバズーカにエネルギーが満ちていく。
ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「レディ!!」
レッドターボ「マックス!!」
レッドがフーインボーマに照準を合わせる。
レッドターボ「GO!!」
バズーカから撃ち出された黄金のエネルギー波がフーインボーマに炸裂!
フーインボーマ「ぐぉああ──っっ!!」
フーインボーマがあおむけに倒れながら爆発・消滅する。
5人「ビクトリー!!」
ズルテン「この~!」
ズルテンがほら貝状の武器を吹き鳴らし、暴魔再生巨大化光線を照射。
フーインボーマが巨大な姿となって蘇生される。
レッドターボ「ラガーファイター、発進!!」
ターボビルダーの上部ハッチが開き、ラガーファイターが出撃。
ラガーファイターに乗り込もうとするレッドの足をヤミマルがつかむ。
レッドターボ「……っ! ヤミマル!」
ヤミマル「俺との勝負…… ついちゃいないぜ……」
キリカ「……ヤミマル……」
一方、残りの4人はレッドの身を案じつつも巨大フーインボーマと戦うことを優先し、レッドの席にブラックが座る。
ブラックターボ「行くぞ! 変形シフト・ターボラガー!!」
すぐさまラガーファイターが4つのブロックに分かれ、ターボラガーへと再合体・変形してゆく。
ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「セットアップ! ターボラガー!!」
ターボラガーが巨大フーインボーマの前に舞い降りた。
ブラックターボ「バトルボール、キックオフ!!」
ラグビーボール型爆弾・バトルボールを取り出し、巨大フーインボーマめがけて蹴りつけるターボラガー。
レッドとヤミマルは、互いに睨み合ったまま一歩も動かない。
キリカ「やめてーっ!! ヤミマル、やめてーっ!!」
必死に呼びかけるキリカ。
キリカ「ヤミマル…… 私たちは、この世にたった2人しかいない、流れ暴魔なのよ!?」
ヤミマル「……俺が負けるというのか?」
キリカが静かにうなずく。
激高し、レッドに斬りかかるヤミマル。
レッドターボ「……どうしてもやらねばならぬのかっ!!」
向かってきたヤミマルの剣を真剣白刃取りで受け止め、殴り飛ばすレッド。
GTソードとヤミマルの剣がぶつかり合う傍らで、ターボラガーと巨大フーインボーマの戦いも繰り広げられている。
GTソードがヤミマルの鎧を切り裂く。
一方、ターボラガーは巨大フーインボーマの鎖封印で身動きを封じられる。
レッドターボ「ああっ、ターボラガー!」
ヤミマル「もらったぜ、レッド!!」
レッドが気を取られた隙に唐竹割りを決めるヤミマル。
レッドはバランスを崩しながらも、とっさにヤミマルの足を払ってもろともに崖から落ちてゆく。
斜面を転がる2人。
暴魔城では、何かを感じ取ったのか、ドラグラスがしきりに唸っている──。
レッド「ヤミマル……」
満身創痍のヤミマル。手を差し伸べようとするレッドに、ドラグラスが光線を浴びせる。
爆炎に包まれるレッド。
ヤミマル「あっ、ドラグラス! 来てくれたのか!」
ドラグラスが返事を返す。
ヤミマル「やはりお前は流れ暴魔の守護神…… 俺を忘れてはいなかったんだな!」
ネオラゴーン「裏切りおったな、ドラグラス!」
縛められたターボラガーに一方的に攻撃を加える巨大フーインボーマ。
そこへドラグラスが突っ込んでくる。
すかさず巨大フーインボーマが杖から光線を発射。直撃を受けて、ドラグラスの体が燃え上がる。
ヤミマル「あっ……!」
火の鳥と化したドラグラスはそのまま巨大フーインボーマに突撃。
巨大フーインボーマは最後の力を振り絞って地面に杖を突き立てた後、倒れこんで大爆発した。
ヤミマル「あぁ……! ドラグラス──っっ!!」
巨大フーインボーマの残した杖が、地面に潜って消えていく。
杖は、大封印の奥に眠る108匹の暴魔獣の下へ届いていた。
ヤミマル「ドラグラスが…… ドラグラスがぁ……!!」
レッドターボ「ドラグラスさえも助けようとしたその命…… なぜ大切にしないんだ!」
ヤミマル「ほざくな!! ……最後の勝負だっ!!」
改めて相対する両者。
永遠にも思えた静寂をヤミマルの怒りの叫びが破り、レッドも裂帛の気合で応じる。
互いに激しく剣をぶつけ合い、ヤミマルが剣から光線を放てば、レッドもターボレーザーで応戦。
そして飛び上がり、すれ違いざまに一撃を叩き込む。
キリカ「ヤミマル!」
再び静止して睨み合うレッドとヤミマルに、ようやくキリカが追いつく。
2人は微動だにしない。
キリカ「……あっ!」
ヤミマルが血を吐き、手から剣を落として膝をつく。
レッドターボ「ヤミマル……!」
ヤミマル「なぜ…… なぜとどめを刺さなかった!」
レッドターボ「……キリカを悲しませたくない!」
ヤミマル「何ぃ……!?」
ヤミマルがキリカを、キリカがレッドを見る。
レッドターボ「キリカも、俺も…… お前を信じているんだ! この世で一番大切なものは何か、必ずわかってくれると!」
キリカ(ありがとう…… レッド……)
しかし、ヤミマルはそんな2人をあざ笑って拒絶する。
ヤミマル「バカな奴…… 後悔するぞ…… 必ず後悔するぞ!!」
ヤミマルは最後の技「ヤミマル闇隠れ」を使い、苦しみながら姿を消した。
レッドターボ「あっ、ヤミマル!」
キリカ「ヤミマルぅっ!! なんてことを…… 闇隠れまで使うなんて…… ヤミマル──っ!!」
キリカの涙声が戦場にむなしく響く──
その頃、ターボビルダー基地は異様な地震に襲われていた。
計器が乱れ、停電が起きる。
シーロン「大変です! 博士、大封印が…… 大封印が破れようとしています!!」
太宰博士「大封印が、ターボビルダーの下にあったとは……!」
シーロン「フーインボーマが、最後に自分の命を捧げて、封印を弱めたに違いありません!」
ついに、大封印が破れ始めた。 しかもそれは、ターボビルダーの下にあった!
果たしてターボレンジャーは、地球を守れるのか? そして、自らの命を削る「ヤミマル闇隠れの術」に 全てを賭ける、ヤミマルの運命は!?
最後の、戦いの時が迫る──!!
|
最終更新:2021年04月23日 02:26