FM(周波数変調)。
入力 | 説明 | デフォ |
---|---|---|
[0]carrier | キャリア。基音のmidiセントor周波数。 | 3600 |
[1]modul | モジュレータのmidiセントor周波数。 | 4000 |
[2]index | 変調指数。1~25の整数で指定。 | 1 |
carrier、modul、indexはリストでも可。そのときは、carrierリストの第1要素&modulリストの第1要素&indexリストの第1要素でFMされ、次はそれぞれの第2要素が・・・となる。 | ||
[3]unit | 入力数値の解釈。インレットをクリックして選択する。 'Midics'を選ぶとcarrier、modulをmidiセントとして受け取る。 'Freqs'を選ぶとcarrier、modulを周波数として受け取る。 |
Midics |
[4]type | リストだった場合の出力形式。インレットをクリックして選択する。 'ChordSeq'を選ぶと、FMされた和音のリストが返ってくる。'Chord'を選ぶと、出来た全ての音成分が1つの和音にまとめられて返ってくる。 |
Chord |
出力はChord/Chord-seqオブジェクト。数値のリストではない。
FM(周波数変調)の概要
まず、ここでいうFrequancy Modulateの用途はむしろFrequency Shift(周波数移調というべきか)にあり、Max/MSPの初歩学習段階で覚えるようないわゆる「FMシンセサイザー」的な用途が目的ではない。そのような用途を希望であればむしろOM-CSoundかOM-Chromaが適格である。むしろこのオブジェクトの有意義な利用法は、和音を歪ませて微分音をたくさん含んだ非整数倍音スペクトルによる複雑な響きを得ることにある。
Frequency Shiftの概要は次の通りである。
まずA4はOpenMusicのmidicentでは6900と表記されるが、これにファンクションmc->fを接続すると440という値が返ってくる。つまりA4は440Hzである。
この440Hzを1/2倍すれば220Hzとなり、これは1オクターブ下のA3となる。また2倍すれば880Hzとなり、これは1オクターブ上のA5となる。
これに例えばそれぞれ30ずつの数値を足すと、それぞれ250, 470, 910となる。つまりこれらはもはや整数倍ではなくなり、オクターブではなく歪んだ音となる。足す数値を大きくすればするほど、これらの歪みは大きくなる。
この歪みに着目して、人工的な非整数倍音を作り出すのがfrequency shiftである。
もちろん負の数を用いて、下方の非整数倍音を得ることも可能である。
正と負の数が同時に等しく与えられた結果を足したものは、リングモジュレータと同じ結果になる(+30, -30など)。これについてはring-modの項で詳しく述べることとする。
概念的にはこのようなものであるが、これをいちいちオブジェクトとして自作するのは面倒くさい。それこそ「車輪の再発明」になってしまう。(火をおこすのにライターかマッチがあれば一瞬で火がつくのに、わざわざ原始時代のように時間をかけて木をこするようなものだ。)そこでこのesquisseライブラリを使えば、このようなものがすぐに出来るというわけである。
同様のライブラリはOM-Tristanにも収録されている。
これを応用した楽曲に、トリスタン・ミュライユTristan Murailの『デザンテグラシオン(崩壊)Désintegrations』がある。これはesquisseライブラリのサンプルパッチに収録されている。 libraries/Esquisse/examples/desintegrations.omp
他にもジェラール・グリゼーGérard Griseyの『モデュラシオン(変調)Modulations』(『レ・ゼスパス・アクースティク(音響空間)Les Espaces Acoustiques』第4曲)、ジョナサン・ハーヴェイJonathan Harveyの『バクティBhakti』などがある。
他にもジェラール・グリゼーGérard Griseyの『モデュラシオン(変調)Modulations』(『レ・ゼスパス・アクースティク(音響空間)Les Espaces Acoustiques』第4曲)、ジョナサン・ハーヴェイJonathan Harveyの『バクティBhakti』などがある。
- トリスタン・ミュライユTristan Murail『デザンテグラシオン(崩壊)Désintegrations』
- ジェラール・グリゼーGérard Grisey『モデュラシオン(変調)Modulations』(『レ・ゼスパス・アクースティク(音響空間)Les Espaces Acoustiques』第4曲)
- ジョナサン・ハーヴェイJonathan Harvey『バクティBhakti』