リングモジュレーション。
入力 | 説明 | デフォ |
---|---|---|
[0]ch1 | 基音のmidiセントor周波数。 | 6000 |
[1]ch2 | モジュレータのmidiセントor周波数。 | 6200 |
ch1、ch2には音高値、音高値のリスト、音高値リストのリスト、CHORDオブジェクトが入力できる。 | ||
[2]unit | 入力数値の解釈。インレットをクリックして選択する。 'Midics'を選ぶと音高入力をmidiセントとして受け取りmidiセントを出力。 'Freqs'を選ぶと音高入力を周波数として受け取り周波数を出力。 |
Midics |
[3]type | ch1がリストであった場合の出力形式。インレットをクリックして選択する。 'ChordSeq'を選ぶと、ch1のリストの要素がそれぞれch2のモジュレータで処理され、和音のリストが返ってくる。 'Chord'を選ぶと、出来た全ての音成分が1つの和音にまとめられて返ってくる。 |
Chord |
リングモジュレーションの概要
freq-mod(フリーケンシーモジュレーション、周波数変調)が上方あるいは下方いずれかの非整数倍音スペクトルを作り出すのに対し、このring-mod(リングモジュレーション)は上方と下方に等しい数値の変調がかかった結果を出力する。したがってこの項を読む前に、まずfreq-modの項を参照されたい。
freq-modでの例示には、220, 440, 880にそれぞれ30を足した数値として250, 470, 910が得られるということを書いた。同じく30の負の値-30を足せば(つまり30を引けば)、190, 410, 850という数値が得られる。ring-modではこの2つの出力結果が混ぜ合わされ、190, 250, 410, 470, 850, 910という6つの数値が得られる。(なおこのring-modの出力結果では、これらの最小公倍数によって得られる下方倍音としてとても低い音高の音が付け足されている場合がある。)
これはそもそもリングモジュレーションの成立経緯にある。リングモジュレーションはエンヴェロープをかけるモジュレータ側が正弦波のオシレータの周波数を操作することによって行われる。被変調側も正弦波であれば2つの音は分離して聞こえるが、楽器音やしゃべり声などの場合は、複雑な非整数倍音がからんで濁った音として聞こえる。例えば日本の国内電話の発信音は400Hz(G4に近い)の正弦波音に7Hzの変調をかけているため、プルルルルルルという「巻いた」音として聞こえる。海外の電話局は大抵この変調がかけられていないため、プーーーー、プーーーー、という長伸音になる。このプルルルルルという音は日本の電話のみの特徴である。しかし7Hzは正弦波としては可聴音域ではないため、このような振動音として聞こえるのであるが、可聴音域に入ってくる20Hz付近からは、倍音が分離して聞こえ始める。これがリングモジュレーションである。
リングモジュレーションの方がフリーケンシーモジュレーションよりも歴史的に早く成立したため、前者を用いた音楽作品は1950年代頃から既に見られる。例えばカールハインツ・シュトックハウゼンKarlheinz Stockhausenは『コンタクテKontakte』『マントラMantra』『ヒュムネンHymnen』など複数の作品でこの技術を多用したし、武満徹のハープ独奏とテープのための『スタンザII』ではテープ部分にリングモジュレータを用いた変調が聞かれるほか、そのテープ部分の代わりにライブエレクトロニクスとして「2個のリングモジュレータを用いても良い」という指示がある。
- カールハインツ・シュトックハウゼンKarlheinz Stockhausen『マントラMantra』
- Spotify (特にトラック9は分かりやすい例。)
- 武満徹 ハープ独奏とテープのための『スタンザII』
- Spotify (トラック11)
より身近な例としては、ニュース番組に良くある顔をモザイクで隠した容疑者のインタビューなどで使われる声の変調は、一昔前は大抵このリングモジュレータを用いていた。ただし最近はフリーケンシーモジュレータの使用も増えており、上方倍音のみの極端にうわずった声や、下方倍音の極端にドスの聞いた声のみが聞こえる場合もある。