――7月1日午前二時 アメリカ合衆国
サンフランシスコ「アルカトラズ連邦刑務所跡」にて
サンフランシスコ「アルカトラズ連邦刑務所跡」にて
男はずっとうなだれていた。なぜなら今、彼は囚われの身だからだ。
見上げれば高い塀と薄汚れたコンクリートがそびえ、彼のいる空間に一切の彩りを許さない。
――ここは小さな牢屋の中。聞こえてくるのは虫の鳴き声と、老人のうめき声、そしてくだらない罵声のみだ。
小さな小さな窓から注ぐ月光は、彼のいる牢屋の中をほんのかすかに照らしだすが、それすらも今の彼には鬱陶しい存在に感じられた。
「消えてしまえ・・・いや、汚れてしまえ・・・!」
男は吐き捨てるようにそう呟くと、再びまどろみの中に逃避する作業に戻った。
眠れば全てを忘れられる。彼が考えうる方法の中で、それだけが彼を救ってくれたからだ。
思えば全てはあの時からだった。
自分が手に入れた不思議な力――それを用いて完全犯罪を成し遂げていたころのことだ。
力におぼれた彼は普段なら犯さないようなミスを犯し――あっけなく捕まってしまった。
彼の所業は全米を震撼させ、海外をわたり世界にその名を轟かせたが、今となってはこのざまだ。
こんな牢獄ひとつ打ち破ることが出来ない。
(くそ・・・・くそっ・・・・!!!!!!)
悔しさに歯噛みする。
もう一度ここから出られたのなら。
再び彼は罪を犯すだろう。あの力を使って。
それはおろかなことに思えたが、彼にとってはそうでなかった。
見上げれば高い塀と薄汚れたコンクリートがそびえ、彼のいる空間に一切の彩りを許さない。
――ここは小さな牢屋の中。聞こえてくるのは虫の鳴き声と、老人のうめき声、そしてくだらない罵声のみだ。
小さな小さな窓から注ぐ月光は、彼のいる牢屋の中をほんのかすかに照らしだすが、それすらも今の彼には鬱陶しい存在に感じられた。
「消えてしまえ・・・いや、汚れてしまえ・・・!」
男は吐き捨てるようにそう呟くと、再びまどろみの中に逃避する作業に戻った。
眠れば全てを忘れられる。彼が考えうる方法の中で、それだけが彼を救ってくれたからだ。
思えば全てはあの時からだった。
自分が手に入れた不思議な力――それを用いて完全犯罪を成し遂げていたころのことだ。
力におぼれた彼は普段なら犯さないようなミスを犯し――あっけなく捕まってしまった。
彼の所業は全米を震撼させ、海外をわたり世界にその名を轟かせたが、今となってはこのざまだ。
こんな牢獄ひとつ打ち破ることが出来ない。
(くそ・・・・くそっ・・・・!!!!!!)
悔しさに歯噛みする。
もう一度ここから出られたのなら。
再び彼は罪を犯すだろう。あの力を使って。
それはおろかなことに思えたが、彼にとってはそうでなかった。
(サタン。ルシファー。私が崇拝せし全ての悪の神々よ。)
(もう一度だけ・・・ッ!!)
(もう一度だけ・・・!!この私に!!この腐敗しきったくだらぬ空間から逃げ出すチャンスを!!勇気を!!力を!!)
(――そうすれば私は、再び悪に染まることができるのだから)
(もう一度だけ・・・ッ!!)
(もう一度だけ・・・!!この私に!!この腐敗しきったくだらぬ空間から逃げ出すチャンスを!!勇気を!!力を!!)
(――そうすれば私は、再び悪に染まることができるのだから)
彼は怒りに震える体を押さえつけるように毛布にくるまろうとした。
その時であった。
「もう一度――どうしてほしいのかね?」
かすかに、だが力強く確実にそれは聞こえた。
牢獄の向こうの世界。暗黒からの使者。
「君の望みを聞いているんだよ、クリス君。さあ。」
牢獄の向こうの世界。暗黒からの使者。
「君の望みを聞いているんだよ、クリス君。さあ。」
「――君は、どうしてほしいのかね?」
「向こう側」から差しのべられた手を、彼は、強く、強く握った。
「ようこそ。もう君は戻れないよ、クリス。」
――――午前7時サンフランシスコ
「はぁ・・・だるい。」
一人の女子高生が、町を歩いていた。
その女子高生は異様な前髪の長さをしており、はたから見るとそう
「陰気」という言葉がぴったりあうような格好をしていた。
顔のつくりは上品なのに、纏っているオーラといような前髪が彼女の全てを台無しにしていた。
「だるい・・・だるいだるいだるい。朝は嫌いだ・・・。」
彼女がこのサンフランシスコを訪れてはや一週間、しかし生活に慣れる事はない。
今思えばなぜ、海外留学などしてしまったのだろう。
英語の成績が良かったのは直接の原因ではないと思う。おそらく日本の学校生活がだるかったからだ。
海外なら、海外なら・・・もうちょっとルーズに、目立たず過ごせるかもしれない!と彼女は常々考えていた。
ひねくれた考え方と性格のせいか、やたらと周りに騒がれる機会が多かった彼女にとって、もともと騒がしい印象の強い海外なら、自分が変人だとしてもすんなり溶け込めて、静かに過ごせるのではないかと思ったのが発端だった。
しかし現実はそうでもなかった。
なにかとかまってくるうざったい女子生徒の存在はグローバルだったのだと彼女はこの一週間でいやというほど思い知った。
しかも粘着性では日本以上だ。一緒にランチ食べない?と誘われてすんなり食べる転校生がいるかっての。
留学生だからと言ってやたらと気を利かせるのは本当にやめてほしい。
陰気で暗い雰囲気の自分に構う人間がここにきても存在したとは。彼女は過去の自分を恨んだ。これなら日本にいた方がいくらかましなのであった。
だがしかし留学期間は三か月以上ある。
この鬱陶しい日々がまだアニメ1クール分続くのかと思うと彼女はつくづく「だっりぃぃぃぃぃぃ・・・・」のであった。
「はぁ・・・・・ん?」
またいやな一日が始まる・・・と憂鬱に浸っていた彼女を現実に引き戻したのは、一人の少年をみかけたからであった。
「僕は・・・僕はもう、怒ったぞ~~~!!!」
「はぁ?んだよこのガキ、おい!さっさと金だせっつってんだろ!!」
「怒ったぞ~!じゃねーよ~!てめーなんざブチ切れてもこわくね~んだよアン?」
「ッハッハ!おいみろ、さっきまで大人しくしてたのにいきなり赤くなっちまってよ~ッ!怒ってるのなら殴る蹴るのひとつでもしてみろよ!オラァ!!ヒ~ッハハァ!」
「はぁ・・・だるい。」
一人の女子高生が、町を歩いていた。
その女子高生は異様な前髪の長さをしており、はたから見るとそう
「陰気」という言葉がぴったりあうような格好をしていた。
顔のつくりは上品なのに、纏っているオーラといような前髪が彼女の全てを台無しにしていた。
「だるい・・・だるいだるいだるい。朝は嫌いだ・・・。」
彼女がこのサンフランシスコを訪れてはや一週間、しかし生活に慣れる事はない。
今思えばなぜ、海外留学などしてしまったのだろう。
英語の成績が良かったのは直接の原因ではないと思う。おそらく日本の学校生活がだるかったからだ。
海外なら、海外なら・・・もうちょっとルーズに、目立たず過ごせるかもしれない!と彼女は常々考えていた。
ひねくれた考え方と性格のせいか、やたらと周りに騒がれる機会が多かった彼女にとって、もともと騒がしい印象の強い海外なら、自分が変人だとしてもすんなり溶け込めて、静かに過ごせるのではないかと思ったのが発端だった。
しかし現実はそうでもなかった。
なにかとかまってくるうざったい女子生徒の存在はグローバルだったのだと彼女はこの一週間でいやというほど思い知った。
しかも粘着性では日本以上だ。一緒にランチ食べない?と誘われてすんなり食べる転校生がいるかっての。
留学生だからと言ってやたらと気を利かせるのは本当にやめてほしい。
陰気で暗い雰囲気の自分に構う人間がここにきても存在したとは。彼女は過去の自分を恨んだ。これなら日本にいた方がいくらかましなのであった。
だがしかし留学期間は三か月以上ある。
この鬱陶しい日々がまだアニメ1クール分続くのかと思うと彼女はつくづく「だっりぃぃぃぃぃぃ・・・・」のであった。
「はぁ・・・・・ん?」
またいやな一日が始まる・・・と憂鬱に浸っていた彼女を現実に引き戻したのは、一人の少年をみかけたからであった。
「僕は・・・僕はもう、怒ったぞ~~~!!!」
「はぁ?んだよこのガキ、おい!さっさと金だせっつってんだろ!!」
「怒ったぞ~!じゃねーよ~!てめーなんざブチ切れてもこわくね~んだよアン?」
「ッハッハ!おいみろ、さっきまで大人しくしてたのにいきなり赤くなっちまってよ~ッ!怒ってるのなら殴る蹴るのひとつでもしてみろよ!オラァ!!ヒ~ッハハァ!」
うわあ・・・と少女は思った。
見慣れない光景ではない、こういう場所でもカツアゲやらなにやらはある。
DQNもまたグローバルなのである。
にしても自分と年が変わらないような17,8の男のが三人がかりであんな小さな子を・・・
少女は朝からいやなものを見てしまった、と後悔するように頭を振り、目をそむけた。
さすがにボコボコにされる少年を黙ってみて悦に浸るような趣味はない。
かといって非力な自分が止めに入るわけもない。というかだるい。
平穏ではなくとも、静かに暮したいと願う彼女がもっとも嫌うシチュエーションの一つではないか。
ばかばかしい、と彼女は歩き出したが、次の瞬間。
「ぐぴゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあっ!!?!?!?!?!?」
「!?」
「な、なんだ~っ!?すげえ勢いで吹き飛んだだとっ!?」
見慣れない光景ではない、こういう場所でもカツアゲやらなにやらはある。
DQNもまたグローバルなのである。
にしても自分と年が変わらないような17,8の男のが三人がかりであんな小さな子を・・・
少女は朝からいやなものを見てしまった、と後悔するように頭を振り、目をそむけた。
さすがにボコボコにされる少年を黙ってみて悦に浸るような趣味はない。
かといって非力な自分が止めに入るわけもない。というかだるい。
平穏ではなくとも、静かに暮したいと願う彼女がもっとも嫌うシチュエーションの一つではないか。
ばかばかしい、と彼女は歩き出したが、次の瞬間。
「ぐぴゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあっ!!?!?!?!?!?」
「!?」
「な、なんだ~っ!?すげえ勢いで吹き飛んだだとっ!?」
三人組の男たちの悲鳴を聞いて、彼女は振り返ってしまった。そしてその時、確かに見た。
「な・・・なに、あれ・・・ッ!?」
少年の背後から出現した「なにか」が超高速でDQN1に突っ込み、竜巻のような轟音とともに天高く吹き飛ばしてしまっていたのを。
「な・・・なに、あれ・・・ッ!?」
少年の背後から出現した「なにか」が超高速でDQN1に突っ込み、竜巻のような轟音とともに天高く吹き飛ばしてしまっていたのを。
「ひ、ひぃぃぃ~~~!!」
「こ、このガキャーッ!!なにしやがったんだ、てめーっ!!」
「うるさい、君たちは僕を怒らせたんだ!!それもう、すんごく、ほんとうに――!!怒らせたんだからさぁ~ッ!!」
「こ、このガキャーッ!!なにしやがったんだ、てめーっ!!」
「うるさい、君たちは僕を怒らせたんだ!!それもう、すんごく、ほんとうに――!!怒らせたんだからさぁ~ッ!!」
そして少女は再び、あの「なにか」が少年の背後に現れるのを目撃する。
「あれ・・・あれっ!え、ちょ、まさか・・・・!!」
「あれ・・・あれっ!え、ちょ、まさか・・・・!!」
「さあ、つぎはどっちだ!!もう許さないからな!!僕は怒った!!君たちが怒らせた!!これ以上の説明なんかいるか~っ!!」
「ひいい、ま、待てよ!ちょっと落ち着けよ!なあ!」
「そ、そうだぜ~!か、からかっただけだろう~!?なぁ!?」
「そ、そうさ!君をからかったんだよ!あ、あははははは!」
必死に弁解するDQN、固まる少女、そして――怒る少年
「からかった!?“からかった”と!!確かにそう言ったね!!なら君たちは僕を侮辱したんだ!!そうだろう!!やっぱりゆるせねェッ!!」
グオン、と再び空気が唸り、爆音が轟く。
「「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「ひいい、ま、待てよ!ちょっと落ち着けよ!なあ!」
「そ、そうだぜ~!か、からかっただけだろう~!?なぁ!?」
「そ、そうさ!君をからかったんだよ!あ、あははははは!」
必死に弁解するDQN、固まる少女、そして――怒る少年
「からかった!?“からかった”と!!確かにそう言ったね!!なら君たちは僕を侮辱したんだ!!そうだろう!!やっぱりゆるせねェッ!!」
グオン、と再び空気が唸り、爆音が轟く。
「「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
三度、少年の背後から「なにか」が飛び出すのを見た彼女は、今度こそ確信していた。
少年が自分と同じ力――そう。
「はぁ・・・はぁ!!どーだ!!もう懲りただろう!!懲りたなら二度と僕に触れるなよ、このチンピラ野郎が~!!」
少年が自分と同じ力――そう。
「はぁ・・・はぁ!!どーだ!!もう懲りただろう!!懲りたなら二度と僕に触れるなよ、このチンピラ野郎が~!!」
「僕の“スタンド”――“ラッチェ・バム”は無敵なんだからね!!」
“スタンド”を使える存在であるという事に――気づいてしまったのだ。
それが彼女・・・「西城 佑」とスタンド使いの青年「カークス」との出会いだった。