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【ガーネット】「柘榴石の心(グラナート・クオーレ)」【クロウ】第4話 友情と壁

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第4話 友情と壁





ネアポリス市街 PM 12:30頃


「だからよォ~、『ヴェネツィアに死す』って呼び方のが絶対正しいと思うんだ。
 だろ? おかしいよな?」

「そうそう、なんで英語で『ベニス』って呼ぶのがメジャーなのか分からん」

さっきから意味のない話題で盛り上がっているのは・・・
退院し、すっかり元気になったビアンコとヴェルデである。


俺達は今、市街にあるレストランに集まっている。
何やらヴェルデから話があるらしい。
今は三人で、残りの一人であるイザベラを待っている。


それにしても・・・うるさい。

ただでさえ日曜の昼時で沢山の客がいるのに、俺達が座っている席は外のテラスだ。
通行人までもが、この二人の男の下らない会話を聞かされている。

二人は共に入院しているうちに仲良くなったらしいが・・・

医者が驚愕するほどの早さで怪我が回復したという二人・・・
なるほどな・・・と思う。


「おいロッソ、おめえも思うよな」

ビアンコが突然話を振ってくる。

「はい? 何が?」

俺はこう返す他に無かった。

「だぁ~~ッ!! また上の空かよ!!
 年上の話はちゃんと聞けって言っただろうが!」

ビアンコはついに地団駄まで踏み出した。

「そういえばさ、ローマは違うんじゃあねえか?
 英語の発音は『ローム』らしいぜ」

ビアンコとウェルデの話はまだ続く。

「何ィ~ッ!? 馬鹿げてるぜ!
 何でヴェネツィアだけ仲間外れなんだ!」

「フィレンツェとかトリノもそうだぞ!
 英語の発音は『フローレンス』と『トゥーリン』だからな!」

「基準が分かんねェ~!!」

・・・周りの目線が痛い・・・
俺はそろそろ、我慢できなくなってきた。

「『ガーネット・クロウ』・・・」

俺はスタンドを解き放つ。

ズオォォ!

ドス!    ドス!
「ウッ!」 「ウッ!」

「ちょっと黙っててもらえませんか・・・?
 今あなた方を『鬱』にしておきましたんで・・・」

「はい・・・」

「すみませんでした・・・」

ようやく大人しくなった・・・
俺は呆れと安堵、両方の意味の溜め息をつく。


「・・・おいヴェルデ・・・」

ビアンコがか細い声で話し始めた。

「・・・何だよ」

「『ネアポリス』って、確かラテン語だよな・・・
 イタリア語の『ナポリ』とどう違うわけ・・・?」

「!?」

俺は驚愕した。
まだその話題を続けるのか!?

「・・・知るかよ」

ヴェルデにはもう答える気力が無いらしい。

「・・・なんだよそれ・・・意地悪」

ビアンコにはまだ会話する余裕があるというのだろうか?
俺は確かに『ガーネット・クロウ』の能力で、話す気力も無くす程の「鬱」にしたはずなのに・・・

なんだか疲れてきた・・・


その時・・・

「あっ、どうもこんにちは・・・」

イザベラがやってきた。
その瞬間、ビアンコの目が見開かれる。

「うおォ~ッ!! 来たぜロッソの彼女!
 ほらヴェルデ、俺達で噂してた女の子だぞ!」

「・・・・・・」

ヴェルデは返事をしない。

「え!? ちょ・・・」

イザベラは顔を赤くする。
俺はその場で身を縮めるしかなかった。

おかしい・・・確かに「鬱」にしたはずなのに・・・



同所 数分後


「さて、それじゃあ簡単な自己紹介から・・・」

ビアンコが改まった様子で取り仕切っている。

二人の「鬱」は既に解除している。

「え~、まず、俺はビアンコ。今はバイトしながらギターをやってる。
 スタンドは『エイフェックス・ツイン』、好きなアーティストはアークティック・モンキーズだ。よろしくっと」

ビアンコは手短に自己紹介を済ませた。

イザベラは、先程ビアンコにあんなことを叫ばれてから苦笑いしかしていない。
内心では相当彼のことを憎んでいるだろう。
俺も同じだ。あんな勘違いをされていれば・・・

「え~っと、じゃあ次はイザベラちゃんだな、よろしく頼むぜ」

「あ、はい・・・」


そんな調子で自己紹介が進んだ。

イザベラと、その次の俺が終わった。

「ほら、最後はヴェルデだぜ」

ヴェルデはビアンコにそう言われると、一息ついてから話し始めた。
何やら落ち着かない様子だ・・・

「あ~、じゃあ・・・この際俺の自己紹介を“正直に”やらせてもらうぞ・・・
 ビアンコには黙ってて悪かったと思ってるんだが・・・

 “俺はギャングだ”。下っ端の構成員だがよ」


「えっ!?」

「ギャ・・・ギャング?」

俺とイザベラは思わず言葉を漏らした。

ガラッ!

ビアンコは突然立ち上がる。

「これまでのあなたに対する数々の御無礼をお許しくだsぐふッ!」

俺はスタンドでビアンコを突いた。

「人の話を最後まで聴いて下さい、ビアンコさん」

「はい・・・」

ビアンコは静かに席に着く。

「今回みんなを集めたのは、“あいつら”について話しておきたかったんだ」

ヴェルデは至極真面目な口調で語った。

「あいつらって・・・」

俺がヴェルデに尋ねる。

「あぁ、あの『アランチョ』と『チレストロ』。二人が属する組織のことだよ」

「!」

空気が一気に張りつめた。

「チレストロ・・・」

イザベラが呟いた。
彼女がチレストロから受けた恐怖は相当なものだろう。

俺はもう一度尋ねた。

「一体何なんですか? 奴らが属する組織って・・・」

「・・・『教団』だよ」

ヴェルデはそう答えた。

「教団?」

俺達は一斉に同じ言葉を口にする。

教団・・・
あのジョルノという少年が言っていた・・・

「それって具体的には・・・」

イザベラが尋ねた。

「『スペランツァ・ディ・イッディーオ(神の望み)』という名だ。
 表向きにはプロテスタント系の新興宗教なんだが、裏の目的は・・・」

「・・・・・・」

俺達はヴェルデの言葉にじっと耳を傾けている。


「『ギャングの残滅』を掲げている・・・」

「!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


ビアンコが口を開いた。

「アホにも程があるだろ!
 ギャングなんてイタリアには有り余る程組織されてるぜ!
 一体何のために・・・」

「ビアンコ、静かに頼む。今は人が多いからな・・・」

ヴェルデは真剣な面持ちで話を続けた。

「今はこれ以上のことは分かっていない。
 だが、これまでに俺達の仲間が何十人も殺されている・・・
 “しかも、そのほとんどがスタンド使いなんだ”」

「そ、それって・・・」

俺は反射的に口を挟んだ。
できるだけ声を小さくして・・・

「スタンド使いを優先して殺しているということですか・・・?」

「そういうことだ。スタンド使いは厄介な存在だろうからな。
 しかも、『スタンドはスタンドでしか倒せない』という規則がある。
 『教団』はスタンド使いを殺すために、『応報部隊』というものを組んでいるらしい」

「『応報部隊』・・・なんだよそれ・・・」

流石のビアンコも声を小さくしている。

「教団の中で結成された、スタンド使いの集まりだよ。チレストロやアランチョもそこに属していたんだろう。
 奴らは特殊な『矢』を使ってスタンド能力を引き出され、後で教団に引っ張られて来た奴らなんだ・・・」

「特殊な『矢』・・・?」

俺達には分からないことが多すぎて、少し混乱していた。
一人を除いて・・・

「『矢』・・・だと・・・」

ビアンコである。
冷や汗を流し、さっきまでの剽軽な態度が嘘のようだ。

「ビアンコ、何か心当たりがあるのか?」

ヴェルデが尋ねる。

「俺も『矢』みてえな物で傷つけられた・・・
 そのときからスタンドが使えるようになったんだ・・・
 それに・・・」

「それに?」

ヴェルデは問い詰める。

「いや、何でもねえや・・・
 とにかく、俺は『矢』にスタンド能力を引き出されている。間違いねえ」

「うん、恐らくそれも教団の人間だ。
 その後お前を教団に引きずり込む予定だったかもしれない」

「あぁ来たさ、変な奴らが俺を拉致しようとな。
 俺はスタンドを使って色々やりたかったから、ブッ飛ばして逃げてたけどな」


色々というのは・・・
俺がやられそうになった時のような悪行のことだろうか。

だとしたら、余りにもセコいような気がするのだが・・・


「そいつは危険だぜ・・・
 教団はギャングに味方する奴や、反抗するような奴も容赦なく殺すからな。
 俺が今日謝りたかったのは、お前達をこの戦いに巻き込んじまったことなんだ・・・」

「いや、ヴェルデさんのせいではありませんよ・・・」

俺はヴェルデの言うことを否定した。

ビアンコのせいですよ・・・

「スマン、だが今、お前達は本当に危険な状態にある。
 特にロッソ、お前は強力なスタンドを持っていることを既に知られている。
 この前のように、いつやられるか分からないんだ」

「分かってますよ。
 チレストロだって、またいつ俺を叩きに来るか分かりませんし。
 用心はするつもりです」

俺はあくまでも冷静に答える。
だが心の中では・・・正直、恐怖していた。


俺を狙って来る刺客がいる・・・?
悪夢でも見ているのだろうか・・・?


「だが、相手はどんなスタンドを使ってくるか分からない。
 俺から言えるのは、外には一人で出歩くなということだけだ。
 俺が責任を持って同行するから、何か用があるときは連絡してくれ」

「はい・・・」

「分かりました・・・」

俺とイザベラは静かに頷いた。

「用事はそれだけか?」

不意にビアンコが喋りだした。

「え? ・・・あぁ、まぁそうだが」

ヴェルデは戸惑いながらも返事をする。

「そんなら俺はお先に失礼するぜ。用事があるからよォ。
 メシ代は置いとくから払っといてくれ」

「別に構わないが・・・一人で大丈夫か?」

「大丈夫だよ。人通りの多い場所だし。
 それに、俺のスタンドは無敵だぜ、ヘヘッ」

ビアンコの表情は、いつもと変わらない陽気なものだった。

「フフッ、分かった、じゃあな」

「さようなら」

ヴェルデとイザベラは挨拶をする。

俺はビアンコの姿を何となく見ていた。


表情こそ陽気だが、何だかさっきまでのビアンコと印象が違うように見える。
そう、それはどこか寂しげな・・・


「おいロッソ! 俺への挨拶は無しかよ!」

突然ビアンコに注意され、俺は我に返った。

「あっ、はい、さようなら・・・」

「まったく、挨拶もできねえのかよ! 挨拶は礼儀の基本だぜ!
 そんじゃあな!」

・・・いつものビアンコだ。
良かった。

俺は人混みの中へ消えていくビアンコを、見えなくなるまで眺めていた・・・



ネアポリス郊外 PM 13:10


俺は・・・
みんなに悪いことをしたと思っている。

「嘘」を付いてしまったことだ。

「人通りの多い場所」なんていう、実にちっぽけな嘘。
些細なことに感じるかもしれないが、俺にとっては大きな過ちだった。

人を騙すなんて・・・
「礼儀」に反する、最低の行為じゃあないか・・・


俺は今、“人通りが多くない”どころか、全く人気のない場所へと向かっている。
ネアポリス郊外、海に面した所にある、小さな工場跡だ。

そこでは“奴”が待っている・・・


昨日、俺は“奴”に突然呼び出されたのだ。
明日の昼過ぎ、ここの工場跡に来いと・・・

その電話を受けた時、俺は驚きで目を見開き、声を失った。

“奴”とは一年近く連絡を取っていなかった。
それが突如、向こうの方から電話をかけてきたのだ。

“奴”が一体何の理由で俺を呼びだしたのか・・・
俺には大体の予想がついている。


やがて工場跡にある、デカい倉庫の前に辿り着いた。

「フゥ~・・・」

俺は溜め息と深呼吸を同時にして、大きく一歩を踏み出した。

バン!

「意外と遅かったなァ~、ビアンコ」

“奴”がいた・・・
だだっ広い倉庫の中で佇んでいる。
双眼鏡みてーなイカレた眼鏡をかけたアイツが。

「『礼儀』を重んじるお前のことだから、必要以上に早くから待っているのかと思ったが」

「ハッ・・・余計なお世話だぜ、グリージョ」

グリージョ。
それが“奴”の名前だ。

「ビアンコ、俺がやりたいことは何だか分かるよなァ~?」

「おめぇの考えてることは嫌でも分かるよ。昔っからな・・・」

こいつは・・・
俺の“元”親友だ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

俺達はしばらく睨み合っていたが、やがて俺がその沈黙を断ち切る。

「おめぇがスタンド使いになってから、もう一年ってとこか?」

「・・・・・・」

グリージョは黙ったままだ。

「スタンド・・・こんなに便利な物って他に無いよなァ。なんたって超能力だからな。
 俺だって最初の頃は、くだらねえ事にスタンドを使ってたよ。
 だがなァ~・・・」

俺はグリージョを睨んだまま、ゆっくりと息を吸ってから言った。

「スタンドを身につけたからって、大切なダチを見捨てていくのはどうかと思うぜェ!」

「・・・・・・」

グリージョは微動だにしない。
その表情は、旧友である俺を遥か下に見下ろすような、余裕の表情であった。

俺はさらに話を続ける。

「さっき聞いたんだぜ。おめぇが入ってった訳の分かんねえ宗教のこと・・・
 ギャングの残滅だと? 寝言は寝て言えってんだ」

俺がそう言うと、グリージョの表情が変わった。
怒っているか、歯を剥き出しにしていた。

「寝言だと? それはこっちの台詞だぜビアンコ・・・
 『教祖様』は俺に心の平安を与えてくれる・・・彼こそ真の善人、新たな救い主だ。
 俺は彼の目指す世界を作るために、お前を殺すッ!」

グリージョの顔に青筋が立つ。
目の部分はよく分からないが、鬼のような形相をしているに違いない。

「あ~あ、やだやだ。これだからカルト教団っつうのは。
 こういう手の施しようのない狂信者を生むんだよなァ~」

俺はわざと挑発的な言葉を吐いてやった。

ピキッ!

「死ねビアンコ!!」

ズアァァ!
ズドオォォォーーーン!!

「おっと!」

プッツンしたグリージョはスタンドを発現させ、腕を俺に降り下ろす。
俺はそれをヒラリとかわした。

グリージョのスタンドは・・・
一言で言えば、「デカい」。

普通の人間型スタンドなら、身長は人間と同じくらいのはずだ。
だがグリージョのスタンドは、2m近くある巨大なものだった。

(だが身体がデカいということは、それだけ的もデカいということ!)

「いくぜ! 『エイフェックス・ツイン』!」

ズオォォッ!

俺はスタンドを解き放ち、奴のスタンドに突進する。
そして渾身の一撃を・・・

「ヌアァァァァァァァッ!!」

「させるかッ!」

ズアッ!

「何ッ!?」

俺のスタンドが拳を突き出す寸前・・・

“グリージョの姿が見えなくなった”。

姿が消えたのではない。
目の前に「壁」が現れたのである。

バゴオォォォォォォ!!

俺のスタンドはそれを思いっきり殴ることとなった。

殴った衝撃が拳に響く。

ガラガラ・・・

グリージョの前に現れた壁が崩れていった。

「これがおめぇの能力かよ・・・」

「フン・・・その通りだ・・・
 名は『ワンダーウォール』。
 触れた所に『壁』を作ることができるッ!」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・


「どうせよォ・・・」

また睨み合いが続くかに見えたが、俺はすぐに口を開いた。

「他にもおめぇの仲間が来てんだろ? ここに。
 隙をついて二人がかりで殺るつもりなんだろ? え?」

俺はグリージョを疑っていた。
生真面目に一対一の戦いを望む奴などそうそういない。

「断言しよう・・・“それはねぇ”。
 俺はお前と、正々堂々と決着をつけてぇんだ」

「ほ~・・・」

意外な返事だった。
昔からの付き合いだ。奴の嘘など簡単に見通せる。
だがグリージョの口調は嘘ではなかった。

「それなら心置きなくおめぇをボコれるぜ・・・
 『エイフェックス・ツイン』ッ!」

俺は再びグリージョに突進した。

「『ワンダーウォール』ッ!」

ドゴォ!!

『ワンダーウォール』が地面を殴った。
すると・・・

ズアッ!

奴の目の前にまた『壁』が現れた。

(やっぱりな・・・だが構わん!)

俺は怯まず、壁に向かって突っ走る。

「ヌアアァァッ!!」

ドドドドドドドドガァ!!

そして一気に壁を破壊した。
だが・・・

「何ッ!」

破壊した壁の先にあったのは・・・


もう一枚の“壁”!

グリージョは、そのさらに奥にいるのか?

いや違うッ!
奴は・・・


「“上”かッ!」

「ハアァッ!」

俺の上空、すぐ目の前にグリージョとスタンドの姿があった。

「死ねえェェェェ!」

ゴォォォ
バイン!

「ぐッ!」

グリージョは、俺に接触する寸前の所で後方に飛んでいった。
『エイフェックス・ツイン』が作り出す“壁”で奴を跳ね返すことに成功したのだ。

ドシャァァァン!

「・・・フゥ~、ギリギリだったぜ。
 おめぇ、“壁”がせり上がるのを利用して、乗ってジャンプしやがったか。
 俺が壁を壊してる隙に・・・」

俺は手で冷や汗を拭う。

「ビアンコ・・・それがお前の能力か・・・」

グリージョはゆっくり立ち上がる。
あまりダメージはなかったようだ。

「あぁそうだぜ。おめぇと似たような能力で何か嫌だけどよ。
 これが俺の作り出す“壁”だ・・・」

「なるほど・・・面白れェ・・・
 だがお前の“壁”など・・・
 この『ワンダーウォール』の敵ではないッ!」

ブオォォン!
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガ!!

「! 何だッ!?」

グリージョは突然、自分の周りの床を殴り始めた。
そして大量の“壁”が出現し、奴の姿は見えなくなっていく。


・・・・・・


いつの間にか音が止んだ・・・
やがて・・・

ガラガラガラガラガラガラガラ!
ズガガガガガガガガガガガガガ!

グリージョのスタンドが作った大量の壁が崩壊を始めた。

そしてそこは、あっという間に瓦礫の山となってしまった・・・

「・・・おいおい、何が起こったんだ?
 本気で気が狂ったのか? グリージョよォ」

俺は瓦礫の山に近づいた。
その時・・・

ドバァーン!

「!」

突然瓦礫の中からグリージョが飛び出してきたのだ!
俺に向かって、真っ直ぐに・・・

ドゴン!

「ぐうッ!」

俺は奴のスタンドの体当たりを食らい、大きく吹っ飛んだ。

ドシャアァッ!

「く・・・そ・・・ッ!」

(やばい、追い打ちが来るかッ!)

俺はすぐさま体勢を立て直す。
しかし・・・

グリージョは、その場から動こうとはしていなかった。

グリージョは気味の悪い笑顔を浮かべながら言った。

「ここは広いからなァ、瓦礫の中に隠れて奇襲をするしかないんだ。
 瓦礫の中でさらに“壁”を作って、反動で吹っ飛んだんだぜ。
 だが、こうも簡単に成功するとはなァ」

俺は立ち上がりながら言った。

「おめぇなあ・・・そんな体当たり一発で俺が死ぬわけねえだろ?
 どうせならもっと打ち込んで来いってんだ」

だが、グリージョはさらに不気味な笑顔で答えた。

「その必要はねぇ・・・
 “やるべきことは完了したんだ”・・・」

「何だと?」

俺はグリージョの方へ歩いて行こうとした。

だが・・・

「・・・何・・・?」

身体が動かない・・・

いや、それは違う。身体は確実に動かせる。

“俺の心が、身体を動かそうとしない”のだ・・・

グリージョに近づいてボコボコにしてやる気持ちが起きない。
それどころか、ここから一歩も動く気にもなれない。
ましてやスタンドなど出すことも出来なくなっている。

(これは一体・・・)

グリージョが俺の心を見透かすように言った。

「動く気になれないのだろう? ビアンコ。
 これが俺の『ワンダーウォール』のもう一つの能力・・・」

(てめぇ、何しやがったッ!)

俺は心の中でそう思ったが、声に出すことが出来ない。

「『ワンダーウォール』が、お前の『心』に“壁”を作ったのだッ!」

(何ィ!?)


ドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・

「それはどういう意味か分かるか? ビアンコ。
 お前の心は今、シャッターが閉まったように閉鎖している!
 何をしようにも“その気になれない”のだッ!」

心に“壁”を作った?
意味がサッパリ分からない。

だが、俺は身体を“動かしたくない”。
身体が命令しても、心が動かないという、普通とは逆の事態が起きている。
これは事実であった。

グリージョは俺にゆっくりと近づきながら言った。

「今のお前は俺に“やられるしかない”のだ・・・
 逃げる気すら起きないからなァ・・・」

(ぐっ・・・)

動けない。
動かなければならない。でも俺は“動きたくない”。

(バカな・・・ッ!)

グリージョが目の前に迫る。

「これで終わりだ! ビアンコ!」

(やばいッ!)

「テヤアァァァァァ!!」

ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ!!

「ぐばァッ!」

『ワンダーウォール』の激しいラッシュを食らい、俺は後ろに吹っ飛んだ。

バガアァァァァァン!!

俺は倉庫の壁に激突した。
もはや痛みすら感じさせないほどの衝撃が全身を襲う。

「ぐッ・・・」

かろうじて俺の意識は残っていた。
だが身体はボロボロで、まだ心の“壁”も取れていない。

「なんだ、まだ生きてるのか?
 ならば次はお前の頭を潰すッ! これなら死ねるだろビアンコ、あ?」

(・・・畜生・・・)

グリージョがこちらに歩いてくる。

クソッ! こんな時・・・
こんな時にロッソがいればッ!
俺の心の“壁”なんざ、一瞬で取り除いてくれるのに・・・ッ!

(グリージョ・・・)

朦朧とする意識の中で、俺は奴のことを思う。


あいつとは・・・

学生の頃からずっと一緒に馬鹿やってた。

他の不良グループと大喧嘩して、二人して入院した時もあった。

俺が「ギターやる」なんて言い出した時も、あいつは真面目ににギターを買う金を貸してくれた・・・
そういえば、あの金はまだ返してなかったな・・・

そんな俺達の縁がブッツリと切れたのは、あいつがスタンドを身につけてからだ・・・

『俺は“矢”によって神の導きを受けた!
 教祖様と共に、俺は神の世界を目指すッ!』

なんて言い残して・・・

俺はその時グリージョが何を言っているのか分からなかったが・・・
その後完全な音信不通になってから、俺はあいつの言葉の意味を理解した。

あいつは『教団』に身を捧げてしまったんだ・・・

俺はグリージョが許せなかった。
長く付き合っていたダチを見捨てておいて、何の感情も持たないのか。

しかし、今思えば、俺は間違っていた。

本当に憎むべきは『教団』の方なのだ。

『教団』は、言うならば俺とグリージョの間に“壁”を作りやがった。
壊すことは不可能に近い、残酷な友情の“壁”を。

だから俺は『教団』を潰す。
必ず、この“壁”を作ってくれた恨みを晴らしてやる。

そしてグリージョ・・・おめぇは・・・
悪くねぇ!


「神の世界は近づいたッ! “裁きの時”だ!
 アッディーオ! ビアンコ!」

ブオォンッ!

『ワンダーウォール』の腕が、俺の頭の上から振り下ろされた。


ドギャアァァン!


「グワアァァァァッ!!」

倉庫に“グリージョの”悲鳴が響く。

「腕が・・・腕がアァァ!!」

グリージョの腕はあらぬ方向に曲がり、血だらけになっていた。

「うるせぇぞ、グリージョ!」

「!?」

俺はグリージョに向かって怒鳴る。

「俺の“壁”を思いっきりブッ叩いたんだから、そうなるのは当然だぜ!」

「何ッ!?」

グリージョは左右を見た。
そこには壁を作り出す“衛星”が浮かんでいた。

「馬鹿なッ! スタンドだと!?
 お前はスタンドを使うことなど出来ないはずなのにッ!
 ま・・・まさか・・・」

俺はゆっくりと立ち上がる。
酷い痛みだが、そんなものは気にならない。

「お・・・お前ッ!
 『壁を乗り越えた』のかッ!? 心に作った“壁”をッ!」

「あぁ・・・よく分かんねえが、多分そうなんじゃあねぇか?」

「う・・・嘘だッ! お前ごときが“壁”を乗り越えられるはずが・・・」

「んなことはどうでもいいッ!!」

「!」

俺は今一度グリージョを睨みつけ、大声で言った。

「まったくよォ、つまんねー宗教の勧誘に引っかかりやがって!
 おめぇにはガッカリしたよ!」

俺は一歩一歩グリージョに迫っていく。
グリージョは息を荒げたまま動かない。

「俺からお仕置きさせてもらうぜ・・・!
 『エイフェックス・ツイン』!」

バァーン!

「ハァ・・・ハァ・・・
 う・・・ウワアァァァァッ!!」

グリージョは混乱しながらも、スタンドで抵抗しようとする。


・・・一瞬だけ、俺は躊躇した。

コイツをボコボコにしてしまって本当にいいのだろうか?
悪いのは教団ではなかったのか?

だが俺はすぐにその思いを振り切った。

(おめぇは・・・しばらく病院で反省してもらうぜ・・・)


「一つだけ言っとくぜグリージョ・・・
 俺はおめぇをもう憎んじゃあいねぇ。
 おめぇは・・・“悪くねえ”」

「うぐッ・・・アアァァァッ!
 『ワンダーウォ・・・」

「ドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドル
 ドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドル
 ドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドル
 ドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドルドル

 ドルミーーーーラ(寝てろ)!!!」

「ぶぎャァッ!!」

ズガアァーーン!!

『エイフェックス・ツイン』の砲弾のようなラッシュを浴びたグリージョは、反対側の壁へ一直線に飛んでいった。


・・・・・・

「・・・フゥ~」

俺は溜め息をつく。

「まったく・・・世話が焼ける奴だぜ・・・」


グリージョ・・・・

お前との間を隔てていた“壁”は、俺が打ち砕いた。

だが・・・

壁の向こうに、“もうおめぇはいなかった”。


応報部隊)グリージョ/スタンド名『ワンダーウォール』 → 再起不能。



第4話 完


<使用したスタンド>

No.215 『エイフェックス・ツイン
考案者:ID:Licx5cnkO
絵:ID:iWCqjA8h0
絵:ID:836DgT2dO

No.215 『ワンダーウォール
考案者:ID:x3szZUu10
絵:ID:lANXWxehO

No.721 『ガーネット・クロウ
考案者:ID:8rEguwGhO
絵:ID:Y0ksuGPEO
絵:ID:Qt/9IV4aO
絵:ID:jn.D2.SO





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