ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「・・・フン。
そういえば池があったな。
「ディイィイ・・!!
ヒゲ「(なにやら高そうな鯉たちだったが、この際致し方あるまい。
ミズガルズ・フーガッ!!
―ボシュボシュボシュウッ!
M・Fの角が乱射され、その全てが乱堂へと向かう。
乱堂「あくびが出るな・・・アクセンスター。
―ズバッシィイ!
ただの一振りで全ての角が消滅する。
ヒゲ「(チィッ!岩盤も貫く吾が輩のスタンドも消滅させられてはな・・予想通りではあるが・・・!)
―ボシュボシュボシュボシュッ・・・!!
乱堂「・・・無駄だ。
尚も乱堂へ向け、角を乱射するM・F。
自動操縦であるがゆえ、距離を取るだとか立て直す事は出来ない・・。たとえ本体が、そうしたくとも。
ヒゲ「(我がスタンドながら扱いにくい事この上ない・・・
御園から注意をそらしたは良いが、この先の策は・・・
乱堂「アクセンスターッ!!
―ズ・・バアァッ!!
ヒゲ「(ッ!)
一刀のもと、両断されたM・Fの両身が削り取られるように消滅していく・・・!
乱堂「フハハハハハッ!!
文字通り!まさしく雑魚だ!!
ヒゲ「(策は無い・・が、やるしかないッ!!)
ヒゲの大きく開いた瞳孔が更に拡張する、猫が好きな人間が見れば非常に愛くるしい表情である。しかし、その表情とは裏腹にヒゲの心は決意に満ちあふれていた。
愛くるしい表情の後、鼻筋に皺をよせ牙を剥く。
尻尾の毛を逆立て、身を低く構える。
ヒゲの開いた瞳孔は、わずかな光でも物体を逃さず捕捉する暗視スコープの役割を果たす。
それと強靱な牙と鋭い爪、猫科特有のしなやかで柔らかな筋肉。
全てを総動員して、乱堂に対峙する・・・
乱堂「畜生というものは実に愚かだな・・・
まぁ、人間も似たようなものだが。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
ヒゲ「(確かに人間は愚かではある・・・
不老不死などという馬鹿げた事に、幻想を抱く輩の何と多いことか・・・
貴様のようになッ!)
乱堂「んん~・・・?聞こえないぞ?
スタンドが消滅して会話不能か?
ヒゲ「ッ!?
その先は一瞬であった。
ヒゲの意識が、ほんの少し自身のスタンドへ向いた瞬間。
体は宙を舞い、そして地面へと叩きつけられる。
ヒゲ「(ぐ・・・はッ!
乱堂「猫の皮ってのは丈夫らしいな・・・後何回、地面に叩きつけたら死ぬかな?
ガッシリとアクセンスターがヒゲの尻尾を掴んでいる・・・
逃れようにもスタンドを持たないヒゲは、アクセンスターに触れる事すらかなわない。
乱堂「僕の予想では、次でお前は死・・・
―ビチャビチャビチャーッ・・・
唐突に、乱堂の顔と衣服が濡れる。
乱堂「・・これはッ!?
しょ、小便ッ!!
コイツ!この僕に、小便をかけやがったッ!!
ヒゲ「(ガフッ・・!ざまぁみろだ・・・ッ!!
乱堂「この・・・
畜生があぁーーーッ!!
―ッドッゴオオオッ!!
ドドドドドドドドド・・・・
乱堂「・・・・はぁ・・・はぁ・・・
僕とした事が、ついカッとなってしまった。
そう言ってハンカチを取り出し、顔についた小便と返り血を拭う。
地面がほんの少し陥没し、そこに体を横たえる猫。
生前、自慢であった真っ白な毛並みは赤く染まり
夜の黒によく馴染んでいた。
乱堂「さて・・・と。
御園へと向き直る乱堂。
乱堂「ん・・・?
そこには二つの人影。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「そのまま逃げていれば、ほんの少しだけ長生き出来たものを・・・
わざわざ死にに来るとはね。
まぁ、僕としても君達があのまま逃げ出すとは思ってはいなかったが?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「乱堂・・・!!
晶「あんたを倒す為に戻って来たのよ。
乱堂「・・・面白いッ。やってみろ!!
アクセンスターッ!!!
―ドンッ!
乱堂が地面を強く蹴ると同時に、遥たちの目前までその体は急接近する!
晶「・・・クロック・ワークスッ!!
―ドバァアァーーンッ!
・・・・・・
・・・・
能力を発動させた瞬間から、乱堂の動きが遅くなる。
晶「・・・とは言え、今これだけのスピードで動けるって事は、音速かそれ以上・・・ッ!
さっきよりも速くなってる・・・
チラと遥を見る晶だが、遥は動いていない。
晶「・・・ダメか。
仕方ないッ!
UURRYYYAAaaーーッ!!
―ドンドンッ!!
右手と左手に一発ずつ・・・拳打を叩き込むと、骨の砕ける確かな手応えが晶に伝わる。
晶「・・・行ける!
そしてトドメに、頭部への一撃を放つ!
晶「UUUU・・RYYYYAaaーーッ!!
―ゴオッ!
唸りをあげる拳が、乱堂の側頭部をめがけて打ち出される・・・・が、
晶「――ッ!?
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
ゆっくりとしか動けない筈の乱堂は、その目で晶の拳の動きを追っていた。
晶「(・・・まさか!私の世界を認識出来ているとでもいうのッ!?
だけど・・・今更遅いッ!
このまま!!ドタマぶっ砕いてやるッ!!)
――ブオオッ!!
―ドバッギャアアッ!!!
ドドドドドドドド・・・・
乱堂「天はお前達ではなく、僕を選んだ・・・と言うわけだ。
晶「・・・ッ!
遥「お母さんッ!?
ドドドドドドド・・・・
晶の右腕は粉々に砕け、肘から先が無くなっている・・・
乱堂「血も吸わずに戦いすぎだ・・・愚かな女め。
晶「・・・大した怪我じゃない。
それより、アンタ。
見えているの?
乱堂「・・・・?
晶「見えているのかッて聞いてんだ!!
ドドドドドドド・・・
乱堂「・・さあな、何の事だか?
晶「・・・まぁ、アンタがクローンなら・・・
【或いは】見えるのかもね。
遥「・・・・??
乱堂「僕のオリジナル・・・DIOは、時を止める能力を持っていた・・・・
お前の能力が時を遅くする能力ならば、見えていたかもしれないなぁ?フフッ・・・
晶「・・DIOねぇ。
折角だから教えておくけど、アンタはDIOのクローンじゃあないわ。
乱堂「ハハッ!
ちょいと・・・何を言ってるのか分からないが?
遥「(い、いきなり何を言い出してるの?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
晶「聞こえなかったのかしら?
・・・耳の穴かっぽじって良く聞きなさいッ!!
アンタはDIOのクローンじゃないッ!!
ジョナサンのクローンだッ!!!
遥「え・・・?
乱堂「この女・・・!何をッ!!
ドドドドドドドド・・・・・!
晶「根拠ならあるわ・・・
まず、アンタの首のアザ・・・それはジョースターの血統の証!
DIOにはアザは無い・・・!
それと、あの日研究所から盗み出したDIOの骨・・・
どこの骨だと思う?
遥「・・・?
乱堂「・・・・!!
瞼をぴくつかせ、今までに見せた事のないような怒りの表情を浮かべる乱堂・・・
憤怒という表現が、これほどまでにしっくりくる表情は無いであろう。
乱堂「戯れ言をぬかすなッ!女ッ!!
アクセンスターッ!!!
―――ドバアァッ!!
怒りに身を任せ、スタンドをふるう乱堂。
―ゴウッ!
今度は晶の顔面に、アクセンスターの拳が迫る!
晶「足の骨よッ!!
乱堂「――ッ!!
――ブオンッ!
乱堂の攻撃は空振り・・・ではなかった。
晶の目の前で、アクセンスターが霞のように消えたのだ。
自分の腕力に振り回され体勢を崩した乱堂は、そのままがっくりと膝を付く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
乱堂「そんな・・・・馬鹿な・・・
・・そんな筈は・・・
乱堂は、うつむいたまま何やらブツブツと呟いている。
遥「な・・・何が起こったの?
晶「アイデンティティーの崩壊・・・
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
乱堂「・・・あり得ない・・・
そんな筈は無い・・なのに何故?何故スタンドが出せないッ!?
背中を向けたままの乱堂の後ろに、遥と晶は立つ。
晶「スタンドが出せない?
・・・当然よ、あんたはあんたが思っていた人物じゃあなかった・・・。
DIOのクローンであるという事で成り立っていたあんたの自我は崩壊したのよ。
私が最初に打ち込んだ抗スタンド薬の効果が、それをさらに強固なものにしているわ。
あんたは・・・何者かしら?
遥「・・・乱堂。
乱堂「UUUUUU・・・
ガタガタと大きく体を震わせ、背中を丸める男・・・
先ほど迄の高慢で尊大な男と同じ人物だとは、遥にはとうてい思えなかった。
ドドドドドドドド・・・・
晶「協力して倒すまでも無かったわね・・・。
コイツの頭を潰して、それで終わり・・・!
晶の残った腕からスタンドが発現し、ゆっくりと拳を作る・・・
―ギュウゥ・・・
乱堂「・・・・?
ヒッ・・!
何かの気配を感じて振り向いた乱堂の表情は、驚くほど情けなく・・・恐怖の感情に満ちていた。
その姿を見て、遥の目から知らずに涙が流れ出す・・・
悲しみでも、哀れみでもない涙。
晶「・・・終わりよ。
クロック・ワークスの拳が振り下ろされる。
――ッドッゴォオオッ!!!
乱堂の体が吹き飛ばされ、二、三度地面へと叩きつけられてから止まる。
振り下ろした拳の目標地点が突然遠くに移動した晶は、不思議そうな表情を見せた。
ドドドドドドドド・・・
―ダダダダダッ!
―ガッシィ!!
遥「て・・めえッ!!
腑抜けてんじゃねえッ!!
突然吹き飛ばされ、胸ぐらを掴まれて揺すられる乱堂もまた、困惑した表情を見せる。
遥「てめえが・・・!!
そんな状態なのに!
倒したって!
アイツは浮かばれないだろッ!!
ヒゲや・・柳井だって・・・!!
衝動に突き動かされ遥は乱堂を殴り続けた。
殴っても殴っても、涙は止まらない。
晶「・・・・あの子ったら・・。
拳を降ろし、遥を見守る晶。
晶「今の乱堂じゃあ納得がいかないか・・・良いとこだか悪いとこだか分からないわね
そう言って、小さくため息をつく。
―バキィッ!
―ドカッ!
遥「あぁあああああぁあッ!!
―ドギャアァッ!!
遥「はぁ・・・はぁ・・・ッ!!
殴り疲れ、肩で息をする。
それでも、肺が張り裂けんばかりの怒号をあげる。
遥「DIOのクローンが何よッ!!
ジョナサンだったからって何なのよッ!!
てめえは・・
てめえだろ!!
乱堂ォーーーッ!!!!
ドドドドドドドドド・・・・
晶「・・・・!
(これは・・・
目覚めさせたかも・・・
遥・・あなたにとっては望んだ結果かもしれない。
だけど・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
乱堂「・・・・・・
遥「乱堂・・・!!
場の空気が凍てつき、乱堂がゆっくりと立ち上がる・・・
その手には、【矢】が握られていた・・・・・・
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