いばらの巫女にして光の女神の依り代、イルーシャ。辺獄の管理人の代行者、不動寺小衣。そしてハウス星の戦士、リコデムス=ハーリアトロ。上記2人と1匹は殺し合いの会場にて邂逅を果たし、古砂夢打倒を掲げて行動を共にすることとなった。
この話の要点は以上だ。以下はおまけである。
◇
誰もが沈黙している荘厳な空気の中、最初に口を開いたのはイルーシャであった。
「――リコくんはとっても可愛いわ。」
ごくり、と唾を飲む音が聴こえる。ここでイルーシャは沈黙を貫くこともできた。己が内に潜む感情を、自分だけのものとして、潜めたままにしておくことも可能だった。
しかし、賽は投げられた。その言葉を口にしたからには――もう、逃げることはできない。
「……続けてみ。」
小衣はひと言促す。
それは、イルーシャの挑戦に対する応戦であり、はたまた誠意でもあった。
次に緊張に唾を飲むのは、イルーシャだ。次のひと言を待つ小衣の目は、半端な誤魔化しでは納得しないだろう。
「リコくんといえば、なんと言ってもこのふわふわな体毛よね。抱きしめたくなるわ。」
その言葉に伴って生じたのかもしれない風圧が、小衣の髪を揺らした。手応えあり。このアピールは確かに小衣の心に届いている。ならば、このまま――
「――うんうん、せやね。」
「……っ!?」
その風圧の中、小衣は平気な顔で立っていた。
「けど……イルーシャちゃん、そら浅いわ。」
「ど、どうして……」
「考えみ。ふわふわな体毛……抱きしめたくなる……そんなん、小動物はだいたいがそうや!」
「っ……!」
それは、イルーシャの言葉の芯を見切ったが如き返しであった。そのひと言により発生した可能性がある風圧により、イルーシャは気圧され、尻もちをつく。
「そないな言葉、響かんで。」
イルーシャは立ち上がる。
そのまま筆を折ってしまいたい欲求は何度も頭をもたげた。ありきたりな小動物の可愛さで妥協して、伝えるのを諦めたって良かったはずだ。
――だけど。
「それでも……他の小動物とリコくんの可愛さには、決定的に異なる点があるわ。」
それでも譲れないものが、あるのだ。
(この気迫……ブラフやない……くる!)
小衣は構え直し、数秒後に来たるであろう衝撃に備える。
「リコくん、大きくなってみて。」
「え? ……う、うん。」
「え? ……う、うん。」
言われた通りに、リコは自分の身体のサイズを操り始める。ハウス星人の特徴にしてアイデンティティとも言える、変身能力。その真骨頂は、質量保存の法則を無視してサイズを自由に変更出来る点にある。
そうして身体のサイズが2mに達した時、イルーシャはもういいわと制止する。そして、小衣に向けて発した。
「ほら、リコくんは小動物なんかじゃないわ。こんなに大きくなれるもの。
だけど……モフモフは健在のようね。」
だけど……モフモフは健在のようね。」
「なっ……それはっ!」
「見て、この飛び込みたくなるモフモフの天国を。
まるで楽園……ジャディンの園だわ。」
「うっ……うわあああああっ!」
まるで楽園……ジャディンの園だわ。」
「うっ……うわあああああっ!」
そのひと言によって生じたとする言説を未だ否定できない風圧が小衣に襲いかかる。それは小衣の守りを突破し、吹き飛ばした。
「……やるやん、イルーシャちゃん。
しゃーない、認めたるわ。リコは可愛いっちゅーことを。」
しゃーない、認めたるわ。リコは可愛いっちゅーことを。」
――勝敗は決した。
イルーシャの主張を全面的に飲む形での決着。勝者は一礼し、そっと舞台を降りた。
「……やけどな、ウチかて、譲れん気持ちがある。」
それでも、まだ小衣はリングを降りようとはしない。王者の座を降りた少女は、再び挑戦者へと返り咲く。
小衣の新たに見据えたその先。
そこには、リコが立っていた。小動物と大動物の性質を併せ持つ愛玩対象ではなく――辿り着くべき到達点として。
そこには、リコが立っていた。小動物と大動物の性質を併せ持つ愛玩対象ではなく――辿り着くべき到達点として。
「さ、リコ。アンタの番や。」
「うん、いつでもいいよ!」
「うん、いつでもいいよ!」
小衣はしばし、目を閉じる。それに応じて閉じる視界が、小衣の集中力を高めていく。
「そこやっ!」
カッと見開いたその目で、小衣は何かを見たらしい。
「――イルーシャちゃんはな……」
そして挨拶代わりのジャブとばかりに――仕掛ける。
「……ウチの、ストライクや。」
静かに、されど荘厳に。そのひと言が呼び寄せたと言っても過言かもしれないしそうでないかもしれないそよ風が吹いた。
「……どういうこと?」
それは、日本語覚えたてのリコには察しが付きにくい文脈を孕んでいた。小衣の言葉は、まだリコには届いていない。
「宇宙人のリコには難しいかもしれんけどな、女の子の可愛さって、武器なんよ。」
「ええっ!? そうだったの!?」
「その通り、イチコロやで。主にウチが。」
「ええっ!? そうだったの!?」
「その通り、イチコロやで。主にウチが。」
ジャブで引いたリコの興味を抉るように会話を展開する小衣。
「確かに、コウイチもよく女の前でおかしくなってる気がするかも!」
「……それはあんま聞きとうなかったわ。それよりイルーシャちゃんを見てみ。」
「……それはあんま聞きとうなかったわ。それよりイルーシャちゃんを見てみ。」
……と、ある少年に風評被害を被せるリコに、追撃のフックをかます小衣。
「まずは服装から注目してほしいところやね。露出に逃げない、清楚さを象徴するようなロングのワンピース。緑色っちゅーところが目にも優しくセンスの光りどころやね。
そしてサラッサラの銀髪……ウチの零ちゃんとも共通する髪色なんやけど、神秘的で綺麗なんよな……。風になびくくらいのロングボブなのも加点ポイントやね。空気中に揺蕩う一本一本の髪の繊維までが煌めいとる。
あとはなんと言っても、その穏やかな視線……零ちゃんみたいな子にちょっと迷惑そうな怖~い目付きで睨まれるのも琴線に響く味がして最高何やけど、ほんわかとした瞳で寄り添うようにそっと見つめられるのも悪ぅないわ……。」
そしてサラッサラの銀髪……ウチの零ちゃんとも共通する髪色なんやけど、神秘的で綺麗なんよな……。風になびくくらいのロングボブなのも加点ポイントやね。空気中に揺蕩う一本一本の髪の繊維までが煌めいとる。
あとはなんと言っても、その穏やかな視線……零ちゃんみたいな子にちょっと迷惑そうな怖~い目付きで睨まれるのも琴線に響く味がして最高何やけど、ほんわかとした瞳で寄り添うようにそっと見つめられるのも悪ぅないわ……。」
何度も、何度も叩き付けられる連撃がリコを襲う。口を挟むことすらも許さない言葉の波に流されるが如く、リコはそっと舞台を降りた。
「次、ぼくの番ね。」
「わかったわ、おいで。」
「おいリコデムス! 最後まで聞いてーな!!」
「わかったわ、おいで。」
「おいリコデムス! 最後まで聞いてーな!!」
そして最後の戦いが開始する。リコに相対するは、いばらの巫女イルーシャ。可愛いの代表格、モーモン族のモモモをお世話係に備えた彼女。
「ココロはね……」
そんな彼女に語られる、宇宙人から見た小衣を評する言葉とは――
「……カッコイイと思う!」
――あまりにも、月並みだった。
「そう思うわ。」
そして、イルーシャの返しにより、この小さな戦いは幕を閉じた。
彼女たちが作り出した空気により、耳を突き抜けるからっ風が生まれたような気がした。
「……もうちょっと粘ってくれん? ウチだけ追加の褒めを貰ってないんやけど。」
「そうね……リコ、どんなところがかっこいいの?」
「そうね……リコ、どんなところがかっこいいの?」
リコはワクワクした様子で小衣の下へと駆け寄ると、子どものようにお願いする。
「えへへ……それはね……ココロ、さっき見せてくれたアレ出して。」
「アレって何や?」
「背中に出てきたヤツ!」
「ディオゲネスのことか。いいけど……。」
「アレって何や?」
「背中に出てきたヤツ!」
「ディオゲネスのことか。いいけど……。」
そう言うと間もなく、小衣の背中にひとつの影が現れる。紫と白を基調とした装甲を全身に纏わせ、拳を備えたそれは堂々とした佇まいのまま、その場に顕現した。
「ほら!! すごくカッコイイでしょ!!」
「……なあ、リコ。」
「ぼくこういうの大好きなんだ! コウイチの家にもショウキマンのグッズがいっぱいあってすごかったけど……ココロは自前で出せる! カッコイイ!!」
「……リコデムス?」
「ふふ、そうね。小衣さんはカッコイイわ。」
「せやからそれはウチやのうて……ディオゲネスがカッコイイって言うてるだけやん!?」
リコは、興奮しながらディオゲネスの周りをぐるぐると回っていた。そんなリコを眺めながら、イルーシャは微笑ましそうに笑っていた。
「ッ……! リコデムス=ハーリアトロォ!!」
小衣の怒りの叫び声だけが、夜空に虚しく響き渡っていた。
【B-6/平野/一日目 深夜】
【イルーシャ@ドラゴンクエストXオンライン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する。
1.リコくんは可愛いわ。
【イルーシャ@ドラゴンクエストXオンライン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する。
1.リコくんは可愛いわ。
【リコデムス=ハーリアトロ@ひとりぼっちの地球侵略】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する。
1.ココロ(ディオゲネス)、カッコイイ!!
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する。
1.ココロ(ディオゲネス)、カッコイイ!!
【不動寺小衣@Crystar】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する。
1.イルーシャちゃん、ウチのストライクや。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する。
1.イルーシャちゃん、ウチのストライクや。
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