片手に幼女、唇にチョコレート、心に……

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片手に幼女、唇にチョコレート、心に…… ◆7KTvmJPRwQ



「キョーコ……こいつか。 佐倉杏子、それで間違いないか?」
「うん、キョーコはそういう名前だよ、あとマミおねえちゃんも魔法少女だって。
 キュゥべえはいないみたいだし」
「マミ、か。 マリでは無いんだな」
「うん、多分」

脱出口としての裏口のある適当な建物の中、運び込んだ原付と共にライトに照らし出されるメロとゆま。
コンビニから頂いてきたばかりのおそろいの板チョコを噛み砕きながら、二人は向かい合っている。
ゆまと話すメロが早々に気づいたのは、精神面がどうであれ、知識面は年齢相応ということだ。
メロに支給されたのとゆまの持ち物にあった二種類の異なる魔法関連の物品はもとより、一般的な知識にも欠けがある。
まともな教育を受けさえて貰えたのかさえ怪しいゆまを相手に、メロはまず彼女に予備知識として地図と名簿を読み上げる事から始めた。
その結果として、キョーコとは佐倉杏子のことである、と二人は理解した。
マミについては、ゆまも片仮名故に名前だけは読めていた巴マミの事だろう。
もしかすると聞き間違えていて園田真理という可能性もあるが、今はその存在を確認できただけでいい。

「他には……んーと、おりこも魔法少女だと思う」
「おりこ、オリコ……こいつか?」

名前を聞いても思いつく漢字がないが、美国織莉子というのが『おりこ』と読めないこともない。
世界最高の探偵であるLの後継者の一人と目されたメロは、とうぜん日本語も解するし、漢字も並みの日本人よりは読める。
だが、元々が英語圏に人間であるメロには、日常生活に必要なものを理解しているだけで、人名などの細かい単語となると自信はない。
だから恐らく、という前提ではあるが『おりこ』とは美国織莉子のことだろう。
もっとも、ゆまの言うそのおりこがこの場所に居るという仮定での話だが。

「一応、他の名前も読み上げる、知った名前があったら言え」

具体的にどういう仕組みなのかまるで不明だが、魔法少女という名前ならば女しかいないと考えるのが妥当だろう。
だが、もしかすると聞き覚えのある名前がある可能性もあるので、メロは名簿と地図ににある全ての漢字を読み上げる。 結果は外れだが、外れとわかることも収穫である。
もっとも、乾巧は『きょう』か『たくみ』かはわからないし、藤村大河にいたっては『たいが』とは読めてもそれが人名とは思えず、保留とした。
その他、草加は『そうか』、間桐は『まきり』、鹿目は『しかめ』、暁美は『ぎょうび』と迷わず読んでしまったが、それを修正できる者はいない。

「……それで、ゆまはキュゥベぇに魔法少女にしてもらって、キョーコを助けたの。
 キョーコは『おとしまえ』っていうの付けさせるって言ってたけど、おりこが教えてくれなかったらキョーコの事助けられなかったから、ゆまは嫌いじゃないよ」
(落とし前、か)

ゆまの話を要約すると、杏子に保護されていたゆまの元にキュゥベぇという魔法少女を生み出す生物が現れたのは、おりこの言葉によるものらしい。
杏子の反対で契約はしなかったが、後に杏子の危機をおりこに知らされ、ゆまはキュゥベぇと契約、実際に危機にあった杏子を助けたと。
ゆまは理解していないようだが、おりこというのはゆまを利用した、ということだろう。
彼女の思いを巧みに利用し魔法少女とする。 それが主目的なのか何かの布石なのかは判断材料がないが。

(……捜すなら、そのおりこの方か?)

妙なカードとの交換という形でゆまから貰った、呪術入りという宝石を転がしながら思考する。
話を聞く限りでは、佐倉杏子にしろ巴マミにしろ、戦力としては強くても魔法少女という存在について深くは知らない可能性が高い。
知っていてゆまに伝えていない可能性もあるが、その場合だとメロにも教えはしないだろう。
だが、おりこは違う。
キュゥベぇすら知らないゆまの情報を伝え、杏子が実際に危機にあることを告げゆまを操った。
そこには明確に、ゆまを魔法少女にしたいという意思が存在している。
単純に魔女に対抗するために魔法少女を増やしたいのなら暗躍する必要はなく、そのことで何らかの利益がおりこに齎されると見るべきだろう。

さらに、その状況を演出出来たというのが普通ではない。
杏子より先にゆまを見つけていて、杏子や魔女、キュゥベぇという盤面を誘導し、知らせ、操るとなるとメロでもやり遂げる自身は少ない。
考えれるのは他人の行動を操る力、死を伴わないデスノートのようなもの。 それで杏子、ないし魔女を操り己の望む盤面を用意した。
あとは、莫大な知覚能力、それこそ予知といえるレベルのものか。

単純な破壊力よりも遥かに価値のある力と、おそらくは魔法少女という存在の根幹に近い部分の知識。
どちらも推測に過ぎないが、仮に外れていたとしても魔法少女という戦力に接触できるのならば無駄にはなるまい。
だが、その戦力について多少の疑問をメロは覚えていた。

(魔女とやらがいて、それをどうにかする為にやってきた正義の使者がキュゥベぇ?
 違うな、そのキュゥベぇと魔女は恐らく死神とデスノートのような深い関係にある存在。
 意識的にか事故でかは不明だが、キュゥベぇ達と共に魔女は現れた)

デスノートを巡る中で、死神シドウとの接触経験のあるメロは、超常的な存在そのものに懐疑的だ。
そういうものが存在している事自体は否定しようがないが、その相手にはその相手の論理がある。
絶対正義の神も、この世全ての悪もいない。 いるとしても、その存在はあくまで自身の意思で行動している。

(人間を守るなんて思考は無え。 死神共もそうだが、人間を大事だと思うのは人間だけだ。
 少なくとも佐倉杏子には人間を守る意思は希薄で、その事をキュゥベぇは気にしてもいない)

キュゥベぇというのも、人間の為に魔女をどうにかしたいのではない。 仮にそうだとしても、そこにはキュゥベぇ自身の利益が存在しているはずだ。
最初から敵対勢力にありそれを倒す為に魔法少女を生み出しているのか、
何らかの事故で脱走されその回収に派遣されたか、
あるいは何らかの目的、それこそ魔法少女を生み出す為、意図的に魔女をばらまいたか、
この場で考えても答えなど出ないし、魔法少女と魔女の件を追う事がこの状況下で意味があるという保障も無い。
ただ、メロは魔法少女についてはそれなりに重要視した。 
それは、頬にチョコの欠片を付けている少女がただ捨てるには惜しい存在であることと、もう一つ。

「おいゆま、お前はかなりの重症も治せると言ってたが、死んだ人間はどうだ?」
「無理かな。 よくわかんないけど、助けられるかどうかがなんとなく見えて。
 キュゥベぇと契約すればできるのかもしれないけど、ゆまは杏子が死ぬ前に助けたかったから」

名簿にある死者の名前に対する解が得られるかもしれないからだ。
ゆまの話では、彼女の魔法は両手足の千切れた杏子を瞬時に癒せたらしい。
実際に見てみなければ正確な判断は下せないにしても、まず破格と言っていい代物だ。
そして、その力ならあるいは、デスノートを覆すことが可能ではないか、と。
例えば、車にはねられる、ナイフで刺されるなどの外傷ならば、死ぬ前に間に合うかもしれない。
そして心臓麻痺にしても、心停止から実際の死まではわずかだがタイムラグがある。 その前に蘇生できるなら。

(いるのか……Lが?)

本物のLが、この場所にいるという可能性も、見えてくる。
無論、推論に推論を重ねた考察とも呼べない代物だが、ごく僅かな可能性の一つとしてなら、あるいは。
二枚目の板チョコに手を出そうとしたゆまに、食いすぎると鼻血を出すぞと注意しつつ五枚目を平らげたメロは、そう思考した。



「おい……お前はあんな事はできるか?」
「ゆまは無理。 キョーコは本気なら凄い威力の槍が投げられるよ」

ゆまと会話を終え、メロは背中にゆまをしがみ付かせながら、原付を発信させた。
はしゃぐゆまを適当にあしらいながら、ライトをつけるわけには行かない原付を慎重に運転し、北に向かう。
目指すは、恐らくはこの島では最も大きなビル――地図によればスマートブレイン本社ビル――、だった。
なぜ過去形なのかといえば、そのビルは丁度今、二人の視線の先で崩壊しているからに他ならない。

「…………」

槍など投げても爆発はしないが、何か相応に強力な攻撃があるのだろう。
落下の振動と急ブレーキで落下しそうにになっているゆまを片手で支えながら、そんなことを考える。
そうなると、あの爆発は誰か参加者が行ったものということか。
あの規模のビルそのものを破壊するだけの爆発となると、まず個人が携帯可能な装備では不可能。
相応の道具と人手があればメロにも可能ではあるが、この短時間でそれを行うのは難しい。
主催が最初から仕掛けていた誘蛾灯という可能性もあるが、それなら最初からもっと小さい会場にするか、狭い範囲に人数を集めればいい話。

(いや、ならこの近辺には他の参加者が大量に居るということもあるか……?
 どちらにしろ、あれを見れば確実に何人かはあそこに集まろうとするか、離れるかする)

必然にしろ偶然にしろ、この近辺での人間の移動は激しくなる。 
そもそも、あのような現場に向かうこと自体リスクが大きすぎるのだが。
メロ自身、可能ならどこかから監視していたいところだが、すでに爆発が起きた後では難しい。

(警視庁、政庁、さくらテレビ、高い建物はここからだとどれもあのビルの付近を通る。
 原付で移動は楽だが、既に誰かが占拠してる可能性があると簡単にはいかねぇ。
 そうなると……)
「あ、キュゥベぇだ」
「……あん?」
「ほら、あれ」
「……アレ、か?」

脳内の地図に修めた地図を読み返しながら善後策を検討していたメロは、ゆまの言葉で引き戻される。
彼女の指差す所を見れば、闇の中にそこだけ白く浮かぶ飛行物体。
謎の白い生物?のドヤ顔が浮かんでいた。

(気球、か。 飛んでくる方向はあのビル……追うか?)

ゆまが言うからには、南東に飛んでいく気球は魔法少女を生み出すというキュゥべぇを模しているのだろう。
だが、この場合重要なのはデザインではなく、その気球の飛んできた方向。
まさしく、崩壊したばかりでまだ土煙を上げているビルからに他ならない。
誰が何人乗っているのかなどはまだわからないが、追えば何らかの情報が手に入る可能性は高い。
だが、乗っている人間の情報が不明な以上、あの爆発を起こした相手が乗っている可能性もある。
ビルに向かうよりは低くとも、やはり相応のリスクがあると見るべきだ。

(どうする……?)

不安そうに見上げてくるゆまの頭に手を当てながら、メロは思考する。
ゆまの言いたい事は明らかだ。 『あの場所に杏子がいたら助けたい』と。
説得は可能だろうが、それでも不満を持たせる事は間違いない。
リスクは大きいが、向かう事で何らかの情報は手に入るだろうし、ゆまの力も試せる。
だが、それは気球を追っても同じこと。
むしろ、誰にも出会えない可能性も僅かながらあるビルとは違い、あれには確実に誰かが乗っている。

ビルか、気球か。
手持ちのカードは拳銃とゆまと、謎のカードと宝石が一つずつ。
ゆまの視線を受けながら、メロはどちらかを選ばなければならない。


【F-2/北、エリア境目付近/一日目 黎明】
【どう見ても誘拐犯】

【メロ@DEATH NOTE】
[状態]健康
[装備]ワルサーP38(8/8)@現実、原付自転車
[道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。
1・どちらに向かうか。
2・死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。
3・必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない)
4・可能ならば杏子やマミよりもおりこに接触したい。

[備考]
※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。
※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月>弥海砂
※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いています)

【千歳ゆま@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]健康、メロの原付の後ろにしがみ付いている。
[装備]ソウルジェム(けがれ無し)
[道具]支給品一式、クラスカード(ランサー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、コンビニ調達の食料(板チョコあり)、コンビニの売上金
[思考]基本・わるいおじさんをやっつける
1・出来ればビルに行ってキョーコの無事を確かめたい。
2・メロお兄さんと一緒にキョーコ、マミお姉ちゃんを探す(キョーコを最優先)

[備考]
※参戦時期は、少なくとも3話以降。

【原付自転車@現実】
何の変哲もない50cc以下の原チャリ。
555のバイクの数々のように、特殊機能はない。

【ワルサーP38@現実】
9mmパラベラム弾8発装弾のドイツ式拳銃。
かのルパン三世の愛銃だったことで有名

【クラスカード(ランサー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
ランサーのサーヴァントの姿が描かれたカード。
限定展開する事で、ランサーの宝具“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”を一定時間使用できる。
ゲイ・ボルグは放てば必ず相手の心臓を貫くという効果を持つ、手加減の出来ない槍。
本来は持ち主の技量と併せて用いられる為、誰が使っても必殺とはいかないが誘導程度の効果はある。
一度使用すると、二時間使用不可能。

【呪術入りの宝石(死痛の隷属)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
主人の受ける痛みと死を奴隷にも共有させる呪いの込められた宝石。 使い捨て。
主人が宝石に血を垂らし、その宝石を奴隷に撃ち込む事で肌に生じる刻印に、主人が手を触れる事で発動。
実際には死は伝えられないし、痛みも伝えらる限度があるが、その事は説明には書かれていない。


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015:オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男 千歳ゆま 050:ロスト・ワールド
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