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タイガー不思議のダンジョン ~城の探検隊~

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タイガー不思議のダンジョン ~城の探検隊~ ◆8nn53GQqtY



「う~ん。近づいてるのかどうかよく分からないなぁ」

『ミュウツー』なる異邦人と別れてからおよそ二時間。
冬木の虎の健脚を以てすれば、傾斜した山中の踏破などは、散歩に等しい。
しかし、山道というのは別の意味で厄介であった。
天を木々が覆い尽くし、目的地までの距離感が分からない。
当面の目的地である西方、立ちのぼる『煙』までの距離が、いかほどに近づいたのか把握できない。
地図こそリュックの中に入っていたものの、方位磁石も無しに山中を歩くのはなかなかの不安を伴った。

「この『デバイス』のおかげで、今いる場所は分かるんだけどね~。
私って英語教師だから地理って苦手なのよ」

それは前回も聞いたぞ、タイガー。

ともかく、そうまでした彼女が西を目指しているのは、夜空に大きな煙を上げて炎上する『何か』を見とがめたからであった。
探している弟分であるところの衛宮士郎は、あまりに正義感の強すぎる少年だ。
例えば火事場を見かけたとすれば、逃げ遅れた人を助けに突入するぐらいのことは平気でやりそうだし、
例えば誰かが襲われていたとしたら、それが赤の他人だとしても庇って飛び出すぐらいのことは平気でやる。
そんな彼が、あの煙を見ていたとしたら、誰かの危機を感じ取って駈けつけてしまうのではないか。

それだけでなく、藤村大河自身も高校教師にしてひとかどの剣士。
気難に陥った者がいるかもしれないというのに、捨て置くような人間性は持ち合わせていなかった。

「ミュウツーさんは、今ごろどうしてるかなぁ。強そうなヒト(?)だったから一人でも大丈夫だろうとは思うけど。
そう言えば、あの技はなんだったんだろう……『ちゅどーん』って」

ズゴゴゴゴゴ………………

「……え?」

もちろん、見よう見まねの『ちゅどーん』からミュウツーと同じくエネルギー弾が放たれ――というわけでは決してない。


「今、何か音がしたよね。すごく大きな音がしたよね」

まるで、地形変動でも起こったかのような重い音。
タイガの内なる野生の勘が、『危ないことが起こった』と警鐘を鳴らす。
……いや、殺し合いの場でそんな轟音が起これば、誰だってそう思うだろう。

「む~。よく見えないなぁ」

しかし彼女は、その事態に即応できる環境にいなかった。
そこは、木々生い茂る山林の中。
頭上はみっしりと広葉樹林におおわれていて、遠方の景色を見はるかすことはできない。
とりあえず、『どうも轟音は南方から聞こえるらしい』ということは判断できたのだが……。

「地震雷火事親父……なんだろう? 地震ならこの辺りも揺れてるはずだし。
……あっちの方って何があったっけ。えーと地図、地図」

事態に対応できないならば、せめて『起こったこと』の心当たりを付けるしかない。
あれが『会場の何か』が被害を受けた音だとしたら、そこに何があるのかは気になった。
そう言えば、さっき地図を見たところ衛宮邸もここにあった気がする。
スタート地点だった柳洞寺も、タイガの知っているそれとそっくりだった。
世の中には自分のそっくりな人間が二人はいるというけれど、そっくりな建物だって探せば見つかるのかもしれない。

「地図どこにしまったっけなぁ~。……そう言えば、まだこの中身、ちゃんと見てなかったんだよね」

ここまできて反省材料がひとつ。
役に立つものが色々と出て来たディパックだったが、タイガはその中身の全貌を、未だ確認していなかったのである。
そもそも、タイガのいる場所は山の斜面であり、ディパックの中身をぶちまけてしまうには少し危ない。
しかし、こうして改めて手を入れると、色々と奇妙な感触がする。
スイッチみたいなのがついている丸い球体とか。
栄養ドリンクの褐色瓶みたいにすべすべした容器とか。

「む? ……『変身一発』?」

やや大きめの褐色瓶に入ったその飲料は、アクションシーンが特徴的な某CMのキャッチフレーズみたいな名前をしていた。
付属の説明書にはオルフェノクの適合がどうたらこうたらと書かれていたけれど、タイガにはさっぱり分からない。
彼女はあくまで英語教師なのであり、薬品や医学のことは完全に専門外なのだ。
とにかく割れ物である以上、取り扱いには注意が必要だ。
収納場所を別にした方がいいかと考え、ポケットでもついていないかとディパックを傾ける。

この時、ディパックのジッパーが開いていたのが災いした。

ぽろり

「ああっ! 私の支給品!」

支給品のひとつである小さな球体がディパックの口からこぼれ、そのままコロコロと闇の中へ。

なんという失態。
なんといううっかり。
この時、タイガが生来に持っている意地汚さ――ゲフンゲフン、『MOTTAINAI精神』が発動した。


即座に荷物を肩にかけ、斜面を駆けて追跡を開始。
剣道五段の動体視力を以てすれば、闇の中で転がるボールを見定めるなど容易いこと。
右手の懐中電灯をサーチライト代わりにして目標を捕捉。もう見失うことはない。
しかし目標の球体も止まらない。むしろ、木の根っこや小石を踏み切り台にして加速。
バウンドを交えながら軽快に転がり落ちていく。
そのちょこざいな動き、タイガーの全力疾走――タイガーって言うな――を尽くしても、なかなかに追いつけるものではなかった。

「待ちなさーい! 何を落としたか分からないけど待てー!」

誰しも、追いかけて逃げられるとムキになってくる。
つかず離れずの距離で追いかけっこを続けるうち、『冬木の虎』は完全に獲物を狩る眼になっていた。

しかし、斜面にもいずれ途切れる時がくる。
子どもじみた追いかけっこは、やがて終わった。山稜から樹海へと山をくだるにつれて、標的は失速する。
距離を縮めたところで、タイガーにとって絶好の好機が訪れる。

球体が突き出た根っこにはじかれ、大きく空中へ打ち上げられた。
空中で、ボールの動きが一瞬、止まる。
冬木の虎は、跳躍した。
絶妙のフォームを保ち、右手をのばし、

「取ったー!!」

ごくささやかな勝利の喜びだが、それでもタイガは大人げなく喜んだ。



そして、足場が消失した。



「え……?」

ムキになっていた彼女は、そこで初めて気がついた。
今、跳躍したまさにその場所。
樹海がぴったりとそこで途切れ、人の手が入った坂道へと踏み込んだことに。
そこに、大きな段差があることに。
想定外の着地ミスで、タイガは大きく蹴つまづき、



ゴチン!



――きゅうしょに あたった!

タイガーは きぜつした!




 ◆

―…オオオ……オオォ……ォォォォ

『ある施設』へと続くその道にも、その咆哮は確かに届いた。
続けて、拡声器を通した女性の悲鳴も。

―私…、こんな…………きゃあああああああ!!

誰しも反応せずにはいられない切羽詰まった悲鳴。
しかしその場にいた唯一の参加者は、何の反応も見せなかった。

「ん~……」

否、未だに意識を失っていた。


「うぅ~……?」


しかしさすがは冬木の虎と――不本意ながらも――呼ばれた女傑。
手負いでありながらもその声が届いたのか、もぞもぞと体を微かに動かす。
その拍子に、捕まえたボールがほろりとこぼれ落ちた。

カチッ

そして、その『モンスターボール』の開閉スイッチが、地面に押し付けられた。



 ◆

目覚めた時、タイガーは白いシーツに寝かされていた。



「むにゃっ?」



清潔なシーツの臭いに、タイガーは安堵した。
変な夢だったなぁ。あれ、今日って日曜日だったっけ。
いやいや、体内時間的にはまだ夜中のはずだ。
二度寝、二度寝。ねむねむ。

しかし、どうもその寝床は、自宅のそれでもなければ入り浸っている衛宮邸のそれとも違う。
だいいち、布団ではなく床のような場所に直に寝かされている。

「いたい……」

そして額には、ずきずきした痛みと、コブのふくらみ。
手負いのタイガは、仕方なく覚醒した。



起き上がると、そこは子ども部屋だった。



タイガが寝かされていたのは、スケートボード遊びに使われるようなハーフパイプの上。
その体には、どこからか持ってきたのか白いシーツが幾枚もかけられている。
つまり、ここで倒れたわけではなく、誰かが彼女をここへ運んで介抱していたということで……。

「う~ん……?」

 ふにっ

「う~~ん………………?」

 むにっ
 むにっ

「う~~~~~~ん……………………?」

 むにょ~~~ん………………パチン!


それは前回もやったぞ、タイガー。

「やっぱり夢じゃない……じゃあ一体誰が、私をここに連れて来たのかな」


「プクッ!」


返事をした生き物は、ハーフパネルの真下、タイガの死角からぴょこんと現れた。

「うっひゃあ!」
「プク?」

鳴き声の主は小さかった。
ダチョウのタマゴほどだろうか。
姿も、桃色のタマゴのようなそれだった。
黒いつぶらな瞳。くるくるした柔らかな巻き毛。
どんぶりのような大きなポケットに体をすっぽりと入れて、その中で白くて丸い石を抱えている。

「か……」

とても無邪気に『プープー』と飛び跳ねる姿は、まるで人間の乳幼児のよう。



「かわいい~!!」



――タイガーは ピンプクに メロメロになった!!




「なにこの子? おもちゃ? AIってやつ? 
うわ、あったかーい。最近のおもちゃはよくできてるなぁ……」
「プクゥ!」

ひとしきりハグを加えたり、なでなでしたり、しまいにはスリスリしてスキンシップをはかる。
その生き物はくすぐったそうに手足をバタバタした。

タイガは万物全てのものをこよなく愛する。
それが可愛いものであれば、なおさら愛する。
例え対象が、未知の生き物だろうと高性能AI(?)だろうと関係ない。
先刻も、何だか人間とは思えないヒトに出会ったが彼は良いヒトだった。
この生き物だって、とても人懐っこい。

それに、可愛いは正義。

「ねえプクちゃん、誰が私をここに連れて来てくれたか、分かる?」

鳴き声からつけた安直な呼び名ではあったが、実は限りなく正解に近かったりする。

「プゥ!」

謎の生き物は、笑顔で頷くと、なんとタイガの体をひょいっと『持ち上げて』しまった。

「うっひゃあ!」

ぬいぐるみほどの大きさしかないはずの彼(?)はタイガを軽々と抱えると、そのまま部屋の真ん中に連れて行く。
そこに置かれていたディパックの前に降ろすと、それを大河に差し出した。

「あ、私の荷物だ……ありがとう」

ディパックを彼(?)が保管していたことで、タイガは問いかけの答えを何となく理解する。


『自分は誰かにここまで運んでもらった』+『この生き物はとても力持ちである』


ちょっと信じられないけれど、分かりやすい計算式の答えはシンプル。

「もしかして……あなたがここまで連れて来て介抱してくれたの?」
「プク!」
「ありがとう~!」
「プー!」



――タイガーは ピンプクに メロメロだ!



 ◆


「んじゃ、一休みしたことだし、また士郎を探しに出発しますか……もうあの火事は消えちゃってるかもしれないけど」

新たな仲間であるところの可愛い生き物を抱っこして、タイガーは立ち上がった。

「えーと、デバイスはB-4を指してるから、そこにある建物ってことで……私がいるのは『Nの城』ってことでいいんだよね」
「プー!」

あまり『城』という言葉からはかけ離れた室内を、大河は改めて見まわす。



「それにしても……どぎつい部屋ねぇ」



それまで、可愛い生き物にばかり気を取られていて、自らの置かれた室内への注意を怠っていた。
しかし、見渡してみればその空間は『異常』だった。

床は水色。
壁紙は紫の格子模様。
巨大な青いハーフパイプに、黄色や濃い紫のタイヤの山。
必要以上に明るい原色ばかりが眼に飛び込んで来て、タイガは家具を選定した人物のセンスを疑った。
しかも床のタイルには、よく見れば青空と雲が描かれている。
なぜ、床に空の絵を。

「……って、なんだろう、この爪痕」

床や壁に眼をこらせば、嫌でも眼にとまるのは、無数の『傷跡』だった。
人間の手によるものではありえない。
――少なくとも『人間を殺せる程度の猛獣』でなければ、ここまで深く壁をえぐることはできない。

「ここでライオンでも飼ってたのかなー。お金持ちの部屋っぽいし」

しかし、部屋に置かれたおもちゃは、バスケットゴールやモノレールなど、人間の子どもが遊ぶものばかり。
いくら何でも、こんな爪痕を刻みつける猛獣と子どもを一緒の部屋に置いていたなどとは思えないけれど……それにしたって、ちぐはぐな部屋ではあった。

「っていうか、この部屋にいた人って、もしかして……あぶない人?」

ダーツが幾本も突き立ったアートボードや、他にもダーツが突き立った跡のある壁紙。
他にも、『遊び方を知らない人間が遊んだ』としか思えない壊れ方をしているモノレールのオモチャ。
ヤの付くぶっそうな職業の人たちに育てられた大河であっても、その部屋には『暴力』を連想せずにいられない。

じりじりと、不安のような、焦燥のような『予感』が内心でうずく。
こういう予感を、大河は知っていた。

それは、言葉にするならば『危うさ』だった。

似て非なる『危うさ』を、大河は数年前から感じて来た。
形は違えど、彼女の弟分も、無自覚に『危うさ』を抱えた少年だったのだから。
ただ衛宮士郎の危うさは、内省的で、正しい方向にばかり向けられていたから、普段は隠れているだけなのだ。
でも、こういう部屋で育ったら――その『危うさ』を、『外』に向けるような人物になってしまうのじゃないか。
周りと、否応なしに『ズレ』を持った人間に育ってしまうのじゃないか。
大河は一足飛びに、そんな当てずっぽうの『予感』を抱いた。

「う~ん。それにしても……どっか違和感があるのよねえ。この部屋」

いや、おかしな所は色々とあるのだが、それでも根本的に『子ども部屋としてはおかしい』部分が、あるような気がしてならないというか……。

「あ、そうか! テレビも本も漫画もゲームソフトも何もないんだ!」

つまりこの部屋には、『メディア』とか『情報を手に入れる手段』が一切ないのだ。
バスケットボールやスケボーで遊ぶような年ごろなら、漫画を読んだりテレビを見たり、ゲームをするのが楽しくて仕方がないはずであるのに。
これだけのモノが買えるのだから、充分に資産はあるはずにも関わらず、だ。


「なんだろ……あんまり、人間が暮らすような場所じゃないかもね」
「プク?」

考えたところで、答えがでる類の問題ではない。それは分かる。
今すぐなすべきことは、士郎たちの捜索。それも知っている。

しかし、



ほおっておけないと後ろ髪を引かれるような、
それなのに、逃げ出したくもなるような、
奇妙な『何か』の感情を抱いて、高校教師の藤村大河はその部屋を出た。


【B-4/Nの城 内部/一日目 早朝】

【藤村大河@Fate/stay night】
[状態]:額に大きなこぶ
[装備]:タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1(未確認)
変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)
[思考・状況]
基本:出来ることをする
1:まずはこの建物から出る
2:事が終わった後だろうとは思うが、一応教会跡に行ってみる
3:士郎と桜を探す
4:セイバーと凛も探す
5:南から聞こえて来た音の正体が少し気になる
[備考]
※桜ルート2月6日以降の時期より参加
※ミュウツーからサトシ、タケシ、サカキの名を聞きました
※Nの部屋から『何か』を感じました。(それ以外の城の内部は、ほとんど確認していません)

【変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)】
人間解放軍の野村博士が開発した薬品。
オルフェノクの記号が適合していない人間でも、ライダーギアに変身することを可能にする。
野村博士によると一度飲めば変身後に死んでしまうらしいが、菊池啓太郎が服用した際にはベルトが壊れるだけで啓太郎本人は死なずに済んでいる。

【タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)】
タケシがダイヤモンド・パール編でタマゴから孵したポケモン。
まだ幼いためにバトルに出た経験こそほとんどないが、恐るべき怪力の持ち主でもあり、平手でロケット団の気球をふっ飛ばしたり、ムサシのハブネークをつかんで振り回したりした。
“はたく”“なげつける”“ひみつのちから”を修得済み。


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012:あ、やせいの タイガー がとびだした 藤村大河 066:悪夢→浸食~光の影


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