アットウィキロゴ

悪夢→浸食~光の影

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

悪夢→浸食~光の影 ◆UOJEIq.Rys



 飼育箱で夢を見る。
 廃墟の巣穴。
 黒色の蛹。
 誕生の記憶はない。
 繁栄にあつく。
 ルーツは原初からして不明。
 滅日の記憶はない。


        ◇


 ――――…………ィ……―――


 ふらふらと熱に浮かされたように彷徨う。
 あれだけあった高揚感は、身を削る様な飢餓感にすり替わり、まともな思考を奪っていく。
 まるで底なし沼。もがけばもがくほど沈んでいく泥の泉。
 もうどこに向かっているのかわからない。
 そこに向かうことに意味があるのかさえわからない。


 ―――足リ……ナイ―――


 ああ、意味など考えるまでもなかった。
 私はあの人の所へ向かうのだ。
 あの人のために、より多くの人を斃(コロ)すのだ。
 そのために、この飢えを満たして力を付けるのだ。


  ―――足リナイ―――


 だから私は歩いている。
 だってこっちからは、

「―れ? もし――て……桜ち――? やっぱ――――んだ。 よかっ―ぁ、無――ったの―。もうホント心――たんだか―」

 とてもオイシソウな匂いが――――


 フラフラと覚束ない足取りで声のした方へと歩く。
 ゆらゆらと揺らぐ視界で相手を捉える。
 目の前には、舌が蕩けそうなご馳
「―――ふじむら……せんせい?」
 目の前には、最後に見た時と何ら変わりない藤村先生の姿がある。

 あれ……?
 私は今、何を考えていたのだろう。
 頭は熱くてぼうっとしているのに、辺りはとても寒くて、矛盾した感覚に吐きそうになる。
 まるでぬるま湯の泥の中にいるみたいに気持ち悪い。

「よーし、これ――とは士郎と――バーちゃ――遠坂さ――けね。だいじ――――いじょ―ぶ、みんな元――してる――」
 頭がズキズキして、ぐらぐらして、藤村先生の声が良く聞こえない。
 けど先輩の名前で、ふわふわ浮いていた頭がひょっこり顔を上げて、
 姉さんの名前で、ギシリ、と右手に握っていた物を軋ませた。

 ……なにを、軋ませたのだろう。
 恐る恐る右手を覗きこめば、そこには私に力をくれるグリップが。
 腰にはベルトが、いつでも変身出来るように巻かれている。

「あ――も、士郎―――ぱり心配―え。セイ―――ゃんは強―し――坂さ――あ――いい―ら何とか―――だけ――士郎――ら無暗――――突っぱ―――うだ――なあ」
 辛うじて認識出来た言葉から、藤村先生が何を言ったのかを推測する。
 先生は、先輩が心配だ、と言ったのだろうか。

 ああ、確かに先輩は心配だ。
 もう死んだ姉さんなんかどうでもいいけど。
 先輩はすぐにどこかに行ってしまいそうで、鳥籠にでも閉じ込めてないと安心できない。

 じゃないとあの姉さんに似た人に、先輩を盗られてしまうかもしれない。
 もっと力を付けないと。力を付けて、はやくあの人を殺さないと。

「そ―――ても――難――え。みん―――こん―――に巻き――れる――て。
 殺―合い――てやっ―――るかー! って感――ねー」
 たぶん、殺し合いなんてやれるか、と藤村先生は言ったのだろう。
 まったくだ。殺し合いなんて先輩が悲しんでしまう。
 そんな事は許せない。
 だから殺し合いなんて終わらせないと。
 もっと力を付けて、“悪い人”を殺さないと。

 そのためにも――――タクサンゴハンヲタベナイト。

「ッ――――――――………………!?」
 今……なにを考えた?
 私は一体、“何を食べようとした”?

「私………藤村先生を………?」
 そんなはずない。そんな事考えてない……!

 人間なんて食べれないし、食べたくもない。
 それに食べるということは命を奪うということで、それはつまり殺すということだ。
 藤村先生は“悪い人”じゃないから殺しちゃいけないし、そもそも先生は先輩と同じ大切な人で、


 ………でも、目の前の藤村先生は――――こんなにも美味しそうで――――


「――ゃん、どうし―の? 顔―悪いよ? 具合――悪い―?」
 意識が飛んでいた。ちゃんとしていないと、記憶がコマ送りみたいになる。
 その間に、藤村先生が、私の様子を心配して近づいていた。
 その様子があまりにも無防備で、あまりにも簡単に捕らえれそうで、私は、

「だめ、来ないでください……!」
 出来る限りの力で、必死に自分を抑え込んだ。

 怖い。怖い。怖い。
 私は今、何より自分が怖い。
 どうして私は、藤村先生を殺すことを考えてるんだろう。
 どうして私は、大切な人を食べようとしているんだろう。

「さ――ちゃ――…?」
 私の声に思わず足を止めた藤村先生が、心配そうに名前を呼んだ。

 ああ、どうしてこの人はそんな顔が出来るんだろ。
 藤村先生は本当に私の事を心配して、気に掛けてくれている。
 でもその様子には何の陰りもなくて。
 こんな所に呼ばれたのにまだいつも通りの明るさを保っていて。
 けどそれは、

 藤村先生は何も知らないからで。

「どう― の? なん― ―つも―桜ちゃ― ―ない ?」
「いつもの……私……?」
 その言葉に、グラリ、と天秤が傾く様な音を聞いた。
 いつもなら心が癒されたその明るさが、今はどうしてか癇に障る。

「いつもの私って……何ですか?」
「――らちゃ―  ? ―体――  ?」
 間桐の家の事を黙って、自分が魔術師である事も黙って、セイバーさんの事も黙って。何もかも黙ったまま、藤村先生も、先輩さえも騙していた私の事?
 それともあのジメジメとした薄暗い蟲倉で、よくわからないものに嬲られていた私の事?

 そんなの決まってる。
 藤村先生は何も知らない。
 先輩が魔術師だって事も知らない。
 何もかも隠していた、嘘の私しか知らない。

「魔術師でも何でもない、なんにも知らないくせに……」
 私の事も、セイバーさんの事も、先輩の事も。
 なんにも知らない、まるで白紙のノートのようで、
 そんなんだと、

「藤村先生。私、藤村先生が思っている様な綺麗な女の子じゃないんですよ?」
 ぐちゃぐちゃに汚したくなってしまう。
「                              」
 真っ白な画用紙を黒いクレヨンで塗り潰すように。まだ誰も踏んでない新雪を滅茶苦茶に踏み荒らすように。ひらひらと舞う綺麗な蝶の肢を一本一本引き千切るように。
 目の前でそれをした時、この人は一体どんな顔をしてくれるのか、想像しただけで笑いが込み上げてくる。

「小さい頃からよくわからないものに触られて、汚れてない所なんかどこにもなくて――――今だって、私の手は真っ赤に汚れていて」
「                              」

 ああ――――私、おかしくなってる。

 そんな事をする意味はないのに。
 そんな事をしたら大切な物を壊してしまうのに。
 そんな事をしたくてしたくて堪らない。
 こんなんじゃ私、きっと先輩に嫌われてしまう。
 でも。

「でもいいんです。こんな私でも、出来る事があったんです。先輩の為に、私が代わりになるんです」
 こんな私でも、先輩の為に出来る事はある。
 今の私だから、先輩の為になれる。

「                              」
「先輩は優しい人だから、こんな殺し合いに呼ばれたら悲しんでしまう。
 先輩は正義の味方だから、きっと誰かを助けるために無茶をしちゃう。
 だからそうなる前に、先輩を悲しませる人はみんないなくなってもらうんです」
「                              」
 ベルトの力さえあれば、誰にも負けない。
 さっきはちょっと油断したけど、もう失敗なんてしない。
 今度こそちゃんと殺してあげるんだから。

「そうすれば先輩は悲しまない。
 そうすれば先輩は傷つかない。
 そうすれば先輩は、ずっと綺麗なまま」
「                              」
 あの夕陽のグラウンドの中、諦めてしまえという思いを、頑張れという想いに変えてくれた少年。
 あの人に守ってもらいたいと願ったから、今度は私が、あの人を守って見せる。
 だから。

「藤村先生。私にとっては、あなただって綺麗な人なんです。
 優しくて、暖かくて、子供みたいで。なんにも知らないからこそ綺麗な藤村先生」
「                              」
 私と先輩と先生の、大切な日常の象徴。
 先生がいなくなったら、先輩が悲しむ。
 先生がいなくなったら、帰る場所がなくなってしまう。

「だから、来ないでください。
 いま近づかれると、わたし――――何をするか、わからない」

 壊したくないのに壊してしまいそうで、近くになんて居られない。
 今にも“影”が粟立って、藤村先生へと襲いかかりそうで怖い。
 自分の事なのに自分がわからなくなりそうなのが一番怖い。

 だからはやく、藤村先生から離れなきゃ。
 はやく“悪い人”をみんな殺して、いつもの日常に帰らなきゃ。

「へんしん」
 体を黒と白の装甲が覆う。跳ね上げられた身体能力で駆けだす。
 見る見る離れていく藤村先生。ただの人間である彼女には決して追いつけない。
「                              」
 その爽快感が心地いい。藤村先生と別れるのが心苦しい。―――から離れるのが口惜しい。
 私を引き止める声がしたけど、止まったら自分がどうなるか分からない。


「、っ――――――」
 本当は、藤村先生の傍にいたかった。
 藤村先生の傍で、いつものように笑っていたかった。
 あの日溜りのような人と一緒に、先輩に会いに行きたかった。
 けど、今の自分じゃ先生を殺してしまう。

「………ぃ………」
 全身を包む高揚感。
 今までは心地が良かった力。
 今でも心地が良いそれは、けれど。

「こんなんじゃ、足りない」

 もはやより強く、飢餓感を覚えさせるモノでしかなかった。

「足りないから、苦しいんだ。
 足りないから、傍にいられないんだ」
 全身を苛む飢餓感。
 そのせいで私はおかしくなってるんだ。
 “悪い人”じゃないのに藤村先生を殺そう(食べよう)としているんだ。

「――――――――」
 足りないものはわかっている。
 もとより欲しいものは一つだけ。
 それ以外のものなんて何もいらない。
 それを手に入れる為にも、

「早く会いたいです、先輩」

 はやく、先輩に会わなければ。
 先輩に会えば、この渇きも満たされる。
 そうすればきっと、いつもの自分に戻れる。

 けど。

「――――あの人の所為だ」
 こんなに渇きを覚えたのは、あの人と会ってからだ。
 あの人が、姉さんに似たあの人さえいなければ、私はおかしくなんてならなかったのだ。

 あの人がいる限り、私はまたおかしくなってしまうかもしれない。
 せっかく満たされても、また乾いてしまうかもしれない。
 そうしたら今度は、先輩まで殺したくなるかもしれない。

 ―――そんなのは許せない。

「……許せない―――絶対に許さない」
 姉さんみたいな口をきいて、先輩をバカにして、私をおかしくして。

「ははは、あははは………」
 ああ、ホントにおかしい。
 こんなにも腸が煮えくりかえっているのに、あとからあとから笑いが込み上げてくる。

 でも理由は明白だ。
 あの人が私にした事は、間桐の家で私がされた事とはぜんぜん質が違う。
 あんな風にバカにされたことは初めてだった。
 私だけじゃなく、私の大切な人まで貶められたのは本当に初めてだった。

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは―――――!!!!」


       そう。

 こんな屈辱は味わったことがない。
 こんな恥辱は身にうけたこともない。

 ―――だから、愉しい。

 あの人に、この身を焦がすほどの憤怒をぶつけ、叩きつける時がどれほど気持ちよい事か想像もつかない。

 壊す。壊す。壊す。
 少しずつ、一息に、この上なく優しく、痺れるぐらい残酷に、あの命を犯しつくそう。

 そう。

 四肢を引き千切って肋骨をあばいて臓物をよじり出して、助けをこう喉を踏み潰して眼を噛み砕いて頭蓋を切開して脳髄をバターのように地面に塗りたくるその瞬間―――――!


「待っていてください、すぐに殺してあげますから……!」


 愛する人への想いを胸に、憎悪を振りまいて少女は駆ける。
 藤村大河という日常に照らされた少女は、それ故に自身の闇をより濃くさせる。
 それはあたかも、ふらふらと揺れる振り子のように。光に照らされ現れる影のように。

 笑って、狂ったように笑い続けて、少女は全身に紅い紋様を蠢かせていた――――


【B-5/森林/一日目 早朝】

【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(小)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、無自覚の喪失感と歓喜、強い饑餓、ダメージ(頭部に集中)
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(変身中)、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)
[道具]:基本支給品×2、最高級シャンパン@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:先輩(衛宮士郎)の代わりに“悪い人”を皆殺し
0:先輩に会いたい
1:藤村先生から離れる/あの人(ルヴィア)を惨たらしく殺す
2:先輩(衛宮士郎)の所へ行く
3:先輩(衛宮士郎)を傷つけたり悲しませたりする人は、みんな殺す
4:あの人(ルヴィア)は―――絶対に許さない
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※「黒い影」は桜の無意識(気絶状態)でのみ発現します。桜から離れた位置には移動できず、現界の時間も僅かです
※頭部のダメージにより、外界の認識が難しくなっています。


        ◇


 そうして間桐桜は、藤村大河の前から走り去って行った。
 慌てて追いかけようと彼女もまた走り出すが、
「ま、待ってよ桜ちゃぶふっ!!??」
 彼女の腕から離れ、その足を掴んだピンプクによって無理矢理に止められた。

「うごごごご。い、いたい……物凄くいた~い」
 ビタン、と顔面を強打し、激痛に悶える。
 それでもやるべき事があるからと身を起こすが、ピンプクに足を掴まれたままで動けない。

「プクちゃん? お願い離して、はやく桜ちゃんを追いかけないと!」
 足を引っ張りながらピンプクにそう言うが、ピンプクは首を振るばかりで離さない。

「どうして!? 今の桜ちゃん絶対変だった! だからあのまま一人にするなんて出来ないよ!」
 間桐桜は明らかに様子がおかしかった。
 自分が何を言っても上の空で、魔術師だとかなんにも知らないだとか自分は汚いとか、そんなよくわからない事ばかり喋って。
 挙句の果てには士郎の代わりになるとか言って、ヒーローみたいに変身してどこかへ行ってしまった。

 あんな状態の彼女を放っておくことは、これでも根っからの教師である藤村大河に出来る事ではなかった。
 しかし、

「プクちゃん?」
 ピンプクは、明らかに何かに脅えてその体を震わしていた。
 今にも泣きそうなのを堪えて、自分を押し留めていた。

 ピンプクが何に脅えているのかはわからない。
 だが自分の勘も、何かがヤバイことは感じていた。
 それと間桐桜の事は別問題だが、ピンプクを放っておくこともまた、藤村大河には出来なかった。

「………わかったわ、プクちゃん。おいで」
 その言葉で、ピンプクは大河の胸に飛び込んだ。
 それでも怯えたままのピンプクを安心させるように抱きしめる。

「桜ちゃん………」
 もうどこにも姿の見えなくなった間桐桜を思う。

 彼女に何があったのかは分からない。
 今すぐにでも追いかけたいが、今のピンプクの状態ではそれは出来ない。

 けど、間桐桜と話がしたかった。
 そうしていつもの彼女に戻って、いつものように笑って欲しいと思った。


【B-4/教会跡近く/一日目 早朝】

【藤村大河@Fate/stay night】
[状態]:額に大きなこぶ、顔面強打
[装備]:タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品、変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0~1(未確認)
[思考・状況]
基本:出来ることをする
1:桜ちゃんを追いかけたい。けど……
2:事が終わった後だろうとは思うが、一応教会跡に行ってみる
3:士郎と桜を探す
4:セイバーと凛も探す
5:南から聞こえて来た音の正体が少し気になる
[備考]
※桜ルート2月6日以降の時期より参加
※ミュウツーからサトシ、タケシ、サカキの名を聞きました
※Nの部屋から『何か』を感じました。(それ以外の城の内部は、ほとんど確認していません)
※間桐桜の状態が“危険”であると感じ取りました


065:闇の実験室 投下順に読む 067:天使のような悪魔の笑顔
時系列順に読む
063:淑女のフォークリフトVS仮面ライダー……観客:怪奇蛇男(後編) 間桐桜 075:少女地獄 序章
060:タイガー不思議のダンジョン ~城の探検隊~ 藤村大河 077:Nの心/人間っていいな


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー