天使のような悪魔の笑顔

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天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA



「ここは段差があるから気をつけて」
「はい……きゃっ!」
 可愛らしくバランスを崩すまどかを、草加は片手で軽々と支えた。
 申し訳なさそうな彼女に対し、笑顔を向ける。
「ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」
「気にすることはないさ。外灯があるとはいえ、暗いところの移動は危険だからね」
 なだめつつ、周囲を警戒しながら草加は民家が密集する道を進んでいた。
 もともと夜での行動は、オルフェノクが活動時間に決まりがないためお手の物だ。
「けど、本当にわたしの家にむかってよかったんですか?」
「構わないさ。流星塾は逃げないしね。ところで、その喋り方でいいのかな?」
「こっちのほうが楽なんです」
 そうか、とだけつぶやいた。
 草加たちが向かっているところは、彼女の家である。
 最初に提案されたときは煩わしさも感じたが、魔法少女である彼女の友人が集まるかも知れない、と聞いて判断を変えた。
 杏子とは一合だけ交わした間柄だが、力自体は侮れるものではない。
 オルフェノクや三本のベルトに匹敵するくらいの力はあるだろう。
 ならば敵に回さず厄介な敵にぶつけるか、味方にするべきである。
 先は長い。北崎に村上峡児、木場勇治と始末せねばならない存在は山ほどいる。
 対してこちらの武器は不慣れなファイズのベルトのみ。
 乾巧は利用するつもりではあるが、しょせんはオルフェノク。
 いつ敵につくかわかったものではない。
 三原もいない今、戦力の強化は当面の目標である。
 しかし、一つ問題がある。
 乾巧がオルフェノクであることをいつ伝えるかだ。
 杏子や彼女に対し伝えなかった理由は作れる。
 たとえば、
「草加さん、どうしました?」
「乾巧について考えていてね。君や夜神さんたちにも伝えていないことがあるんだ」
「えっ、どうして……」
「俺にもまだ整理がついていない。それに、真理や啓太郎くんに伝わるのは好ましくないんだ。みんなを追い詰めるかも知れないからね」
「そうなんだ……」
 だけど、と笑顔を浮かべながら草加は続ける。
「心の準備ができて、仲間たちにも冷静に受け止めさせる準備ができたら、君にも教えるよ。それまでは俺を信じてくれ」
 これで草加の仕込みは終わりだ。まどかは素直に頷いている。
 それにしても不思議だ。彼女は『普通』すぎる。
 頭が切れていないが、愚鈍というわけではない。
 運動神経は多少心もとないが、それでも同年代に劣っているわけでもない。
 可愛らしい容姿だが、抜群に恵まれているというわけではない。
 なのになぜこの場に呼ばれ、殺し合いを強要されているのか。
 まったくもってわからないが、せいぜい役に立ってもらう。
 草加雅人の復讐のために。


 鹿目まどかの家を目指す途中、草加は違和感を感じていた。
 家は彼女の話では特筆した家ではないという。そこら中に見かけるものと大差ないようだ。
 なのに地図に記されている。彼女が参加者だとしても、彼女の家を再現して地図に示す根拠は薄い。
 実際、彼女の実家と変わりないかどうかは行ってみないとわからないが、ほぼ同等のものだったとして思考を進めてみる。
 参加者の家をこの土地で再現し、地図に記す状況といえばなんだろうか。
 名簿と地図を照らし合わせると、参加者の家だと思わしきものがいくらか存在している。
 この『鹿目家』を始め、『間桐家』、『衛宮家』、『Nの城』、そして『西洋洗濯舗 菊池』である。
 ならば啓太郎とまどかの共通点を抜き出すことが、彼女の呼ばれた理由を推察する材料となるわけだ。
 とはいえ、草加がパッと思いついた共通点は少ない。
 二人とも平凡な人間であり、魔法少女やオルフェノクといった超常能力者の知り合いが多いことか。
 なるほどと納得がいった。
 要するに彼女や啓太郎は贄なのである。
 魔法少女やベルトの適合者といった者を本気で殺し合わせるための餌だ。
 地図にはないが、真理もそういう目的で呼び出されたのだろう。腹立たしい。
 主催者を殺す理由がもう一つできた。
 だが、悲観することばかりではない。
 まどかを手元に置いているのは、充分メリットであるということだ。
 啓太郎のように超常能力者の知り合いが多いというのなら、こちら側に取り込めば戦力が増えるということだ。
 と、なると地図に記されている人間には会ったほうがいいだろう。
 まどかや啓太郎と同タイプの人間なら、こちらの味方を増やせる可能性が高い。
 第二の方針になり得る。
「ふぅ」
「疲れてきたのかな?」
「大丈夫! まだぜんぜん平気です」
 強がっているが、疲労しているのは目に見えて明らかだ。
 困ったような表情を作りながら、草加は一つ提案する。
「そこの家で休憩していこう」
「草加さん、ごめんなさい。気を使わせちゃって……本当はいきたいところがあるのに……」
 申し訳ないと主張する彼女を面倒に思いながらも、態度は崩さない。
 優しげな笑顔を浮かべて、諭すような口調を続ける。
「いや、放送というやつが近いから、聞き逃さないように休んでいきたいんだ。『禁止領域』も『脱落者』も必要な情報だからね。付き合ってくれるかな?」
 まどかは顔を真赤にして、首肯した。



 台所で作業している音をまどかはボーッと聞いていた。
 草加は家に入るなり時間を確認し、料理を作るから待っているようにと言ったのだ。
 こんな状況で食事の用意が行われているなんて、変な気分だった。
 家の中はとても広く、お金持ちが住んでいたのだろう、と感想を抱く。
 地図にも記載されている、とは草加の弁だ。確かめてみると、『間桐』という人の家らしいことがわかった。
 草加は自身が料理している間、少し休んでいるといいと言っていたが、とてもそんな気にはなれない。
 目をつむると嫌なことばかり浮かんで、怖くてしょうがないのだ。
 杏子は生きていた。だからさやかも生きていて欲しい。いつもの、そばにいた明るい彼女で。
 そう願うのは自然だと思う。
「浮かない顔だね」
 急に声をかけられて、まどかは驚いた。
 声の主はもちろん、草加雅人だ。彼は出来上がった料理を並べ、箸をおいた。
 並べられたのはごはんとお味噌汁。それにさばの味噌煮だ。
 意外と和風な人らしい。いただきます、と互いに言い合い、一つ口に入れる。
「あっ……美味しいです」
 味噌で煮こまれたサバは程良く身がほぐされており、噛みやすい。
 染み込んだ味付けはやや薄いものの、甘すぎずないように調整されていた。
 骨は取り除いているようだが、一見ではわからないほど見た目は崩れていない。
 どうやって取ったのだろうか。まどかは感心する。
 そういえば、自分のパパも主夫のため料理がうまかった。最近は料理上手な男性が増えているのだろうか。
 ただ、草加の場合は何でもそつなくこなすという印象のほうが強い。
「これでも一人暮らしが長かったから、栄養が偏らないように自炊していたんだ。好みの味じゃなかったら、遠慮なく言ってくれ。次までには改善しておく」
「そんな、こんなに美味しいし、文句なんてつけれません」
「そう言ってくれると助かる」
 お互いに笑顔を交わし、食事をすすめる。
 草加は『食べて休んで、体力を蓄えることも君の仕事だ』と、料理に取り掛かる前に言っていた。
 頼りになるとはこの人のことを言うのだろう。助けられてばかりで情けない。
 そう自己嫌悪に陥っているとき、スピーカーを通したような声が響いた。
 ああ、これが放送の始まりか。


 草加は箸を止めて、天を睨みつけた。
 真理が生き延びていることを、そして奴が生き延びていることを、珍しく神に祈った。
 そう、この手で殺してやらないと気が済まない。
 奴だけは絶対に生かしておけない。
 北崎。
 流星塾のみんなの、自分の復讐は絶対に果たす。
 だから草加は一瞬だけ、本性を映した顔を天井に見せた。


【D-4/間桐家/一日目 早朝】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう
4:佐倉杏子はいずれ抹殺する
5:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後~木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~3(確認済み)
[思考・状況]
1:ひとまず自分の家へ
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんは信用できる人みたいだ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆~ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました


066:悪夢→浸食~光の影 投下順に読む 068:第一回定時放送
時系列順に読む
052:思い思いの重い想い 草加雅人 080:憤怒
鹿目まどか


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