第一回定時放送

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第一回定時放送 ◆vNS4zIhcRM



その声は、突然響き渡った。
山に、森に、町に、家々に、
そのどこにも僅かにすら響かず、しかしそこに居る者達の脳裏には確かに届いた。

「06:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう」

時刻が近づくにつれ、ある程度身構えていた者もいた。
そのような事象などとうに忘却の彼方な者もいた。
意識を失い、その声の意味が理解できぬ者もいた。
だが、その全てに対して等しく、その声は全ての参加者に確実に伝達された。

「死亡者は
 菊池啓太郎
 ルルーシュ・ランペルージ
 篠崎咲世子
 松田桃太
 弥海砂
 南空ナオミ
 遠坂凛
 サトシ
 ヒカリ
 千歳ゆま
 以上の10名」

その言葉に呆然とする者もいたし、悲嘆に暮れるものもあっただろう。
だが、そのような事情などまるで気にせず、耳を塞ぐことも許さぬ無慈悲さを持って、声は紡ぐ。

「08:00よりB-3
 09:00よりE-2
 10:00よりG-7が禁止領域となる。
 禁止後に領域に侵入したとして瞬時に死にはしないが、近寄りすぎて不意に死なれても興醒めだ。
 よくよく考えて行動することを薦めよう、以上だ」

それきり、別れの挨拶も告げずに打ち切る。
単なる情報の伝達でしかなく、また好んで聞きたいものが居るわけでもないものを、長々と続ける意思などない。
互いにとって不要なことを行う理由など、アカギには無かった。

「お疲れ様、アカギ」
「なに、大した手間ではない、イン、いやキュゥべえ」

謙遜でも何でもなく、真にそう思いながらキュゥべえに応える。
この程度の放送が手間であると思うものなど居る筈もなく、キュゥべえの軽い挨拶のようなものだろう。
人間の感情というものが理解できないというこの生物は、時折そういった、感情のある生物のような仕草を見せる。 

「禁止エリアの位置は大体あんな感じだろうね。
 エリアも何も理解出来ないのが一人居るし、間違えてしなれても勿体ないしね」
「あるいはそれを用いて撃ち破るという方法を考えるかもしれないが、まあそういうことだ」

本来は一箇所に隠れ潜む者を燻りだすための仕組みではあるが、一人この仕組みとの組み合わせが最悪な人物がいる。
その人物が迂闊に踏み込む位置に配置してしまっては、折角集めた参加者が、無為に減ってしまうことになる。
元々はどこでも良い代物ではあるのだが、今回はある程度彼らの意向が働いた結果、こういう配置となった。

「さて、これでボクらはお役御免。
 また6時間後までのんびり過ごすことにしようかな」

特に何らかの役割を為した訳ではないが、キュゥべえは一仕事終えたとばかりにアカギから離れ歩き出す。
姿が見えずとも、呼べばまたどこからとも無く現れるであろう後姿を見送って、アカギもその場から離れた。




「あやつめ、死におったか」

ルルーシュ・ランペルージ
言葉の主、神聖ブリタニア帝国皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアの実子であり、かつての第17位皇子。
公人である皇帝からすれば、無数にいる跡継ぎの予備程度の存在でしかないが、その中では特別な存在であった。
利害と策謀で結ばれた数多の婚姻とは異なり、彼の母たるマリアンヌはシャルル自身が、そしてマリアンヌも望んだものであった。
男と女として、皇帝と騎士として、そして理想の同志として。
その子たるルルーシュと妹のナナリーには子である以前に理想への道具という側面があった事は事実であるが、それでも彼は子としてルルーシュ達の事を愛してはいた。

後悔はない。

もとより、死んだルルーシュは彼の実の子ではない。
異なる可能性世界のシャルルとマリアンヌを拒絶し、否定した敵手と言ってもいい。
だが、だからと言ってルルーシュがシャルルに対して向けたような純然たる敵意など、抱きようのない相手ではあった。

「今は眠れ、いずれまたCの世界で見えようぞ」

異なる世界においては、真に分かり合う事が出来なかった息子。
未だに彼の実の子たる魔王ゼロとなったルルーシュとナナリーは健在ではあるが、それでもその死を僅かに悼む。
その死は無駄ではない。 この儀式が終わりを迎えたとき、真に判りあえる時が来る。

涙一つ流さぬまま、シャルル・ジ・ブリタニアの弔いは終了した。


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シャルル・ジ・ブリタニア
キュゥべえ


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