再起動

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再起動 ◆Z9iNYeY9a2



『それでは次の放送は6時間後となります。更なる殺し合いの進行を期待しています』

石造りの城内に響き渡る声が途絶えていく。
夜にも突入しようとする時間に流れた放送が終わったところだった。

名を呼ばれた者の中には、呼ばれると予期していたものも当然いた。

夜神総一郎。C.C.。

前者は先に不意に流れた映像の中で謎の影に食われた。
後者は共にいるべき相手の傍にその姿がなかった。
故に、その死を知っていた、想定していたものが多くそう意外な名は呼ばれてはいなかった。

仮面の下でスザクが動揺しているのは、それらとは別の理由だ。

「枢木?」
「……その名前では呼ばないでくれと頼んだはずだが…。何だ?」
「放送が終わってから、明らかに様子が変だったからな。何かあったのか?」

そして、その動揺は表情を隠したままでも、同行者に気付かれるようなものだった。

「……さっきの放送の声に、聞き覚えがある」

アーニャ・アールストレイム。
かつてのブリタニア皇帝直轄の騎士、ナイト・オブ・ラウンズの6位。

だがブリタニアが無き今は、騎士の名も捨てて過ごしていたはずの少女だ。

それが、何故放送を行っているのか。

いや、協力すると考えられる可能性はある。

「アーニャ・アールストレイム。先々代ブリタニア皇帝直轄の騎士の一人。
だが、彼女にはもう一つの顔があった。ギアス能力でその心に潜むもう一人の人格の存在が」

マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。
ルルーシュとナナリーの母であり、皇帝の后の一人にして、彼の計画の同士。

だが、それもあの門の中で、ルルーシュにより皇帝と共に消されたはずだ。
消された。存在が消滅した。
逆にいえば、死をはっきりと確認したわけではない。

もし何らかの手段であの場所から帰ってきたというのであれば。
そして彼女がいるということは。

「結論から言おう。もしかすると、アカギの協力者に俺の知り合いだった者がいるかもしれない。
シャルル・ジ・ブリタニア。かつてブリタニアの皇帝であった男であり、俺の友人が世界から追放したはずの存在だ」

彼であれば、これほどの催しを行う動機はあるし、Cの世界という未知の世界を通すことでそれが行えるだけの能力を持っている可能性は高い。

スザクは、ここにきてC.C.ともう少し情報交換に時間を費やしておくべきだったと後悔した。
おそらく彼らのことを最も知っている者は、自分の知る限り彼女だけだ。だが、本来不死であるはずの彼女も命を落としたというのは放送で呼ばれた名が示している。

「だが、俺は詳しいことは知らない。それを知っていた者は一人知っているが、今の放送で名前を呼ばれた。
いや、だからこそか?彼女がこうして表に出てきたのは…」
「偽物の可能性は?例えば、アカギが何らかの手段でその人の情報を掴んで、混乱のためにフェイクとして利用しているか……。
いや、だったら別にもっと赤の他人の声で放送すればいいか。敢えて放送することに意味があると考えるべきか」
「偽物だとしても、どの方向性にしろ考えれば考えるほど混乱するだけだな。ここは本物だと仮定して話を進めたほうがいい」


政庁にいた時、C.C.とした会話を思い出す。

『ニャースから聞いたんだが、アカギという男は神に近いと言われた伝説のポケモンの力を使って世界を作り変えようとしたらしい』
『このような殺し合いを催せたのも、その力が要因というわけか。
しかし、神に、世界を作り変える、か』
『思い出すか?シャルル達のことを』
『連想くらいはするさ』
『だが、あの二人は追放したはずだ。他ならぬルルーシュが』
『では、ユフィ……ゴホン、ユーフェミアの世界の皇帝である可能性は?』
『それは分からんよ。何しろ情報がない上にゼロがナイトメアを下す化物の世界だ。シャルルも同じとは限らないからな』
『そうか』

その後は巴マミの来訪やロロ・ヴィ・ブリタニアの襲撃が重なったこともあり、詳しい情報を聞き出すことはできなかった。
元々重要度の高い会話ではなかった以上、時間があったとしても雑談レベルの会話にしかならなかったとは思うが。


「なら放送の主が君の知っている存在と同一人物だとしよう。彼にはアカギに匹敵するような力があるのか?」
「アカギの力ははっきりと分かっているわけではないが、俺の知る限りなら有り得る話なんだ。
彼らは神を殺すことで世界を作り変えようとした者だからな」
「神を、殺す…?」
「詳しい話は、そこの情報端末で見た方が早いか。俺も全容を理解していたわけではないからな」

言って、端末にパスを打ち込んで画面を開くスザク。
求めている情報が載っていることは、先に大まかではあるが確認している。

再度それを理解しようと、月は映った光を覗き込んだ。



「集合無意識、人の意思を一つに繋げる…、なるほど、納得はしかねるものだけど、何となく理解はできたよ」
「シャルル・ジ・ブリタニアはこれを嘘のない世界と言っていた。人が嘘という仮面を被ることなく、全ての想いや感情を共有することができる世界になると」

ラグナレクの接続。
人の意識を共有し一つにすることで、個人の思考を剥き出しにし、嘘というものを世界から無くすというもの。
その中には死者との接続も可能となる。

だが、死に意味がなくなることで命の価値が喪失するだろうし、人の進歩は確実に止まるだろう。
その世界を否定したルルーシュも、自分を捨てた親が肯定されることを決して許しはしなかった。


「お前ならどう思う、夜神月?」

その世界に対し、人の命を握ることで人の生と罪を掌握した世界を作ろうとした男は何を思うのだろうか。
これはスザクの好奇心による問いかけだった。

「…まず一つ。
僕は人が嘘をつくことは否定していない。嘘にも大きなもの、小さなもの、悪いものに必要なものも様々だ。
嘘そのものを人間から取り除くことはできない。だから善悪という概念を作り法というものを生み出したんだ」

法、そこには罪を犯した人間に対する裁きも含まれる。
嘘を、そこから生まれる罪を裁くために人が生み出した秩序だ。
その全てを何から何まで否定することはそもそもかつてキラとして生きていた自分の理念にも反する。


「それに何より、他の人間と思考を共有するなんて気持ち悪いじゃないか」
「確かに、それが正常な反応なんだろうな」
「加えて、世界を変えるために周りの人間全てを巻き込もうという、上から目線も気に入らない」

その言葉の中には自虐も含まれているように感じられた。
彼自身、キラという神となり世界を死という恐怖で押さえつけようとした者だ。


「…正直僕はこれまで、神に近い力を得て人々を上から見下ろすようにして過ごしてきたのかもしれない」

たった今放った自虐の言葉に対しての答えを言うかのように呟く月。

「だから、こんなところに呼ばれてもどうにかなると、他の皆を見下して見ていたのかもしれない」

美樹さやかとゲーチスと情報交換していた時。
アリスや暁美ほむらと、またロロ・ヴィ・ブリタニアと共に行動していた時。

いい顔をして善人ぶったり友好的な顔をしている裏で自分は何を考えていたか。
ゲーチスやロロにしてみればいつでも殺せる都合のいい雑魚としか見られていなかったのだろう。
実際、ロロが巨大なロボットを操ってオルフェノクと戦うあの戦場を見て恐怖したはずだった。
この場で生き残れていたことも、ただ運がよかっただけだ。もし出会いが悪ければ、もしゲーチスやロロが気まぐれを起こしたら。
自分はこうして生きていなかった。

「案外、神―キラ―のままでいられるという思いはその時点で諦めが入っていたのかもしれないな」

だけどその事実に気付かないふりをして。ただこれまで上手くいっていたからと自分を誤魔化していたせいで、本心と願望の食い違いに歪みが生じてしまっていたのかもしれない。
父親に会って、彼との会話を通して、神でいる必要がないということに気付きかけ、しかしそれが受け入れられずに逃げた時からキラはもういなかったのだと思う。

「余計な話かもしれないが、もし僕に神になろうという思いがそこまで強くなくて、なおかつ手段を選ばないようになっていたなら、もしかしたらその考えに傾倒していた可能性はあったな」

だけど今は、そんな想像もできるくらいには、自分を見つめ直すほどの余裕があった。
キラである自分から開放されたおかげだろう。

「ならば、どうするか」
「過去は過去だ。今は僕ができることをするだけだ」

スザクの問いかけに短くそう答えて、端末の情報に意識を戻し始めた。


「この情報から僕なりに色々考えてみたいが、やはり情報が足りない。
情報をまとめたら出発するべきだな」
「それなら一つ提案がある。先の放送でアーニャが言っていたアヴァロン、あれに乗って移動するのはどうだろう?」
「君は知っているようだけど、そのアヴァロンというのは何なんだ?」
「アーニャが言っていたように浮遊航空艦、有り体にいえば空を飛ぶ空母だ。
あの艦には防御兵装としてブレイズルミナス…、早い話がバリアも搭載されている。目立ちはするがそう多少の攻撃で沈むこともないだろう」
「KMFというロボットといい、君の世界の技術はすごいな…」

アヴァロン。ブリタニア軍の浮遊航空艦であり、ナイトオブラウンズとして、ナイトオブゼロとして行動していたスザクには勝手知ったるもの。
政庁にKMFがあったように、もしかするとここに今の自分たちにとって有用な何かが存在するかもしれない。

「だけど、いいのか?もしかしたら僕達に先んじてその戦艦に乗っている人がいたら、逆に待ち伏せに合うかもしれない」
「確かにその恐れはあるが、だが今現在あのアヴァロンを知っている者は私の把握している限りでは、私を含めて3人だ。
うち一人はそのようなことはしない。もう一人は…確かにその不安はあるが一人なら確率的には乗っている可能性はそう高くはないだろう。
そしてアヴァロンを知らない者であれば、地の利はこちらにある」
「なるほど、君なりには考えているんだね。だけど一つ。最後の君が見逃した可能性、それは放置することは危険な可能性だ。可能性が低いからといって無視するのはあまりいいことじゃない」
「…考えておく」
「地の利に関しては何とも言えないからな。そこは君を信頼するしかないな。
最後の可能性については、情報がない以上は確率はトントンということになる。なら乗っている可能性も乗っていない可能性も半々だ。
君の地の利による利点を差し引けば無視できるものではある」

スザクの考えの穴にフォローを入れながら、今後の動きを確定させる月。

「であれば、アヴァロンが到着するまでは情報収集も兼ねて休息とするか。
今のうちに食事もすませておいたほうがいいかもな」
「じゃあ僕は大丈夫だ。休息なら情報整理しながらでもできる」
「分かった、なら俺は席を外そう」

バッグから支給されていた食料と水を取り出すスザク。
その行動を怪訝に思った月が問う。

「席を外すって、食事だろう?ここですればいいじゃないか」
「………」
「…人前じゃ外せないのか?」

スザクの被っていた黒い仮面を指す月。
しかしスザクは静かに首を振るった。

「察してくれればありがたい」
「分かった」

短くそう告げて静かに部屋を出ていった。



ふと気まぐれから、ゼロという存在についての情報を開く月。

「悪逆皇帝を倒した英雄、か」

ブリタニアを占領された日本に現れレジスタンスに力を貸し、最終的に悪逆の限りを尽くす皇帝を倒した仮面の英雄。
しかし月はその時期周りの情報を一通り整理したところでゼロの正体がルルーシュという皇族の一人ではないかと推察を立てていた。
そして、その傍に騎士として付き従った枢木スザクは自らの死を演出することで世間的には死者となり、ゼロの仮面を引き継いだ。

もしゼロがずっと枢木スザクであったのならば、先にスザクが話したおそらくは身の上話だろう言葉に対しどうしても辻褄が合わないと違和感を感じてしまう。しかしそう考えると納得がいく。

社会的に死んだのであれば、元の世界で仮面を外すことができないのは道理だろう。ゼロという名が世界を安定させる称号であり、枢木スザクが裏切りの騎士であるのならばなおさらだ。
だが、この場でもそれに縛られる理由はないはず。

(……いや、これはそういう理屈の問題じゃない、あいつ自身の心の問題というところか?)

そうあるようにと己を戒めていることに、例えば贖罪のようなものがあるのであれば場所がどこであれ仮面を取ることは難しいのかもしれない。
そのあり方に引っかかるものはあったが、それでも月には自分が何かをしてやれるとは思えなかった。

心理学的な観察、分析は得意だったが、相手の内面、心の部分に触れての会話はそうでもなかった。
キラでいた時間が長すぎた弊害だろう。犯罪者を裁くために己の心を捨ててきたが故の。

端末に出ている情報は言ってみれば歴史の教科書のようなもの。世界の仕組みや作り、歴史上の出来事のようなものは把握できる。
しかしそこに関わった個人、ここの参加者がそれに対しどんな思いでいたのかまでは載っていない。

「それは自分達で調べろということか」



別室へと入り一人になったところでスザクは仮面を外した。
冷たい外気を感じて顔に僅かな開放感を感じられた。
口元の布を外してペットボトルに口をつける。

「……はぁ」

飲み干して息をついた辺りで、月に言われた言葉を思い出す。

(そういえば、ゼロとしている時は誰かと食事なんてすることも誘われることもなかったな)

ゼロという記号には英雄的な概念が必要になる。
食事、睡眠、人間として当たり前の行動でも、その概念の中には存在してはいけないものだ。
ゼロとしての行動の合間に、誰に見られることもなく行う作業程度のものとなっていた。

これを苦痛とは思わない辺り、自分には何かが欠けているのだろうがゼロとして生きる上では都合がよかった。

ただ、ふと思い出してしまった。

かつてアッシュフォード学園でまだ枢木スザクだった時。
まだユーフェミアも生きていて、ルルーシュがゼロと知らず、わだかまりもそれほど持たなかったおそらく最も穏やかであった頃。

そしてナイトオブラウンズとして過ごした日々。
イレブンという風当たりの強い風潮の中で、それでも分け隔てなく接してくれたジノやアーニャといった友と過ごした時間。


皆と、人として当たり前のように過ごした時のことを。

「何をバカな」

その思考を感傷と振り切る。
一方で現実問題として、現状ゼロとして振る舞うことにも意味がなくなっているとはずっと思っていた。
正体を知るものまで現れた以上尚のことだ。

だが、心に残った枷はこの仮面を取ることを許さなかった。
月に変わることを促しておいて身勝手なものだとは思っていても。

この場だけでも、もしゼロの仮面を外すことができるとするならば。
その枷から解き放ってくれる何者かの存在が必要だった。




アヴァロンがどういう形で施設に降りてくるのか。
再度Nの城を見て回っていたところ、建物の上位階層の一画に祭壇にも見える開けた場所が見つかった。
そこならばアヴァロンへの乗降にも耐えうる場所なのではないかと判断、スザクの持つアヴァロンの艦情報から計算したおおよその到着時間にそこで待機することとなった。

そしてやがて到着したアヴァロンに乗り込むスザクと月。
その中の空気にスザクはナイトオブセブン、そしてナイトオブゼロとして行動していた時のような懐かしいものを感じながら。
やがて地を離れ飛翔していくアヴァロンの中で、離れていくNの城を、そしてここから向かうだろう先にある闇の中に小さく光る街灯に照らされた施設群を見下ろし続けた。


【B-4/Nの城付近(アヴァロン内)/一日目 夜中】

【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:疲労(大)
[装備]:スーツ、
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本:キラではない、夜神月として生きてみたい
1:とりあえずゼロ(枢木スザク)と行動する。
2:Lを探し、信じてもらえるのであれば協力したい
[備考]
※死亡後からの参戦


【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ゼロの衣装、「生きろ」ギアス継続中、疲労(小)、両足に軽い凍傷、腕や足に火傷
[装備]:エクスカリバー(黒)@Fate/stay night、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、スタングレネード(残り2)@現実
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:アヴァロンを拠点として仲間を探す
2:Lを探し、 政庁で纏めた情報を知らせる
3:アカギの協力者にシャルル・ジ・ブリタニアがいる前提で考える
4:生きろギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
5:ゼロの仮面は――――
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦


142:一歩先へ(前編) 投下順に読む 144:届かない星だとしても
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133:神のいない世界の中で 枢木スザク 150:舞い降りる剣
夜神月



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