アットウィキロゴ

暁美ほむらの退屈

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

暁美ほむらの退屈 ◆Z9iNYeY9a2


「ふぅ…」

一人になったほむらは一息つく。

元々人見知りが多く人付き合いも少なかったほむらは、そもそも腹芸が得意ではない。
かといって喋らない状態のままであの場に乗り込むなどしたら舐められかねない。
実際にはそのような感情を抱く者が相手ではなかったし必要かと言われれば微妙なところなのだが、そんなことはほむらは知らない。

故に、仮面を被ることにした。
不安や願いを悟られぬほどには人格を変えられる仮面。
新しい顔を生み出すのはこれで二度目といったところだろうか。

かつての仮面は結果的に人が近寄ることを避けさせるようなものだったが、今回は相手に舐められないためのもの。
少しばかり精神的な負担もあった。

衣装を黒いドレスから制服に戻し、放送内容を反芻する。

残りの参加者は9人。
その中には鹿目まどかもいる。

正直なところ、若干苛立つ気持ちがあった。

(今までまどかを助けられた世界はなかったというのに)

この殺し合いの中でまどかが生きられる可能性は低いと最初から考えていた。
だからこそ、まどか一人を生かすことよりも全てのまどかを救うという目的を心の中に置いて動けたのだ。
このまどかを死なせることになっても、と。

だというのに、今彼女はこうして残っている。

まどかのことだけではない。
美樹さやか。
自分との相性が悪く、また彼女の心も強くはないため共闘を避けてきた少女。
その弱さがまどかの心を縛ることもあり、目的のための障害になったことは数え切れない。
そんな彼女は、これまでの世界では見られなかったような心の強さを手にして、最後は魔女化する覚悟をもって多くの参加者を守って死んだ。
その強さがかつての世界で表せたなら、どこかの世界のまどかを救うくらいはできたかもしれないのに。

美国織莉子もそうだ。
今更あの時の敗北についてとやかく言おうとは思わない。
だが、一体何の心変わりがあったのかは知らないが彼女の最後の行動は確かにまどかの命を救うためのものでもあった。
本来ならば感謝の一つでも投げはしたかもしれないが、今の自分にとっては。

「………」

自分の中に、矛盾と葛藤があるのを感じた。

もしも自分の手が届かぬ場所で死んだのであれば、それも止むなしと諦め、また彼女も救うべき存在としてこの身を動かすことができただろう。
しかし、今の自分にはあのまどか一人を救うための手は届く。

(私に、まどかを殺すことはできないでしょうね)

それを幻視するだけで、かつてソウルジェムを砕いたまどかの姿が脳裏によぎって心を激しく揺さぶってくる。

「随分悩んでいるみたいね」

気配もなく隣に現れたアーニャに、それでも動揺を見せぬよう無表情に視線を向ける。

「警戒しなくてもいいのよ。今の私は、一応あなたの味方だから」
「……」
「気になる子でもいるのかしら?」

動揺を抑える。

「…」
「どうして分かったのって目をしてるわね。
 だってあなたの顔、ナナリーのことを気にかけてる時のルルーシュと同じだったもの」
「はぁ…」

隠していても仕方ない、と息を吐く。

「キュゥべえは、私に接触を図ってきたことを考えたら少なからずあの儀式に対して干渉を行っていたのよね。
 もしもだけど、私も干渉しようとしたら、許されるのかしら?」
「別に構わないと思うわ。
 ―――と、言いたいんだけど、この段階であなたがしようとしてることを許すとなると少し宜しくないのよね。
 そこまで許容するとなると、シャルルかアカギに聞くしかないと思うけど、流石に許してくれないでしょうね」
「………」

ほむらの中で思考がめぐる。
どうするべきか。
強引に行くべきか、それとも心を凍らせて諦めて彼女自身の可能性にかけるか。

前者はこれからの行動において最終目標に差し支える。
後者は心に大きな痼を残してこの先をいくことになる。

後者は個人的な問題だ。彼らに話したところで解決策など出るはずもない。

「だけど、無理ってわけじゃないと思うのよね」

小さく笑いながら、悩むほむらにアーニャは呼びかけた。

「私から言える条件としては2つね。
 まず今現在、儀式は一時的な停滞期間になっているわ。積極的に人を殺せるような子達がいなくなってしまったんだものね。
 キュゥべえの見立てだとここから状況を動かそうとするなら、彼らが私達の元に近づいてくるしかない」
「つまり、そのための行動だというのなら、多少は肯定されると」
「そうね。そしてもう一つ、こっちが重要になるんだけど」

そうして問いかけられるアーニャの言葉。
それにほむらは静かに頷く。

「何だ、そんなことなの」
「できるのかしら」
「できるわ」

告げられた課題を、異論を挟むこともなく受け入れた。

「ただ、その前提で動くなら少しだけ、私の計画の流れも変えなければいけないわ。
 そこだけは了承してもらいたいわね」


殺し合いの目的。

アカギやシャルルの狙う世界の想像。

それをなすための装置として、この儀式の核たる部分には最終兵器が備え付けられていた。

かつて多くのポケモンの命をエネルギーとして捧げて駆動させることで、兵器として世界を滅ぼしたと伝えられる兵器。

しかしキュゥべえにしてみればこれはとても非効率的なものだという見立てだったらしい。
多くの命を捧げてなしたことが一個体の生命の蘇生、そして何も生み出さない戦争による単純な破壊活動。
これに対しての改良を加え、効率を上げることとなったのがキュゥべえの最初の仕事だったという。

まず、ポケモンの命のみを捧げていたこれに対し人やその他の命も動力として使えるものに変更。
さらに焚べた命に対してのエントロピーを換算して出力を底上げできるよう、キュゥべえ達自身の持つ技術を導入。

これにより、殺戮兵器だったこの装置は世界の創造を成し得るものへと形を変えた。

無論、世界の創造となればそれだけのエネルギーが必要となる。
効率を上げたとはいえ、そのために何万、何億も必要かもしれない人間の命を回収することは不可能ではないが難しく、時間も膨大で妨害だって有り得る。

そこで無作為、しかし多くの因果を備えうるという者たちを厳選し、殺し合いをさせることでエネルギーの回収を目的としたのが、この儀式である。
これにはある世界で行われていた聖杯戦争という儀式の形式に一部倣わせているところがある。

このエネルギーを世界創生へと用いることでアカギ達の望む世界を作る。


更にもう一つ。アーカーシャの剣というものがある。
シャルルの持つ、神を殺す武器と呼ばれる装置。集合無意識に干渉し世界を作り変える役割を持っている。

この機能、Cの世界の法則を書き換える武器を合わせることが可能ならば、より広い世界へと干渉できる。
破壊されたはずの装置ではあるが、アカギの力を借りることでこの空間にて再現することができたのだ。
だが再現が限界。これを実際に動かすには鍵であるコードが足りなかった。
かといって敗北を認めて世界から弾かれたシャルルや別世界の住人のアカギにはコードを収集することはできなかった。世界が拒絶するのだ。

しかし、今ここにはそのコードを持っているほむらがいる。


「それで、あなたをあの会場に送り込んでほしい、と」
「ああ」

そうキュゥべえが頼み込んできたのは手持ち無沙汰になったほむらが待機している間だった。

「現状で脱落者が出る可能性は低く、むしろ彼らがこちらに来る可能性の方が高いだろう。
 だけど今からタイムリミットまで待ってしまうと彼らは余計なことをするかもしれない。少し頭が回る者が残っているからね。
 ほどほどに手を加えておいた方がいいと判断した。アカギとシャルルにも了承してもらったからね、反対することは彼らに対する裏切り行為になるから気をつけてね」
「……」

横のアーニャに目をやると、小さく肩をすくめた。
どうやらここは逆らえないようだ。

「分かったわ。会場に繋がる空間の穴を作ればいいのね?」
「いや、そこまでは必要ないよ。アクロマが残した装置があるからね。
 ただ転移先の座標が固定できないんだ。干渉遮断装置はそれほどに強力でね、パスがない状態から繋げるのが難しいんだ。
 変なところに飛んでしまうと生存者に会うまで時間がかかってしまう。時短のための介入なのにそれはまずいからね」
「私が空間を繋げて送ってもいいのだけど」
「君が会場に対する干渉を行うのは今回が初めてだからね、不確定要素はできれば下げておきたいんだ。
 介入実績があるアクロマの方が信頼性が高いんだよ、気を悪くしないでほしいけど」
「ならそのアクロマの装置自体から繋げられないの?」
「細かい調整を行う肝心なところがブラックボックス化されてて下手に手が出せないんだよ」

はぁ、とため息を一つ付くほむら。
最初の仕事がキュゥべえの手助けだという事実は気に入らないが、ここでごねたところで印象を悪くするだけだろう。

ほむらの身を包む衣装が黒いドレスへと変える。
その腕にかつて盾があった場所に装着された場所につけられた時計状の装置に手をやる。

「じゃあ、その空間を開きなさい。私のギアスで因果を確定されてあげる」

コードを受け継いだことでほむらに発現したギアス、それは因果を操る能力。
様々な可能性に揺れる世界を確定させることができる。端的にいえばそういうものだ。

一見強力な力に見える能力だが、手にして間もない力なこともあって制約が分かっていない。
そういう意味ではキュゥべえの懸念も当然だろう。
少なくともアカギやシャルルの力も合わさっている干渉遮断装置の内側には力を及ばせられないということは確認しているが。

「……」

時計の針が動いた瞬間、幻視したのは多数の糸が分岐するように広がった因果。
それが一本の糸に集約されていく形。

やがて目を開いた辺りで、キュゥべえが起動させた転送装置の先が見えた。
会場の中でもキュゥべえ達しか入ることができない場所の風景が映っているらしい。
とりあえずは成功したようだ。

「じゃあ、あとのことは頼んだよ。
 これを通って会場に行くと僕のスペアもこちらには出せなくなるようだ。会場の制約が僕自身にもかけられてしまうからね」
「安心しなさい、一応あの場であなたに手が加えられないようにもしておいてあげたから」
「気休めだとは思うけど、一応信用させてもらうよ」

ピョンと穴の中に飛び込んでいき、空間に開いたワームホールは小さく消えていった。

「それにしても意外ね。あなたのことだから事故に見せかけて彼を次元の狭間に落として消すかもとも思ったのだけど」
「そこまで感情的には動かないわよ」

アーニャの軽口に答えるほむら。
それに、と更に言葉を続ける。

「キュゥべえに手が加えられないようにしたというのは本当のことよ。だけど、もう幾つかキュゥべえ自身に因果操作を加えさせてもらったわ。
 少し私に都合のいいように動いてくれるようにね」

これも実験だ。
自分の能力がどこまで通じるのか。

いずれ来るだろう生き残った者たちとの戦いに備えて、己の能力を把握しておく必要がある。

「それにしても、キュゥべえもその考えに至らないとも思えないんだけど。少し迂闊だったんじゃないかしら」
「少し焦っているのでしょうね。あなたが自分では及ばない力を手に入れたってことに。
 だから多少のリスクを飲んででも動こうとしてるのよ」

果たしてその言葉が嘘か真か、あるいは彼女自身も騙されているのか。
それを読もうとしたところでにっこりと笑顔を向けられてしまった。

読まれたのだと察し、やはりこういうのは向いていないと心中ため息をつきながら衣装を解除して座るほむら。

「さて、キュゥべえも向かったし次に動くまで少し時間があるわね。
 せっかくだし少し親交を深めない?」
「断るわ。一人でいるのは慣れてるし、今後の段取りだって決めなきゃいけないし」

会話が好きではない。それにこの少女の姿をした女に苦手意識を持っていた。
できれば関わり合いたくない。静かに過ごしたいと思っていた。

利用できればいいと思っていたのだが、心中を悉く読まれているような気がする。

「もう、そうやって一人で抱え込んでワルプルギスを倒すためにどれだけ繰り返してるのかしら?」
「………うるさい、母親みたいなこと言わないで」

今の言葉には少しカチンとくるものがあったほむら。

「こういうことを言ってくれるような人がお母さんしかいなかったってところかしら?」
「そもそも私の親は今の私を知らない。今も病弱だった頃の私がいると思ってるわ」

徐々にアーニャのペースに入れられていることに、ほむらは気付いていなかった。


「そう。じゃあずっと一人暮らしだったってところかしら」
「あの頃の私と今の私はもう別物よ。だから親のことはもう片隅に置かれた記憶の一つでしかない」
「そう」

気がついたところで目の前にカップとコーヒーが置かれている。
間を取る何かがほしいと思い、具現化させたものだ。

疑うこともなく目の前に現れたそれに口をつけるアーニャ。

「あなたはそうやって過去を切り捨てたのかもしれないけど、案外過去ってどこまでいっても付いてくるものよ」
「………」
「例えばあなたを殺した相手が鹿目まどかを守って死んだことも気にしないようにしてたりとか」
「…………」

ほむらが一度に口に含むコーヒーの量が多くなった。

「私のことは置いていたとして、じゃあじゃああなたはその過去に囚われて生きるべきだというのかしら?」
「そうは言わないわ、というか囚われてたのはむしろ私達だもの。言う資格はないわね」

気がつけばコーヒーは空になっていた。

「そもそも説教とかじゃない、ただの雑談のつもりだけどね」
「ならこれで終わりにさせてもらうわ」
「こらこら。
 確かに重要じゃないけど、そんな細かい積み重ねが人を変えるものよ。
 少なくとも今生き残ってる参加者は、みんな大なり小なりそういったところに影響を受けている。
 あなた自身が与えたものだって、ね」
「……」

敢えて言葉に対しての反応はしなかった。
ただ、数秒だけ瞳を閉じた。

「一般論はそうかもしれない。だけど。
 それは、私の目的には必要のないものよ」

気がつけば、カップにコーヒーが入っている。
それを、静かにすすった。

「やっぱり、”時間”かしらね、問題は」

やはりこの少女の心に踏み入るには、時間が不足しているようにアーニャは感じた。

自分たちの使命、とは別にこの少女の行く末を見届けてみたいと思っているアーニャ。
しかしこの少女の心の壁の向こうを見るには時間が足りないだろうと感じていた。

キュゥべえが動いた以上、あと数時間単位のうちに状況は動くことになるだろう。

(ま、それまでできるだけのことはやってみましょうか)

目の前に復活していた、まだ熱がこもったコーヒーを一気に流し込んだ。




【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、ギラティナと同化、魔女の力継承、悪魔化
[服装]:悪魔ほむらの衣装@魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語、ギラティナの翼、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ
[装備]:ダークオーブと化したはっきん玉、変質したほむらの盾
[思考・状況]
基本:アカギ達に協力、ないし利用し最終目標のための手はずを整える。
1:アカギを含む皆の動向を見て動く。
2:キュゥべえの動きを見て、今の生存者に合わせて動く
3:アーニャがちょっと鬱陶しい
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきん玉はギラティナの力と魔女の力を完全に取り込み自身の因果と同調させたことでダークオーブ@魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語へと変化しました。
その影響でギラティナの能力を使用することが可能です。
※ギラティナの体はRガス@名探偵ピカチュウによってほむらの精神を移された後、ギアス継承の反動を押し付けられたことで力が弱まりほむらの体内に取り込まれています。
ギラティナ自身の意識が弱まっただけの状態であり死んではいません。
※ギアス能力について
腕の変質した盾についた時計の針を動かすことで、因果を操り固定することが可能です。
現状で分かっている制約としては、魔女の刻印が残っている影響で会場に対する干渉には強い制限がかかっているため現在の参加者への干渉はできません。



163:Why その理由 投下順に読む 165:消せない罪(前編)
時系列順に読む
160:第四回定時放送 暁美ほむら 169:I beg you
マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア 170:黄昏の騎士達の輪舞曲
161:ニャースとアクロマ・世界のカタチ キュゥべえ 165:消せない罪(前編)


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー