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黄昏の騎士達の輪舞曲

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黄昏の騎士達の輪舞曲 ◆Z9iNYeY9a2


ランスロットの腕につけられた巨大な槍から放たれた高エネルギーの砲撃。
それは距離を詰めてきたナイトメアのうち1機の体を貫く。
残り2騎は砲撃を見て散開、両側から剣を、大剣を引き抜いて振り下ろした。

しかしその一撃はランスロットの前に張られたエネルギー障壁、ブレイズルミナスに阻まれた。

止まった一瞬で腰のハーケンを撃ち込む。
咄嗟に交代するも、放たれたハーケンは足を、片腕を掠め、その掠めた箇所を吹き飛ばす。

「直撃させるつもりだったが、…流石に皇帝直属の部隊ということか」

数々の敵と戦ってきたスザクから見れば、少なくとも彼らの動きは並の騎士にできるものではないと見ていた。
この動きはおそらく皇帝直属のナイトオブラウンズに匹敵するものだ。
しかし、同時にそれでもこの機体の相手ではないとも感じていた。

そう考えていたこと、そして機体が後退し距離が空いたことで油断があったのかもしれない。
そのほんの一瞬の間の後、機体に強い衝撃が走った。

「ぐっ…!」

揺れた機体のコックピット内に安定しない態勢でいた月が、コックピットの壁に体をぶつけてうめき声をあげる。

「っ、どこからの攻撃だ…!」

2騎は後退、もう1騎は撃墜したはず。再攻撃がくるには早すぎる。
周囲を見回すと、そこには上半身の右側だけを残した状態のヴィンセントがこちらに肘のニードルブレイザーを向けている光景。
機体の装甲にはそこまで大きなダメージはなかったが、衝撃は届いたようだった。

機体の断面からは触手のようなものが蠢いて、少しずつその形を戻しつつある。
さらに後退した2騎を見ると、そちらも損傷した腕や足から同じように修復しつつあった。

「これはゼロのガウェインと同じ…、いや、性質はゼロに近いか…?」

体をナイトメアフレームの剣で斬りつけても元に戻るゼロの体も、彼らと似たような体の動きがあったように思える。

考えている間に、再度距離を詰めた残りの2騎がこちらへと振りかざした大剣と両肘を向けている。
大剣から放たれた輻射波動、そして両肘のエネルギー弾がランスロットの体を後ろへと吹き飛ばした。

「スザクっ!」
「いや、大丈夫だ、この程度ならばやられはしない」

機器のアラームに目をやるが、致命的なものはない。すぐに修正できる程度のものだ。

「ただ、あの回復力は厄介だ。
 一撃で吹き飛ばす必要があるが、相手も機動力がそれなりにある。捉えるには少し手間がかかるかもしれない」

コクーンを分離させれば捉えるのは問題ないだろうが、それをやってしまえば火力が足りず余計手間がかかるだろうし施設攻撃にも支障をきたす。

「…一つ聞きたい。さっきの攻撃で問題ないとのことだったが、向こうの持っている武器にそれ以上強いものはあるのか?」
「いや、知っているものと同じだとすれば、あとは近接武器とハーケンくらいのはずだ。他に携行武器を備えている様子もないし」

巨槍とハーケンでナイトメアを捌きながら月の質問に答えるスザク。
一撃一撃が機体を大破レベルまで損傷させるが、その都度数秒で回復し十秒もあれば完治して復帰する。

「だとしたら妙だ。こちらの迎撃に来たにしては戦力が足りていない。
 あの部隊というのはあの3体で全部なのか?」
「いや、もしラウンズだとしたならば13人いるはずだ……、そういえば確かに少ないな…」

かつてこの機体の前世代機であるランスロットアルビオンでも、ラウンズ4人を鎧袖一触で斬り伏せた。
たとえ相手が強い再生能力を備えていたとしてもそれだけでどうにかできるはずはないと思うのは自惚れだろうか。

「……時間稼ぎ、か?」



『その通りよ』

ふと月がつぶやいた時、一迅の光が奔ると共に横殴りに強い衝撃がランスロットを襲った。
機体が吐き出す警告音に目をやると、3騎の攻撃でも目立った損傷がなかったランスロットの外部装甲が大きく斬りつけられている。

光はランスロットより上の宙で静止、その姿がスザクの視界で顕になった。
大きな角を備えた頭部はスザクにも見覚えのある機体、しかしその体はナイトメアフレームの機械というよりもまるでスーツを纏った人体を模したかのようにも見える外見。

「トリスタン…?ジノか?」
『残念、この子は確かにトリスタンだけど、乗ってるのは私よ』

その機体と、あるいは機体の乗り手と思われるものの名を呟いたスザク、しかし帰ってきた声はかつての友のものではなく少女の声。
そして、その声もスザクは知っている。

「アーニャか、いや、お前はまさか」
『察しが良いわね。せっかくだから騎士として名乗らせてもらおうかしら。
 シャルル・ジ・ブリタニアの筆頭騎士、アーニャ・アールストレイム、いいえ、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。
 悪いけど枢木スザク、あなたはここで死んでもらうわ』

手にした剣を構えて一気に距離を詰めてくるトリスタン。
反応しようとしたが、追加装甲を纏ったナイトメアでの動作が間に合わず装甲の上からも伝わる衝撃が機体を襲った。
いや、今の動きはおそらく機体がランスロットアルビオンのような使い勝手のいいものであっても受けきれなかっただろう。こちらの反応そのもの以上の速度で襲ってきていたのだから。

振り向いたところで、視線に入ったのはランスロットの頭部、カメラに位置する場所に突きつけられた剣先。
瞬間、生存のギアスが発動、手にした操縦桿を自然に機体を大きく反らすように動かしていた。
一瞬前にはスザク達のいるコックピットがあった場所、そこをランスロットの肩装甲を大きく削りながら貫いていった。

「…っ、速い!」
『驚いたわ、もう反応できるなんてね。初手で遊ばずに決めておくべきだったかしら』

大きく後ろに下がって距離を取るスザク。
動きがナイトメアフレームの動きを大きく超えている。自分とランスロットでもあそこまでの速度は出ない。
機体そのものの仕様もあるのだろうが、それだけではないはずだ。

「これが『閃光のマリアンヌ』か…!」
「…スザク……」

驚愕するスザクの耳に、呻くような声が届く。
今の急な動きで月に不意にかかった強い圧力が彼の体に強い負荷を与えていた。

(まずいな、あの動きに対応するなら月がいるのはまずい)

あの挙動に反応しようとすれば、ギアスも込で全力を出さねばならない。
だがその動きには月は耐えきれないだろう。

(もし月を降ろす機会があるとすれば、このコクーンを分離する時か。
 だけど今それをすれば、下の施設破壊ができなくなる…)

距離を取りつつ思考を続けるが、答えは出ない。
むしろ倒し損ねた他の3機がトリスタンの指揮下に入ったことで編隊となって襲いかかってくる。

どちらかを選ばねばならない。

(……ルルーシュなら、こんな時どうしたんだろうな)

飲み込んだ弱音の代わりに、ふと浮かんできたのは追い詰められた状況下でも切り抜けてきた、もういない友のことだった。

前にハーケンを打ち込むと4機は散解、それぞれ四方から迫り各々の武器をかざす。
マリアンヌの散った方向を重点的に警戒し障壁を貼るも、マリアンヌはそれを読んでいるかのように別の1機の位置と入れ替わる形で攻め立ててきた。
機体が揺らいだところで、他の機体のうち後のタイミングで攻め込む者の攻撃が再開。どうやら装甲にダメージが入った箇所を狙っている様子だ。

まずいと感じた時には、ギアスが発動して大きく機体を退避させていた。

「…っ、大丈夫か、月!」

コックピット内にかかった負荷が再度月を苦しめている。

「だ、大丈夫だ、スザク。それよりも、この機体、全力を出せばあいつらを離すことはできるか?」
「機体の出力を一直線に向ければ可能だとは思うが…だけどそれじゃこの場所から引き離されてしまう」
「なら、上だ。ここから、可能な限り全力で上に上昇してくれ!
 上からなら目標の場所も見渡せる!」

言うや否や、機体の全出力を推進へと回して上に向けて上昇した。
これだけの巨体を浮遊させるだけのエネルギーは通常KMFよりは高い。
運動性では巨体となった分エース機には及ばないところがあるとしても、一直線に進む速さであれば決して遅れは取らないものだ。

挙動に虚を突かれたこともあって、敵の反応が少しだけ遅れ、追ってくるまでの間がわずかに発生。その間に上昇を続けて距離を開いていく。

「―――あの、マリアンヌとかいうやつが、乗っている機体以外は、どれほどの腕前があるんだ?」
「並の騎士は遥かに超えているはず、少なくともエース級はあるはずだ。あまりしゃべると舌を噛むぞ」
「大、丈夫だ…!」

重圧に体を押されながらも、口を開く月。

「…、これが限界だ。少し間を開けないとオーバーヒートする」

と、周囲一面が見渡せる高度まで来たランスロット。

「はぁ、はぁ、下を映してくれ。目的の施設の場所、その周辺を」

息を切らしながらもモニターで映した下の光景を見渡す。
機器を操作して施設の周囲を拡大して様子を見回す。

画面の端が、追ってくるナイトメアの一群を映し出す。
ここまで追いついてくるまで数秒といったところか。

「…あれは……」

ふと、月が何かに気付いたように呟いた。

「スザク、遊園地まで近づいてくれ。ただし禁止エリアに引っかからないギリギリのところまででいい!」
「分かった!」

方向を変え、再度全力で飛ぶランスロット。
今度は敵の追う方向に飛び込むように進む。
巨体に吹き飛ばされる形で、3機のナイトメアは散り散りになる。唯一こちらに対応してきたトリスタンだけがすれ違いざまに装甲を斬りつけてきた。
肩の装甲板の一部が吹き飛びトリスタン目掛けて迫るも、難なく相手は回避。しかしその行動でどうにか隙を生み出すことに成功した。

飛びながら、舌を噛みそうになりながらも月はスザクにいくつもの質問を投げた。

「こいつの装甲は、あいつらの攻撃に耐えられるか?」
「トリスタン以外なら可能だ。トリスタンだけは装甲のつなぎ目や薄い箇所を的確に破壊してくる。あれを受け続ければ危険だ」
「分かった。次。君はかなり無茶な行動にも耐えられるか?」
「よく分からないけど、ナイトメアを生身で相手にしろとかじゃなければできる気はするな、今なら!」

その後のいくつかの質問をした後、月はスザクにどうすべきかを話す。

「…つまり互いの身を大きな危険に晒すことになるってことだね」
「ああ、自分でも無茶苦茶なことを言ってるとは思う。だから強要はできない」
「無茶を言われるのは、慣れてるさ!」

遊園地に突っ込もうというところで地面にハーケンを打ち込み、それを軸にぐるりとカーブを描いて方向転換するランスロット。

「僕のことはいい。君は大丈夫なのか?」

ただ、その月の語る手はむしろ月の方が危険にも思えるものだ。
そちらの方が気がかりだった。

「そうだな。もしかしたらここで死ぬかもしれない。
 だけど、だからこそ自分なりに最善を尽くした上で後悔したいんだ」
「…じゃあ、約束してほしいんだ」

そう口にした月に、昔の自分に似た匂いを感じたスザクは、一つの願いを口にした。

「僕は絶対に成功させる。
 だから、絶対に死ぬな。僕のことを、何があっても信じてほしい」
「ああ、分かった。約束する、絶対に成功させて生き残るって」

小さく手をぶつけたスザクと月。
次の瞬間、ランスロットの巨体は、一直線に遊園地の中に突っ込んでいった。


「…?」

追尾を続けていたマリアンヌは、その行動に怪訝な表情を浮かべた。

「禁止エリアってことを、分かってないわけじゃないはず。どういうつもりかしら?」

あの機体が全力でブーストを吹かせば制限時間までに禁止エリアを抜けることは可能だろう。
しかしあえてあの場を通ることを選んだ意図が分からない。儀式の参加者ではない自分達には何ら影響がないものだ。

「禁止エリアだから、かしらね。そっちの施設を優先して潰してからこっちの迎撃をやりやすくするって思惑というところかしら」

ただ、それにしては高度が低いところが気になる。さっきの高度でも狙い撃てるだけの火力はあるはずだ。
考えている暇はない。禁止エリアに入ろうというならば、そこで撃墜するだけだ。

と、ランスロットがこちらへと振り向いた。
その腕の巨槍がこちらに向けられ、その先端が赤く輝いている。

配下の騎士達に散解を指示。
槍から放たれた砲撃は間にあった遊園地施設を破壊しながら追っていた自分たちの位置を通り過ぎていく。
崩れた施設が土煙を巻き上げ周囲の視界を塞ぐ。

その中を突き抜けるようにランスロットが飛び出す。

「…?南に向かって?」

同じく禁止エリアであるC4へと向かうものだと思っていた。
ついでに言うなら、まだ遊園地そのものが破壊された形跡はない。

禁止エリアでの行動時間に限界がきたから一旦離脱をするというところだろうか。

一斉にランスロットを追う一隊。
やがて速度を落としながら停止、こちらに向き直して腰のハーケンを牽制のように射出した。

「ん?」

難なく回避しながらも、その挙動にふと違和感を感じるマリアンヌ。
今の挙動にどことなく動きの拙さを感じた。
枢木スザクの攻撃にしては、狙いがあまりにも適当に見えたのだ。

困惑が一瞬マリアンヌの動きを止めさせた。
その間に他の騎士達は三方向から攻撃を仕掛け、ランスロットはその決定打にはならない攻撃を受け続けている。

何かがおかしいと。
その違和感で周囲を見回した時、視界の奥で何かがキラリと小さな光を放った。

戦士の勘とでもいうべきものが、機体を即座に横に動かした。
次の瞬間、トリスタンがいた場所であり退避途中で持っていた剣があった場所を、高速で迫ったその光が貫いていった。

その光は、ランスロットの近くで攻撃を続けていたグロースターとヴィンセントを貫き、斬り裂き、蹴り飛ばして距離を開かさせた。
やがてそれはランスロットsiNの頭上で静止し、その姿を露にした。

「…?!ランスロットアルビオン!?」

眼前で翡翠色の翼を広げ剣を構えたそのナイトメアフレームは、遊園地に乗り捨てられていたはずのものだった。
何故アレがこの場にあるのか。

「なるほど、そういうこと。とんでもない無茶をするのね」

状況を察するのに時間はかからなかった。


『待たせた。大丈夫か、月』
「正直、寿命を半分削るような無茶をした気がするよ」

ランスロットアルビオンからの通信に応える月。
ランスロットsiNのコックピットには、夜神月しか乗っていない。

あの状況から二兎を取るための選択肢。
それは上空で乗り捨てられていたランスロットアルビオンを、夜神月が見つけた時に思いついたものだった。

以前の連絡で機体としてはまだ動かせないわけではないものであったことから閃いたものだった。
しかし、禁止エリアにあるそれを拾い上げ、機動させるまでの時間を稼ぐ。
その機動させるまでの時間稼ぎを、自動操縦もあったとはいえ月が代わりに動かすことで行う。
機体のバランスのとり方と万が一の時の攻撃の操作程度しか聞けない状況で、それを行ったのだ。
無論、アルビオン自体も無事ではなく機動時間の短縮をしすぎて機体のあちこちがエラーを上げて動作不良を起こしかけている。

未だに体から吹き出す汗は止まっていない。まるで100メートル走に全身全霊をかけた直後のようだ。

「やっぱり、君を信じたのは間違いじゃなかったな」
『これくらいの無茶はたくさんしてきたからね。少し下がっていてくれ。場を整える』

剣を抜いたランスロットアルビオンは、一気に目前のグロースターへと迫る。
こちらに射出させたハーケンを腕で受け止め引きずり込み、その機体を地面へと叩きつける。
ハーケンの先端を握りつぶしながら、エナジーウィングの光弾でその体をズタズタになるまで切り裂く。
さらにダメ押しのようにこちらのハーケンをぶつけて地面へとめり込ませて動きを封じた。

その場所が、ボロボロに崩れた屋敷である間桐邸であることを確認して再度飛び立つ。
追ってきたマリアンヌの剣を、左腕を切り裂かれながらも捌く。
その後ろから更に残りの2機のヴィンセントを見た時、トリスタンを振り切ってその2機へと突撃をかける。

片方をMVSで貫きつつ、もう片方はぶつかった衝撃と共に一気に北の位置に向けて押し込む。
そのまま、小さく明かりが灯っている建物、フレンドリィショップにその剣を一気に投擲。
貫かれたヴィンセントごと放られ、ショップの天井を破壊しつつもその体を地面に縫い付けた。

更に向きを変え、砕かれた箇所の再生を始めているもう1機のヴィンセントを押し込み。
ハーケンをその脇に打ち込みながら回転蹴りを放つ。
絡まったワイヤーがヴィンセントの身動きを封じる。
さらにワイヤーを切り離すことでヴィンセントを縛ったまま、蹴り飛ばされた勢いで遊園地の地面を転がった。

その勢いのまま高速で禁止エリアとなった遊園地を飛び出すランスロット。
そこに横殴りに一迅の光が殴りかかった。

「ルルーシュがいないからって油断したわ、まさかここまで無茶苦茶なことをするなんてね」

剣を拾い直して襲いかかったトリスタン、その剣に腕を切り落とされる。

(やっぱり、この機体で彼女の相手は無理か…!)

元々、ゼロとの戦いの損傷で機体がパワーダウンしていたランスロットアルビオン。
それでも量産機やその発展機程度の相手であれば、スザクの技量と合わせて圧倒できるだけの力は残っていた。だからこそ拾い上げる価値があった。

だが目の前にいる、かつて戦ったナイト・オブ・ラウンズの面々も凌駕する技量を備えた彼女の攻撃に耐えうるだけの力は、もう残ってはいなかった。

ハーケンの残り、そして剣は他の敵の拘束に使い尽くし、相手の攻撃を見切ることも叶わない。
かろうじて反応するも、閃光のごとき斬撃はかわしきれずにランスロットの両腕を、頭部を切り裂いていく。

これ以上は無理だと、そう判断したスザクは脱出装置のレバーを引いた。
コックピットの排出と同時に、ランスロットの体を剣が貫く。

かつての乗機であり、罪の証であり、それでも今この場においては皆の力となった己の剣が目の前で炎に包まれて散っていく。
だが、思いを馳せていく時間はない。

ランスロット・アルビオンの破棄、ここまでが想定通りなのだから。

「月!!」

スザクの叫び声と共に、敵の意識から消えていたもう一機のランスロットがスザクの乗るコックピットを受け止める位置に飛び出す。
コックピットのパラシュートが機体に絡まり落下を阻止、その間に互いの機体のコックピットを開いてスザクが乗り移る。

「大丈夫か!?」
「いいタイミングだ!ありがとう!」

言いながらも手を素早く動かし、ランスロットの飛行制御を操作。
同時にトリスタンもまたこちらへと距離を詰める。

牽制のスラッシュハーケンを、コックピットを先に乗せた状態で射出。
他の乗り手であれば直撃コースだったそれを、命中する直前で回避、しかしコックピットごと射出したことにより風圧を見誤ったか機体のバランスが崩れる。
その隙に上へと上昇していく。

上がる間にも、両腕の槍の先にエネルギーを蓄積させていき。

エネルギーが溜まった辺りで機体を停止させ、上空から3点に狙いを定める。
遊園地、間桐邸、フレンドリィショップ。
各ポイントに押し付けたナイトメアフレーム3機は機体を再生させつつあるが同時に拘束を解くことに腐心している。
中には拘束を解くことを諦め機体のコックピットを破壊して出ようとしているものもいる様子だ。

だが、どうやら間に合ったようだ。

「プラズマニードルキャノン、発射…!!」

左腕から放たれた砲撃は一直線にフレンドリィショップと遊園地を薙ぎ払って消失させていき。
右腕から放たれた砲撃は間桐邸へと着弾して施設のあった土地そのものを根こそぎ吹き飛ばした。

同時に、その場に縛り付けられた各ナイトメアフレームも、その爆発と共に跡形もなく消し飛ばされた。

追撃していたマリアンヌも、阻止しきれないと悟った砲撃直前には追うのを諦め退避している。

「よし、目的は果たした。この追加装甲を破棄すると同時に君を下に降ろす」

そう言って、緊急時用のパラシュートを月に着せる。
再生するあの機体達を、跡形もなく消滅させることで倒せるかどうか、そこは賭けに近かったが、現状レーダーに反応はない。うまくいったと考えてもいいだろう。
他の機体がある間に月を降ろすことはあまりに危険だったが、残った機体があの一機だけならば気を引きつけられる。

「下に降りたら、とにかく戦闘から離れてくれ。
 こちらも気を使うが、あまり君に気は払えないと思う」
「分かった。
 それとスザク―――」
「悪い、今は急ぐ。大したことじゃないなら後にしてくれ」
「じゃあ後で。スザク、気をつけろよ」

宙に身を投げ出すと同時に、月が背負ったパラシュートが開く。
同時に、再度接近したトリスタンに向かって装甲をパージしつつ中から白い光が飛び出して迫った。

実質的なランスロットアルビオンの後継機として作り出された機体、ランスロットsiN。
アルビオンと同じようなエナジーウィングを備え、その肩部には青い装甲が追加されている。
武装はランスロットアルビオンのものとほぼ同等。故に扱いやすい。

その腕部に仕込まれた剣、MVSがトリスタンへと突き出された。

(月の姿は…、よし、装甲の影に隠れて見えないな…)
『本当に、無茶苦茶やるのね。複数の施設を一気に吹き飛ばせるナイトメアなんて、そんなもの誰が出す許可を与えたのかしら。
 おかげで下、すごいことになってるのよ』
「……!」

と、思わず下に目をやるスザク。
そこには、施設があったエリアのあちこちの空間に黒い穴が浮かび上がっては消えてを繰り返している。

やはり思った通り、破壊した施設の中に会場にとって重要な何かが備わったものがあったということなのだろう。

『ここまでいくつも一気に壊されるなんて想定していなかったせいだけど、まあすぐにまた空間バランスは取れるでしょうね。
 それより気付いてる?あなたが今そうやって反応を取った意味』

と、切り結ぶ剣とは反対側の腕が、一直線に破棄した装甲へと向けられている。

『頭を使ったようだけど、ルルーシュと比べたら状況が悪かったわね。私という人物を視野に入れて思考できていなかったんだもの』
「…っ、しまっ」

向けられた腕には、いくつもの刃が備わっている。それがこの状況でどう扱われるものなのか、気付くのが一瞬遅れた。
放たれた腕のハーケン状のナイフが、落下途中の追加装甲を貫いた。

『そこで下を気にするってことは、下を気にしなきゃいけない何かがあるってことでしょう?』

破壊された追加装甲は爆散、その後ろをパラシュートで落ちていた月を爆風に巻き込みながら、砕けた部品を散らして落ちていく。

「月ォっ!!」

パラシュートを吹き飛ばされながら、月の体が落ちていく姿だけが目に入る。

やがて、その姿は暗闇の中に落ちていき見えなくなっていった。

『さぁて、これで邪魔者はいなくなったわね、坊や』
「…!!」

月を助けにいく時間など、目の前の存在は与えてくれないだろう。
この高さで、パラシュートを失った状態で落ちればどうなるか。

(…月……)

一瞬だけ目を閉じる。

(今、君の死を悲しむことはできない…)

目の前にいる相手は、心を乱した状態で戦って勝てる相手ではない。

(だから)

高速で突き出された剣を、引き抜いたMVSで受け止めながら。

(彼女の撃退を以て、君への弔いとさせてもらおう!!)

そう心中で誓いながら。
生きろギアスの発動する中で剣を振りかざした。



【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:「生きろ」ギアス継続中、疲労(大)、両足に軽い凍傷、腕や足に火傷
[装備]:ランスロットsiN@コードギアス 復活のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、スタングレネード(残り2)@現実
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアを倒す
2:月…


【マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア】
[状態]:健康
[装備]:トリスタン@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、MVS
[思考・状況]
基本:今の己の役割に従い、枢木スザクを殺す
[備考]




爆風に巻き込まれて意識を失う直前。
最後に覚えているのは、宙に投げ出され平衡感覚を失う体と、全身を焦がす爆風の熱。

(そうか、ここで死ぬのか)

あの巨大な機体をひたすら必死で動かしていた時はとにかく死の気配を近くに感じたが、今感じるのは気配ではない、死そのものだった。
二度目だからだろうか。死に対する感覚は自分でも驚くほどに冷静だった。
死んだ後の感覚が分かっているからだろう。恐怖はあまりなかった。

リュークの言っていた、死んだ後に向かう先は無。その意味がよく分かっている。

ただ、恐怖はなかったが二つだけ気がかり、心残りなことがあった。

(L、すまないな。君にあんな気を遣わせてまで生き残ったというのに、結局何もできなかった)
(スザクは、大丈夫だろうか。戦いの中で僕が死んだことで動揺して負けたりしてないだろうか)

だけど、もう考えても仕方がない。
静かに死に体を委ねよう。

そう思っていたら、ふと目の前に二つの人影が見えた。

白い肌で目には隈を作った、猫背の男が二人。

(Lか…)

片方は自分が殺したL。片方はこの儀式の場で会ったL。
似てるしほぼ同じだと思っていたが、こうして並んだ姿を見ると何だか割と違う。

(迎えにでも、来たのか?)

そう思ったところで、二人は首を静かに振るった。
そして、寸分違わぬ動きでゆっくりとこちらに向けて指を指した。
よく見るとその先は背後を指差していた。

その先に向けて振り向いた時。

「――――はっ」

目が覚めた。

「ぐ…あ、ああ…!!」

その瞬間、全身を熱風に晒された時の痛みが体を襲った。

「あ、は……、ここ、は…」

宙に投げ出され、墜落を待つだけだったはず。
だが今自分がいるこの石造りの地面のような場所はあの近くにあっただろうか。

「運のいいやつだな。宙に投げ出されたところであの場にできた空間の歪みに飛び込んでくるとはな。
 あのまま空間の狭間で漂われていても鬱陶しいだけだったのでな、拾わせてもらった」

そう、頭上で声が響いた。

視線を上げた先には、鋭く、しかし無感情な視線をこちらに向ける者がいた。

「アカギ…」

その顔はこの場に連れてこられた時に最初に見た男の顔だった。
淡々と口を開く姿からは、彼の心理を読み取ることは月にもできなかった。

「どちらにしてもお前の運命は変わらんだろうな。
 その火傷なら、放置すれば命に関わる。
 だが、ここに来たというのも何かの運命か」

と、視線をどこなのかも分からない、黄昏のような色の空が広がった空間へと向けて静かに言った。

「少し、話でもしようか」



【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:疲労(中)、右頬に大きな裂傷(応急処置済)、全身に火傷
[服装]:ビジネススーツ(熱風による損傷多数)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本:キラではない、夜神月として生きてみたい
1:アカギと、話……?
2:僕は死んだのか…?
[備考]
※死亡後からの参戦

169:I beg you 投下順に読む 171:あなたと私は友達じゃないけど
時系列順に読む
167:白き牙の飛翔 枢木スザク 175:閃光のマリアンヌ
夜神月 174:シンセカイ
164:暁美ほむらの退屈 マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア 175:閃光のマリアンヌ
160:第四回定時放送 アカギ 174:シンセカイ



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