草加雅人なら大丈夫♪ ◆cyLXjJEN56
かの忌わしき『儀式』の会場となった島の、街を為す場所の一角を、少女が全力疾走で駆け抜ける。
生活感の無い、ただ街灯の蛍光灯の異様に白い光の連なりだけが眩い、まるで悪夢の様な、現実感の無い街の中を、しかし少女は、走る体にかかる疲労と負荷、額を流れる汗から、確かにこれが現実だと認識しながら、走る。
何かから『逃げる』……その為に走り続けた少女、
「きゃっ!?」
鹿目まどかは、足を縺れさせて転び、膝小僧を摺って、白いストッキングを赤く地で染めなながら、以上の様なかわいらしい悲鳴を上げた。
この『戦場』へと移送された殆ど直後、彼女は、与えられたデイパックの中身を見る事すら無く、ただひたすらに逃げ続けていた。
桃色の髪を、赤いリボンで左右二つに纏めた、年相応の発展途上の体躯を、可愛らしい制服で包んだ女子中学生。
それが彼女、鹿目まどかである。
それが彼女、鹿目まどかである。
その体力は、基本的に女子中学生の平均の域を出ず、よって、これまで彼女が行って来た『全力疾走』により、
その息は上がりきり、心臓は破裂せんばかりに、脳を揺さぶる様な鼓動を立てている。
挫いた膝小僧はじくじくと痛み、体力は限界であり、もう一歩たりとも、走る事はおろか、歩く事さえゴメンなのが、まどかの正直な思いであった。
その息は上がりきり、心臓は破裂せんばかりに、脳を揺さぶる様な鼓動を立てている。
挫いた膝小僧はじくじくと痛み、体力は限界であり、もう一歩たりとも、走る事はおろか、歩く事さえゴメンなのが、まどかの正直な思いであった。
しかし……彼女には、その足を止める事は許されない。
よって、彼女は必死に立ち上がり、その『逃走』を再開せんとする。
何故ならば―――
よって、彼女は必死に立ち上がり、その『逃走』を再開せんとする。
何故ならば―――
―――コツリ
「!?」
「!?」
灰色の死神が、直ぐそこまで迫ってきているが故に。
その足音にまどかが振り向けば、彼女が、全力で逃げ続けていたその理由が、すぐ背後まで迫ってきていた。
ソイツの印象を、一言で表すならば、『灰色の鎧騎士』であろう。
馬を象った様な意匠の『兜』でその顔をスッポリと隠し、その全身を隈なく灰色の装甲で覆い、その手には、禍々しく長大な両刃剣…『ホースソード』を下げた、灰色の鎧騎士。
しかし、コイツは、鎧騎士などでは無い。
馬を象った様な意匠の『兜』でその顔をスッポリと隠し、その全身を隈なく灰色の装甲で覆い、その手には、禍々しく長大な両刃剣…『ホースソード』を下げた、灰色の鎧騎士。
しかし、コイツは、鎧騎士などでは無い。
その鎧は『彼』の体の一部であり、その兜は、彼の顔そのものなのだ。
「――――」
そのコリント式兜を思わせる、装甲皮膚の間から覗く、濁った双眸に輝くのは、あからさまな、まどかへと…いや、『人間』と言う『種』全体へと向けられた殺意。
その余りに濃厚な殺意に、まどかは思わず腰を抜かし、逃げる事が叶わずに、その場でへたりこんでしまった。
―――『ホースオルフェノク』。
それが、かつては『人間』…『木場勇治』であった存在のなれの果てたる、この『怪物』の名前であった。
かつては人間と敵対する種族たる『オルフェノク』でありながら、人間に味方した彼は、しかし今や、その骨の髄に至るまで、人間に対する『憎悪』に支配されている。
信じた者に、信じ続けた者に、『裏切られた』が故に。
その為に、大切な『友/仲間』が殺されてしまったが為に。
その為に、大切な『友/仲間』が殺されてしまったが為に。
その『怒り』、『哀しみ』は、人間への『憎悪』となって走り出す。
目の前で…腰を抜かした少女を見て、ホースオルフェノクは思う。
―――その『声』が、『あの女』に…どこか、本当に僅かであるが、『似ている』、と。
―――自分を『裏切った』…『あの女』…『園田真理』に。
―――自分を『裏切った』…『あの女』…『園田真理』に。
『オルフェノク』として生きると言う事は、人を殺し、人を征すると言う事。
だとしても、木場が、ホースオルフェノクが執拗なまでに逃げるまどかを追ったのは、そのやり場の無い怒りを、兎に角、『人間』である誰かにぶつけたいと言う、殆ど『やつあたり』も同然の理由であった。
『真理』の声に似ている云々は、実は単なる『口実』に過ぎない。
だとしても、木場が、ホースオルフェノクが執拗なまでに逃げるまどかを追ったのは、そのやり場の無い怒りを、兎に角、『人間』である誰かにぶつけたいと言う、殆ど『やつあたり』も同然の理由であった。
『真理』の声に似ている云々は、実は単なる『口実』に過ぎない。
手にした魔剣を、両手で、逆手で握り、その切っ先を、まどかへと向ける。
街灯の、白い蛍光灯の光が、切っ先にぶつかって四散し、光の珠の連なりとなる。
街灯の、白い蛍光灯の光が、切っ先にぶつかって四散し、光の珠の連なりとなる。
まどかは、その切っ先を見つめつつ、思った。
ああ―――自分は、ここで殺されて、死ぬんだろうと。
そして、こうも思った。
当然だよ、と。
―――巴マミ。
―――美樹さやか。
―――佐倉杏子。
―――美樹さやか。
―――佐倉杏子。
皆、死んでしまった。
戦わない、自分の代わりに戦って、みんな、死んでしまった。
自分は、それを、ただ、見ているだけだった。
そんな自分に、遂に、天罰が下ったんだ、と。
戦わない、自分の代わりに戦って、みんな、死んでしまった。
自分は、それを、ただ、見ているだけだった。
そんな自分に、遂に、天罰が下ったんだ、と。
灰色の怪人の気配が強ばる。
弓を引き絞る様に、逆手に持たれた剣の柄頭が、高く高く掲げられ、弓を放つように、その切っ先はまどかへと――――
弓を引き絞る様に、逆手に持たれた剣の柄頭が、高く高く掲げられ、弓を放つように、その切っ先はまどかへと――――
―――『 Burst Mode 』
届く事は無かった。
そんな電子音が闇の中から響いて来たかと思えば、夜の帳を裂いて、赤い光弾が走り、ホースオルフェノクの背中へと突き刺さり、火花を上げる。
そんな電子音が闇の中から響いて来たかと思えば、夜の帳を裂いて、赤い光弾が走り、ホースオルフェノクの背中へと突き刺さり、火花を上げる。
「―――っがぁ!?」
予期せぬ不意打ちに驚きホースオルフェノクが振り返れば―――
「!?」
街灯の明りに照らされてできた、ホースオルフェノクの影に写された木場の顔が、驚きに歪んだ。
夜の闇に映える、血の様に赤い光の線と、顔を覆い尽くす程に大きな黄色の瞳、そして、鈍く光る銀の装甲。
―――『闇を引き裂き』
―――『この世に光を齎す戦士』
―――『この世に光を齎す戦士』
忘れる筈の無い姿。
『救世主』であり、今や自分の『宿敵』と化した仮面の戦士の姿。
その姿、その存在に、ささくれ立った木場の精神が沸騰し、激昂する。
ここに呼び出される直前まで、コロシアムで対峙していた敵手の存在に、彼の血は戦慄いた。
『救世主』であり、今や自分の『宿敵』と化した仮面の戦士の姿。
その姿、その存在に、ささくれ立った木場の精神が沸騰し、激昂する。
ここに呼び出される直前まで、コロシアムで対峙していた敵手の存在に、彼の血は戦慄いた。
「―――ファイズ!?」
「乾巧かぁ!?」
「乾巧かぁ!?」
そう咆哮するホースオルフェノクには、『ファイズ』は口頭では返事を返さず、代わりに、手にした小型の光線銃、『フォンブラスター』の引き金を引く事で返した。
高速連射されたフォトンによるエネルギー光弾は、今度はホースオルフェノクの胸へと目掛けて飛んで行くが、オルフェノク特有の発達した反射神経と運動能力で彼はコレを横に飛んで回避、そしてそのまま、
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いぬぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「いぬぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
と雄叫びを上げつつ、横飛びからの着地点で、足を踏ん張り、地面へと力を込め、跳躍ッ!!
手にした長剣を両手で大上段へと構え、ファイズを真っ向唐竹割りにせんと飛びかかる。
手にした長剣を両手で大上段へと構え、ファイズを真っ向唐竹割りにせんと飛びかかる。
「―――――」
対するファイズは無言で、冷静にホースオルフェノクを迎撃せんとす。
間合い、タイミング的に射撃での迎撃は不可能と即座に判断すると、ファイズドライバーのバックル部にフォン形態に戻したファイズフォンを戻しつつ、猫背のように背を屈めながら、ホースオルフェノクへと向けて、素早い運足で間合いを詰める!!
間合い、タイミング的に射撃での迎撃は不可能と即座に判断すると、ファイズドライバーのバックル部にフォン形態に戻したファイズフォンを戻しつつ、猫背のように背を屈めながら、ホースオルフェノクへと向けて、素早い運足で間合いを詰める!!
「―――!?」
「―――――」
「―――――」
ホースオルフェノクの懐に上手く飛び込んだファイズは、自分へと振り下ろされんとした灰色の大剣の柄頭を掴みつつ、柄の真ん中、柄を握る両拳の間を捕まえて、直線的に半身を引けば、ホースオルフェノクの体は宙で空転しつつ飛んで、その手の内にあった大剣は、まるで魔法の様にファイズの手の中に収まっている。
古流剣術などにおいては『無刀取り』と呼ばれる技法に類似した業であるが、その体の動きから察するに、恐らくは『合気道』の応用であろうと思われた。
「くっ!!」
しかし、宙を空転しつつも、馬でありながら猫の様にしなやかに着地してみせたホースオルフェノクは、流石は木場勇治、流石は『帝王のベルト』に選ばれたオルフェノクであろう。
「――――」
しかし、見事着地してのけたホースオルフェノクへと、ファイズの無言の追撃が繰り出される。
奪い取った剣を両手で構えつつ、逆にホースオルフェノクへと斬りかかって来たのだ。
奪い取った剣を両手で構えつつ、逆にホースオルフェノクへと斬りかかって来たのだ。
「くぅ!?」
ホースオルフェノクは何時の間にか顕現させていた巨大な円盾で、怒涛の如く繰り出される防ぐ。
時にファイズの『必殺技』である『クリムゾンスマッシュ』すら防いだ頑丈な盾と、本来であれば『使徒再生』の能力を有する魔物がぶつかり合い、火花が、宵闇の中、刃鳴と散る。
時にファイズの『必殺技』である『クリムゾンスマッシュ』すら防いだ頑丈な盾と、本来であれば『使徒再生』の能力を有する魔物がぶつかり合い、火花が、宵闇の中、刃鳴と散る。
(――――コイツ!!)
ファイズに完全に押されている現状に、木場は内心で毒づきつつ、怒涛の攻めを、彼の持ち味たる圧倒的防御力でいなし続け、
「――――ハッ!!」
「――――!」
「――――!」
ファイズが大ぶりに魔剣を振るった瞬間に合わせて盾を強く前に突き出す『盾突』きで、ファイズの体勢を一瞬崩し、後ろに後ずさらせる。
その一瞬を捉え、ホースオルフェノクは後方へと跳躍し、
その一瞬を捉え、ホースオルフェノクは後方へと跳躍し、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
雄叫びを上げながら、その肉体を再度『変態』させる。
モーフィング映像の様に、ホースオルフェノクの下半身が変化を開始すれば、瞬く間に彼の下半身は、『馬』そのままの四足形態へと変化し、まるで伝説中の『ケンタウロス』を思わせる姿となったのだ。
モーフィング映像の様に、ホースオルフェノクの下半身が変化を開始すれば、瞬く間に彼の下半身は、『馬』そのままの四足形態へと変化し、まるで伝説中の『ケンタウロス』を思わせる姿となったのだ。
―――ホースオルフェノク『疾走態』である。
「――――」
それを受けてファイズは、手にした魔剣を投げ捨て、ドライバーに装着されていた『デジタルカメラ』…型の戦闘支援ツール『ファイズショット』を取り出し、ファイズフォンに装着されていた『ミッションメモリー』を取り外し、『ファイズショット』に装填する。
―――『 Ready 』
電子音が響けば、『ファイズショット』は内蔵されていたグリップを展開、パンチングツールへとその姿を変える。
「―――――」
ドライバーに装填されたファイズフォンを展開、『ENTER』のキーを押す。
―――『 Exceed Charge 』
カァンカァンカァンと、金属を叩く様な独特の音と共に、真っ赤なフォンストリームが腕を通って『ファイズショット』へと伝導される。
『必殺技』…『グランインパクト』の準備は完了した。
『必殺技』…『グランインパクト』の準備は完了した。
対する、ホースオルフェノクは
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と、またも雄叫びを上げる。
すれば、それに呼応して、地面に転がってた魔剣『ホースソード』が蒼い炎を上げて燃え上がって灰になり、その直後、ホースオルフェノクの手の中に同じ魔剣が、再度、唐突に、生える様に出現する。
すれば、それに呼応して、地面に転がってた魔剣『ホースソード』が蒼い炎を上げて燃え上がって灰になり、その直後、ホースオルフェノクの手の中に同じ魔剣が、再度、唐突に、生える様に出現する。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
もう一度、雄叫びを上げながら、ホースオルフェノクは剣と盾を掲げ、嘶く馬の様に、その前の脚二脚を、振り上げて戦慄かせる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「―――――――――――」
「―――――――――――」
激情と沈黙という、対照的な二人が、共に相手目掛けて走り出す。
ホースオルフェノクは剣を掲げ、ファイズは拳を構え、両者、交差し――――
ホースオルフェノクは剣を掲げ、ファイズは拳を構え、両者、交差し――――
「――――!?」
ファイズが、その仮面の下で、明らかに驚きの気配を見せた。
その理由は、
その理由は、
――――パカラッ!!! パカラッ!! パカラッ! パカラッ……―――
ホースオルフェノクは高く高く跳躍すると、同じく跳躍していたファイズの頭上を跳び越えて、そのまま、何処かへと、その俊足を以て走り去ってしまったのだ。
「――――ふぅん」
意図の読めない敵の撤退に、ファイズはここで初めて声を発した。
相手を小馬鹿にした様なその声は、明らかに乾巧のモノでは無い。
相手を小馬鹿にした様なその声は、明らかに乾巧のモノでは無い。
「――――」
ファイズが、地面に座り込んだまま、茫然と2人の闘争を見ていたまどかの方へと、その光り輝く黄色の機械の瞳を向け、喉をさする様な仕草をした後、
―――ガチャッ
ファイズフォンをドライバーから取り外し。
通常の携帯電話では『電源ボタン』にあたるボタンを押す。
通常の携帯電話では『電源ボタン』にあたるボタンを押す。
『ファイズ』が除装され、その中の姿が、初めてまどかに明らかになった。
カーキ色のジャケットに、黒いインナーを着た、大学生ぐらいの青年が、そこにいた。
中々に整った顔立ちの青年であった。
カーキ色のジャケットに、黒いインナーを着た、大学生ぐらいの青年が、そこにいた。
中々に整った顔立ちの青年であった。
青年は、まどかの方へと歩み寄ると
「やぁ―――」
「大丈夫かなぁ?」
「大丈夫かなぁ?」
と言いつつ、その手をまどかへと差し出した。
この青年……名前を『草加雅人』と言う。
この青年……名前を『草加雅人』と言う。
◇
「――――はぁ……はぁ……」
「クソッ!!」
「クソッ!!」
ホースオルフェノクから人間の体へと戻った木場の額には、びっしりと、嫌な汗が珠の様に浮かんでいた。
息を上げ、肩を激しく上下させながら、木場は適当な道路標識にその体を預ける。
息を上げ、肩を激しく上下させながら、木場は適当な道路標識にその体を預ける。
―――木場が撤退した理由には…このあからさまな『不調』があった。
―――理由は解らないが…『オルフェノク態』時の身体能力が落ち込んでおり―――それによる『疲労』が恐ろしく増大しているのである。
―――理由は解らないが…『オルフェノク態』時の身体能力が落ち込んでおり―――それによる『疲労』が恐ろしく増大しているのである。
オルフェノク特有の、優れた感覚能力から察するに、恐らくは、この首に刻まれた、忌々しい『刺青』が原因であろう。
(あのまま……あの謎の『ファイズ』と戦っていれば…)
(恐らくは――――)
(恐らくは――――)
木場は、先程の交戦で、あのファイズの中にいた人物が、乾巧では無い事に気が付いていた。
乾巧は、非常に荒々しく、喧嘩殺法染みた戦闘スタイルを取る男である。
それに対してあのファイズは、明らかに武道の心得を感じさせるスマートな戦闘スタイルであり、あからさまに別人であった。
乾巧は、非常に荒々しく、喧嘩殺法染みた戦闘スタイルを取る男である。
それに対してあのファイズは、明らかに武道の心得を感じさせるスマートな戦闘スタイルであり、あからさまに別人であった。
(しかし……だとすれば一体誰が……)
ファイズのベルトが使えるのは、オルフェノクか、極々一部の人間の適応者だけの筈。
そして、人間どもの中の適合者は、もはや乾巧しか残ってはいない筈であり、オルフェノクである可能性は――――
そして、人間どもの中の適合者は、もはや乾巧しか残ってはいない筈であり、オルフェノクである可能性は――――
(ありえるのか……?そんな事が?)
あのファイズは、明らかにあの少女を守る為に、オルフェノクである自分へと戦いを挑んで来たのだ。
つまりは、『人間を愛するオルフェノク』であるという可能性が考えられるのであるが……
つまりは、『人間を愛するオルフェノク』であるという可能性が考えられるのであるが……
(ありえない)
木場はその可能性をかなぐり捨てる。
何故ならば……そんなオルフェノクはもう、この世には居ないからだ。
自分が『夢』を捨て、『海堂』と『結花』が『死んだ』、今となっては……
何故ならば……そんなオルフェノクはもう、この世には居ないからだ。
自分が『夢』を捨て、『海堂』と『結花』が『死んだ』、今となっては……
(まぁ……いいさ)
(ヤツの中身が誰だろうと、関係は無い)
(俺のやることは……)
(ヤツの中身が誰だろうと、関係は無い)
(俺のやることは……)
―――変わらない。
『人間』を抹殺し、『オルフェノク』を救い、糾合し、この『儀式』を打破すると言う、自分に課せられた使命は、だ。
彼はまだ知らない。
この『儀式』に、二度目の死を迎えた筈の、海堂と長田の姿がある事を。
怒りの余り、ここに来て即座にまどかに襲い掛ったが故に、確認していなかった『デイパック』の中の名簿に、その名が確かに記されていることを。
この『儀式』に、二度目の死を迎えた筈の、海堂と長田の姿がある事を。
怒りの余り、ここに来て即座にまどかに襲い掛ったが故に、確認していなかった『デイパック』の中の名簿に、その名が確かに記されていることを。
木場の手が、足元に下ろされていたディパックにかかる――――
【D-3/大通り/一日目 深夜】
【木場勇治@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:軽傷、若干の疲労、人間態
[装備]:特に無し
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出
1:ディパックの中身を確認する
2:乾巧と決着をつけたい
3:あのファイズの正体は……?
[備考]
※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です
※オルフェノク態時の身体能力の低下を認識しました
[状態]:軽傷、若干の疲労、人間態
[装備]:特に無し
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出
1:ディパックの中身を確認する
2:乾巧と決着をつけたい
3:あのファイズの正体は……?
[備考]
※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です
※オルフェノク態時の身体能力の低下を認識しました
◇
「それじゃぁ……その…草加さんは『ファイズ』で」
「『オルフェノク』って言う…怪物と戦ってるって事なんですか?」
「そういう事だね…まどかちゃん」
「『オルフェノク』って言う…怪物と戦ってるって事なんですか?」
「そういう事だね…まどかちゃん」
まどかを助け起こし、足の擦り傷の治療まで行ってくれたこの『好青年』。
『ファイズ』と言う名の戦士に変身していたこの青年の名前は、『草加雅人』と言うらしい。
『ファイズ』と言う名の戦士に変身していたこの青年の名前は、『草加雅人』と言うらしい。
先程、まどかに襲い掛っていた灰色の怪人…『オルフェノク』と戦い、人間を守る『正義の戦士』なのだと、当人は名乗っていた。
「あの……その……」
まどかは、自分をわざわざ助けてくれた人間にこんな事を聞くのはどうなのか、と思いつつも、
敢えてその問いを、発せずにはいれなかった。
敢えてその問いを、発せずにはいれなかった。
「草加さんは……『願い』の為に……『生き残る』為に……誰かを殺すんですか?」
そんなまどかの問いに、草加は即答した。
「さっきみたいに……誰かが襲われてたり、俺達が襲われる様な事があれば」
「その時は仕方が無い。俺は自衛の為に戦うさ」
「だけどね……自分から誰かを殺してまわったりするつもりは無いし」
「ましてや…『願い』の為にだなんて……するわけもないし、あんな話は信用出来ないね」
「その時は仕方が無い。俺は自衛の為に戦うさ」
「だけどね……自分から誰かを殺してまわったりするつもりは無いし」
「ましてや…『願い』の為にだなんて……するわけもないし、あんな話は信用出来ないね」
そう、ハッキリと答える草加の表情、気配は、実に『誠実』そうで、やはりこの人は、マミさんみたいな『正義の味方』なんだなぁ、と、まどかは思った。
だから、まどかは、草加にこう、お願いをした。
「草加さん……私、草加さんにお願いがあるんです」
まどかの表情は、普段の彼女からは想像もつかない様な、凛とした、強い意志の感じられるモノであり、眼は決意に燃えていた。
「私は……こんなの…絶対にオカシイと思うんです」
「一つきりの『願い』の為に、殺し合うなんて…絶対にオカシイし、理解できないし、許せないと思うんです」
「だから―――」
「一つきりの『願い』の為に、殺し合うなんて…絶対にオカシイし、理解できないし、許せないと思うんです」
「だから―――」
「私は、この『儀式』を壊したい」
「その為に……草加さん」
「私に……力を貸して下さい」
「その為に……草加さん」
「私に……力を貸して下さい」
それに対して……草加は―――
◇
傍らで、ディパックを開いて、中身を確認しているまどかの姿を眺めながら、草加は思う。
まるで似ていない筈なのに……何故、こうもこの少女は、園田真理の面影を感じさせるのだろうかと。
まるで似ていない筈なのに……何故、こうもこの少女は、園田真理の面影を感じさせるのだろうかと。
草加雅人が、木場勇治の魔の手から彼女を救った理由は、畢竟、そこへと集約されるのである。
もし、あの場で襲われていたのが、例えば美樹さやかであったら、草加は絶対に助けには入っていなかっただろう。
もし、あの場で襲われていたのが、例えば美樹さやかであったら、草加は絶対に助けには入っていなかっただろう。
鹿目まどかの声は、幼少期の園田真理の声に酷似しており、そして、幼少期の真理の姿・声は、草加雅人も脳には、まるで呪いの様に刻みこまれている。
故に彼は、まどかに自分でも思った以上に、真理の影を重ね合わせていた。
彼が、まどかの『お願い』を、所詮、口約束に過ぎないとは言え聞いて上げたのは、恐らくはその為であろう。
彼が、まどかの『お願い』を、所詮、口約束に過ぎないとは言え聞いて上げたのは、恐らくはその為であろう。
彼の最優先事項は、あくまで園田真理の保護であり、しかる後に、この訳の解ら無い『儀式』からの脱出を目指すつもりである。
まどかの面倒を見るのは、あくまでその『ついで』である。
まぁ、それでも、『囮』ぐらいには使えそうであるし、こういう如何にも無力そうな少女を助ける『良い人』を演出する事は、この修羅の巷で動くには、それなりに『益』がある訳だから、まぁ悪くはあるまい。
まぁ、それでも、『囮』ぐらいには使えそうであるし、こういう如何にも無力そうな少女を助ける『良い人』を演出する事は、この修羅の巷で動くには、それなりに『益』がある訳だから、まぁ悪くはあるまい。
そう、草加雅人は、自分を納得させながら、まどかの隣に立つ。
好青年の仮面の下に、その本性を巧みに隠しながら。
好青年の仮面の下に、その本性を巧みに隠しながら。
まどかは知らない。この、一見『好青年』にしか見えないこの男が、陰湿で独善的な、ストーカ気質の外道であると言う事を。
まどかは知らない。そんな男が、自分に、彼が狂的に執着して止まぬ一人の女性の影を見ている事を。
そして、知らないのは草加雅人も同じ事。
彼は、彼の世界の『木場勇治』として、先程戦った木場勇治を考えていた。
あの腑抜けが、どうして人間を殺そうとしていたのか……口で何を言っても、所詮はオルフェノク、体も魂も腐って行っただけだ、としか、考えていなかった。
彼は、彼の世界の『木場勇治』として、先程戦った木場勇治を考えていた。
あの腑抜けが、どうして人間を殺そうとしていたのか……口で何を言っても、所詮はオルフェノク、体も魂も腐って行っただけだ、としか、考えていなかった。
彼は知らないのだ。まさか木場勇治が、園田真理に殺意を抱いているなどと――――
一緒になって名簿を見る、まどかと草加。
余りにも異質なこの二人組には、果たして如何なる運命が待つのか。
余りにも異質なこの二人組には、果たして如何なる運命が待つのか。
「そして―――特に注意が必要なのが『乾巧』だ」
「乾巧……」
「ああ。奴は口が上手くて、残忍で、冷酷で独善的な男だ……『願い』の為に、間違いなく『儀式』に参加するだろう」
「必ず注意して欲しいんだ」
「乾巧……」
「ああ。奴は口が上手くて、残忍で、冷酷で独善的な男だ……『願い』の為に、間違いなく『儀式』に参加するだろう」
「必ず注意して欲しいんだ」
―――そして、こんな時でも猫舌たっくんへのネガキャンを忘れない草加さんであった。
【D-3/路地裏/一日目 深夜】
【仮面少女・草加☆まどか】
【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:乾巧へのネガティヴキャンペーンを忘れない
4:まどかの事が少しだけ気になる
[備考]
※明確な参戦時期は不明ですが、少なくとも木場の社長就任前です
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:乾巧へのネガティヴキャンペーンを忘れない
4:まどかの事が少しだけ気になる
[備考]
※明確な参戦時期は不明ですが、少なくとも木場の社長就任前です
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本:
1:草加と行動を共にする
2:草加さんは信用できる人みたいだ
3:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆~ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※乾巧に関する偏向された情報を、草加より聞かされました
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本:
1:草加と行動を共にする
2:草加さんは信用できる人みたいだ
3:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆~ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※乾巧に関する偏向された情報を、草加より聞かされました
| 007:What Mad Universe | 投下順に読む | 009:クライモリ |
| 時系列順に読む | ||
| 初登場 | 木場勇治 | 017:Blue Rose |
| 初登場 | 鹿目まどか | 037:名前のない人々 |
| 初登場 | 草加雅人 |